最初で最後のプロポーズ 恋愛

宏太には、長年連れ添った恋人がいる。もうすぐ彼女にプロポーズするらしい。 幼馴染の佑也が宏太に抱いている気持ちに気づきもせずに、佑也をプロポーズの練習台にする宏太だった。
ユイ 16 0 0 07/23
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第一稿

登場人物
・山門宏太(27)会社員
 〃 (15)中学2年生・写真のみ
・宮坂佑也(26)宏太の友人・会社員
 〃 (14)中学3年生・写真のみ

・飯島泉(29)佑也 ...続きを読む
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登場人物
・山門宏太(27)会社員
 〃 (15)中学2年生・写真のみ
・宮坂佑也(26)宏太の友人・会社員
 〃 (14)中学3年生・写真のみ

・飯島泉(29)佑也の恋人
・店主
・女性1


○アパート・佑也の部屋・リビング
   鏡に向かって顔を近づける、スーツ姿
   の山門宏太(27)。前髪はセットされ
   て上がっている。
宏太「……キス、していい?」
   目を閉じ、鏡の自分に唇を近づけてい
   く宏太。
宮坂佑也(26)、入ってくる。佑也も
   前髪を上げた髪型。
佑也「(宏太を見て)それ俺の服!」
   宏太の腕を引っ張る佑也。
佑也「返して」
   宏太、佑也を見て笑う。
宏太「わかったよ」
   ネクタイを緩める宏太。
   × × ×
   棚の上に置かれた写真立て。
   写真には、泣いて目が腫れた宮坂佑也
   (14)と、笑いながら佑也の髪をわ
   しゃわしゃしている山門宏太(15)
   が写っている。
   写真の中の佑也と宏太は、テニスのラ
   ケットを持ち、ユニフォーム姿。
   宏太、写真立てを手に取ると、写真の
   佑也を指で撫でる。
   微笑む宏太、自分の前髪を下ろす。
   スーツに着替えた佑也、神妙な面持ち
   で入ってくる。髪は整えられ、前髪も
   ワックスできっちりと上げられている。
   宏太の前にひざまづく佑也。
   佑也、ポケットから小さな箱を取り出
   して、パカっと開ける。箱の中にはダ
   イヤの指輪。
   佑也と宏太、見つめ合う。
佑也「僕と、結婚してください」
宏太「(ぽーっとしていて)……はい」
   佑也、ふうっと息を吐いて立ち上がる。
佑也「(ニカッと笑って)練習でも緊張する
 わ」
   宏太、顔を真っ赤にして立ち尽くして
   いる。
   佑也が宏太の顔を覗き込む。
佑也「宏太?」
   宏太の目に涙が溜まる。
   佑也、にやりと笑う。
佑也「(宏太の脇腹をつつきながら)わかった。
 寂しいんでしょ〜」
   逃げるように出ていく宏太。

○同・同・玄関の外
   宏太、ドアに背中をつけて立っている。
   ボロボロと溢れてしまう涙。
宏太「……バカ」

○同・同・リビング
   テニスのユニフォームを着た佑也と宏
   太の写真の隣には、現在の佑也と飯島
   泉(29)のツーショット写真が飾ら
   れている。
   カメラに向かって笑う佑也と、佑也の
   横顔を愛おしそうに見つめる泉が写っ
   ている。
   佑也、棚の脇に立って、スマホを耳に
   当てている。

○道
   レストランや洋服屋、ジュエリーショ
   ップなど、たくさんの店が並んでいる。
   とぼとぼ歩いている宏太。目はまだ赤
   い。
   宏太のポケットのスマホが鳴る。
   立ち止まってスマホを取り出すと、画
   面には『着信 佑也』の文字。
   画面を見てためらうが、無理に笑顔を
   作ってから、通話ボタンを押す宏太。
宏太「……(笑いながら)ごめんごめん、佑
 也も結婚か〜なんて思ったら泣けてきちゃ
 ってな」
   電話しながら歩いていく宏太。
宏太「ん? プロポーズ? あれでいいと思
 うよ」
   宏太、歩きながら笑う。
宏太「大丈夫。お前なら大丈夫だって」
   立ち止まって微笑む宏太。
宏太「失礼だぞ……お前のこと好きな人に」
   宏太の目に涙が溜まる。
宏太「……泉さんがかわいそうだろ。自信持
 てよ」
 顔を上げて、涙をこらえる宏太。

