短編ホラー⑤『いつも見てるよ』 ホラー

女性配信者さやぞう(28)の一人呑み歩き配信。 とあるきっかけから軌道に乗り始めたその配信には、いつも「いつも見てるよ」と呼びかける影が──
美野哲郎 48 0 0 08/12
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第一稿

 人物
さやぞう(28)配信者
おじさんB
女子高生(ユキ)

居酒屋店員
酔っ払いのおじさん
女子高生たち
若者たち

〇チャンネル『さやぞうのぼっち呑み』( ...続きを読む
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 人物
さやぞう(28)配信者
おじさんB
女子高生(ユキ)

居酒屋店員
酔っ払いのおじさん
女子高生たち
若者たち

〇チャンネル『さやぞうのぼっち呑み』(以下、ずっと自撮り映像)/道ばた
   メガネで化粧っけ薄い女性配信者さやぞう(28)、町を歩いている、
さやぞう「どうも、こんばんグビ~。さやぞうと申します」
   さやぞう、缶チューハイをグビっと飲む。
さやぞう「この春から世間は自粛だリモートだって言ってるのに出てこないとクビだあとかいう会社がありましてね。
 だったら辞めてやらあ、ということで配信者になった、お一人様OLでーす。
 あ、もうOLじゃないのか」

〇同/居酒屋前(夕)
   さやぞう、店に顔を出すが、、
さやぞう「すいませーん、配信したいんですけど撮影……」
   店員、邪険にして追い払う。

〇同/コンビニ前・駐車場(夕)
   さやぞう、コンビニから出てきてカメラに駆け寄る。
さやぞう「貯金ならあるからいいもーん。呑むぞ-」
   酒・肴を入れたビニール袋を見せる。
      ×   ×   ×
   夜。
   さやぞう、塀をテーブル代わりにして酒を呑んでいる。
さやぞう「いやあ、こういうね。お酒の席もありなんですよ」
   若者たちの集団が近づいてくる。
   近づく暴走族の走行音。
若者A「お姉さん、何? そこで飲んでるの? ウケる」
若者B「顔見せて顔見せて、ねえねえ。自撮りしてんでしょ?」
若者C「可愛いのー? 顔よく見せて-」
   さやぞう、焦って逃げ出す。

〇同/街中(夜)
   さやぞう、人けのない場所を歩く。
さやぞう「なんだよー。仲間がいる奴は仲間と楽しんでればいいだろー。
 私、友達いないんだからさー。かまうなよなー」
   気を取り直して笑顔。
さやぞう「じゃ、気を取り直して、本命のビールいっちゃいましょうか」
   さやぞう、缶ビールを開ける。
さやぞう「こんばんグビ~」
   振りすぎて泡が吹き出す。
さやぞう「きゃあっ」
   服がびちょびちょ。
さやぞう「もう」

〇同/さやぞうの部屋
   さやぞう、パジャマ姿で映っている。
さやぞう「ご時世で、外で飲んでると人の目が怖くなってきたので、おうち飲みにしますね。
 いっしょに飲んでる気分になってくれたら嬉しいなー」
      ×   ×   ×
   日を変えて、飲んでいる。
さやぞう「最近さあ、ドラゴンボールを読み始めたんです。面白いですよねー。
 ……あー、もう。編集しようにも面白い部分なんかどこにもないよ私の話」
      ×   ×   ×
   日を変えて、飲んでいる。
さやぞう「生配信にしまーす。みなさんも飲みましょ。こんばんグビ~」
      ×   ×   ×
   さやぞう、ウトウトとして、
さやぞう「さびしい……ねえ、これ見てる人。誰でもいいからいっしょに呑も」
      ×   ×   ×
   さやぞう、完全に酔っ払っている。
さやぞう「あ? なんだよさっきからチャットでブスブス書いてる野郎よー。
 ぜってえお前も大したツラじゃねえだろ! こんな配信見てさ。
 まともな人間がこんな配信見るわけないっつーの。
 私のこと見下して安心してるんだったらさ、自分の鏡見たほうがいいよ? みんな」
      ×   ×   ×
   さやぞう、すっぴんで土下座。
さやぞう「すいません。コロナじゃないです。二日酔いで寝込んでました。
 そして回復してから配信見直して、皆様への暴言に気づきました。
 登録者様も残り6人にまで減って。
 こんな私に付き合ってくれる珍しい人たちだったのに。
 ああ……私、もうダメだ。貯金ももう呑みつぶしちゃった……」
   さやぞう、土下座のまま崩れる。

