人魚は雪の夢を見る 恋愛

風景写真ばかり撮っていた昇は雪山にあこがれる雪奈と出会う。距離を縮める二人だがその先には大きな障害があった。忽然と姿を消した雪奈が抱える願いとは。
鈴木夏櫻 8 1 0 11/26
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第一稿

【登場人物】
張谷昇‐はりやのぼる(10・21・23)大学生
岡崎雪奈‐おかざきゆきな(21)カフェアルバイト
曽根誠‐そねまこと(21)昇の友人
田畑‐たばた(20)昇の ...続きを読む
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【登場人物】
張谷昇‐はりやのぼる(10・21・23)大学生
岡崎雪奈‐おかざきゆきな(21)カフェアルバイト
曽根誠‐そねまこと(21)昇の友人
田畑‐たばた(20)昇の友人
植木‐うえき(65)大学講師
東‐あずま(34)カフェ店長
聡子‐さとこ(46)雪奈の母
辰巳‐たつみ(47)雪奈の父
匡彦‐くにひこ(40・50)昇の父
汐見‐しおみ(20代)看護師
学生1/学生2/学生たち/カップル/山岳部/看護師/医者/アナウンサー/駅員(声)/救助隊/病院の受付/水族館の受付/通院患者/入院患者

【シナリオ】
〇雪山・斜面・現在(昼)
   吹雪の中に動く影。
   張谷昇(21)、顔を上げる。
   背負っているリュックに丸まった毛布をロープでくくりつけている。
   昇、足を滑らせる。
   ロープがほどけて毛布が転げ落ちていく。
   昇、急いで追いかける。
   昇、毛布を抱きかかえ、足でブレーキをかける。
   しばらく滑り落ちたあと、体が止まる。
   昇、ほっと息を吐く。
   毛布から白い腕が出ている。
   昇、毛布を包み直してリュックに縛る。
   昇、荷物を背負い直し、歩き出す。
   吹雪で昇の姿が見えなくなる。
タイトル「人魚は雪の夢を見る」

〇公園・池・以降半年前(朝)
   池で赤い鯉が跳ねる。
   カメラを構えている昇、木洩れ日の写真を撮る。
   昇、写真をチェックし終わると荷物をまとめて公園を出る。

〇大学・講堂(朝)
   壁の周りに学生が集まっている。
   視線の先に雪をかぶった桜の写真。
   その下に最優秀賞作品「雪化粧」撮影者張谷昇と書かれたボード。
   昇、通り過ぎる。
   写真を見ていた曽根誠(21)が昇に気づく。
誠「昇、昇!」
   昇、立ち止まって振り返る。
誠「お前のだろ、なに知らん顔してんだよ」
昇「(写真を見て)いつものことだし」
誠「(呆れて)そうだけどさあ……。あれいつ撮ったんだよ」
昇「(適当に)去年の冬休み?」
誠「嘘つけぇ。お前、休みまるまる山行ってただろーが」
昇「そうだったかな。じゃあ、いつのだろ」
誠「撮った覚えないやつで最優秀賞取んなよ」
昇「誠は?」
   誠、携帯を昇に突き付ける。
誠「佳作だよ、か・さ・く!」
   画面には佳作の欄に曽根誠と書かれている。
昇「よかったじゃん」
誠「嫌味か」
   誠、携帯をしまう。
   二人、歩き出す。
誠「今年も行くの?」
昇「山? あー、うん行くよ」
誠「じゃまたしばらくこっち来ないんだな」
昇「たまには顔を出すよ」
誠「写真部の道具とスタジオ使う時だけだろ」
昇「まあね」
誠「あーあ、あんないい写真撮れるなら俺も行ってみようかなー」
昇「誓約書貰って来ようか?」
誠「誓約書? (笑って)なに、死んでも文句言いませんっていうやつとか?」
昇「そうだよ」
   誠、顔が引きつる。
誠「……マジ?」
   昇、頷く。
誠「やっぱ遠慮しとくわ」

