深夜3時のBAR TIME ドラマ

【思い出を売るBAR】 ちょっぴり変態でクセが強いBARのマスターが、たった一人のお客さんの前で全身全霊のプレゼンをする。ある人の大切な思い出を、130円で売るために…。 →本作はYouTubeにて、オーディオドラマ配信中! http://youtu.be/uzc4pT7TpPc
唐下 浩 22 5 2 04/01
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第一稿

タイトル
「深夜3時のBAR TIME」

               作 唐下 浩

   人  物
 バーテン(年齢不詳)BARのマスター
 深海エリ(27) ...続きを読む
「深夜3時のBAR TIME」(PDFファイル:280.65 KB)
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タイトル
「深夜3時のBAR TIME」

               作 唐下 浩

   人  物
 バーテン(年齢不詳)BARのマスター
 深海エリ(27) OL
 ナレーター

   『ピィー!』という笛の音。

ナレーター「港区六本木9丁目の路地裏に、深夜3時
 から開店するBARがあった。このBARにはお酒
 も料理も置いていない。売っているのは、ちょっと
 変わった物だった。それはもしかしたら、アナタの
 物だったかも。え、そんなわけないって? BAR
 ではいつでも不思議なドラマが待っているのです」

   ドアが開き、揺れるベルの音。

バーテン「いらっしゃいませ」
エリ「(酔っぱらって)うぃ〜、まだやってるぅ? 
 マスター」
バーテン「さきほど開店したところです」
エリ「え? 今、3時だよ!? このBAR深夜3時
 開店なの!? 
 そんなんじゃ、お客さん来ないでしょう〜」
バーテン「いいえ。ちゃんと、来ましたよ」
エリ「(笑って)あはは。来ちゃったー!」

ナレーター「どうやら、本日の物語の主人公は彼女の
 ようです。それでは……どうか。ごゆっくり……」

エリ「ぐへ〜」
バーテン「ずいぶんと飲まれたようですね」
エリ「ううん! 全然たりなーい! もっともっと飲
 みたいのに、さっきまでいたお店、追い出されちゃ
 った」
バーテン「そうですか……」
エリ「だって頼んだ赤ワインがなかなか来ないから。
 カウンターにあった赤ワインのボトル勝手に開けて
 ラッパ飲みしたの」
バーテン「よくある話ですね」
エリ「そしたらさ、さすがにキツくて。口に入れたワ
 イン全部だしちゃったんだよね。隣に座ってたお客
 さんの頭の上に……」
バーテン「……よくある話ですね」
エリ「それで、二度と来るなって追い出されちゃった
 の。お客さんに」
バーテン「お客さんに!? 店主じゃなくて? よく
 ある話ですね」
エリ「そう! よくある話なのに。どうして私がこん
 な目にあわなきゃいけないわけー?」
バーテン「(小声で)迷惑な客だな」
エリ「そうなの! 迷惑な客だったの! だいたい、
 白いワイシャツが赤に染まったぐらいであんな怒
 る? オシャレじゃん! むしろ感謝されても良い
 くらい。そう思わない?」
バーテン「そう……思います」
エリ「でしょ! 良かった、話の分かるマスターで」
バーテン「(乾いた笑い)はい」
エリ「今日は……どうしても飲みたいの。嫌なことを
 思い出しちゃうから……」
バーテン「嫌なことと言うのは……?」
エリ「えーっと……」
バーテン「これは失礼致しました。初対面のお客様に
 無神経なことを聞いてしまって」
エリ「ううん。こんな夜は誰かに話したくなるから。
 それに……」
バーテン「それに……?」
エリ「マスターとは初対面な気がしないの」
バーテン「そうですか? それでは是非、私に話して
 みてください」
エリ「え……聞いてくれるの?」
バーテン「喜んで」

