遍路ストリップ ドラマ

最推しの元ストリッパーとその母親の遍路に同行する話。 シナリオセンターの課題【別れの一瞬】をきっかけに書いたものです。 しかし、ペラ36枚あります。
きし 40 0 0 01/29
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第一稿

人物
 森史乃(29) 会社員
 アカネ(美希)(41~7) ストリッパー
 木沢紀子(62~28) アカネの母
 

○ストリップ劇場・客席(夜)
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人物
 森史乃(29) 会社員
 アカネ(美希)(41~7) ストリッパー
 木沢紀子(62~28) アカネの母
 

○ストリップ劇場・客席(夜)
   薄暗い店内。ステージ上にはストリッ
   パー。ストリッパーの生足の向こう、
   客席で森史乃(29)が涙を流している。

○同・待合(夜)
   壁一面を埋め尽くすキスマークとサイ
   ン、別れの言葉。
   アカネ(41)を含むストリッパーたちが
   壁際に並んでそれぞれのファンと写真
   を撮っている。
   史乃、アカネの前で花束を持って号泣
   している。
   アカネ、史乃から花束を受け取ろうと
   する。史乃、咄嗟に花束を引いて、
史乃「ほ、本当に辞めちゃうんですか?」
アカネ「うん」
   史乃、花束を抱えて更に号泣する。   
アカネ「……変なの。ストリップなんて消え
 るだけの文化じゃない。どうして――」
史乃「だって、私の! 生涯の推しだから!」
   大声量の史乃、場の注目を集める。
史乃「アカネさんは希望なんです。仕事で、
 家で、もみくちゃにされたって、アカネさ
 んがいるから! アカネさんに会えるから
 がんばれた。なのに……(天を仰いで)助け
 てください。何でもするからあ」
アカネ「大袈裟だってー……はいはい」
   アカネ、史乃の背中を擦りながら、
アカネ「ねえ。あなた、車運転できる?」
   史乃、涙目を瞬かせてアカネを見る。

○森家・リビング
   カーテンから漏れる日光。
   史乃の夫が立っている。片手にはメモ。
   【私にもいろいろあります。しばらく
   帰りません。】とある。

○山道
   けたたましい着信音。
   細い山道の途中、急停止する車。

○車中
   運転席扉のポケットで震えるスマホ。
   車内には木沢紀子(62)の泣き声が響い
   ている。
紀子「嫌ー。もう嫌。降ろしてよ。帰らせて」
   助手席のアカネ、見下した表情で紀子
   へ舌打ちする。
   史乃、肩を強張らせて浅い呼吸を繰り
   返している。
アカネ「何?」
史乃「すみません。つい。ビックリして……」
   史乃、スマホの電源を切る。
   史乃、紀子を振り返って、
史乃「ごめんなさい紀子さん。もう大丈夫で
 すからね。車、ゆっくり進めますからね」
紀子「はい」
アカネ「いいよ。放っといて」
史乃「まあまあ」
   史乃、車を発進させる。
   紀子、窓の景色を見ている。
   紀子の膝で納経帳が揺れている。

○太龍寺・山門
 
○同・本堂
   僧の読経が響いている。
   アカネ、毛先を気にするついでに史乃
   と紀子を見る。
   史乃、真剣にお経を棒読みしている。
   紀子は口をパクパクさせて手を合わせ
   ている。
 
○同・納経所   
   太龍寺の朱印がされた納経帳。
史乃「よし」
   納経帳を閉じる史乃。
 
○同・順路
   本堂から山頂駅までの道中。
   車椅子の紀子、爪先で歩いて進む。
   アカネ、紀子の後ろを面倒そうに歩く。
   紀子、止まって、
紀子「押してください」
   アカネ、無表情に紀子を見ている。
紀子「押してください。押してよ」
   紀子、両手で顔を覆って泣き出す。
   アカネ、脇の石階段をふと見つめる。
   遠い目で紀子を見るアカネ。

○アカネの回想・木沢家・玄関・中(朝)
   (回想始まり)
   少し開いた玄関扉の前、紀子(28)がア
   カネ(7)を抱きしめて泣いている。
紀子「美希ちゃんごめんね。我慢よ、我慢」
   アカネ、玄関扉の隙間から外を見る。
   小学生二人が笑い合いながら登校して
   いる。
   アカネ、泣いてる紀子に視線を移す。
   涙目で小さな手を振り上げるアカネ。

