占い師・吉田祥明の運命 ドラマ

能力を失った、ハンカチ透視占い師の吉田祥明。 酒浸りの吉田がホテルの廊下を歩いていると、そこには1枚の純白のハンカチが……。
朝比奈波音 30 0 0 10/06
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第一稿

登場人物表
 吉田祥明(39) 占い師
 薄井愛(35) 
 カップル・男
 カップル・女


〇ホテル・レストラン
   帽子とサングラスで顔を隠し、人目を気にし ...続きを読む
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登場人物表
 吉田祥明(39) 占い師
 薄井愛(35) 
 カップル・男
 カップル・女


〇ホテル・レストラン
   帽子とサングラスで顔を隠し、人目を気にしている無精姿の吉田祥明(39)。
吉田「(呟き)畜生……」
   吉田、片手に持ったジョッキを傾け、ビールを一気飲み。持っていた週刊誌をテーブルに
   放り投げる。
吉田「俺は悪くない……」
   テーブルの上、開かれた週刊誌のページに、『ハンカチ占い師、吉田祥明の人気に陰り』
   の見出しとハンカチを広げて持つ吉田の写真。それを睨む吉田。
吉田「何だよ! こんなもん!」
   と吉田、週刊誌を手に取り丸める。会計を済ませ、近くのごみ箱に捨てる。

〇同・客室前の廊下
   缶ビール片手に歩く吉田。おぼつかない足元。すると向かい側から、男女のカップルとす
   れ違う。
カップル・男「あれインチキだよな?」
カップル・女「ホント、当たらないよね」
吉田「何だと⁉」
   振り返り、カップルを睨む吉田。
カップル・男「ダメだよな、あの天気予報」
吉田「何だ。天気の話か……」
   楽しそうに会話をして遠ざかるカップル。吉田、カップルを遠めに見てビールを一気飲
   み。
吉田「俺はインチキなんかじゃない。ただ見えなくなっただけだ……」
   ビールの缶をギュッと握りつぶす吉田。

