そして、朝になる頃 恋愛

とある理由で惹かれたあった二人。 でも、悲しい理由で別れざるを得なかった。
makoto 8 0 0 12/14
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第一稿

人物表
   遠矢弘樹(21)売れないミュージシャン
   羽田瑞貴(18)高校生
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〇廃ビル・屋上(夜)
   遠矢 ...続きを読む
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人物表
   遠矢弘樹(21)売れないミュージシャン
   羽田瑞貴(18)高校生
========================

〇廃ビル・屋上(夜)
   遠矢弘樹(21)が柵の外へと口笛を吹いている。遠く響き渡る音色。悲しい音色。

〇裏路地(夜)
   通りがかった羽田瑞貴(18)が、上を見上げる。口笛が聴こえてくる。
瑞貴「……この音色……」

〇廃ビル・階段(夜)
   ビルの屋上へと続く螺旋階段を上る瑞貴。
   口笛が、どんどん大きく聴こえてくる。
   瑞貴、見えてきた遠矢に向かって。
瑞貴「……これ、何の歌でしたっけ」
遠矢「何で知ってるの」
瑞貴「(首を傾げて)?」
遠矢「(笑って)俺の曲」

タイトル「そして、朝になる頃」

〇マンション・瑞貴の部屋内(夜)
   カップ麺をすすっている遠矢。
   向かいで瑞貴が所在なさげに。
瑞貴「……すみません、こんなモノしかなくて」
遠矢「いや、何にも食ってなかったから、最近」
瑞貴「どれくらいですか?」
遠矢「ずっと」
瑞貴「そう……ですか」
   瑞貴、何か言いたげに。
瑞貴「あの、お金とか、困ってるんですか」
遠矢「高校生?」
瑞貴「え」
遠矢「学生さん程ではないよ、さすがにね」
瑞貴「あ……すみません」
遠矢「へへ、俺ね、売れない歌手なのおー」
瑞貴「う、売れない、歌手、さん」
遠矢「何であの歌知ってたの?」
瑞貴「え……なんか、なんていうか」
   瑞貴、たじろいで。
瑞貴「夢の、中で、というか」
   瑞貴、多少涙ぐみながら。
瑞貴「ずっと歌って欲しかった、歌っていうか」
遠矢「そ」
  遠矢、ポケットの中を探って。
遠矢「金無いんだ、払えなくてごめんね」
瑞貴「え、そんな、お金なんて」
遠矢「その代わり、一曲、プレゼント……とか、サムイこと言っていい?」
瑞貴「え」
遠矢「サムイ? やっぱね」
瑞貴「そ、そんなこと!!」
   遠矢、すうっと息を吸い、歌を歌い始める。
《キミの夢にボクの祈りが込められていたなら
 きっと願いはただ一つ ただ 孤独で
 同じ鼓動を持つのは無理だけど 息なら吸えるから 息なら吸えるから》
瑞貴「——」
   遠矢、歌うのをやめて、ニヤッと笑う。
遠矢「カップ麺代にはなった?」
瑞貴「え、なりました!! て、ていうかお金払います!!」
遠矢「何言ってんのー、俺、ホントに売れないのおー」
瑞貴「う、売れるとか売れないとか問題ないですよ!」
遠矢「売れなきゃ食えないよー」
瑞貴「わ、私が食わせます!!」
   瑞貴、一瞬しまったという顔になり。
遠矢「高校生でしょ?」
瑞貴「だ、大学生です」
遠矢「(笑って)嘘がヘタ」
瑞貴「ホントですよ!!」
遠矢「じゃ、この状況、分かる?」
   両手を広げる遠矢。
瑞貴「え」
遠矢「大人の男女が、夜、同じ空間に居る意味、わかる?
 俺、子供だから、手ー出さなかったんだけど」
   瑞貴、段々と真っ赤になる。
遠矢「ふふ」
   遠矢、はたいたジャケットを羽織って立ち去ろうとする。
瑞貴「……も、もう行くんですか」
遠矢「俺、男だからさあ」
瑞貴「じゃ、じゃあ私、男になるんで!!」
遠矢「(笑って)意味不明」
   立ち去る遠矢。去り際に。
遠矢「あ、忘れてた」
   と、瑞貴の額に人差し指をピッと当てる。
遠矢「これ、約束のしるし」
瑞貴「——」
   額に手を当てる瑞貴。
遠矢「また会えるよ、何かが繋がってるなら、ね」
   後ろ手にバイバイして、遠矢は立ち去る。
   瑞貴、その姿を見送って。
瑞貴「(苦笑いして)……サムいヒト」

(時間経過)
   大人になっていく瑞貴、家で試験勉強をしたり、頭をひねったりする。
   ×   ×   ×
   アルバイトをしている遠矢。倉庫内工場で、ピッキング作業等をしている。
   ×   ×   ×
   街中ですれ違う二人。でも、お互い、大人の装いになっていて気づかない。
   ×   ×   ×
   そして2年程経った後
   ——クリスマスのイルミネーションに彩られている街並み。

   瑞貴、顔を上げ。
瑞貴「……あ」
   街中の大型テレビでキメた姿の遠矢が歌っている。

《ボクの歌にキミの祈りが込められていたなら
 祈りはただ一つ ただ 孤独で ただ孤独で
 同じ鼓動を持つのは無理だけど
 ただ駆け足で ただ駆け足で ボクの元へやってきて
 力があるなら 足があるなら 待っているから あの頃のキミ》
   歌のタイトルと思わしきテロップが流れる――「PROMISE」

瑞貴「……お兄さん」
   そっと、額に手をやる瑞貴。
   段々と駆け足になり、大型のテレビの前に立つ。
   そして、鞄の中から一枚の履歴書をバン!と出して、突き出す。
瑞貴「今から、あなたのマネージャーになります! 覚悟して下さいね!」
   にっこりと笑って駆けていく瑞貴。
   段々と足取りは早くなり、道の先へと、ずっと、ずっと――。
   ホワイトアウト。

〇東京・全景(朝)
   朝日の昇る東京。エンドロール。
(おわり)

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