黒山羊の手紙 日常

城崎創太(8)は、母が妹の陽菜(5)の味方ばかりすることに不満を感じ、陽菜を疎ましく思っていた。ある日、廃墟で鎖につながれた黒山羊と出会う。傍には「消したいものを紙に書いて、黒山羊に食べさせてください…そうすれば、この世から消すことが出来ます」というメモ。創太は陽菜の名を書こうとするが……。
海宝 晃子 34 0 0 02/06
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第一稿

「黒山羊の手紙」

登場人物表
  城崎 創太(8)……小学2年生。
  城崎 陽菜(5)……創太の妹。
  城崎 紀子(35)……創太と陽菜の母。
  桜井 渡(22 ...続きを読む
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「黒山羊の手紙」

登場人物表
  城崎 創太(8)……小学2年生。
  城崎 陽菜(5)……創太の妹。
  城崎 紀子(35)……創太と陽菜の母。
  桜井 渡(22)……教育実習生。
  小野寺 豊(8)……創太の同級生。
  北原 健吾(8)……創太の同級生。
  生徒1
  生徒2


〇城崎家・リビング
   ご飯を食べている城崎創太(8)と城崎陽菜(5)。
   陽菜、豆ごはんのグリンピースを城崎の茶碗に入れる。
城崎「何だよ」
陽菜「お兄ちゃんにあげる」
城崎「俺も嫌いなんだけど」
   黙々と、グリンピースを移す陽菜。
城崎「やめろよ!!」
   陽菜、泣き出す。
   台所から、城崎紀子(35)がやってくる。
紀子「(なだめつつ)陽菜、どうしたの?」
陽菜「お兄ちゃんが……」
紀子「創太!」
創太「だって陽菜が……」
紀子「お兄ちゃんなんだから、ちょっとぐら
 い我慢しなさい!」
   城崎、席を立つ。
紀子「こらっ、まだ残ってるわよ」
創太「いらない」
   城崎、リビングを出ていく。

〇同・外
   家を出ていく城崎。
紀子の声「創太!!」

〇道
   一人、ぶらぶらと不満げな顔で歩く城崎。
城崎「『お兄ちゃんだから……』って、なんだ
 よそれ」
   目の前にあった石を蹴る城崎。
城崎「……陽菜なんか、いなきゃいいのに」
   思いっきり蹴った石が廃墟に転がっていく。
   城崎、好奇心から廃墟の中に入っていく。

〇廃墟・中
   ゴミや雑誌が散乱している。
   進む城崎、奥から「メェー」という音が聞こえる。
   音のする方に進んだ城崎の前に、鎖で繋がれた黒山羊がいる。
城崎「……山羊? 何で?」
   城崎、山羊の近くにある机に近づく。
   机の上には、便箋とペン。紙が置いてある。
   城崎、紙を手に取る。

〇城崎家・リビング
   子供番組を見ている陽菜。
   「やぎさんゆうびん」の歌が流れている。
陽菜「(テレビに合わせ歌う)白山羊さんから
 お手紙ついた」
   紀子、出かける準備をしている。
陽菜「黒山羊さんたら読まずに食べた」
紀子「陽菜、出かけるわよ」
陽菜「えーー」

〇廃墟・中
   紙にひらがなで書かれた文を読む。
城崎「(読み上げる)……『便箋に消したいも
 のを書いて、黒山羊に食べさせてください』」

〇城崎家・外
   カギをかける紀子。
   陽菜、ぬいぐるみを持ち歌う。
陽菜「仕方がないのでお手紙書いた」

〇廃墟・中
   続きを読む城崎。
城崎「……『そうすれば、この世から書いたものが消えます』」
陽菜の声「さっきの手紙のご用事なあに」

  タイトル「黒山羊の手紙」

〇廃墟・中 
   紙の末文を読む。
城崎「……『消せるのは一人、一つまで』」
   黒山羊をジッと見つめる城崎。
城崎「(信じてない顔)本当かな?」
   黒山羊、メェーと鳴く。
城崎「……」
   城崎、ペンを取り便箋に「ひな」と書く。
   だが、インク切れで書けない。
城崎「……しょうがないな」
   城崎、ペンを取りに廃墟を出る。

