ヒーローはこの胸にいる ドラマ

ヒーローショーでスーツアクターの仕事をしている寺岡大翔は、自分に対する自信を失っていた。そんなある日、ヒーロー大好きないじめられっ子・岩崎空也と出会い、ヒーローとしての自信と誇りを取り戻していく。
菅原奏樹 177 4 2 03/05
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第一稿

『ヒーローはこの胸にいる』

・登場人物
 寺岡 大翔(ひろと)(27)……売れないスーツアクターの青年。
 岩崎 空也(10)……いじめられっ子の少年。
 佐野 浩太 ...続きを読む
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『ヒーローはこの胸にいる』

・登場人物
 寺岡 大翔(ひろと)(27)……売れないスーツアクターの青年。
 岩崎 空也(10)……いじめられっ子の少年。
 佐野 浩太(27)……有名なアクション俳優。
 男性1
 男性2
 女性客
 男子1〜3
 女子1〜3
 講師
  
◯ デパート・屋上
  ヒーローショーが行われている。
  ステージ上で怪人達と戦うヒーロー・イナカイザーの姿。
  まばらな観客の中に、岩崎空也(10)がいる。
  空也、食い入るようにショーを見ている。
  ステージ上、イナカイザーのスーツを着た寺岡大翔(27)がアクションしている。
大翔(M)「俺はヒーローなんかじゃない。
イナカイザーの声「喰らえ! イナカショット!」
大翔(M)「手からビームは出ない」
イナカイザーの声「イナカフライ!」
大翔(M)「空も飛べない」
イナカイザーの声「イナカブラスター!」
大翔(M)「必殺技も出ない」
  怪人、舞台袖にはけていく。
  ステージの中央に立つイナカイザー。
イナカイザーの声「もう大丈夫だ、子供たちよ! 悪は必ず、この私が倒す! なぜなら私は——」
大翔(M)「俺は——」
イナカイザーの声「——ヒーローなのだから!」
大翔(M)「——ヒーローなんかじゃない」
  突っ立ったままのイナカイザー。
  客が怪訝そうに小声で話し始める。
  きょとんとしている空也。
  イナカイザー、ハッとなりポーズをとる。
  観客たち、バラバラと帰っていく。
  一人残り、拍手している空也。

◯ タイトル【ヒーローはこの胸にいる】

◯ 更衣室
  怪人役のスーツアクターたちが着替えている。
  そこへ入ってくる、イナカイザーのスーツを着た大翔。
男性1「おい大翔、最後のなんだよあれ」
  男性1、イナカイザーのスーツに手をかけ、背中のファスナーを下ろしてやる。
大翔「あぁ、すみません……」
男性2「しっかりやれよ。もう素人じゃねえんだから」
大翔「うっす……」
  大翔、スーツを脱ぐ。
男性1「ま、ロクに見てる客はいないけどな」
男性2「だよなー。やっぱスタントの方が割良いっしょ」
男性1「そうだよな〜」
  男性二人、ロッカーにスーツをしまう。
男性1「んじゃ、俺ら先帰るわ」
男性2「お先ー」
大翔「あぁ、お疲れっす」
  男性二人が出ていく。
  部屋に一人残った大翔。
  イナカイザーのスーツをじっと見つめる。

◯ コンビニ(夜)
  コンビニの制服を着ている大翔。
  レジに立ち、一人の客の会計を終える。
大翔「ありがとうございましたー」
  続けて次の女性客がレジの前に立つ。
  女性客、レジに缶コーヒーと雑誌を置く。
大翔「大変お待たせいたしました……っ」
  大翔、雑誌の表紙を目にし、ハッとなる。
  そこには、『アクション俳優・佐野浩太(27)、人気モデルと結婚へ!』という見出しが書かれている。