〇同・廊下(朝)
   歩く二人。
   突き当りの教室の前に二人の学生、入り口をふさいでいる。
   誠、近づく。
誠「どうした?」
学生1「(振り返って)休講なんだって」
学生2「そう、いきなり言われてもねー」
誠「えーそうなんだ」
学生1「そう。教室誰もいなくって、グループメッセ見たらちょうど来てた」
   誠、教室を覗く。
学生2「私たち図書館で課題しようかなって思っててー」
学生1「よかったら一緒に来る?」
誠「あ、行く行く。昇は?」
昇「帰ろうかな」
誠「えっ⁉ 来たばっかりだろ」
昇「授業がないならその時間使って写真を撮るよ」
   昇、その場を去る。
   呆然と見ている三人。
誠「……天才の考えてることはわかんねーなあ」
学生1「張谷くんって、なんか……」
学生2「ねー、なんかねー」
学生1「私、張谷くんの写真ちょっと苦手ー」
誠「なんで?」
学生1「なんていうかー、きれいすぎて怖い? みたいな」
学生2「あ、それちょっとわかるかも」
誠「へえー……」

〇同・講堂(朝)
   桜の写真の前に講師の植木(65)が立っている。
   昇、後ろを通り過ぎる。
   植木、昇に気がつく。
植木「張谷くん」
   昇、足を止める。
昇「……、(振り返って)植木先生」
植木「(写真を見上げ)いい写真を撮りましたね」
昇「ありがとうございます」
植木「けど、今回も人物ではないですね」
昇「……はい」
   植木、昇を見る。
植木「今度の課題ですが」
昇「(渋い顔)はい」
植木「今回出さなければ単位は差し上げられませんので」
昇「……」
植木「最優秀賞をどれだけ取ってもそれは結果であって、単位に繋がりません。与えられた課題
 をきっちりこなしてくださいね」
   植木、昇をじっと見て。
植木「張谷くんの人物写真、期待してます」
昇「……はい……」
   昇、会釈して去る。
   植木、見送る。

〇駅・ホーム(朝)
   昇、立っている。
駅員(声)「まもなく電車が参ります。白線の内側にお下がりください」
   昇、瞬きをする。
   × × ×
   フラッシュバック。
   展示会。
   写真の前に人だかりができている。
   離れたところに立っている昇(10)。
   隣にいる父の匡彦(40)が口を開く。
   × × ×
   電車がホームに入ってくる。
   昇、目を開ける。

〇カフェ・店内(朝)
   ジャズが流れる店内。
   カウンターの壁に大きな雪山の写真。
   写真を見つめる岡崎雪奈(21)。
   バックヤードから店長の東(34)が出てくる。
   東、コーヒーポットの火を止める。
東「好きだねー」
雪奈「(はっとして)すみません、つい」
東「いいよ、どうせお客さん来ないし。コーヒー飲む?」
   東、食器棚からマグカップを出す。
雪奈「いただきます」
   雪奈、席に座って店内を見渡す。
   がらんとした店内。
東「はいどうぞ」
   東、コーヒーが入ったマグカップを差し出す。
雪奈「ありがとうございます」
   雪奈、受け取って一口飲む。
東「たぶんそろそろ遊びに来るんじゃないかなあ」
雪奈「えっ知り合いなんですか?」
東「うん、仲良いよ。ゆきちゃんが入る前は頻繁に来てたし」
雪奈「えっここに? すごい! 有名人が通う店じゃないですか」
東「いや、有名人ではない……? どうなんだろう」
雪奈「写真集とか出してないんですか? 店長と仲いいって言うなら、いい感じのおじさまです
 よね」
東「(笑いを我慢)いや~?」
   東、カウンターの下の冷蔵庫からホールケーキを取り出す。
雪奈「店長?」
   切り分けて皿に盛り、雪奈に差し出す。
東「食べなー」
雪奈「えっなんですか!」
東「昨日作った寒天もあるよ」
   東、容器に入った寒天を出す。
   東、スプーンを雪奈に差し出す。
   雪奈、つい受け取る。
雪奈「なんで! そんなことしてるから赤字なんですよ!」
東「え? ロールケーキも欲しい?」
   ロールケーキを出す東。
雪奈「だからなんで」
   店の扉が開く。
東「いらっしゃーい」
   昇、顔をのぞかせる。
昇「どうも、こんにちは」
東「あ! 張谷くん! おいでおいで」
   東、ロールケーキを掲げる。
   店に入る昇、雪奈に気づいて数秒見惚れる。
東「食べる?」
昇「(座りながら)いただきます」
   東、ロールケーキを三等分に切る。
   昇と雪奈、お互いが気になる。
   目が合う二人。
   無言の末、頭を下げる。
   東、ロールケーキが乗った皿とフォークを出しながら。
東「こちらバイトのゆきちゃん」
雪奈「(昇に向かって)岡崎雪奈です」
東「で、この子が張谷くん」
昇「(少し会釈)張谷昇です」
   雪奈、会釈。
雪奈「常連さんですか?」
昇「いや、常連ってほどでも」
東「(写真を触りながら)この子、写真の子」
雪奈「え? 人写ってませんよね?」
   東、笑う。
   雪奈、助けを求めるように昇を見る。
昇「(東に)なんです?」
東「この写真好きなんだって」
昇「ああ、それ。嬉しいですけど、もう結構古いんで変えて欲しいんですが」
東「だってここに熱狂的ファンがいるから」
雪奈「え?」
昇「じゃ差し上げます」
雪奈「えっ?(あっ、と理解)」
東「え~? ならとっておきのを出してよ」
昇「そういうのないんですよ」
   昇、分厚いファイルを取り出してカウンターに置く。
   東、ファイルをパラパラめくる。
東「すごい量。見るだけで今日が終わるよ」
昇「そのファイルもう使わないので持っててもらってもいいですよ。気に入ったのがあったら言
 ってください。大きいサイズで刷ってくるんで」
東「もらっていいの? やったねゆきちゃん」
雪奈「えっ」
昇「別にいいですけど」
雪奈「えっ⁉」
   東と昇、雪奈の反応に笑う。
雪奈「じゃ、なにかお返しを。私ができることならなんでもやりますので!」
   昇、考える。
昇「……あ、あーいや大丈夫です」
雪奈「いや、なにかありますよね!」
昇「でも」
雪奈「言って!」
昇「……、今度の課題にモデルが必要なんですよ」
雪奈「へー。(気づく)え?」
東「なんか面白そー」