○書類と写真
   【調査結果】と書かれた表紙とアカネ
   の隠し撮り写真がベッドに投げられる。

○病院・紀子の病室・中
   ベッドには虚ろに前を向く紀子(62)。
   アカネ(41)、小脇の封筒をベッドへ投
   げようとするが、中身があることに気
   づいて確認する。
   納経帳である。
   アカネ、ページを捲る。途中から白紙。
   アカネ、納経帳の陰で紀子を睨む。
   (回想終わり)

○元の太龍寺・順路
   泣いている紀子を見下すアカネ。
   アカネ、脇の石階段を暗い目で見る。
紀子「もうやめてください。虐めないでくだ
 さい。帰らしてよ」
   アカネ、紀子の元へ歩み寄り、車椅子
   に手を伸ばす。
史乃の声「アカネさーん!」
   アカネ、手を引っ込める。
   史乃、石階段下の山頂駅前で大きく手
   を振っている。
   史乃、急いでカバンから納経帳を取り
   出して見せる。
   アカネ、気まずそうに目を逸らす。
   史乃、石階段を駆け上がって紀子とア
   カネに合流する。
   史乃、納経帳を開いて、
史乃「ばっちり、貰ってきました」
アカネ「ええ。ありがとう」
史乃「はい、紀子さん。どうぞ」
   史乃、紀子の手に納経帳を持たせる。
   史乃、カバンからもう一冊取り出して、
史乃「見てください。私も――」
   史乃、納経帳を開いて示し、
史乃「貰っちゃいました」
アカネ「二十一番よ? ここ。中途半端じゃ
 ない?」
史乃「細かいことはいいんです」
   史乃、納経帳をカバンに仕舞いながら、
史乃「さあ紀子さん、帰りましょうか」
紀子「はい……これ、持っといてください」
史乃「はい。じゃあ預かりますね」
紀子「押してください」
史乃「はい。じゃあ行きますよ」
   山頂駅へ進む史乃と紀子。
   冷ややかに紀子を見るアカネ。
 
○宿・中(夜)
   史乃、納経帳を捲る。二十三番札所ま
   で朱印されている。
   紀子がイビキをかいて寝ている。
   アカネ、紀子の顔まで布団を上げる。
   史乃、美希を見ながら、
史乃「アカネさん」
アカネ「ん?」
史乃「聞いていいですか?」
アカネ「何?」
史乃「どうしてお遍路なんですか? お母さ
 んと」
アカネ「……別に。暇になったから――」
   史乃、アカネを見つめている。
   アカネ、史乃の視線を受けて目を逸ら
   すが、史乃の膝上の納経帳をふと見て
   しまう。
   ×  ×  ×
   (フラッシュ)
   捲られていく納経帳。途中から白紙。
   ×  ×  ×
アカネ「……一生、関わりたくなかったんだ
 けどさ――」
   史乃、アカネを見つめる。

○アカネの回想・病院・紀子の病室・中
   アカネ、紀子の手に納経帳を持たせる。
   紀子、虚ろにアカネを見ている。
アカネの声「この人、このまま死ぬんだって
 思ったら――」
   不敵に笑うアカネ。
アカネの声「腹立ったのよね」

○元の宿・中
   驚いた表情の史乃。
   遠い目をして語るアカネ。
アカネ「結局弱いまま。何もしないのかって」
   アカネ、布団を被った紀子を見つめて、
アカネ「じゃあいっそ引き取って、引き摺っ
 て、這いずらしてでも周らそうと思って」
   しばらく沈黙。
   アカネ、史乃に笑って、
アカネ「酷い? 幻滅した?」 
史乃「え? いや、そんな……」
   史乃、納経帳を撫でながら、テーブル
   のスマホに視線を移す。
史乃「誰かの弱さを許せないことってあると 
 思います……(呟いて)私も、きっと非情で
 す」
   唇を結ぶ史乃。
   ×  ×  ×
   紀子のイビキが響いている。
   布団の中、スマホ画面をスクロールし
   ている史乃。
   史乃、スマホ電源を消して天井を仰ぎ、
史乃「帰らなかったら、怒るか? ……いや、
 ないな」
   溜息し目を固く閉じる史乃。
   ×  ×  ×
   布団の中、起きているアカネ。