〇道
   家へ帰る城崎。
   写真を片手にあたりをキョロキョロしている桜井渡(22)。
   桜井、城崎に気付く。
桜井「(手を振り)城崎くん」
城崎「先生、何してんの?」
桜井「ちょっと、道に迷って……ここがどこ
 かわかる?」
   桜井、城崎に写真を見せる。
   小学生の頃の桜井と男の子のツーショット写真。
城崎「(背景の遊具を見て)……多分、青空公園だと思う」
桜井「そっか、ありがとう」
城崎「道わかるの?」
桜井「……」
     ×     ×      ×
   城崎が先導して、桜井を案内している。
城崎「先生、ここに住んでたんじゃないの?」
桜井「中学までね……城崎くん、もう教育実
 習は終わったから先生じゃないよ」
城崎「でも、先生になって戻ってくるんでし
 ょ」
桜井「……そうだね」
城崎「なら、先生でよくない?」
桜井「そっか、ありがとう」
   歩く二人。
城崎「……先生さ、何か一つ消せるなら何を消す?」
桜井「どうしたの、急に」
城崎「別に」
桜井「うーん。特にないかな」
城崎「参考になんないなぁ」
桜井「ごめんね。でも、逆に取り戻したいも
 のならあるよ」
城崎「何?」
桜井「親友との思い出。ここを引っ越す時、喧嘩しちゃってさ」

〇(回想)廃墟・中(10年前)
   廃墟に逃げ込む桜井(12)。
桜井の声「もう顔も見たくないってぐらい、腹が立ったんだよ」
   城崎と同じように黒山羊と出会う桜井。
桜井の声「そしたら、あんなに楽しかった思い出も、嫌になって」
     ×     ×     ×
   桜井、便箋にペンで「○○(読めない)との思い出」と書き、黒山羊に
   渡す。
   黒山羊、むしゃむしゃと便箋を食べていく。

〇道
   桜井、悲しげな顔で話す。
桜井「信じられないだろうけど」
城崎「……それで、どうなったの?」
桜井「本当に消えたんだ。名前も思い出せない」
城崎「……」
桜井「しかも、この町のいろんな所をそいつ
 と行ってたから、場所の記憶も一緒に消えちゃってさ」
   二人、青空公園の前に着く。
桜井「自分にとってこの町は、知らない町だ
 よ」
   桜井、城崎に微笑む。
桜井「案内してくれてありがとう」
城崎「……嫌な思い出だったんでしょ? な
 のに、また探すの?」
桜井「まぁね。でも、この世界にいらないも
 のなんてないって思うんだ」
   桜井、城崎の頭をなでる。
桜井「今はね」
城崎「(照れて)やめてよ」
桜井「……消せたとしても、そこに別のものが代わりに来るだけだ
 し。それなら、嫌わないで好きになった方がずっといい」
城崎「好きに……」
  すこし照れ臭そうにする桜井。
桜井「……少しは先生っぽいかな?」

〇城崎家・城崎の自室
   机のペン立てからペンを手に取る城崎。
桜井の声「次の日、行ったらいなくなってた。もしかしたら」

〇(回想)廃墟・中
   誰もいない廃墟で、ジッとこちらを見ている黒山羊。
桜井の声「あの黒山羊は,悪魔だったのかもしれない」

〇城崎家・城崎の部屋
   ペンをグッと握りしめる城崎。

〇同・廊下
   玄関に向かう城崎。
   そこへ、紀子と陽菜が帰ってくる。
紀子「創太、どこ行くの?」
城崎「……ちょっと」
紀子「(ため息)晩御飯までには帰ってきてね」
城崎「今日は何?」
紀子「シュウマイよ」
   中華屋のロゴが入った袋を掲げる紀子。
城崎「(微妙な顔)……」
   陽菜、城崎に駆け寄る。
陽菜「お兄ちゃん! あのね、陽菜。お姉ちゃんになるの!!」
城崎「……は?」
陽菜「お母さんのお腹に、赤ちゃんがいるん
 だって!」
   嬉しそうに話す陽菜。
城崎「……本当?」
紀子「妊娠3か月だって……性別はまだわかんないけど」
陽菜「女の子かな? 陽菜、妹が欲しい!」
城崎「……」