   BGMが流れる。

エリ「20年前の今日ね。私は父と山に魚釣りに行っ
 たんだけど、足を滑らして川に落ちてしまったの。
 私泳げなくて溺れちゃって。そしたら父は……」
バーテン「……お父様は?」
エリ「私を見殺しにした」
バーテン「……」
エリ「近所の中学生が助けに来てくれなかったら、私
 は死んでた」
バーテン「……」
エリ「なーんて、なんてね。もう昔の話さー。よくあ
 る話でしょ?」
バーテン「いえ。そんなことは……」
エリ「じゃあ、そういうことで、ワインちょうだい。
 赤ね」
バーテン「ありません」
エリ「えっ!?」
バーテン「ありません」
エリ「じゃあ、そういうことで、ワインちょうだい。
 白ね」
バーテン「え? 赤じゃないんですか?」
エリ「そうよー! でもないんでしょ? 早く白いワ
 インを持って来て、グラスで良いから」
バーテン「ありません」
エリ「は? ワイン無いの? もうビールで良いわ」
バーテン「ありません」
エリ「ええ? 何だったらあるの? ウィスキー? 
 焼酎? カクテル? モッコリ?」
バーテン「モッコリー!?」
エリ「……マッコリよ」
バーテン「マッコリをモッコリと呼んだのは、あなた
 で三人目です」
エリ「そんなんいいから! なんでも良いから酒もっ
 てこーい!」
バーテン「ありません。ウチはお酒を置いていないの
 で」
エリ「どういうこと? ここBARよね。お酒を売ら
 ないで、一体何を売っているって言うの?」
バーテン「思い出です」
エリ「……思い出?」
バーテン「以前は美味しいワインやカクテルを、お客
 様に飲んでいただきました。けれど、店は全く繁盛
 せず、父でもある先代のマスターは、無理がたたっ
 てこの世を去りました。それから私は、酒も料理も
 やめて、このシステムを始めることにしたのです」
エリ「それが……思い出?」
バーテン「(重々しく)はい。こちらの写真集をご覧
 ください」
エリ「写真集? なんじゃこのナイスバディーは?」
バーテン「いかがですか?」
エリ「あなた、おっぱい星人だったの?」
バーテン「(動揺)わ、私のじゃありません!」
エリ「じゃあ誰の?」
バーテン「それは、こちらの商品を購入した方にしか
 言えませんね」
エリ「いらないわよ、そんなハレンチな写真集」
バーテン「気になりませんか〜?」
エリ「は?」
バーテン「こちらの商品にどんな思い出がつまってい
 るのか……」
エリ「この写真集を買ったら、その思い出とやらが聞
 けるって言うの?」
バーテン「それがウチのBARのシステムです」
エリ「んー……いくら?」
バーテン「二千円です」
エリ「原価? まぁ良いわ。ちょっと面白そうだし。
 ちょうだい」
バーテン「かしこまりました」

   指を『パチンッ!』と鳴らすバーテン。
   BGMが流れる。

バーテン「こちらの写真集の持ち主、名前は橘雅人。
 彼が、生涯で買った写真集はこの一冊のみ。中学を
 卒業する頃、彼はだんだん女性の体が気になってき
 た。胸のふくらみやスカートの中。日々もんもんと
 する毎日。そしてついに彼はある行動をとった!」
エリ「まさか……性犯罪!?」
バーテン「彼は本屋に駆け込んだ! そして棚に並ん
 であったこの写真集とカウンターにいる店員を交互
 に見た。だめだ、今はダメだ。店員が女だ。もうち
 ょっと待て。それから待つこと3時間」
エリ「3時間!?」
バーテン「店員が男に変わりました。今だ! 彼は写
 真集をもってカウンターに向かって走った! 全力
 で! だがしかーし!」
エリ「……」
バーテン「彼の前にバスの運転手らしき人が絆創膏を
 持ってカウンターに並びました。彼は焦った! な
 ぜだ! なぜ本屋に絆創膏が売っているのだ!?」
エリ「……」
バーテン「彼はヒヤヒヤした。こんな大きな写真集を
 持っている所を誰かに見られでもしたら。だが更な
 る悲劇が彼を襲った」
エリ「……」
バーテン「『こちらにどうぞ!』ってさっきまでカウ
 ンターにいた女性店員が彼を呼んだのだ。そして結
 局彼は、女性店員から写真集を買うはめになりまし
 た。そう、こちらの写真集を!」
エリ「(ドン引き)」
バーテン「(息切れ)いかがでしたか?」
エリ「酔いが醒める瞬間って、こんな感じなのね」
バーテン「ボン、キュッ、ボーン!」