◯ 養成所(回想・8年前)
  19歳の大翔、ジャージを着て稽古をしている。
  その相手は、同じく19歳の頃の佐野浩太。
  互いに真剣、かつ楽しそうに組み合う大翔と浩太。
  そこへ、厳つい講師が近づき、
講師「お前ら! いつまでやってんだ!」
大翔「あ、やべっ!」
浩太「あ、ばかっ!」
  浩太、大翔に飛び蹴りを放つ。
  大翔、慌ててそれを避ける。
  バランスを崩しつつも、華麗に回転して勢いを殺し、ポーズを決める浩太。
大翔「おぉ〜」
  軽く拍手する大翔。
  ドヤ顔を見せる浩太。
  そこで、講師が強く咳払いする。
  大翔と浩太、そそくさと出口へ向かう。

◯ 住宅地
  稽古帰りの大翔と浩太。
大翔「いやぁ、あの着地は見事だったなぁ〜」
浩太「お前が変なタイミングで止まらなけりゃあ、もっとカッコ良かったんだよ」
  大翔を小突く浩太。
大翔「(笑いながら)わりぃわりぃ」
浩太「ったく」
  並んで歩く二人。
大翔「なぁ」
浩太「ん?」
大翔「俺もあんぐらいできるようになるかな?」
浩太「……そりゃ、努力次第だろ」
大翔「だよな」
  歩き続ける二人。
大翔「っしゃあ!」
浩太「(驚いて)なんだよ急に」
大翔「絶対アクション俳優なるぞ! んで海外行って、美人女優とイチャコラするぞー!」
浩太「目的それかよ!」
大翔「じゃあしたくないのか? 美人女優とイチャコラ」
浩太「(息を吸って)したいに決まってんだろー!」
  爆笑する二人。
  笑いながら並んで歩いている。

◯ コンビニ(回想明け)
  雑誌を持ったままの大翔。
  女性客が不機嫌そうに大翔を見る。
  大翔、ハッとなって、バーコードを読み取る。
大翔「お、お会計……1324円です」
  女性客が財布の中を見る。
  大翔、雑誌をちらりと盗み見る。
  表紙には、写りの良いポーズを決めた浩太が写っている。

◯ ボロいアパート・外観

◯ 同・大翔の部屋
  散らかった部屋。
  うつ伏せになって布団に転がっている大翔。
  上半身には、寝巻きにしているイナカイザーTシャツを着ている。
  スマホの目覚ましがなる。
  大翔、顔を上げず腕だけ伸ばし、スマホを探す。
  やがてスマホを掴み、アラームを止める。
  のっそりとスマホを見る大翔。
  画面には、『6月17日(日)』と書かれている。
  ゆっくりと起き上がる大翔。
  ふと、外から子供の喧騒が聞こえてくる。
  大翔、気にせず台所へ向かう。
  食器棚からグラスを取る大翔。
  外からの喧騒が大きくなる。
  大翔、水を出し、グラスに注ぐ。
  グラスを口につけ、水を口に含む。
  さらに大きくなる外からの喧騒。
  大翔、思わず水を吹き出してしまう。
  むせる大翔。
大翔「だぁもう! なんなんだよさっきから!」
  ズンズンとドアへ向かう大翔。