〇青空公園・前(夕)
   一人、ペン回しをしながら歩く城崎。
城崎「……最悪だ」
   公園から人の声が聞こえ、覗く城崎。
   小野寺豊(8)が、北原健吾(8)の取り巻きである生徒 1と生徒2に
   囲まれ蹴られ、殴られている。
   バレないよう物陰に隠れ、見ている城
   崎。
   しばらくすると、北原達が去り小野寺だけが取り残される。
   城崎、小野寺に近づく。
城崎「大丈夫?」
   城崎、倒れている小野寺に手を伸ばす。
   小野寺、体を起こし城崎の手を払う。
小野寺「……何、今来たみたいな顔して」
   小野寺、城崎を見上げにらむ。
小野寺「隠れて見てたくせに」
   城崎、北原が去った方を見る。
城崎「……助けてあげようか」
小野寺「どういうこと?」
城崎「……北原を消すことができるって言ったらどうする?」
   小野寺、鼻で笑う。
小野寺「そんなこと、できるわけないだろ。
 それに」
   小野寺、立ち上がる。
小野寺「俺はいつか、あいつらを返り討ちに
 するんだ。消えられたら負けたままじゃないか」
城崎「……」
小野寺「俺は逃げないって決めてるんだ」
   小野寺、ふらつきながらも去る。
   城崎、去る小野寺の背中をジッと見る。

〇廃墟・中(夕)
   日も暮れて、薄暗い廃墟の中。
   黒山羊と向き合う城崎。
城崎「みんな、嫌なことに向きあって頑張る
 んだよ」
   「メェー」と鳴く黒山羊。
城崎「……辛いのに」
   城崎、便箋にペンで書く(なんて書いたか見えない)。
城崎「……馬鹿だメェ」
   城崎、黒山羊に便箋を渡す。
   黒山羊、むしゃむしゃと食べていく。
城崎「だけど、カッコよかった」

〇城崎家・玄関(夜)
   帰ってきた城崎、靴を脱いでいると陽菜が走ってくる。
陽菜「おかえりーー」
城崎「……ただいま」
陽菜「お兄ちゃん、今日。シュウマイだって」
城崎「母さん、言ってたじゃん」
陽菜「うぅ」

〇同・台所(夜)
   夕食の準備をしていく紀子。
   お皿に、シュウマイを盛り付けていく。
   シュウマイにはグリンピースが乗っている。

〇同・玄関(夜)
   嫌そうな顔の陽菜。
陽菜「グリンピースがあるー」
   城崎、クスッと笑う。
城崎「大丈夫だよ」
陽菜「?」
城崎「陽菜。俺もグリンピース頑張って食べるから、陽菜も頑張っ
 て食べような」

〇同・台所(夜)
   紀子、再びシュウマイが乗った皿を見るとグリンピースがなくなってい
   る。
紀子「!?」
城崎の声「明日から」

〇(回想)廃墟・中(夕)
   便箋にペンで「ばんごはんのグリンピース」と書く城崎。

〇城崎家・玄関(夜)
   城崎、陽菜の頭を撫でる。
陽菜「うん! お兄ちゃん、朝はごめんなさい」
陽菜、申し訳なさそうな顔をする。
   陽菜が謝ったことに驚く城崎。
陽菜「まだ、怒ってる……?」
城崎「いや、こっちこそ大きな声で怒ってご
めん」
陽菜「陽菜、『お姉ちゃん』として頑張る
の!」
城崎「俺も。『お兄ちゃん』として頑張るっ
て決めたんだ」
   城崎と陽菜、リビングへ向かう。

                      (終わり)

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