   写真集をゴミ箱に投げるバーテン。

エリ「えー!? 捨てた!? それゴミ箱よね!? 
 良いの!? 橘雅人って人の大事な思い出よね!」
バーテン「良いんです。人の思い出なんて、ゴミばか
 り!」
エリ「それを言っちゃ、元も子もないような。もう普
 通にお酒売れ」
バーテン「(遮って)それではこちらの商品はいかが
 でしょうか?」
エリ「それ、注射器? 今度はちゃんとした思い出で
 しょうね」
バーテン「当店自慢の、おすすめ商品ですよ。この注
 射器は」
エリ「いくら?」
バーテン「一万円です」
エリ「一万円? まぁ良いわ」
バーテン「(驚いて)良いの?」
エリ「私これでも広告会社で働いてるの。もうバリバ
 リのキャリアウーマン! 絵に描いたようなブラッ
 ク会社だけど、給料だけは良いのよね」
バーテン「ありがとうございます。では……」

   指を『パチンッ!』と鳴らすバーテン。
   BGMが流れる。

バーテン「こちらの注射器の持ち主。名前は橘雅人」
エリ「また橘!?」
バーテン「はい。彼は大学を卒業後、社会人になり、
 会社の意向でインフルエンザの予防接種を病院で受
 けることになりました。そして診察室で看護士に、
 『服を脱いで下さい』と言われた彼は上着を脱ぎ始
 めました。それから下着も全て脱いで、スッポンポ
 ン」
エリ「なんでー?」
バーテン「さぁ……。きっと注射が久しぶりだったか
 ら、予防接種がどういうものか分かっていなかった
 のでしょう。何と勘違いしたのか……スッポンポン
 になった彼を見た看護士も医者も全員、診察室から
 逃げ出した。だから彼は、自分で注射をうった」
エリ「それ……絶対うそでしょ。だいたい何で彼が注
 射器を」
バーテン「それはですね……(笑いだす)」
エリ「なに?」
バーテン「(笑って)モッコリ」
エリ「はぁー! 誰がモッコリよ」
バーテン「これは失礼いたしました。レディに向かっ
 て……むふっ」
エリ「ったく……ふふっ。でも、なんか楽しいかも。
 くっだらない思い出しかないのに。お酒以外で、こ
 んな楽しい気分になったのは久しぶり」
バーテン「ありがとうございます。『BARの一番の
 魅力はお酒や料理じゃない』っていうのが、父の口
 癖でしたから」
エリ「素敵なお父さんね」
バーテン「はい」
エリ「良いなぁー。私の父なんて……」
バーテン「大丈夫ですか? 顔色が悪いようですが」
エリ「だめだな。早く忘れたいのに、あの日のこと」
バーテン「あの日、ですか……」
エリ「ねぇ、他にはないの? 思い出! タチバナ
 マサト以外の思い出」
バーテン「ありますよ、こちらに……」
エリ「(驚愕)!? それは……」
バーテン「いかがなされましたか?」
エリ「どうして……どうしてそれを、あなたが持って
 いるのよ!?」
バーテン「それは企業秘密です」
エリ「だって、その笛は……」
バーテン「こちらの笛が? 何か?」
エリ「……さようなら」