〇同/堤防(夜)
   堤防に寝転がっているさやぞう。周囲に転がる酒。
さやぞう「あーもうっ、死んでやる死んでやる死んでやるっ、なんなんだよもおー」
      ×   ×   ×
   さやぞう、そのまま眠っている。
   ハッと目を覚まし、体を起こす。
さやぞう「何? アレ。ねえみんな見て。アレッ」
   さやぞう、慌ててカメラを持ち上げ、空を映す。

〇同/さやぞうの部屋
   整理しきれてない背景。
   さやぞう、若干化粧に気合い入れている。
さやぞう「えー。どうも、ほとんどの皆さんには初めまして。
 謎の飛行物体を捉えて話題になったさやぞうです。
 正直、自分でも半分は酔っ払いが見た幻だと思ってました」
   テンション上がり、
さやぞう「でもね、あの日、同時刻、円盤目撃者の数が3ケタ越えてるんですよ!
 この時代に」
   指で「3」を示す。
さやぞう「なのに、撮影出来たのは私だけだった。これも凄いと思いません?
 この時代に」
   すぐ落ち着き、
さやぞう「まあ、それは奇跡みたいなものなので、
 これからも変わらず一人呑み配信を続けます。
 登録者がゼロになるまではね。
 こうなったらバイトでもなんでもしてやり続けますよ」

〇同/公園
   撮影の腕が上がり、ここからロケ地選びや画角の見栄えがよくなっている。
   さやぞう、紙コップで酒を呑み、
さやぞう「あ、これ美味しい。地酒らしいんですよ。あったんだなあ、近所にも地酒」

〇同/居酒屋表・テーブル席
   さやぞう、酒を呑む。
さやぞう「おかげさまで、チャンネル登録者数千人超えました。
 なんかね。ひとり呑みだけど、ひとりじゃないなって」
   通り過ぎる酔っ払いのおじさん。
おじさん「お、ユーチューバーかい?」
   その後ろにもう一人おじさんらしき人影。
おじさんB「いつも見てるよー」
さやぞう「あ。ありがとー」
   さやぞう、嬉しそうにカメラに、
さやぞう「いつも見てるって」

〇同/点描
   基本は一人で飲み歩き。
   さやぞう、どんどんと垢抜けて、地味なOL風ではあるが「絵」になる。
   通り過ぎる人から声を掛けられるようになる。
      ×   ×   ×
   女子高生がきゃあっと黄色い声を上げて、まんざらでもないさやぞう。
さやぞう「いえーい。若いね。きみたちは呑んじゃダメよー」
   女子高生の後ろからくぐもった声。
おじさんB「いつも見てるよー」

〇同/さやぞうの部屋
   壁紙を替え、綺麗に飾られた部屋。
さやぞう「じゃーん。みんなのおかげー」
   さやぞう、銀の盾を得意げに見せる。
さやぞう「最近ね、昔の同僚がすごくラインで褒めてくれるの。
 あの頃は楽しく呑めなかったけど、今は顔をつきあわせてる訳じゃない分、
 配信越しにね、初めてさやぞうさんと楽しく呑めてる気がしますって。
 そうねーと思って。私、あの頃は壁作ってたかも知れないな」
   さやぞう、窓の外を見やり、
さやぞう「あの円盤を撮影して、全部が良いほうに変わった気がするよ。
 宇宙人さん、ありがとー」
   さやぞう、(チャット欄に)目を落とし、
さやぞう「うん? 『いつも見てるよおじさん』? 何それ」

〇同/商店街
   さやぞう、警戒しながら歩いている。
さやぞう「皆さんの忠告を受けて、動画振り返ったんですよ。
 なるほど。たしかに……たしかにいました」
   さやぞう、カメラに向けて、
さやぞう「怖いかも知れないので気をつけてください。動画にまとめて見たので、どうぞ」