○最御崎寺・山門(朝)

○同・納経所(朝)
   史乃、紀子の手に納経帳を持たせる。
史乃「はい、紀子さん。どうぞ」
   紀子、史乃に納経帳を返して、
紀子「持っといてください」
史乃「いいえ。自分で持つんですよー」
紀子「自分で持ちます。押してください」
史乃「ええー……」
   史乃、アカネの様子を窺う。
   アカネ、史乃と紀子のやりとりを無関
   心に見ている。
   史乃、紀子と少し距離をとって、
史乃「紀子さん、とりあえずここまで。ここ
 まで来てみましょう」
   紀子、両手で顔を覆って泣き出し、
紀子「できません。できません。押してー」
史乃「大丈夫。できる、できる」
   紀子、泣いて少しずつ進みながら、
紀子「できません。押してよー。押して。無
 理ー。無理ー(などと言いながら史乃の場所
 まで来て泣き止み)あ、できました」
史乃「紀子さん、できたじゃないですか!」
紀子「できましたわ」
史乃「じゃあ、押しますねー」
紀子「お願いします」
   順路戻る史乃と紀子。
   アカネ、紀子と史乃を見つめている。
 
○森家・ベランダ
   史乃の夫がベランダへの窓を開ける。
   ベランダから景色を見る史乃の夫。
   ×  ×  ×
   風で捲れる窓のカーテン。その先、ベ
   ランダには誰もいない。

○宿・中(夜)
   布団の中、スマホの電源をつける史乃。
   恐ろしい件数の着信履歴。
   硬直する史乃。
   × × ×
   部屋の隅で電話する史乃。
史乃「飛び降り⁉」
   後ろの様子を見てから話し出す史乃。
史乃「え、それで……はい、はい。そうです
 か。ありがとうございます。……これから? 
 ……いや! これからは、ちょっと」
   後ろからスマホを取るアカネの手。
アカネ「遠いですけど、すぐ行きます」
   史乃、スマホへ手をのばし、
史乃「ちょっと」
アカネ「はい。では」
   アカネ、史乃にスマホを返して、
アカネ「気にしないで。車で行って」
史乃「命に別状はないって言ってて、だから
 ――」
アカネ「行ってあげて。その方がいい」
   黙って俯く史乃。
アカネ「悪かったわね。思いつきで、気分で
 連れてきて」
史乃「そう! だって車の運転とか……」
アカネ「些細なトラブルよ」
史乃「でも――」  
アカネ「あなたを連れてきたのは……」
   アカネ、紀子を見る。アカネの視線に
   つられて紀子を見る史乃。
アカネ「殺しそうで嫌だったの。それだけ」
   史乃、唇を曲げて、
史乃「嫌、こんな……嫌です! 私は、帰り
 ません!」
   布団を頭まで被る史乃。
   史乃の布団にのせられるアカネの手。
アカネの声「ありがとう」
   涙目を閉じる史乃。
   ×  ×  ×
   朝、布団から起き上がる史乃。
   アカネと紀子はいない。
   枕元に史乃の納経帳。
   戸惑って手に取る史乃。
   朱印の次ページ。【ありがとう。気を
   つけて】というメッセージとアカネの
   サインとキスマークがある。サインと
   キスマークが史乃の涙で滲んでいく。

○車中
   運転するアカネ。助手席には紀子。
   紀子、ふと呟いて、
紀子「あなたは美希ちゃんでしょ?」
   アカネ、戸惑って紀子へ振り向く。
紀子「そうでしょう? 美希ちゃん」
   アカネ、紀子を遠い目で見る。
   ×  ×  ×
   (フラッシュ)
   紀子(28)がアカネ(7)を抱きしめて
   泣いている。
紀子「美希ちゃんごめんね。我慢よ、我慢」
   アカネ、泣いてる紀子に視線を移す。
   アカネ、小さな手で紀子の頭を抱きし
   める。
   ×  ×  ×
   運転するアカネ(41)、紀子(62)を見な
   いまま、
アカネ「もう、そう呼んでるのはあなただけよ」
   アカネ、ハンドルを握る手に力をこめ
   る。
   ×  ×  ×
   細い山道を行く車。

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