   店から出て行こうとするエリの足音。
   マスターが、『ピィー!』と笛をふく。
   立ち止まるエリ、足音が止まる。

バーテン「あなた、この笛の音を聞いて、このBAR
 に来たのではありませんか?」
エリ「違う……」
バーテン「本当は、この笛にまつわる思い出話が聞き
 たくて、ウズウズしているのではありませんか?」
エリ「違う!」
バーテン「……」
エリ「その人の思い出は、いらない」
バーテン「そうですか……」
エリ「あなたは知ってるんだよね? その人が誰か?
 どんなことをしたのか……」
バーテン「はい。よーく知っております」
エリ「じゃあなんで? その笛の思い出を聞いて私が
 喜ぶことがあるって言うの!?」
バーテン「それは分かりません。ただ、よくも悪くも
 あなたよりは、真実を知っているかと……」
エリ「はー? その笛の持ち主は私の父。私を見殺し
 にした人! それが真実なの!」
バーテン「……(ふーん)」
エリ「しかも、見殺しにした挙げ句、私と母を見捨て
 て失踪した。お母さんは、女手一つで私を育てるた
 め、働いて働いて働いて。アイツが失踪した翌年、
 疲れ果てたお母さんは横断歩道を赤信号で渡って、
 トラックに跳ねられた……」
バーテン「……」
エリ「それから私は、誰も自分を知らない場所で、ひ
 とりぼっちで生きて来たの……」
バーテン「……」
エリ「そんな最低な思い出しかないその笛に、一体何
 があるっていうの!?」
バーテン「130円」
エリ「はぁ!?」
バーテン「あの日何が起こったのか。知りたいなら、
 こちらの笛を買って下さい。お値段は130円と、
 お手ごろ価格です」
エリ「そんなやっすい思い出なんだ……バカにしてる
 の?」
バーテン「持ち主の方による希望価格です。それに、
 値段が高い物だからといって、必ずしもお金に見合
 った価値があるとは限りません。逆もしかりです」
エリ「130……」
バーテン「はい。130円です」
エリ「払うわ」

   コイン(小銭)がカウンターの上で跳ねる音。

バーテン「ありがとうございます」

   指を『パチンッ!』と鳴らすバーテン。
   BGMが流れる。

エリ「なんで……(唖然)」
バーテン「こちらの笛の持ち主。名前は深海透。深海
 エリ、あなたのお父様です。深海透さんは、小学生
 の娘からもらったこの笛を、いつもお守り代わりに
 持ち歩いていました」
エリ「……」
バーテン「よっぽど、あなたからもらえたのが嬉しか
 ったのでしょう。彼は、娘も奥様も心の底から愛し
 ていた」
エリ「噓よ!? どうしてそんなデタラメな話をする
 の? アイツは私もお母さんも見捨ててどっか行っ
 ちゃったのよ! 愛してるわけないじゃない!」
バーテン「(語気を強めて)あなたのお父様は失踪し
 たんじゃありません!」
エリ「……どういうこと?」
バーテン「お父様は、川で溺れて、この世を去ったの
 です」
エリ「っ!?(絶句)」
バーテン「あなたとお父様が山に魚釣りに行った日、
 あなたは川に落ちて流されてしまった。その時、慌
 てたお父様は川に飛び込んであなたを助けようとし
 た。だけど、あなたのお父様はカナヅチでした。あ
 なたが泳げないのは父親ゆずり。そうですよね?」
エリ「はい……」
バーテン「それでも、あなたを助けたい一心で、あな
 たを追って川に飛び込んだ」

   川に飛び込む音。

バーテン「お父様は、溺れながらもポケットから笛を
 取り出した。そして助けを呼ぶために、手足をバタ
 バタさせながら必死に笛を吹き続けた。その笛の音
 に気付いた近所の中学生が、あなたが溺れているの
 を見つけて助けに来た。しかし、中学生が見たのは
 あなただけだった。きっと、あなたのお父様は中学
 生が来るのが見えて安心して力尽きたのでしょう」
エリ「何それ……そんなの絶対噓よ! お母さんは、
 あの人はどっか遠くに行ったって」
バーテン「そういうことにしたのでしょう。あなただ
 けには!」
エリ「……」
バーテン「あなたの命を助けようとしてお父様が命を
 落としたなんて、まだ幼い少女には言えなかった。
 いずれあなたにも本当のことを話すつもりだったと
 思います。けれど、お母様は……」
エリ「そんな……」
バーテン「この笛は、あなたの命を救った笛です。ま
 さにお守りです。たとえ値段が安くても、お金では
 絶対に買えない想いが詰まっているのです!」
エリ「この笛を、お父さんが……」
バーテン「はい。だから、決してやっすい思い出だな
 んてことは」
エリ「……あの」
バーテン「はい?」
エリ「笛……吹いてみても良いですか?」
バーテン「どうぞ。その笛はもう、購入したあなたの
 物です」
エリ「思いっきり。吹いてみても、良いですか?」
バーテン「ええ。あなただけのBAR TIMEですか
 ら」