〇大学・食堂(昼)
誠「えっ、もう見つけた⁉」
昇「うん」
誠「はっやあ……。いや遅いのか? 締め切りもうすぐだし」
   昇、パンの袋を開ける。
昇「お願いするつもりはなかったんだけど、なんかまあちょうどいいかなって」
誠「恵まれてんねぇ。俺なんか声掛けから撮影まですげえ時間かかったのに」
   誠、学食を食べる。
田畑「いつもナンパしてるのに苦労したんだ」
   田畑(20)、一つ席を空けて座る。
誠「ちげーし、勝手について来るだけだし。田畑、そういうお前はどうなんだよ」
   田畑、にんまり笑う。
田畑「ヨユー」
誠「はっ?」
田畑「あたしにはコスプレ仲間がいるんで」
昇「衣装作ったりしたの?」
田畑「もちろん。モデルになってくれるからには最高に可愛くしなきゃ」
昇「へー」
誠「そうだ! (田畑に)今度また人物だったらお前が俺のモデルすればいいじゃん」
田畑「やだよバカ。死んでもしねーよバカ」
   昇の携帯が震える。
   昇、確認して立ち上がる。
昇「ごめん、もう行く」
誠「おう」
   昇、片づけをして食堂を出る。
誠「楽しそうじゃねーな」
田畑「あ、なに? あいつ撮影すんの? 風景しか撮らないんじゃなかったっけ」
誠「今回出さないと単位貰えないんだってよ」
田畑「ふーん」

〇同・写真部撮影スタジオ・外(昼)
   昇、しゃがんでいる。
   昇、ゆっくり目を閉じる。
   × × ×
   フラッシュバック
   展示会。
   昇の足元に壊れたカメラ。
匡彦「お前はもう二度と──」
   × × ×
雪奈「着替え終わったよ」
   昇、目を開けて振り返る。
   雪奈、白いワンピースを着ている。
   昇、立ち上がって中へ入る。