◯ 公園
  空也、イナカイザーの人形を握りしめ、男子三人に囲まれている。
  三人組、野球をするような格好をしている。
男子1「おい岩崎、お前今なんて言った?」
空也「だから……あ、あの子たちが遊べないじゃん、って……」
  空也、少し離れたところにいる女子三人組を見る。
  女子三人、男子グループを怖がって近づいてこない。
男子2「なんだよお前、女子の味方すんのかよ」
空也「そういうわけじゃ……」
男子3「あ、見ろよ!」
  男子3、空也の手からイナカイザーの人形を取り上げる。
空也「あっ!」
男子3「こいつまだこんなん見てんの!」
男子1「あははっ! だっせー!」
男子2「あはははっ!」
  バカにするように笑う男子三人。
  空也、イナカイザーの人形に手を伸ばす。
空也「か、返してよ!」
  が、掴まれないように避ける男子3。
  空也、男子1に突き飛ばされる。
  尻餅をつく空也。
  男子2がプラスチックのバットを振り上げる。
  思わず目を瞑る空也。
  男子にがバットを振り下ろす!
  その時、
大翔「おいこら。これ人を殴るもんじゃねーだろ」
  空也と男子2の間に立ち、バットをつかんでいる大翔。
  空也、驚いた顔で大翔を見る。
  たじろぐ男子三人組。
男子1「な、なんだよこのおっさん……?」
大翔「おっさ!?」
  頭にきた大翔、男子1からバットを取り上げる。
  そして数歩下がり、バットを置く。
  突然、その場でアクションを始める大翔。
  (冒頭のヒーローショーで行なっていたのと同じ動き)
  それを見てハッとなる空也。
  ポカンとしている男子三人組。
  一通りアクションした大翔、ドヤ顔で額を拭う。
大翔「どうだ! こんだけキレッキレの動きする奴がおっさんか? あ!?」
  集まってひそひそと話す男子三人組。
男子1「どうする?」
男子2「なんかやばいのきちゃったよ」
男子3「帰ろうぜ」
  頷き合う男子三人。
  顔を上げ、一気に公園の外へ向かって走り出す。
大翔「あ、おいバット!」
  あっという間に逃げていってしまう男子三人組。
  困った様子の大翔、ふと振り返る。
  目が合う大翔と空也。
空也「あっ……」
大翔「あー……このバット、あいつらに会ったら渡しといて」
  空也にバットを渡す大翔。
  そのまま空也の横を通り過ぎ、帰ろうとする。
  その背中に声をかける空也。
空也「イ、イナカイザー!」
  大翔、ビクッと立ち止まる。
  首だけ振り返ると、生き生きとした様子の空也と目が合う。
空也「やっぱりそうだ!」
大翔「は?」

◯ 駅前
  通りを歩いている大翔。
  その後ろにくっついてくる空也。
空也「ねぇ、お兄さんやっぱりイナカイザーなんでしょ!?」
大翔「いや、俺は……」
空也「イナカイザー。ヒーローものなのに、今だに人間態が登場していない……でも、元は人間だって言う説もあって」
大翔「あー、そういやそんな設定だったっけ?」
空也「お兄さんが、その人間態なんでしょ!? 僕わかったよ!」
大翔「いやだから……」
空也「あの動き! あれはイナカイザーの動きだもん! 隠したってダメだよ!」
大翔「あー……」
  道行く人々が大翔と空也を盗み見る。
  時折、くすくすと笑う人々。
  軽く眉間を抑える大翔。
  振り返り、空也を見下ろす。
大翔「あのなぁ? 俺はイナカイザーじゃなくて、ただの中の人で  」
空也「あっ!」
大翔「あ?」
  空也、大翔の背後を指差す。
  その指を目で追う大翔。
  視線の先には、重そうな荷物を背負った老婆が歩いている。
空也「あのおばあさん、大変そう」
大翔「そうだな……で、話の続きだけど」
空也「助けなきゃ!」
大翔「聞けよ俺の話!」
  空也、大翔の体を押す。
空也「ほら、こんな時こそヒーローの出番だよ!」
大翔「いや、だから俺は……」
  空也に押され、たじろぐ大翔。
大翔「ああもう!」

◯ 住宅地
  背負った老婆を下ろす大翔。
老婆「どうもありがとうねぇ」
大翔「ああいえ、俺は別に……」
空也「おばあさん、これからも困ったらなんでも言ってね! このお兄さんヒーローだから!」
大翔「ばっ!」
  大翔、慌てて空也の口を押さえる。
  その様子を微笑ましそうに見ている老婆。
老婆「あらそう。じゃあ、今度もまたお願いしようかしら、ヒーローさん?」
大翔「え? あー、まぁ……ご自由に? じ、じゃあ、俺はこれで」
  空也を押さえたままその場を後にする大翔。
  空也、老婆に手を振る。
  手を振り返す老婆。