   「ピィー!ピィー!」と、笛の音が鳴り響く。

エリ「お父さん……(涙)」
バーテン「あっ。ハンカチ、ハンカチ(匂いをかぐ)
 ちょっとくさいけど、まいっか。(イケメン風に)
 これ、使えよ」
エリ「誕生日……」
バーテン「はい?」
エリ「私の誕生日なの……1月30日は……」
バーテン「あ……1月30日で130円。あなたの誕
 生日は、今日でしたか。それはそれは、お誕生日お
 めでとうございます」
エリ「良かった。私は、ひとりぼっちじゃなかった」
バーテン「喜んでいただき、なによりです」
エリ「マスター、ありがとうございました」
バーテン「いえいえ、まぁ店としてはたいした売り上
 げにはなりませんが」
エリ「あの時は命を救ってくれて、本当にありがとう
 ございました」
バーテン「いえいえ、あなたの命を救ったのはそちら
 の笛であって、あなたのお父様です」
エリ「はい。そして、あなた……」
バーテン「へ?」
エリ「どっかで見た顔だと思ってたんだよな。川で溺
 れた私を助けてくれた中学生って、あなたよね?」
バーテン「違います」
エリ「ええ?」
バーテン「他人の空似です」
エリ「そんなことない。だって、あなたの名前だって
 覚えてる。ていうか、思い出した」
バーテン「やめて下さい」
エリ「あなたの……」
バーテン「(焦って)やめて、本当にやめて」
エリ「名前は……」
バーテン「まじで? お願い! あっ、ワイン買って
 来るから!」
エリ「タチバナ マサトー!」
バーテン「あぁ〜〜〜……(くずれ落ちる)」
エリ「まさか命の恩人が、変態だったなんて……」
バーテン「変態って言わないで。これでも紳士を目指
 しているので」
エリ「でも、どうして私がお父さんにあげた笛をあな
 たが持っていたの? しかも希望価格って、どうい
 うこと?」
バーテン「当店で扱っている商品は、全て亡くなった
 方々から、買い取った物なのです。本当は企業秘密
 ですけど」
エリ「は? それって死んだ人から物を買ってるって
 こと?」
バーテン「(重々しく)はい」
   沈黙。
エリ「まっ、またまた〜。そんな訳ないじゃん! だ
 ったらさ、あなたも死んでることになるのよ!」
バーテン「1千万です!」
エリ「1千万!?」
バーテン「それが知りたいのなら、このBARを買っ
 て下さい。私とこの店の思い出を」
エリ「良いわ!」
バーテン「うそー?」
エリ「カードで良い?」
バーテン「いやいやー。ここを売ってしまったら、私
 には行く所がありません。それに、このBARには
 とてつもなく大きな秘密が」
エリ「大丈夫よ」
バーテン「な、何が?」
エリ「私がこのBARを守るから」
バーテン「はい……?」
エリ「この店も、あなたとあなたのお父さんとの思い
 出も、私が守ってみせる。あなたが私とお父さんと
 の思い出を大切に守ってくれたみたいに、私も絶対
 にあなたのことを忘れない。だから話して。あなた
 と、このBARの思い出」
バーテン「……本気ですか?」
エリ「うん! 明日からこのBARのマスターは、
 わ・た・し」
バーテン「(ため息)かしこまりました」

   指を『パチンッ!』と鳴らすバーテン。
   BGMが流れる。

ナレーター「こうして、ひとつの物語がおわり、また
 新たな物語が始まりました。そんな風に、誰かの思
 い出は、受け継がれていくのかもしれませんね。そ
 して、次の物語の主人公はあなたかも」

   ドアが開き、揺れるベルの音。

エリ「いらっしゃいませ」

                    fin

「深夜3時のBAR TIME」(PDFファイル:280.65 KB)
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コメント

  • はじめまして
    翻訳家をしております、岩崎と言います

    突然なのですが、唐下さんの脚本を海外の映画祭に出品したいとは思いませんか?
  • 岩崎さま

    はじめまして、唐下と申します。
    海外の映画祭に大変興味はありますが、
    今はまだ出品したいとは考えておりません。

    私の脚本に興味をもっていただき、
    ありがとうございます!
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