〇同・チャペル前の廊下
   吉田、両手をポケットに入れふらふらと歩く。すると、床に不自然に置かれた純白のハン
   カチ。辺りを見渡す吉田。
吉田「おい、誰だ? これ置いた奴。イタズラか? それとも俺への嫌がらせか?」
   しかし誰もいない。吉田、ハンカチを睨みひとつ舌打ち。
吉田「誰が拾うか。こんなもん!」
   吉田、数歩進んで立ち止まり、踵を返しハンカチの所へ。しゃがみ込む吉田。
吉田「どうせガキのイタズラなんだろ?」
愛「拾った~‼」
   吉田がハンカチを拾い上げると、少し離れた非常口の陰から、ウエディングドレス姿の薄
   井愛(35)が突撃する。
吉田「な、何だ⁉」
   吉田、驚いて後ろに転ぶ。ドレスの裾を持ち、息を切らす愛。凄まじい顔。
愛「あなた今、これ拾いましたよね? 拾って手に取りましたよね? ね、ね、ね?」
吉田「え? えぇ、あぁ……」
愛「じゃ、行きましょう‼」
吉田「な、何? ちょ、ちょっと‼」
   愛、ハンカチを手に持つ吉田の腕を掴んで強引に引っ張る。吉田、よくわからず、グイグ
   イと連れられ歩く。
吉田「あーもう! 痛いな、離せって。お前、俺をどこへ連れて行くつもりだ?」
愛「この先にある新郎控室です」
吉田「はっ?」
愛「今からあなたには、そこで白のタキシードに着替えてもらいます」
吉田「何のために?」
愛「私と結婚するためで~す」
吉田「はぁ? 結婚? 何で俺が、今会ったばかりのあんたと? ふざけるな‼」
   吉田、怒って立ち去る。その腕を強く掴み離さない潤んだ瞳の愛。
愛「待って! お願い。行かないで……」
吉田「何だよ?」
愛「あの私、訳あって今花婿が不在なんです」
吉田「知るか!」
愛「もう親戚一同集まってて。このままだと私、一人で結婚式あげることになるんです」
吉田「だから? 俺には関係ない」
愛「お願いです。私の花婿になってください」
   愛、泣きながら吉田に頭を下げる。困惑する吉田。突然、手に持ったハンカチをパタパタ
   と振る。
吉田「大体、花婿不在って。あんたの本当の花婿はどこ行った?」
愛「それが……。見つからなくて……」
吉田「じゃあ、早く探さないと」
愛「いや、そうじゃなくて……」
吉田「あっ‼ まさか、逃げられた?」
愛「違うんです……」
吉田「じゃぁ、どこ?」
愛「だから……。元々いないんです……」
吉田「はっ? いない? まさかあんた、相手もいないのに結婚式挙げようとしてたのか?」
愛「はい……」
吉田「あー、なるほどね。それで、床にハンカチ置いて、誰か来るのを待ってたんだ!」
愛「ご名答!」
吉田「さらに運良く良い男が現れて、花婿もゲットできたら超ラッキーなんてこと?」
愛「えへへ……」
   愛、舌をペロッと出して照れ笑い。吉田は一瞬ニコッと笑い、すぐに怖い顔。
吉田「えへへ、じゃねぇだろ? 大体相手もいないのに、どうやって式場とった?」
愛「それは、婚約者が忙しいので打ち合わせは私1人でとお願いしたので……」
吉田「あんた、本物のバカか‼」
愛「私も頑張ったんですよ。今日の為に、婚活パーティーも片っ端から参加したし」
吉田「なるほど」
愛「でも、全員に振られて。結局今日までに間に合いませんでした……」
   吉田、溜息をつき、ハンカチを乱暴に振る。しょんぼりする愛。
吉田「ありえねぇ……」
愛「お願いです! どうか結婚式の間だけ、私の花婿になってもらえませんか?」
   吉田、愛に呆れながらハンカチをフリフリ。愛、突然泣き出し吉田にすがりつく。
吉田「もういい。付き合いきれねぇ」
   持ってるハンカチを丸めて愛に投げつけ、立ち去る吉田。
愛「(大声で)待ちなさいよ! 吉田祥明!」
   吉田、ハッとなり慌てて引き返す。愛は吉田を涙目でジッと睨む。
吉田「ちょっと! 何でそれを……?」
愛「やっぱり……。あなた、ハンカチ透視で超人気だった占い師よね?」
吉田「いつ俺だって気付いた? まさか、知っててわざとあそこにハンカチを……?」
愛「そうよ! だって、変装ヘタなんだもん。それに、ハンカチパタパタと振るクセ、直した方
 がいいんじゃない?」
吉田「お、お前な……‼」
愛「悩んでる人をハンカチで透視して助けるのがあなたの仕事でしょ? なのに、こんな惨めな
 花嫁を平気で見捨てる気?」
吉田「おい!」
愛「吉田祥明はインチキ占い師なんだ? それとも、このままずっとハンカチ透視占いから逃げ
 るの?」
吉田「いい加減にしろよ‼」
   互いに睨み合う吉田と愛。
愛「悔しかったら占ってよ。私のこと……」
吉田「それは……」
愛「自信ないんだ? 見えるかどうか怖くて」
吉田「あーもう! わかったよ……。占えばいいんだろ?」
   吉田、愛からハンカチを乱暴に受け取り、顔の前で広げ大きく深呼吸。目を閉じる吉田。
   それをじっと見つめる愛。
吉田「見えました。ん? えっ? えぇ~っ!」
   驚き目を見開く吉田。
愛「な、何? まさか、結果悪いの……?」
吉田「いや、別に。悪くはない、かな……?」
   吉田、動揺して声が裏返る。
   その様子を心配そうに見つめる愛。
吉田「あんた、相当我慢してきただろ?」
愛「何で?」
吉田「一生懸命頑張っても、会社や両親から随分と嫌味言われて」
愛「当たってる……」
吉田「それで、追い詰められた結果が、周囲に嘘の結婚宣言となる」
愛「そこまで見えたの?」
吉田「あぁ、全部見えたよ」
愛「そうなんだ……」
吉田「いいか? 良く聞け。今日の結婚式は中止しろ。周りには謝罪など一切するな」
愛「えっ?」
吉田「そうすることで、あんたに溜まった悪い気がすべてクリアになる」
愛「でも……」
吉田「このまま式挙げれば、益々周囲に追い詰められるぞ? とにかく、今すぐここから逃げ
 ろ」
愛「私は幸せにはなれないの……?」
吉田「大丈夫。あんたが俺の言う通りにすれば、一年後には運命の男と結婚できる」
愛「本当……?」
吉田「あぁ。俺には幸せそうな二人の姿が見える」
   吉田、愛に優しく微笑む。
   涙目の愛、微笑み。
愛「やればできるじゃん」
吉田「まぁな」
愛「ありがとう。吉田祥明先生」
   微笑み立ち去る吉田。愛は吉田を笑顔で見つめ、深くお辞儀。

〇同・正面玄関・外
   吉田、手元のハンカチを見つめる。
吉田「一年後か……。こちらこそ。また俺に人の未来を見る自信を与えてくれて、ありがと
 な……。未来の俺の花嫁さん」
   優しい声の吉田、ハンカチを握りしめる。ホテルを背に笑顔で歩き出す。

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