ニート親子のミッション・インポッシブル! コメディ

【ニートとダメ親父の“家族奪還”計画】 家出したニートが近所で出会ったのは、物心つく頃には死んだと聞かされていた父親だ。多額の借金を大地主の祖母に肩がわりしてもらう代わりに、父は20年前に町を追い出され、二度と家族に近づかないことを約束させられていた…。
唐下 浩 67 5 0 04/01
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第一稿

タイトル
「ニート親子のミッション・インポッシブル!」

               作 唐下 浩

   人  物
 沢田隆文(25)ニート
 沢田鷹司(62)隆 ...続きを読む
「ニート親子のミッション・インポッシブル!」(PDFファイル:221.10 KB)
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タイトル
「ニート親子のミッション・インポッシブル!」

               作 唐下 浩

   人  物
 沢田隆文(25)ニート
 沢田鷹司(62)隆文の父。元役者
 沢田裕子(52)隆文の母。専業主婦
 沢田清花(28)隆文の姉。小学校の教師
 沢田千枝(80)隆文の祖母。大地主

○ 沢田家・外観
   風情漂う平屋建ての古民家。
   立派な門構えに『沢田家』の表札。

○ 同・隆文の部屋
   壁一面にアイドルやアニメのポスター
   が貼られている。
   スマホでゲームをしている沢田隆文
  (25)。画面に、お姫様を抱えた勇者
   が映る。
   隆文、飛び跳ねて、
隆文「これだったんだ……」
   と、部屋から飛び出す。

○ 同・居間
   十二畳の和室。
   沢田裕子(52)と沢田清花(28)
   が、こたつでミカンを食べている。
   居間の隅には仏壇が置かれ、沢田鷹司
   (享年38)の遺影が飾られている。
   勢い良く襖を開けて登場する隆文。
   拳を突き立てて、
隆文「おれは、勇者になる!」
   呆れた表情を浮かべる清花と裕子。
   隆文、自信満々な笑みで親指を立てる。
隆文「勇者になって、セクシーなお姫様と結
 婚することにしたんだ」
清花「アンタ、バカ? 今時の小学生だって
 そんなこと言わないよ」
裕子「隆文……現実には勇者は存在しないの」
隆文「ちっ、ちっ、ちっ。ここにいるのさ。
 未来の勇者が」
清花「うわっ。コイツ本気で言ってるよ。『お
 れは勇者になる!』って、ニートの分際で」
裕子「そんな言い方よくないわ。ニートに夢
 があっても良いじゃない」
清花「お母さん、甘やかしちゃ駄目。弟がニ
 ートって父兄にばれたら、私仕事クビにな
 っちゃうんだから」
隆文「ニートニート言うな!」
清花「じゃあ何か。今のアンタは何者なの?」
隆文「今はまだ……旅人?」
清花「は? 旅人? 引きこもりのニートが、
 いつ旅をしたって言うの?」
隆文「うるさい! そんな理屈っぽい性格だ
 から、婚約者にも逃げられるんだよ!」
   清花、手にしたミカンを握りつぶす。
   恐怖で後ずさりする隆文。
裕子「ニート隆文は、地雷を踏んだ」
   清花、血相を変えて隆文に詰め寄る。
清花「アンタねー。大学を卒業して三年間も
 ニートって、恥ずかしくないわけ!?」
隆文「一回就職したじゃん! 大手の牛丼チ
 ェーンに……」
清花「それもすぐ辞めたよね。何で?」
隆文「価値観の違い?」
清花「お前は、ミュージシャンか!? 社会
 をなめるな!」
   清花、隆文にプロレス技をかける。
隆文「イタイイタイっ! じゃあ姉さんは、
 やりたくもない仕事を続けることが幸せだ
 と思うの!?」
清花「当たり前でしょ! どんな仕事でも長
 い間続けることで、多くのことを吸収して
 成長できるの」
隆文「それがブラックな現場でも?」
清花「アンタが好きなアニメやゲームにだっ
 て、毎日血へど吐きながら命を削り続けて
 いる職人が何人もいるんだよ」
隆文「おれだって命がけでゲームしてるよ!」
清花「黙れニート!」
   清花、コタツをひっくり返す。
清花「税金払ってないニートはね、人様が作
 ったモノを使う資格はないって言っている
 の! よってお前は、道路も歩くな!」
隆文「ひどすぎる。全国のニートに謝れ!」
裕子「ちょっと、お姉ちゃん。そこまで本当
 のことを言ったら、隆文が可哀想よ」
隆文「母さん……?」
   と、目をパチクリさせる。
千枝の声「隆文っ!!!」
   隆文が振り返ると、沢田千枝(80)
   が毅然と立っている。
隆文「ば、ばあちゃん……?」
   満面の笑みを浮かべる千枝。
   隆文、安堵の息を吐いて、
隆文「おれの味方は、ばあちゃんだけだよ」
千枝「隆文は勇者になりたいのかい?」
隆文「うん」
千枝「警察官でも消防士でもなくて、勇者に
 なりたいのかい?」
隆文「まぁね」
千枝「そうかい……」
   千枝、隆文を鋭く睨みつけて、
千枝「この、沢田家の恥さらしが!」
   ショックのあまり唖然とする隆文。
隆文「ばあちゃんまで……」
清花「ニート、ニート……」
   清花と裕子と千枝が、手拍子をする。
清花と裕子と千枝「ニート、ニート……」
隆文「やめろー!」
   手拍子が止まる。
隆文「みんな勝手なことばかり言って。おれ
 だって、本当は姉さん達みたいになりたか
 ったよ」
   清花・裕子・千枝の順で指さす。
隆文「姉さんは小学校の先生。母さんは、カ
 リスマ専業主婦。ばあちゃんは、この町の
 大地主……」
   隆文、鷹司の遺影を指さして、
隆文「父さんだって、優秀な銀行員だったん
 でしょ。半沢直樹のモデルが父さんだって
 言われるぐらいだもんね」
   隆文、両手で顔を覆う。
隆文「おれだけ何の取り柄もないニートだな
 んて。きっとおれは、この家の……沢田家
 の子じゃないんだ……」
清花「……」
裕子「……」
千枝「……」
隆文「誰か否定してよっ!!!」
   目に涙をためた隆文、家を飛び出す。
   ドッと笑う清花と千枝。
   裕子、仏壇の前に座り鷹司の遺影を見
   つめる。

