短編ホラー②『雨の日の恋人』 ホラー

それは、雨の日の恋人たちを追って現れる――
美野哲郎 36 0 0 07/08
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第一稿

 人物
空谷敦美(23)OL
宇垣貴弘(23)(25)予備校講師
支倉莉穂(16)女子高生
古川(25)敦美の元恋人
花屋店員
少年

〇アパート・表  
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 人物
空谷敦美(23)OL
宇垣貴弘(23)(25)予備校講師
支倉莉穂(16)女子高生
古川(25)敦美の元恋人
花屋店員
少年

〇アパート・表  
   空谷敦美(23)、階段から急ぎ足で出てくる。
   古川(25)、追って出てくる。
古川「おい敦美、待てよっ」
   敦美、立ち止まるが振り返らず。
古川「誤解させたのは悪かった。今度こそ本当に、もう二度とあの女には会わない」
   敦美、目を閉じて、溜め息。
敦美「他に、言うことないの?」
古川「え?」
   古川、何か言わねばと焦る。
古川「……あ、雨降るってっ」
   敦美、空を見上げる。曇天模様。
敦美「……降ればいいのよ。さよなら」
   敦美、振り返らず、歩き去る。

〇花屋・軒先
   雨が降っている。
   雨宿り中の敦美、表を見る。
   雨の中、近づいて来る人影。
   宇垣貴弘(たかひろ)(25)、隣りに来て雨宿り。
宇垣「あー、畜生」
   宇垣、スーツの雨滴を払い飛ばす。
   敦美、身体を離して避ける。
宇垣「あ。ごめんなさい」
敦美「いえ……降られましたね」
宇垣「ねえ。凄いですね、こりゃ」
   二人、並んで空を見上げる。
敦美「(ボソッと)振ったのは私だけど」
宇垣「はい?」
敦美「こちらの話です」
   敦美、一人でウケて笑う。
      ×   ×   ×
   雨脚強まり、暴風雨。
   女性店員、慌てて表の花を店内へ取り込む。
敦美「あの、雨宿りしてっていいですか?」
店員「(混乱気味で)ああ、えっと。入れるの手伝ってくれたら、OKです」
   敦美、宇垣と顔を見合わせる。

〇同・店内
   敦美と宇垣、花に囲まれ雨を眺める。
   落雷。周囲一帯、停電となる。
   敦美、緊張して天井を見る。
敦美「……ちょっと怖いかも。平気です?」
   敦美、宇垣を見る。
   宇垣の横顔。髪から滴り落ちる雨。
   敦美、しばし見とれている。
   宇垣、外の雨を凝視したまま、
宇垣「見えますか?」
敦美「……はい?」
宇垣「あそこに」
   宇垣、外の雨を指さす。
   敦美、指さした方角を見る。
   雨でぼやけた、無人の街角。
敦美「あそこ……え、何かあります?」
宇垣「いませんか? 誰も」
敦美「え?」
   敦美、改めて雨の中を凝視。
   雨でぼやけた、無人の街角。
敦美「誰か、いるんですか?」
   敦美、緊張して宇垣を見る。
   宇垣、強ばらせていた表情を崩す。
宇垣「昔、こっぴどく振った恋人が」
敦美「やだ、怖いこと言わないで」
   敦美、笑って宇垣を叩く。

〇同・軒先(夕)
   雨上がり。花屋を出る敦美と宇垣、大きく伸び。
   顔を見合わせると、照れ笑い。
敦美「お疲れさまでした」
宇垣「お疲れさまでした。では」
   二人、反対方向へ歩き出す。
   敦美、立ち止まり、振り返る。
敦美「あのっ」
   宇垣、呼び止められて振り向く。
   敦美、濡れた髪を弄り、照れた様子。

〇レストラン・店内(夕)
   敦美と宇垣、談笑して食事。

〇クラブ・フロア(夜)
   敦美と宇垣、踊っている。

〇クラブ・表(早朝)
   敦美と宇垣、キス。

〇マンション・外観
   雨が降っている。

〇宇垣の部屋・寝室
   宇垣の胸の上で眠る敦美、目を覚ます。
   宇垣の視線はベランダを見ている。
敦美「貴弘、いつも雨見てるね」
宇垣「雨じゃないんだ」
敦美「ん? じゃ、なに?」
   敦美、宇垣の視線を追う。
宇垣「見えない?」
敦美「何も?」
宇垣「……制服着た女子中学生が、ずぶ濡れでベランダに立ってるの。見えない?」
敦美(苦笑)「やめてよ、ちょっと……え?」
   敦美、不安げにベランダを見る。
   無人のベランダ。
敦美「いる訳ないじゃん。いたら泥棒」
宇垣「……予備校勤め始めて、すぐの頃さ」

