非正規戦闘員ケンタの休日 恋愛

宮本健太は、学生時代の先輩、大島に紹介された悪の人材派遣組織ドノマで非正規戦闘員として働きながら無為な日々を過ごしていた。ある夜、健太は、大島から一緒に住んでいる女性が妊娠したため、ドノマの正規戦闘員になると告げられる。別れ際、健太は、閉店間際の花屋に飛び込む。そこは健太が仄かに恋心を抱く立花幸枝の働く花屋。健太は幸枝に作ってもらった花束で大島にの人生の決断をささやかに祝う。しかし、実は幸枝はドノマの宿敵・勇敢戦隊ブレイブフファイブのブレイブピンクだった。お互いの正体を知らぬまま戦闘を続ける二人だった……
小川葵 18 1 0 04/06
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第一稿

●登場人物表

宮本健太(24)無職

立花幸枝(21)花屋店員


大島武(27)無職

立花勲(51)花屋店主

妹尾舞(17)無職

妹尾君香(36 ...続きを読む
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●登場人物表

宮本健太(24)無職

立花幸枝(21)花屋店員


大島武(27)無職

立花勲(51)花屋店主

妹尾舞(17)無職

妹尾君香(36)スナックママ

初老の婦人

居酒屋チェーン店員


《悪の人材派遣組織ドノマ》

スズキ(36)北関東エリアマネージャー

改造戦闘員・シヴァ
改造戦闘員・ブラフマー

正規戦闘員A
正規戦闘員B

非正規戦闘員A
非正規戦闘員B
非正規戦闘員C
非正規戦闘員D






《勇敢戦隊ブレイブファイブ》

ブレイブレッド
ブレイブブルー
ブレイブイエロー
ブレイブピンク
ブレイブグリーン

二代目ブレイブイエロー











○採石場(夕)
   赤い夕日が荒れた大地を照らす。
   脇腹を押さえ立ち上がる、ドノマ戦闘
   員スーツの宮本健太(24)。
健太「痛……」
   健太、よろよろと歩く。
   辺り一面、二十名以上のドノマ戦闘員、
   倒れていたり、ぐったりと座り込んで
   いる。健太、歩きながら、
健太「大島さぁん……」
   大きな岩にもたれて座る、ドノマ戦闘
   員スーツの大島武(27)、小さく手
   を上げる。健太、よろよろと大島の元
   に辿り着き、並んで座り、岩にもたれ
   る。大島、絞り出すような声で、
大島「……本名、言っちゃダメだって」
健太「……すいません」
   健太、マスクを取る。
大島「マスクも、外で取るなって。減額され
 るから……」
   健太、荒い息を吐きながら、
健太「……はい。分かってんすけど、ちょっ
 とだけ……よく、我慢できますね」 
大島「……そのうち慣れるよ」  
   近づく車のエンジン音。
大島「ほら。バス来たぞ。早くマスクしろ」
健太「はい……」 
   健太、マスクを被る。 
   採掘場にやって来る、型の古い、ボロ
   ボロの観光バス。

○走行中の観光バス・車内(夜)
   悪路のため、揺れの激しい車内。 
   車内灯の薄暗い灯りの中、皆マスクを
   取って席に座り、無言で揺られている
   ドノマ戦闘員達。
   大島と健太、並んで座っている。
   大島、切れた唇をそのままに、シート
   に深く身を埋め、目を閉じている。 
   窓際の健太、日が落ちて、暗くなった
   外の景色を虚ろな目で眺めている。 
   車内、灯りが消され、真っ暗になる。
タイトル「非正規戦闘員 ケンタの休日」

○ドノマ北関東支部・ロッカールーム(朝)
   悪の人材派遣組織ドノマ、非正規戦闘
   員用ロッカールーム内。
   私服姿の大島、部屋の隅、寝袋で丸ま
   っている健太の肩を揺する。
   健太、壁と床の間に顔を埋めている。
大島「おい健太……」
健太「……(起きて)はい……」
   健太、少しだけ顔を大島に向ける。
大島「先帰るな」 
健太「……はい」 
   健太、再び壁と床の間に、顔を埋める。

○走る電車・車内
   車窓に、高くなった太陽。
   空いている車内、リュックを傍らに置
   いて、シートに座っている健太。

○無人キャッシュコーナー内
   狭い銀行の無人キャッシュコーナー内。
   健太、封筒から札を出し、入金する。

○駅前
   北関東、地方都市の駅の前。
   ひと気もなく、どこか淋しげな印象。
   健太、駅前のキャッシュコーナから出
   て来る。

○駅裏の商店街、入り口付近
   駅裏にある活気のない商店街通り。
   通りの入り口、こじんまりとした花屋、
   フラワーショップたちばながある。
   リュックを片掛けした健太、駅から歩
   いて来て、花屋の、通りを挟んだはす
   向かい、自動販売機の前で立ち止まる。
   健太、花屋を少し振り返る。 

○フラワーショップたちばな、店前
   丁寧に並べられた色とりどりの花々。
   店内から、立花幸枝(21)、作りか
   けの花束を手に初老の婦人と一緒に出
   て来る。幸枝、花をみながら、
幸枝「トルコキキョウは何色にします?」
婦人「……白がいいと思ってたんだけど、紫
 も綺麗ねえ」
幸枝「紫でも素敵ですよ」
   幸枝、紫のトルコキキョウを取って、
   花束に添える。

○駅裏の商店街、入り口付近
   自動販売機の隣、缶珈琲を飲みながら、
   幸枝の姿を眺める健太。

○フラワーショップたちばな、店前
   幸枝、花束を婦人にみせながら、
幸枝「こんな感じです」
婦人「素敵。でもちょっと渋いかしら?」
幸枝「カスミソウくわえてあげれば、華やか
 になりますよ。どうぞ」
   幸枝、婦人を促し、店内に戻る。