○ 道
   涙を流しながら全力で走る隆文。
裕子の声「本当……アナタそっくりね」

○ 牛丼屋・外観

○ 同・店内
   カウンターで、牛丼をヤケクソな感じ
   で食べている隆文。
隆文と鷹司「すみません、玉子ください!」
   隆文と、隣の席の沢田鷹司(62)の
   目が合う。鷹司の頭はドレッドヘアで
   格好はレゲエファッションである。
   鷹司の手から箸が落ちる。
鷹司「隆文……」
   首を傾げる隆文。
隆文「どこかでお会いしましたっけ?」
鷹司「やっぱり、隆文なのか……?」
   鷹司の目からボロボロと涙がこぼれる。
   隆文、訝しげに鷹司を見つめる。
隆文「……いえ、人違いです」
   隆文、席を立ちその場から離れようと
   するが、立ち止まる。
隆文「どこかで見たような顔だな……」
鷹司「隆文。おれは……お前の父だ」
隆文「はー!?」
   眉をひそめる隆文。
   ×   ×   ×
   38歳の鷹司の顔(遺影)が、徐々に
   老けて、髪がドレッドヘアに変わる。
   ×   ×   ×
   隆文、目の前の鷹司を指さす。
隆文「と、と、父さん!?」
鷹司「あぁ」
隆文「お化けだ! レゲエのバケモンだ!」
鷹司「そうか。やっぱりまだ、死んだことに
 なっているのだな……」
隆文「死んだことに? なにそれ、いったい」
千枝の声「儂が説明しよう」
   カウンターで牛丼を食べている千枝。
隆文「ばあちゃん!? いつの間に」
   鷹司、舌打ちをして、
鷹司「まだ生きていたかババア……計算外だ」
   千枝、鷹司の髪を引っ張って、
鷹司「イタイイタイっ!」
千枝「この男はね。隆文が産まれた直後に、
 莫大な借金を背負ったんだよ」
隆文「借金? 銀行員も借金するの?」
千枝「銀行員っていうのは、作り話さ」
隆文「ええー!?」
千枝「確か売れないミュージシャンだったか」
隆文「ミュージシャン? こんなのが?」
   照れくさそうに頭をかく鷹司。
千枝「真面目に働きもせず、夢とかクソとか
 にうつつをぬかしてな。挙句に見え透いた
 ハニートラップに引っかかりおって。儂が
 借金を全額肩代わりしたのさ」
隆文「やっぱりばあちゃんは、優しい人だね」
千枝「沢田家と縁を切る条件でな」
隆文「!?」
千枝「ついでに死んだことにして、家族の前
 に二度と姿を見せないことを約束させた」
隆文「そんな……」
   鷹司、千枝に土下座する。
鷹司「ばば様! もう一度だけ、沢田家の一
 員としてやり直すチャンスをください!」
千枝「良いだろう。儂も鬼じゃない」
鷹司「ああああぁ、ありがとうございます!」
千枝「お前が、隆文を立派な社会人にするこ
 とができたら、沢田家に帰ることを許そう」
隆文と鷹司「えっ?」
   二人が恐る恐る目を合わせる。
二人「……(店員に)玉子まだですか?」
   店外を、牛と鶏が駆けぬけて行く〈続〉。

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