〇回想・塾・外観(夜)
   雨が降っている。
   T『二年前』

〇回想・同・教室(夜)
   宇垣(23)、答案をまとめつつ顔を上げる。
   一人残った支倉莉穂(16)が雨降る表通りを眺めている。
宇垣の声「支倉莉穂は、雨の日は決まって帰るのが遅かった。
 まるで、外へ出るのに命を賭ける覚悟でもするかのように」
宇垣「支倉。今日も一番最後か」
   莉穂、泣きそうな顔で宇垣を見る。
莉穂「先生……彼が私を見てるの」
   宇垣、莉穂の傍らに立ち、表を見る。
   雨でボヤける景色。誰もいない。
宇垣「誰もいないって。安心しろ」
   莉穂、宇垣の腕にしがみつく。
莉穂「私が、『彼にして』って、裏切ったから……」
宇垣の声「何を言っているのか、その時はよくわからなかった」

〇回想・帰り道(夜)
   雨。宇垣が傘を差し、莉穂がその腕にしがみついて歩く。
宇垣の声「雨の日の、塾から家まで送る間だけ、俺達は恋人ごっこをした。
 それで支倉の気が安らぐならと思ったんだ」
   莉穂、ほぼ目を閉じている。
宇垣の声「でも、ある時」

〇現在・宇垣の部屋・寝室
   敦美、宇垣を見上げる。
敦美「何?」
宇垣「俺にも見えたんだ、それが」

〇回想・住宅街・路地(夜)
   雨。転がる傘。
   腰を抜かした宇垣、逃げるように民家の塀に背をつけて、
   雨の中に目を凝らしている。
   像の不確かな黒くボヤけた人影が、地面を這って近づいて来る。
   莉穂が這って角を曲がり逃げていく。
   人影、宇垣の眼前に近づくにつれ、焼け爛れた少年の表情が見えてくる。
宇垣「……!」
   おぞましい顔が宇垣に迫り来る。
   少年の影、くぐもった人ならざる声。
少年の影「おまえで、いいか?」
   宇垣、必死に首を横に振り、震える手を上げると、莉穂が逃げた角を指さす。
   少年の影、這って莉穂を追うと、いなくなる。
   宇垣、放心状態で見送る。
   莉穂の壮絶な悲鳴が聞こえてくる。
   宇垣、耳を塞ぎ、目を瞑る。
   雨音が莉穂の悲鳴をかき消す。

〇現在・宇垣の部屋・寝室
   敦美、じっと宇垣を見上げている。
敦美「見捨てたの……?」
   宇垣、ベランダを見たまま、肯く。
敦美「……支倉さん、どうなったの?」
宇垣「家に帰らなかった。それで、さっきからずっと、そこにいてこっちを見てる」
   敦美、緊張してベランダに振り返る。
   無人のベランダ。
   敦美、安堵して息を吐き出す。
敦美「もおー、焦った。誰もいないってば」
宇垣「あの少年は、支倉の恋人だったのかも知れない。
 ……次の恋人が出来たら、復讐を」
敦美「貴弘は、私だけを見てればいいの」
   敦美、宇垣の口を塞いでキス。
      ×   ×   ×
   敦美、服を着て振り返る。
   ベッドで眠ったままの宇垣の寝顔。
   敦美、その顔を撫で、ほほえむ。

〇同・ベランダ
   敦美、マグカップのコーヒーを啜り、雨降る街を眺めている。
   気配を感じ、固まる。
   ベランダの隅に、うずくまった人影。
   敦美、ゆっくり振り返る。
   ズブ濡れの長髪が顔にかかった、制服姿の莉穂の影。黒くボヤけている。
   敦美、カップを落とし、腰を抜かす。
   莉穂の影、這って迫り来る。
敦美「……!」
   焼け爛れたような顔が敦美に近づき、顔を覗き込んでくる。
   おぞましい顔が目の前に迫る。
   莉穂の影、くぐもった人ならざる声。
莉穂の影「おまえで、いいか?」
   敦美、恐怖で竦む。
   その手が震え、ゆっくり上がり─、寝室で眠る宇垣を指さす。
   莉穂の影、寝室へと這って侵入する。
   敦美、怯えながらベランダから目でそっと追う。
   莉穂の影、眠る宇垣の顔を掴み、覗き込んでいる。
   宇垣が起きて目を覚まし、莉穂の影を見る。
   宇垣の壮絶な悲鳴が聞こえてくる。
   敦美、耳を塞ぎ、目を瞑る。
   雨音強くなり、宇垣の悲鳴をかき消す。

                       終わり

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