◯ 繁華街
  早足で歩く大翔。
  その後ろを追う空也。
  大翔、振り返り、
大翔「あのな、もういいだろ? ヒーローごっこは終わりだって」
  立ち止まる空也。
空也「……終わってないよ」
大翔「は?」
空也「お兄さんは、ヒーローじゃなくてもヒーローだもん!」
  まっすぐに大翔を見上げる空也。
  その時、空也の脳裏にヒーローショーをやっていた時の光景が蘇る。

◯ デパート・屋上(回想)
  イナカイザーのヒーローショーが行われている。
  アクションし、客席の方を向くイナカイザー(を着た空也)。
  客席の中央で、食い入るように見ている空也。
  空也、心底楽しそうな様子。

◯ 繁華街(回想明け)
  空也、大翔を見上げる。
  フッと笑う大翔。
大翔「……はっはっは! やはり誤魔化せなかったか。そう! 私こそが君の応援していたヒーロー、イナカイザーなのだ!」
空也「っ! やっぱり! だから言ったんだ! 絶対お兄さんがそうだって!」
大翔「ふふ、君は鋭いな」
  半ばヤケクソ気味に演技する大翔。
  嬉しそうに笑う空也。
  大翔、それを見てつられて笑顔になる。
大翔「よし! それではパトロールと行こうか!」
空也「おーっ!」
  走り出す二人。

◯ 商店街
  ポケットティッシュを配っている女性がいる。
  が、なかなか受け取ってもらえていない。
  そこへ現れる大翔と空也。
大翔「ちょっと失礼」
女性「え?」
  大翔、ポケットティッシュを受け取り、その場でアクロバティックなアクションを見せる。
  道行く人々が足を止め、大翔を見る。
  大翔、華麗にポーズを決める。
  拍手を送る群衆。
  大翔、そこでポケットティッシュを差し出す。
  群衆の人々、ポケットティッシュを受け取ってから歩き出す。
× ×     ×
女性「あ、ありがとうございます!」
大翔「いえいえ」
空也「これからも、困ったらヒーローに任せてね!」
  キザに去って行く大翔。
  その後について行く空也。
女性「はい! ……ヒーロー?」

◯ デパート
  泣いている子供の手を引いて歩く大翔と空也。
  子供の母親が駆け寄ってくる。
  抱き合う子供と母親。
  大翔と空也、嬉しそうに顔を見合わせる。

◯ 公園
  日が暮れ始めている。
  疲れた様子でやってくる大翔。
  その後ろから、楽しそうな様子の空也が着いてくる。
大翔「ふぅ、今日はこんなところか」
  ベンチにもたれかかる大翔。
空也「でも、さすがヒーローだったよ! みんな喜んでたもん!」
  キラキラした顔で大翔を見る空也。
  大翔、それを見て柔らかく笑う。
  立ち上がる大翔。
大翔「さぁ、もう日が暮れる。君も家に帰るんだ」
空也「うん……」
  少し落ち込んだ様子の空也。
  大翔、不思議そうに空也を見る。
大翔「ど、どうしたんだい?」
空也「あ、あのさ……」
  空也、バッと顔を上げる。
空也「あ、明日の放課後も、また一緒にパトロールしてくれる?」
大翔「へ?」
  間抜けな声を出す大翔。
  空也、不安そうに大翔を見上げる。
  大翔、優しく微笑み、
大翔「ああ、わかった。約束だ」
  小指を差し出す大翔。
空也「っ! うん! 約束!」
  小指を絡め、指切りをする空也。