○駅裏の商店街、入り口付近
   花屋の入り口をみつめる健太。
健太「……」
   缶珈琲を一口飲んで、歩き出す健太。

○チェーン居酒屋・外見(日替わり、夜)
   駅裏の商店街通りにある居酒屋。

○同・店内
   店内に活気はなく空いている。
   テーブル席、大島と健太。
   大島は生中、健太はレモンサワー。
   大島、ジョッキを傾けながら、ジーン
   ズの尻ポケットから、折りたたんだチ
   ラシを出して、テーブルに置く。
大島「……修のバンド、みてきた」
   健太、チラシを手に取り開く。
   モノクロコピーのインディーズバンド
   のチラシ。
健太「……」
大島「お前はバンド、またやんねえの?」
   健太、小さく笑って、チラシを畳んで、
健太「……ギター、売っちゃったんで」
   健太、チラシをテーブルに置く。
大島「……そっか。あの仕事、もうちょっと
 早く紹介してやればよかったな」
健太「いえ……でも、ほんと助かってます」
大島「結構いいだろ?」
健太「……はい。ちょっと体、キツいすけど」
大島「まだ慣れないか。前はもっとキツかっ
 たんだよ。俺も肋骨よくやったし、最近コ
 ンプラ厳しくなったんで、あいつらも、そ
 こまでやってこなくなったから」 
   大島、ジョッキを飲み干す。
大島「もう一杯、頼んで」
健太「はい」
   健太、壁に掛かった注文用とタッチパ
   ネルを操作する。
大島「お前も飲めよ。今日、俺奢ってやるよ」
健太「え、いいんすか?」
大島「おう。食いたいもんもあったら頼めよ」
健太「……あざす」

○駅裏の商店街
   ほんのり灯りの並ぶ商店街通り、歩い
   ている大島と健太。大島、かなり千鳥
   足で、健太より少し前を歩いている。
大島「……俺さ。あの仕事、正規んなるわ」
健太「え?」
大島「一緒に住んでるヤツがさ、妊娠してさ」
健太「……」
大島「正規んなったら、固定給んなるし、社
 保もつくしな。これからは、今日ぐらいな
 ら奢ってやるよ」
健太「……劇団、どうすんすか?」
大島「どうすんすかって、もう俺しかいねえ
 よ。団じゃねえよ(笑)」
健太「……」

○駅裏の商店街、入り口付近
   通りの駅側の入り口辺りに来る健太と
   大島、立ち止まって、
大島「ここでいいよ。あそこ駅だろ。いいな
 この商店街。今んとこ狭くてさ。この辺で
 部屋、探してみっかなあ……」
   商店街を見渡す大島。
   健太、フラワーショップたちばなに、
   まだ灯りがついてるのみて、
健太「……大島さん、ちょっとだけ、待って
 てもらってもいいすか?」
大島「どうしたよ?」
健太「すぐ戻って来るんで!」
   健太、花屋に小走りで向かう。

○フラワーショップたちばな・店内
   入り口から飛び込んで来る健太。
   レジの置かれた小さなカウンターの傍、
   電卓を置いて、帳簿を開いた立花勲
   (51)、憮然と健太をみつめる。
   勲の傍ら、幸枝、ホウキとチリトリで
   床を掃除していた手を止めて、
幸枝「(健太に)いらっしゃいませ」
健太「……すいません。まだ、大丈夫です
 か?」
幸枝「大丈夫ですよ」
   微笑む幸枝、健太に近づく。
   勲、電卓を叩き出す。
   健太、幸枝の顔をまともにみられず、
健太「……花束、一番安いヤツ、いくらす
 か?」
幸枝「……いくらって言うか、花束は、お客
 さんの予算に合わせて作ります。だからい
 くらでも」
健太「あ、そうなんすか」
幸枝「はい。千円でも。五百円でも」
健太「……じゃあ」
   健太、尻ポケットから二つ折のナイロ
   ン財布を出して、五千円札を差し出し、
健太「……これで」
幸枝「……結構豪華なのになっちゃいますけ
 ど、いいですか?」
健太「え……」
幸枝「このくらい」
   両手で花束を抱えるポーズをする幸枝。
健太「……じゃあ、三千円で」
幸枝「(微笑んで)わかりました」

○駅裏の商店街、入り口付近
   自動販売機の脇、大島、縁石に座って、
   ペットボトルの水を飲んでいる。
   花屋の中から、健太と幸枝が出て来る。
   幸枝は作りかけの花束を持っている。
   二人をみつめる大島。

○フラワーショップたちばな、店前
   健太、大島の方に視線を一瞬送る。
   幸枝、花をみながら、
幸枝「いいなって思うのありますか?」
   健太、花を見回して、
健太「……俺、全然わかんないんで、お任せ
 します」
幸枝「お祝いですもんね。じゃあ……」
   幸枝、白いトルコキキョウをとって、
幸枝「これとか」
   花を作りかけの花束に添える幸枝。
   健太、花をみて、
健太「……綺麗すね」
幸枝「(微笑んで)よかった。私もこの花好
 きなんです。じゃあこの花メインで作りま
 すね」
   幸枝、もう何本か花を選んで、
幸枝「もう少々お待ちください」 
   幸枝、店の中に入っていく。
   健太、気恥ずかしそうに、大島をみる。