〇同/まとめ映像
   さやぞうの動画、遠くから「いつも見てるよ」と声かけるおじさんB。
   服装替えながら、同一人物が何度も映っている。
   最後はおじさんBの顔にズーム。荒い解像度。
   声をスローに加工してホラー動画風に、
おじさんB「い つ も 見 て る よ」

〇同/商店街
さやぞう「私があの円盤見てバズってからなんですよね。
 どう思います? まあ確かに個人情報流しまくりですけど。
 私みたいな女にストーカーつくとは思わなくって」
   さやぞう、カメラに向かって笑い、
さやぞう「いや、でもこれだけは言わせてください。絶対サクラじゃないです。
 何言っても言い訳くさくなるよなーと思って。有名人って不利だなーと思うんですけど。
 サクラ使うとしてももっと巧くやりますよ」
   その背後、おじさんBがこちらを見ながら笑顔で通り過ぎる。
   口元が「いつも見てるよ」と動いている。
   さやぞう、気づかず喋り続ける。
さやぞう「いや、違う。『もっと巧くやりますよ』とか言うから怪しくなっちゃうんですよね。
 難しいな」

〇同/商店街の端(夜)
   人通りがなくガランとしているシャッター通り。
さやぞう「えー。日中、皆さんのコメントで気づきました。
 あのおじさん、今日も映ってましたね。
 ……それでですね。さっきから、足音がついてきてるんですよ。響くんです」
   さやぞう、カメラを固定し、離れる。
さやぞう「どうせなら……ここで決着をつけましょう」
   さやぞう、空手の型を見せる。
さやぞう「これは防衛手段です。武道の精神には反しませんから、師範。
 もう十年は会っておりませんが」
   さやぞう、少し得意になって空手を続ける。
   その背景、少しずつおじさんBの人影が近づいてきている。
   おじさんBの足が空き缶を転がし、音を響かせる。
   さやぞう、振り返る。
   おじさんB、空き店舗の影の死角に隠れる。
   さやぞう、カメラを見る。
さやぞう「……いましたね。皆さん、見ててください。
 私、やっつけて来ます」
   さやぞう、慎重にカメラを離れ、おじさんBの隠れた死角まで向かって行く。
   その姿、だいぶ小さくなっていく。
   拳を構え、ゆっくりと死角を覗き込む。
   やがておじさんBを見つけたのかなんなのか、ゆっくりと死角に消える。
   しばし、静かな時間が続く。
   やがて、さやぞう拾ったモップを手に戻ってくる。
   カメラに向かって、「いなかった」と首を横に振っている。
   が、何かの物音を警戒し、再び振り返ってモップを構える。
   いかにも人が隠れていそうな物陰(階段、自動販売機の影など)を見つけ、
   ゆっくり近づいていく。
   さやぞうがその物陰に入るか否か、視聴者が一番注目した瞬間、
   何者かがカメラを拾い上げ画角がいきなり変わり、
   カメラを拾ったおじさんBがどアップでカメラに笑いかける。
おじさんB「いつも見てるよ」

〇走行中の電車・車内(夜)
   スマホでその動画を見ていた女子高生ユキ、驚いてビクッ。
ユキ「きゃあっ」
   ユキ、周囲のまばらな乗客の顔色うかがい、
   苦笑しながら動画に視線を落とす。
   LINEに貼られた動画だ。タイトル『いつも見てるよおじさん』
   『これ見てみ』とマコ(友人)からのメッセージに添付されている。
ユキ「もおー、やられた」
   動揺を隠しながら返信。
   『なんだよ、円盤どうこうはミスリードかよ』
   『これ、フェイクのドラマなんでしょ?』
   相手が返信を打っている時のモヤモヤの表示。
   ユキ、返信を待たず、周囲の客に軽く頭を下げる。
ユキ「すいませんでしたー」
   向かいの席で新聞を読んでいる客、顔が見えない。
ユキ「……?」
   向かいの客、新聞をサッと下ろして顔を見せる。
   おじさんBである。笑っている。
ユキ(硬直)「……」
おじさんB「いつも見てるよ」
   おじさんB、こちらに向かって立ち上がり──

                      終わり
   

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