○アパート・佑也の部屋・リビング
   佑也、スマホを耳に当てながら、手に
   持った箱の中の指輪を見つめている。
   佑也と泉が写った写真を見て、頷く。
   指輪の箱を閉じ、ポケットに入れる佑
   也。
○道
   宏太、電話しながら歩いていると、ジ
   ュエリーショップにたどり着く。
宏太「じゃあな」
   と、スマホを持った手を下ろす。
   ジュエリーショップのショーウィンド
   ウに飾られた指輪を見つめ、立ち尽く
   す宏太。

○花屋・店内
   スーツ姿の佑也、店主と話している。
   店主、バラが置いてあるコーナーに佑
   也を案内する。

○運動公園・テニスコート
   ラケットとテニスボールを持った宏太
   が入ってくる。

○道
   佑也、バラの花束を抱えて歩いている。
   花をチラチラ見て、表情を緩める。

○運動公園・テニスコート(夕)
   宏太、一人で壁打ちをしている。
   眉間にしわが寄っている。

○マンション・外観(夕)
   花束を持った佑也、立っている。
   ポケットを触り、指輪が入っているこ
   とを確認する。
佑也「よし」
   踏み出す佑也。

○運動公園・テニスコート(夕)
   宏太、一人で壁打ちをしている。

○マンション・泉の部屋・玄関の外(夕)
   佑也、花束を抱えてドアの前に立って
   いる。
   スーツで手汗を拭き、ドアノブに手を
   掛ける佑也。

○運動公園・テニスコート(夕)
   一人で壁打ちをしている宏太。
   ダンボールを持った女性1が、キョロ
   キョロしながら歩いてくる。
   宏太は女性に気づかない。

○マンション・泉の部屋・玄関の外(夕)
   佑也、ドアノブを握ったまま立ってい
   る。
   深呼吸して、ドアノブを持つ手に力を
   入れる。

○運動公園・テニスコート(夕)
   一人で壁打ちをしている宏太。
   汗だくになり、苦しそうな表情。
   テニスコートのそばにある自販機の陰
   にしゃがんでいる女性がいる。
   宏太は女性に気づかない。

○マンション・泉の部屋・玄関の外(夕)
   佑也がドアを開けようとすると、中か
   らドアが開けられる。
   ドアが開くと、泉がいる。
   バラの花束を抱え、スーツを着た佑也
   を見て驚く泉。

○運動公園・テニスコート(夕)
   一人で壁打ちをしている宏太。

○マンション・泉の部屋・玄関の中(夕)
   ひざまづいて、バラを抱えながらポケ
   ットの指輪を出そうとする佑也。
   うまく取り出せずに、ガサゴソしてい
   る。
   見かねた泉が佑也から花束を取ると、
   佑也、不安げな表情で泉を見上げる。
   泉、佑也の髪を撫でて微笑む。
   佑也、微笑み返して頷くと、ポケット
   から小さな箱を取り出す。
   箱を開くと、中にはダイヤの指輪。
   佑也、指輪を取り出して泉の左手の薬
   指にはめる。
   泉、佑也の頭を抱えるように抱きしめ
   る。
   佑也の頭に添えられた手の薬指に光る
   指輪。

○運動公園・テニスコート(夜)
   汗だくになっている宏太、壁打ちをす
   るのをやめて、自販機のほうに歩いて
   いく。
   自販機の陰に置かれたダンボールを見
   つける宏太。
   ダンボールの中で、毛布に包まれた犬
   がくーんと鳴いている。
宏太「なんでこんなところに……」
   宏太がしゃがみ込むと、毛布から出て
   くる犬。
宏太「寂しかったよな?」
   宏太が手を伸ばすと、犬が頭を宏太の
   手に擦り付けてくる。
   犬の頭を撫でる宏太。    (終)

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