○駅裏の商店街、入り口付近
   大島、ニンマリと健太をみている。

○フラワーショップたちばな・店内
   カウンター付近、花束を作っている幸
   枝、電卓を叩く勲に、
幸枝「(花束をみせ)どう?」
   勲、電卓から顔を上げ、
勲「……三千六百円」
幸枝「えー。じゃあ……」
   幸枝、花束から花を抜こうとすると、
勲「いいよ。三千円で……」
   勲、電卓に顔を戻す。
幸枝「ほんと?ありがとうお父さん」

○フラワーショップたちばな、店前
   店の前に立っている健太。
   幸枝、入り口から出て来て健太に花束
   をみせ、
幸枝「お待たせしましたー。どうですか?リ
 ボンはピンクにしてみました」
健太「……あ、いいと思います」
幸枝「あ。あげるの女性ですよね?」
   健太、自動販売機の方をみる。
   幸枝もみる。
   自動販売機の脇、二人を眺めている、
   座り込んだ大島。
   幸枝、大島をみながら、
幸枝「……ごめんなさい。水色とかのが、い
 いですか?」
健太「え?あ、全然いいいです。ピンクで」
   幸枝、花束、大島を交互に見て固まる。
   健太、幸枝の顔をみて、
健太「……あ、高校の先輩です!」
   幸枝、なんとか言葉を選んで、
幸枝「……素敵な、方ですね……」
   健太、焦り気味に、
健太「いや、そういうことじゃなくて、一緒
 に住んでる彼女さんと、結婚するみたいな
 んで、その彼女さんに、渡してもらおうと
 思ってて」
幸枝「あ……そうなんですか」
   幸枝、恥ずかしそうに笑って、
幸枝「ごめんなさい。私、ちょっとドキドキ
 しちゃって……」
   幸枝、大島に頭を下げる。
   大島も、幸枝に頭を下げ返す。       

○駅裏前広場
   駅の裏口の前の小さく殺風景な広場。
   健太、花束を持った大島、歩いて来て
   立ち止まる。
大島「本当もうここでいいよ」
健太「ごちそうさまでした」
   大島、小さく笑いながら首を振って、
大島「こっちこそありがとうな」
   大島、片手で花束を小さく掲げる。
   健太、照れ臭そうに頷く。
   大島、花束をみながら
大島「……健太。お前はよ、ギターまた買え
 るくらい金貯まったら、すぐやめろよな」
健太「……うっす」
大島「じゃあな」
   大島、駅に向かって歩いていく。
   大島の背中を見送る健太。

○車窓の景色(日替わり、早朝)
   うら寂しい、灰色の日本海。

○走行中の観光バス・車内
   ドノマ戦闘員達で満席の車内。
   ほとんどの者が眠っている。
   窓際の席、マスクを外した戦闘員スー
   ツの健太、ぼんやりと車窓を眺める。
   
○ドノマ北関東支部・地下駐車場(回想)
   型落ちの観光バス、黒い装甲車が停め
   られている地下駐車場。
   観光バスに乗り込む非正規戦闘員の列。
   列を管理する正規戦闘員達。正規戦闘
   員のスーツは、若干紫がかっている。
   列に並ぶ健太、装甲車の窓を拭いてい
   る正規戦闘員スーツの大島をみつける。
   大島も健太に気付く。
   大島、健太に向かって微笑んで、マス
   クをかぶる。正規戦闘員のマスクには
   ツノが一本付いている。
   大島、右手を掲げるポーズ。
   健太、微笑む。

○走行中の観光バス・車内
   灰色の海を眺める健太の虚ろな目。
   健太の前の席、二人の戦闘員、
非正規戦闘員A「(起き立て)今どこ?」
非正規戦闘員B「新潟だって」
非正規戦闘員A「……新潟ってどこだっけ?
  わ。めっちゃ海」

○コーヒーショップ・オープン席
   都内、開店時間直後のコーヒーショプ。
   オープン席、Bluetoothイヤホンをし
   たドノマ北関東エリアマネージャー・
   スズキ(36)、テイクアウトカップ
   を傍らに置いてノートPCを開いてい
   る。
スズキ「業務の最終確認を行います」

○走行中の装甲車・車内
   車内には正規戦闘員達が乗り込んでい
   る。助手席に大島。
   皆、耳に小さな無線のイヤフォンをし
   ている。
スズキ(声)「今回皆さんにお願いしたいの
 は、新潟港の六時間以上の占拠となります。
 ただし、その間、とある国と、クライアン
 トとの取引滞るようなことがあれば、引き
 続き占拠を続けてください」

○コーヒーショップ・オープン席
   ノートPCには装甲車内の映像。
   スズキ、画面を切り替えると車内後部
   ハッチ内映像。改造戦闘員・シヴァが
   電源ケーブルに繋がれ座っている。
スズキ「今回、シヴァOS搭載の改造戦闘員
 が一名同行しています」

○走行中の装甲車・後部ハッチ内
   重装備の戦闘スーツに、ヘルメットを
   かぶったまま、静かに座るシヴァ。
スズキ(声)「まだ試験運用中ですが、緊急
 事態、特にブレイブファイブが現れた際等、
 こちらの指示を待たず起動していただいて
 問題ありません」

○新潟港
   港を襲撃する、警棒を手にしたドノマ
   非正規戦闘員達。逃げまどう人々。
スズキ(声)「クライアントへのデモンンス
 トレーションも兼ねていますので」

○コーヒーショップ・オープン席
   オープン席のスズキ。
スズキ「以上です。よろしくお願いします」
   スーツ姿の人々が歩く通りに面したオ
   ープン席、スズキ、ノートPCを閉じ
   て、テイクアウトカップに口をつける。