◯ 住宅地
  マンションの前で手を振っている空也。
  空也に手を振り返す大翔。
  空也、マンションの中へ入って行く。

◯ 大翔の部屋
  暗くなった部屋。
  大翔、ベッドに寝転がる。
  脳裏には、楽しそうな空也の顔が浮かぶ。
  こそばゆそうに笑い、目を閉じる。

◯ コンビニ(翌日)
  レジ打ちのバイトをしている大翔。
大翔「いらっしゃいませー!」
  大翔、元気よく声を出す。
  そこへ、店長(48)がスタッフルームから顔を出す。
店長「どうした大翔、今日はやけに元気だな」
大翔「そうっすか?」
店長「ああ、なんか良い事あったか?」
大翔「(笑って)まぁ  あ、お待ちのお客様こちらえどうぞー!」
  並んでいる客に向かって手を振る大翔。
  その表情は、とても晴れやか。

◯ 公園
  の時計は3時半を指している。
  空也、一人公園にやってくる。
  両手には、バットとイナカイザーの人形が握られている。
  キョロキョロと大翔を探す空也。
  が、大翔はまだ来ていない。
  ブランコに座る空也。
  徐々に頬がにやけてくる。
男子1「おい!」
空也「え?」
  そこへ、昨日の男子三人組がやってくる。
  男子1の手には、佐野浩太が写っている雑誌がある。
空也「あ、バ、バットなら……」
男子2「そうじゃねー!」
空也「え?」
  男子1、雑誌のとあるページを開いて空也に突きつける。
  ハッとなる空也。