○新潟港
港に入って来る装甲車を戦闘員が並ん
   で出迎える。
   装甲車から降りる、ツノのついたマス
   クの正規戦闘員達。大島もマスクを被
   って降りる。 
正規戦闘員A「なんだよ。もう終わっちまっ
 たのか」
非正規戦闘員C「はい。余裕っす」
正規戦闘員A「民間人、怪我させてねえだろ
 うな?」
非正規戦闘員C「大丈夫っすよ」 
   非正規戦闘員達の中の健太、ひねった
   首をさすっている。 
レッド(声)「そこまでだ!」
   大きな声が響く。
   声の方を振り返るドノマ戦闘員達。     
   首をさすりながら健太も振り返る。
   港の倉庫の屋根に並ぶブレイブファイ
   ブの五人。
グリーン「邪悪な企み、お見通し!知勇兼備
 ブレイブグリーン!」
ピンク「助けを呼ぶ声、聞き逃さない!勇気
 凛々ブレイブピンク!」
イエロー「拳は世のため、人のため!勇気百
 倍ブレイブイエロー!」
ブルー「平和を目指して突き進む!勇往邁進
 ブレイブブブルー!」
レッド「勇気の心で立ち向かう!勇猛果敢ブ
 レイブレッド!五人揃って」
全員「勇敢戦隊ブレイブファイブ!」
   倉庫の屋根、決めポーズの五人。
   正規戦闘員A、舌打ちしながら、
正規戦闘員A「毎度毎度うるせえ奴らだ」
   正規戦闘員A、助手席付近にいる大島
   に指示を出す。
正規戦闘員A「もうあれすぐ出すぞ!おい、
 そこのお前、起動させろ!」
大島「はい!」
   大島、ドアを開け、運転席にある起動
   装置を立ち上げる。
   ブレイブファイブ、倉庫の屋根から飛
   び降りる。
正規戦闘員A「シヴァが立ち上がるまで、あ
 いつらこっちに来させんじゃねーぞ!」
非正規戦闘員達「ヒー!」
   非正規戦闘員ら、マスクに内蔵された
   装置から、合成音声で奇声をあげる。
   ブレイブファイブに向かっていく戦闘
   員達。健太も向かっていく。 
   ブレイブファイブ、戦闘員達をなぎ倒
   す。 
   健太、ブレイブイエローに投げ飛ばさ
   れ、起き上がらず大人しく倒れている。
   装甲車、大島、起動装置を確認して、
大島「立ち上がりました!」
正規戦闘員A「よし開けろ!」
   戦闘員ら、装甲車の後部扉を開けよう
   とする。と、扉ごと吹き飛ばされる。
   後部ハッチからシヴァが降りて来る。
   戦闘員らと交戦中のブレイブファイブ、
グリーン「(シヴァをみて)あれはおそらく、
 国際戦時法で禁止されている改造戦闘員…
 …」
レッド「気をつけろみんな!ヤツはコンプラ
 なんて、御構い無しだ!」
   ブレイブピンク、戦闘員を一人蹴り飛
   ばして、
ピンク「私に任せて!」
   ブレイブピンク、積み上げられたコン
   テナの上に飛び乗る。
ピンク「ブレイブライフル!」
   腰につけたブレイブガンにライフルユ
   ニットを取り付けるブレイブピンク。
ブレイブピンク「……覚悟しなさい」
   ひざまずいて、スコープでシヴァの眉
   間に狙いを定めるブレイブピンク。
   シヴァ、逃げることなくブレイブピン
   クを睨みつける。
   ブレイブピンク、引き金を引く。
   シヴァのヘルメットが弾丸を弾く。
ブレイブピンク「!……そんな」
   空中に飛んでいるカメラ付きドローン。

○スズキの自宅・仕事部屋  
   株価のグラフのモニターがいくつか設
   置された仕事机。
   スズキ、机のノートPCで、ドローン
   の映像をモニターしている。
スズキ「フフ。改造戦闘員の弱点、頭を狙っ
 たまでははよく出来ましたが、それ故の強
 化ヘルメットですよ……」

○新潟港
   シヴァ、赤いレーザーを、ブレイブピ
   ンクにめがけて放つ。
ピンク「キャ!」
   ピンク、辛うじてかわす。
   レーザー、コンテナを切り裂く。
   ピンク、体勢を崩しながら地面に着地   
   する。
   レッド、ピンクに駆け寄る。
レッド「大丈夫か?」
ピンク「……大丈夫、ちょっと足を、ひねっ
 ただけ」  
   シヴァ、ピンクに向かって走り出す。
グリーン「あいつ、ピンクを狙ってる!」
ブルー「させるか!」 
   ブレイブグリーン、ブレイブブルー、
   シヴァに飛びかかる。
ブルー「うわ!」
グリーン「ああ!」
   跳ね飛ばされるブルーとグリーン。
レッド「このおお!」
   ブレイブレッド、シヴァに突っ込んで
   いく。
レッド「うわわー!」
   レッドもシヴァに跳ね飛ばされる。
   倒れている健太、戦闘を眺めながら、
健太「すげぇ……(囁く)」
   シヴァ、鎌のような武器を背中から抜
   き、ピンクめがけて突進する。
   ピンク、立ち上がり損ねる。
ピンク「キャー!」
   ブレイブイエロー、ピンクの前に立ち、
   シヴァの鎌を体を張って止める。 
イエロー「くぅ……」
ピンク「イエロー!」
   イエロー、シヴァに頭突きをかます。  
ブレイブイエロー「せいや!」
シヴァ「!」
   シヴァ、鎌を離して、うずくまる。
   イエロー、体から鎌を引き抜き、片膝
   をつく。ピンク、イエローに駆け寄り、
ピンク「大丈夫?」
イエロー「……みんなのところへ」 
   ブレイブピンク、イエローに肩を貸し、
   うずくまっているシヴァの元から逃げ、
   レッド、ブルー、グリーンの元へ。
   集まる五人。
レッド「大丈夫かイエロー」
イエロー「……レッド、あいつをやるには、
 ブレイブミサイルしかねぇ……」
グリーン「でも、あれは、国際戦時法で人間
 に使うことは禁止されている……」
イエロー「あいつはもう、人間じゃねえ……
 兵器だ!」
ブレイブブルー「どうするレッド?」
ブレイブレッド「……よし、いくぞみんな!
 ブレイブアセンブルだ!」
   ブレイブファイブ、五人それぞれ、腰
   元のブレイブガンを構える。
ブレイブファイブ「ブレイブアッセンブ
 ル!」
   五人、ブレイブガンを組み合わせる。
ブレイブファイブ「完成ブレイブミサイ
 ル!」

○スズキの自宅・仕事部屋  
   スズキ、ノートPCをみながら、
スズキ「まずい……」

○新潟港
   正規戦闘員Aにスズキから無線が入る。
スズキ(声)「彼らも国際戦時法違反を犯す
 ようです。シヴァの強化スーツには多大な
 コストがかかっています!非正規戦闘員達
 を、シヴァの盾にしてください!」
正規戦闘員A「……了解です」
   正規戦闘員A、辺りの倒れている戦闘
   員に向かって、
正規戦闘員A「おいお前ら!死んだフリして
 んじゃねえ!起きろ!」
   倒れている戦闘員を蹴利上げる正規戦
   闘員A。健太も蹴られる。
健太「くぅ!……」
   皆、起き上がらない。
   ミサイルの狙いを定めるブレイブファ   
   イブ。  
   うずくまっているシヴァ、頭を抑えて
   また立ち上がれない。
   正規戦闘員A、ブレイブファイブをみ
   て、
正規戦闘員A「……くそ」
スズキ(声)「正規戦闘員でもいい!シヴァ
 を守らせるんだ!あなた達が盾になれば、
 彼らも打つのをためらうはずです!」
正規戦闘員A「……お前ら行くぞ!」
正規戦闘員達「ヒー!」 
   合成音声で叫び、シヴァの元に走る正
   規戦闘員達、大島も走る。
   ミサイルを構えるブレイブファイブ、
ブレイブピンク「お願い!来ないで!」
ブレイブイエロー「早く撃て!レッド!俺は
 もう……そんなにもたねえぞ」
ブレイブレッド「……ブレイブミサイル、シ
 ュート!」
   発射されるブレイブミサイル、シヴァ
   の命中し、爆発する。
   数名の戦闘員、爆発に巻き込まれる。
   大島も巻き込まれ、吹き飛ぶ。
   健太、爆風を手で防ぐ。

○スズキの自宅・仕事部屋  
   スズキ、机を叩き、
スズキ「クソ……」
   ノートPCに、通信が入った表示。
   スズキ、通信に出て、
スズキ「……申し訳ありません」

○新潟港
   ブレイブミサイルを構えるブレイブフ
   ァイブ、イエロー、倒れる。
ピンク「イエロー!」
   イエローの周りに集まるブレイブファ
   イブ。
   爆心のシヴァは黒焦げ。
   周囲の炎の中に、倒れている数名の正
   規戦闘員。
   健太、炎の中に、マスクが破れ、倒れ
   ている大島をみつける。
健太「大島さん!」
   健太、大島に駆け寄る。
   コンテナに隠れている正規戦闘員A。
   スズキから通信が入る。
正規戦闘員A「……はい」
スズキ(声)「クライアントは今回の取引は
 中止するようです。皆さんも速やかに撤収
 してください」
正規戦闘員A「……了解です」 
   正規戦闘員A、腰元の銃を空に向けて
   打つ。白煙が吹き上がる。
   白煙に振り返るブレイブグリーン、
グリーン「停戦のサインだ……」
   ピンクの膝に頭を乗せ、横になってい
   るイエロー、上半身から大量の出血。
レッド「イエロー、やったぞ」
イエロー「……へへ」
   観光バス、港の敷地に入ってくる。
   健太、倒れている大島をゆすって、
健太「大島さん!大島さん!」
   健太に近づく非正規戦闘員、
非正規戦闘員D「本名そんな大声で叫んでん
 じゃねえよ!とりあえずバスに運ぶぞ!」
   健太と非正規戦闘員D、大島を抱え観
   光バスに向かう。

   ×    ×    ×   

   ブルーとレッド、撤収していくドノマ
   戦闘員達を眺めて、
ブルー「ちくしょう。戦時法破った奴らを、
 コンプラ遵守で追うななんて……」
レッド「俺たちだって破った。これ以上、犠
 牲を出す意味はない」 
   ピンクの膝でイエロー、苦しそうに、
イエロー「……その通りだ」
ピンク「喋っちゃだめ!もうすぐ救護車が来
 るから。苦しかったからマスクを……」
   ピンク、イエローのマスクを取ろうと
   手をかけるが、イエローは首を振る。 
イエロー「やめてくれ……てめえの不細工面、
 今は晒したくねえ。ブレイブイエローのま
 ま、逝かせてくれねえか……」 
ピンク「イエロー……」
イエロー「なぁピンク、一つ頼みがある。い
 つも優しく励ましてくたあんたの顔、最後 
 に見せてくれねえか……」
ピンク「……」
   ピンク、マスクの後ろに手を回す。
レッド「(ブルー、グリーンに)おい……」
   レッド、ブルー、グリーン、ピンクと
   イエローを背にして周りに立つ。
   ピンク、マスクを取る。
   ブレイブピンクの素顔は幸枝。
   イエロー、幸枝をみつめて、
イエロー「……ホント悪かったな。あんたみ
 たいな綺麗な人、戦わせちまってよ……」
   生き絶えるブレイブイエロー。
   幸枝、涙をこぼす。
幸枝「イエロー……」
   周りを取り囲むレッド、ブルー、グリ
   ーン、うつむく。