◯ コンビニ(外観)
  私服に着替えて出てくる大翔。
  ウキウキした様子で走り出す。

◯ 公園
  に、走ってくる大翔。
  大翔、空也の姿を見つける。
大翔「っ! お〜い!」
  その時、空也の陰から男子三人組が姿を表す。
  立ち止まる大翔。
大翔「お前ら」
  男子三人組、ニヤニヤしながら顔を見合わせる。
  怪訝そうな顔をする大翔。
  そこで空也がゆっくりと振り返る。
  その手には、佐野浩太のインタビューページが開かれている。
大翔「ど、どうした……っ!」
  大翔、ページに書かれている内容に気づく。
  そのインタビューの中で、浩太は大翔とのツーショット写真を見せてコメントしている。
浩太の声「彼とは、同じ養成所に通っていたライバルだったんです。今頃どうしてるかなぁ」
  と書かれたインタビュー記事。
  空也、震える手でそれを持っている。
空也「ほんと、なの……?」
大翔「……」
空也「ねぇ!」
男子1「あっはは! ホントだって!」
男子2「そうそう! そのおっさんはヒーローなんかじゃなくって、ただの落ちこぼれ!」
男子3「やーい! ライバルに先越された負け犬ヒーロー! いや、ヒーローじゃないか」
男子1「やーい負け犬おっさん!」
男子2「ぷっ、それサイコー!」
  悔しそうに唇を噛み締める大翔。
  空也、すがるように大翔を見上げる。
空也「ねぇ! 嘘だよね!? お兄さんは、正義のヒーロー。イナカイザーなんだよね!?」
大翔「……ごめん」
空也「え……?」
大翔「あれ、嘘だ。俺……君が尊敬してくれるのが嬉しくて、それで、調子んのってたんだ……ごめん」
空也「そんな……」
  力なく腕を下げる空也。
  その手から、雑誌とイナカイザーの人形が落ちる。
  すぐの人形を披露男子1。
男子1「こんなもんいらねーよな!」
男子2「だってそこのおっさん偽物だし!」
男子3「どうせこのヒーローだって偽物だろ?」
  好き勝手に人形を引っ張る男子三人組。
  空也、我に帰り、人形を取り戻そうとする。
空也「か、返してよ!」
男子1「うるさいな!」
  が、男子1に突き飛ばされる。
  そこへ駆け寄る大翔。
大翔「だ、大丈夫か?」
  大翔、空也に手を差し伸べる。
  が、その手を払う空也。
空也「いらない!」
大翔「っ!」
空也「ヒーローでもないあんたの助けなんて……」
男子1「そーだそーだ! 偽物はすっこんでろ!」
男子2「嘘つきおっさん!」
男子3「偽物おっさん!」
  空也、再び人形を取り返そうと三人組に突っ込む。
  が、またも突き飛ばされてしまう。
  何度もそれを繰り返し、やがて泣きそうになる空也。
空也「返し……てよぉ……」
男子1「いーじゃん、どうせヒーローなんていないんだし……」
空也「いる……よ……」
男子2「じゃあなんで誰も助けてくれないんですかぁ〜?」
空也「それは……」
男子3「ヒーローなんていないんだよ! いるのは負け犬のおっさんだけ! あはは!」
  手を叩いて爆笑する男子三人。
  空也、悔しさで泣き出してしまう。
  我慢しきれなくなった大翔、
大翔「いい加減にしろ!」
  と叫ぶ。
  驚いて固まる男子三人組。
  大翔、空也の方を見る。
大翔「お前! いつまで泣いてんだ! あんなやつらになんか言われた程度で怯んでんじゃねー!」
空也「うるさい! ヒーローでもないあんたに説教なんてされたくない!」
大翔「……ああそうだよ。俺はヒーローなんかじゃない」
  空也、大翔の方を見る。
大翔「有名にはなれなかった。子供に言い負かされてる。嘘ついて、自分をごまかすことしかしてこなかった」
空也「……」
大翔「世の中、ヒーローなんていねぇんだよ」
空也「そんなの……」
大翔「だから!」
空也「っ!?」
大翔「お前がヒーローになれ!」
空也「え?」
大翔「他の誰でもない、お前が! お前自身を救うためにヒーローになるんだ!」
  大翔を見て固まる空也。
  男子三人組、ぽかんとして顔を見合わせる。
大翔「俺なんかに……いや、他人なんかに頼るな! お前を助けれるのはお前だけだ!」
空也「僕、だけ……」
大翔「(頷く)行け! ヒーローは……ヒーローはいつだって……っ!」
  自分の胸を叩く大翔。
空也「(頷く)」
  空也、男子三人組を睨む。
  たじろぐ男子三人組。
  立ち上がる空也。
空也「僕は……」
  拳を握る空也。
空也「僕は……」
  空也の背中を見守る大翔。
空也「僕は!」
  空也、男子三人組に突っ込む。
空也「ヒーローになるんだ!」

◯ デパート・屋上(数日後)
  ヒーローショーが行われている。
  イナカイザーのスーツを着た大翔、アクションをしている。
  その姿を、最前列の中央で見ている空也。
  顔はあちこち絆創膏が貼られ、手にはボロボロになったイナカイザーの人形を持っている。
大翔(M)「俺は、ヒーローなんかじゃない」
  華麗なアクションを決めるイナカイザー。
大翔(M)「カッコ良くないし」
  司会のお姉さんを庇いながら戦うイナカイザー。
大翔(M)「モテないし」
  大翔、客席から少し離れたところに、浩太の姿を発見する。
  浩太、イナカイザーのスーツを着ている大翔に気づき、軽く手を振る。
大翔(M)「ライバルには先を越された」
  怪人たちが舞台袖にはけていく。
  中央に立ち、決めポーズを取るイナカイザー。
大翔(M)「けど、それでも」
  最前列の中央で、熱い拍手を送っている空也の姿。
大翔(M)「それでも俺は——ヒーローなんだ」

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コメント

  • ヒーローショー経験者です。
    少年と落ちこぼれの青年、という構図はとても美しくて、素敵だと思いました。
    僕は泣けました。
    短尺なので難しいかもしれませんが、浩太との絡みももう少しあると、大翔の成長が画として伝わりやすいと思いました。
  • オチが最高
    ねこ 07/12
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