○観光バス・車内
   マスクを外され、席に座らされた大島。
   傍らの健太、
健太「大島さん……」
   入り口から救護係の正規戦闘員Bが入
   って来て、
正規戦闘員B「ヤベー奴いるか!救護車、ま
 だ少し乗れるぞー」
   健太、手を上げて、
健太「すいません!こっちに!」
   正規戦闘員B、健太の元にやって来て、
   大島の様子をみる。
健太「救護車に移した方がいいっすよね!」
正規戦闘員B「……バカかお前。こいつはも
 う死んでる」
健太「……」
   健太の元から歩き出す正規戦闘員B。
正規戦闘員B「ヤバい奴は救護車移れよー」
   身もふたもない大島の死に顔。 
   健太、大島の顔を呆然とみつめる。

○スナック母龍夢・外観(日替わり、昼)
   マイクのイラストが描かれた看板。

○同・店内
   カウンター、ノシ紙が添えられた小さ
   な胡蝶蘭の鉢が、いくつか並べられて
   いる。
ノシ紙「祝マイマイ生誕祭!」
   幸枝、胡蝶蘭の鉢を一つ整えて、
幸枝「これは、私とお父さんから」
   幸枝の隣、ジャージ姿の妹尾舞
   (17)、アイスをくわえながら、
舞「ありがとユキ姉」
幸枝「こっちこそありがとう。こんなにたく
 さん注文取ってくれて。これみんな、地下
 アイドルやってた頃の、ファンの人?」
舞「そ。今日来れない人にも、花だけでもユ
 キ姉んとこで頼んでってお願いしといた」
幸枝「……ありがたいけど、舞、お店でお酒
 とか、もう飲んでないよね?」
舞「飲んでないよ。それは母さんに言ってよ。
 医者に止められてんのにさ……」
   幸枝、力なく微笑む。
   舞、幸枝の足をみて、
舞「てか、ユキ姉、足、引きずってるけど大
 丈夫?」
幸枝「え?ああ。大丈夫。これは全然大した
 ことないから」
舞「……あたしは、可愛くなかったからアイ
 ドル辞めてもしょうがなかったけど、ユキ
 姉はさ、怪我がなかったら、オリピック目
 指せたのにね」
   幸枝、胡蝶蘭の鉢を整えながら、
幸枝「……舞こそ、バトミントン続けてれば、
 私より全然上行けたよ」
   舞、アイスをかじりながら、
舞「無理だよ。あんなに練習したくないし。
 それにあたし、頭悪すぎて推薦取れなかっ
 たしさ。学費、まともに払ったら、めちゃ
 高だしさ」
   幸枝、小さなため息をついて、誕生日
   祝いのノシ紙を整える。

○ドノマ北関東支部・会議室
   素っ気ない会議室。
   スズキと向かい合う健太。
   スズキ、健太がサインした書類をみて、
スズキ「……今日、誕生日じゃないですか」
   健太、書類にサインしながら、
健太「……はい」
スズキ「おめでとうございます。では次はこ
 ちらの書類にもサインを……」
   健太、新たにスズキに渡された書類に
   サインする。
   ×    ×    ×
   スズキ、書類を確認しながら、
スズキ「保険金の受け取りは、殉職された大
 島戦闘員のご家族、内縁の奥様で、本当に
 よろしいんでか?」
健太「はい」
スズキ「ご自身のご家族には?」
健太「……母しかいませんが、どこにいるか
 も分からないんで。それで大丈夫です」
スズキ「分かりました。では改造手術は来週
 早々に行います。手術まで体を休めて、体
 調を整えておいて下さい。厳密には、手術
 後から正規扱いなので、それまでは、まだ
 非正規なんですが、手術の前日まで、特別
 に有給休暇とさせていただきます」
健太「……ありがとうございます」

○フラワーショップたちばな・店前(夕)
   店前、黄色い花に水が撒かれている
   幸枝、店前の花に水をあげている。
健太(声)「あの」
   振り返る幸枝、
幸枝「あ、どうも」
健太「……どうも」
幸枝「(微笑んで)先輩の彼女さん、喜んで
 くれました?」
健太「……俺は、会えてないんで」
幸枝「……そっか。そうですよね」
健太「あ、でも喜んでくれたと思います。綺
 麗だったんで……」
幸枝「……ありがとうございます」
健太「……あの」
   健太、尻から財布を出し、千円札を差
   し出して、
健太「千円とかでも、お願い出来ますか?そ
 の花だけでもいいんで」 
   健太、ピンクのトルコキキョウを指す。
   幸枝、微笑んで、
幸枝「もちろん」
   ×    ×    ×
   幸枝、ピンクのトルコキキョウの小さ
   な花束を健太に差し出す。
幸枝「お待たせしました」
健太「……ありがとうございます」
幸枝「どなたの誕生日なんですか?今日は、
 ご自分の彼女さんですか?」
健太「(微笑んで)いえ。僕のです」
幸枝「え……」
健太「いい誕生日になりました。じゃあ」
   健太、振り返って歩き出す。
幸枝「あの」 
   健太、立ち止まり、幸枝に振り返る。
幸枝「……カラオケ、行きませんか?」

○スナック母龍夢・外観(夜)
   電気のついた看板。
舞(声)「これからもどうぞよろしくね♪」

○同・店内
   マイクを手に歌っている舞。
   ペンライトを振って手拍子する客達。
   客に混じって幸枝と健太もいる。
   カウンター内、舞の母、君香(36)、
   煙草を吸いながら、焼酎の水割りを飲
   んでいる。
   ×    ×    ×  
   マイクを手に歌っている君香。
君香「ひとつ曲がり角、ひとつ間違えて、曲
 がり角くねくね~♪」
   手拍子する客達。
   ソファに健太を挟んで座る舞と幸枝、
   カラオケの音楽に負けぬよう大声で、
舞「(健太に)ユキ姉おすすめだよ!ちゃん
 と化粧すれば美人だから!」
幸枝「ちょっとやめてよ!」
舞「(健太に)お兄さんもなんか歌ってよ」
   健太、舞に歌本を無理やり渡される。
   ×    ×    ×  
   マイクを手に歌っている健太。
健太「ほーら、あなたにとって大事な人ほど
 すぐそばにいるの♪」
   結構上手い健太。盛り上がる店内。
   幸枝、笑顔で手拍子している。
   舞、幸枝の耳元で、
舞「ユキ姉って昔からああいう、ちょいダサ
 めな人、好きだよね」
幸枝「うるさいな!そんなんじゃないだって」

○同・店前
   店の前、健太と幸枝、見送る舞。
   健太の手には小さな花束。
舞「ありがとねユキ姉」
幸枝「ううん楽しかった。おめでとう」
舞「ありがとう(健太に)宮本さんもおめで
 とう。ごめんね。ここ主役私で」
健太「いえ。おめでとうございます。ほんと
 楽しかったです。ありがとうございます」
舞「ユキ姉よろしくね。ほんとおすすめだか
 ら」
幸枝「ちょっと!」
健太「……」
   君香、千鳥足で外に出てくる。
君香「二人とも、もう帰っちゃうのお?」
幸枝「君香さんごめんなさい。明日もお店だ
 し」
君香「大丈夫よお。お店は勲さんに、任せと
 けばさぁ……」
   舞、君香を店の中に押し込んで、
舞「もう、母さんいいから。気効かせてあげ
 なよ(健太と幸枝に)じゃあね。おやすみ」
   舞、ニヤニヤしながら君香と一緒に店
   に入る。 
健太・幸枝「……」

○駅裏商店街
   並んで歩く健太と幸枝。
   二人とも、ほんのり顔が赤い。
幸枝「……宮本さん、歌、上手ですね」
健太「いや、そんなことないっす。立花さん
 こそ……上手でした」
幸枝「絶対ウソだ」
健太「……すいません」
幸枝「いいんです。私は聴いてる方が好きだ
 し」
健太「……あの、また今度カラオケ一緒に行
 きませんか?」
幸枝「えー……」
健太「あ、すいません……調子乗りました」
幸枝「ミスチルの花、歌ってくれます?」
健太「え?」
幸枝「私がさっき、全然歌えなかったヤツ。
 歌ってくれるんなら、行きます」
健太「練習しときます!」
   花屋の前まで来る二人、立ち止まる。
幸枝「……じゃあ、ここで」
健太「……ありがとうございました。本当に、
 最高の誕生日になりました」 
幸枝「よかったです……あ、お花、ペットボ
 トルに入れて、水をこまめに変えれば結構
 持ちますから」
健太「あ、分かりました。ちゃんと水、変え
 ます」
幸枝「……じゃあ、また」
健太「……はい、また」
   立ち止まっている二人。
幸枝「……」
健太「……あ、連絡先」
   健太、慌ててスマホを出す。
   幸枝、微笑みながら、
幸枝「……もう。遅いですよ」
   幸枝もスマホを出す。
健太「すいません……」
   スマホを出し合って、SNSを交換す
   る健太と幸枝。 
   
○ドノマ本部・手術室前(日替わり)
   高い天井、リノリウムの床。
   手術室の自動扉の前、廊下に置かれた
   椅子に座る手術着の健太。
   健太は、Bluetoothイヤフォンをつけ、
   スマホでミスチルの花を聴いている。
   スマホの待ち受けには、窓辺に置かれ
   たペットボトルに挿したたトルコキキ
   ョウ写真。
   自動扉が開き、スズキが出て来る。
スズキ「お待たせしました」  
   健太、イヤフォンを外す。
   スズキ、手を差し出して、
スズキ「私物はこちらでお預かりします」
   健太、立ち上がって、スマホとイヤフ
   ォンをスズキに渡しながら、   
健太「……あの、新しい今度のOS、本当に、
 日常生活に、そんなに支障、ないんすよ
 ね?」
スズキ「はい。今回のブラフマーOSは、シ
 ヴァOSに比べ、格段に人体に与える影響
 は少なくなっています」 
健太「……声も大丈夫ですか?」
スズキ「声?」
健太「……歌、ちゃんと歌えますか?」
   スズキ、微笑んで、
スズキ「……問題ありません。さあ行きまし
 ょう」

○フラワーショップ(日替わり)
   店内の花を整理しながら、幸枝と勲。
幸枝「え!舞が?」
   幸枝、作業する手が止まる。
勲「ああ。本人の強い希望もあったし、指導
 部でも、全会一致で決定した」
幸枝「そんな!あの子まだ十七になったばっ
 かりだよ!」
勲「お前だって十八から戦っている」
幸枝「そうだけど……」
勲「……君香さん、今の病院じゃ、手術は出
 来ないそうなんだ。もっと大きい病院に入
 院しないとダメらしい」
幸枝「それで?それで舞が自分から……」
   勲、作業の手を止め、幸枝を見据え、
勲「幸枝。平和を守るためには、誰かが戦わ
 なければならない。その誰かが、舞ちゃん、
 そしてお前なんだ」
幸枝「……」
   幸枝、唇を噛み締める。
勲「……三日後、鹿島の新規原発予定地をド
 ノマが襲撃するとの情報が入った。舞ちゃ
 んの初出動になる。しっかり頼むぞ」

○荒野
   原発反対の看板がいくつも立っている
   原発予定地。
   捲き上るブレイブミサイルの爆炎。
   改造戦闘員・ブラフマーの健太、ボロ
   ボロになりながらも、棍のような武器
   を手に、爆炎の中からゆっくり歩いて
   くる。
健太「オオシマサン……」
   合成音声で呟くブラフマー健太。
   ブレイブミサイルを放った後のブレイ
   ブファイブ、
ピンク「まだ生きてる……」
グリーン「ブレイブミサイルをもう一発打つ
 にはエネルギーが足りない!」
ブルー「どうするレッド?」
レッド「……」
   薄れていく爆炎。地面には巻き添えを
   食らったドノマ戦闘員達が倒れている。
   空中を飛んでいるドローン。

○スズキの自宅・仕事部屋  
   机の上のノートPC、ブラフマー健太
   のドローン映像を映している。
スズキ(声)「お粗末なスーツでも、持ち堪
 えたましたか……」
   スズキ、満足そうに、
スズキ「身体能力の向上は、シヴァとは段違
 い。人間一人で済む分、コストパフォーマ
 ンスもいいですね」

○荒野
   二代目ブレイブイエローとなった舞、
イエロー「みんな、あそこをみて!」 
   イエロー、ブラフマーのヘルメットの
   亀裂を指す。
ブルー「あの亀裂を狙えばいけるかも!」
グリーン「たぶんこの改造戦闘員の弱点も、
 きっと頭だ!」
レッド「よし」
   レッド、ブレイブピンクの幸枝に、
レッド「俺たちがなんとかあいつを足止めす
 る。その間にピンク、ライフルであの亀裂
 を撃ち抜くんだ」
ピンク「……分かった」
   ブラフマーに向かっていくレッド、ブ
   ルー、グリーン。
   ピンク、走り出すイエローに、
ピンク「舞!」
   振り返るイエロー。
ピンク「……無茶しないでね」
イエロー「大丈夫大丈夫。ユキ姉こそ、しっ
 かり頼むよ!」
   ブラフマーに向かっていくイエロー。
   ×    ×    ×   
   ブラフマー、棍でレッド、ブルー、グ
   リーンを叩きつける。
   ブラフマー、イエローに向かっていく。
   ブレイブライフルを構えたピンク、
ピンク「舞!」
   イエロー、ブラフマーの棍を避け続け、
   大声で叫ぶ。
イエロー「ユキ姉、目瞑って!」
   ピンク、目を閉じる。
イエロー「ブレイブスタン!」
   イエロー、ブラフマーにスタングレネ
   ードを放つ。眩しい光と激しい音。
   ブラフマー、膝をつく。
   ピンク、激しい音の中、目を開け、
ピンク「やるじゃない舞!」
   ピンク、ブラフマーの頭に狙いをつけ、
   引き金を引く。 
   ブラフマー健太の頭部を、弾丸が撃ち
   抜く。倒れる健太。
イエロー「やったー!」 
   
○スズキの自宅・仕事部屋  
   スズキ、ノートPCをみながら、
スズキ「……撤収してください」

○荒野
   茂みに隠れている正規戦闘員A、
正規戦闘員A「……了解です」
スズキ「ブラフマーOSの良い実戦データが
 取れました。ブラフマーの死体の回収も、
 お忘れなく……」
正規戦闘員A「了解しました」
   正規戦闘員A、腰元の銃を空に向けて
   打つ。白煙が吹き上がる。
   健太、反応することなく倒れている。

○駅裏の商店街通り(夜)
   並んで歩いている私服姿の舞と幸枝。
   幸枝、ほんのりピンク、舞、ほんのり
   黄色を使ったコーディネイト。
幸枝「……疲れた?」
舞「そうだね。やっぱ、訓練とは違うねー」
幸枝「……君香さん、新しい病院、移れたん
 だってね」   
舞「うん……」

○スナック母龍夢・店前
   店の前で立ち止まる舞と幸枝。
舞「……あのさ、ユキ姉」
幸枝「?」
舞「私は母さんのためにブレイブファイブに
 なったけど、ユキ姉は、どうしてブレイブ
 ファイブになったの?」
   幸枝、ぼんやりとした表情。
幸枝「……どうしてだろ」
舞「……ごめん!変なこと聞いちゃったね。
 あ、宮本さん、会ってる?」
   幸枝、少し笑って首を振る。
幸枝「……メールはしてるけど。仕事が忙し
 いみたいで」
舞「もう少し積極的に行った方がいいよ。二
 人、いい感じだったよ」
   幸枝、控えめに微笑む。  

○フラワーショップたちばな・店前
              (日替わり)
   スマホ画面、SNSで送られ健太から
   の写真。窓辺に置かれたペットボトル
   に挿したたトルコキキョウ写真。
   健太からのメッセージ、
メッセージ「(健太)今日もキレイに咲いて
 います」
   幸枝、メッセージを打ち込む。
メッセージ「(幸枝)そろそろお水変えてく
 ださいね」
   幸枝、スマホをしまう。
   店前の花々に水をやる幸枝。
   水に濡れるピンクのトルコキキョウ。                  
                 END   
 

「非正規戦闘員ケンタの休日」(PDFファイル:425.58 KB)
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