〇同・内(昼)
   雪奈、照明が当たる場所で待っている。
   昇、目を伏せる。
   カメラを握り直す。
   昇、深呼吸をして前を向く。
   × × ×
   昇、シャッターを切る。
   雪奈、表情が硬い。
   昇、カメラを下ろし、パソコンで撮った写真をチェック。
   雪奈、覗く。
雪奈「やっぱり私みたいな素人じゃ難しいね」
昇「……いや」
雪奈「でもね、正直ちょっと楽しい」
   昇、雪奈を見る。
雪奈「好きなことしてるんだなって、昇くんを見てて思うの。そうしたらなんか私も楽しくなっ
 てきちゃって。ごめんね、全然上手じゃないのに」
   昇、首を振る。
   昇、カメラを見つめたあと、雪奈を見る。
昇「もう一回、いい?」
雪奈「(頷く)頑張る」
   昇、カメラを構える。
   雪奈、移動する。
   ピントを合わせてシャッターを切る。
   顔を上げる昇、その表情はどこかすっきりしている。
   昇、再びカメラを構える。
   雪奈、自由に動く。
   昇、シャッターを切っていく。
   お互いに撮影が楽しくなっていく。

〇マンション・昇の部屋(夕)
   昇、パソコンで写真を見ている。
   昇、顔がほころぶ。
   写真部共有ファイルの画面を出す。
   一枚の写真を選択する。
   昇、アップロードが押せない。
   悩んだ末、データを変える。
   アップロードしましたの文字。
   昇、パソコンを閉じる。

〇大学・教室(夕)
   雑談する学生たち。
   遅れて教室に入ってくる昇。
   その瞬間、静まり返る。
   昇、気にせず適当な席に座る。
   学生、ひそひそ話。
   植木が教室に入ってくる。
   全員、席に着く。
植木「皆さんそろっていますね」
   植木、資料を配る。
   昇、回ってきた資料を受け取る。
   番号、題名、氏名が書かれている。
植木「今回の課題、人物ですが、全員提出されています。素晴らしいですね」
   ざわざわする室内。
   数人の学生が昇を見る。
植木「ですが、毎年数人は作品ではないものを提出してきます。その場合、事前に言ったように
 評価しませんので。それでは始めましょうか」
   植木、プロジェクターをつけて電気を消す。
   映し出される写真。
   植木、評価をする。
   褒められてうれしそうな学生。
   拍手が起こる。
   次の写真。
   首を振る植木。
   申し訳なさそうな学生。
   誠、田畑、と次々と映し出されて評価を受ける。
   昇の写真が映る。
   学生たちが息をのむ。
   植木、数秒見たあとなにも言わずに次に移る。
   学生、ざわつく。
   誠、立ち上がって。
誠「先生、一つ飛ばしてます」
   植木、誠を見て。
植木「評価に値しません」
   全員どよめく。
   植木、写真の評価を続ける。
   誠、昇を見る。
   昇、資料を見ている。
   × × ×
   学生たちがひそひそ喋っている。
   昇、席を立つ。
   誠、昇を追う。
誠「昇」
植木「張谷くん」
   昇、足を止める。
昇「(振り返って)はい」
植木「残ってください」
昇「……はい」
   昇、椅子に戻る。
植木「さあ用事がない人は帰ってください」
   教室を出る学生たち。
   誠、残っている。
誠「(植木に)あの」
   植木、手で帰るよう指示。
   誠、しぶしぶ教室を出る。
   静かな教室。
   植木、昇の前に立つ。
植木「なぜ残されたかわかりますね?」
   昇、植木を見る。

〇同・廊下(夕)
   誠、ベンチに座っている。
   教室から昇が出てくる。
   誠、駆け寄る。
   昇の表情は変わらない。
誠「……元気出せって。今日の植木先生厳しめだったしさ。人物写真って先生の得意分野だろ? 
 だから」
昇「(遮って)いや、僕の写真は評価されなくて当然だよ」
誠「は? どういうこと? 意味わかんねぇんだけど」

〇回想・同・教室(夕)
植木「なぜ残されたかわかりますね?」
   昇、植木を見る。
昇「やっぱり先生にはわかりますか」
植木「本業ですから」
   昇、目をそらす。
昇「……そうですよね」
植木「なぜこんなことをしたんですか」
昇「……わかりません」
植木「……。せっかく提出したのに単位を落としたくないでしょう?」
昇「……」
植木「明日、もう一度提出してください。今度はスチールではなく、作品を」

〇同・廊下(夕)
誠「ちょっ……、待て待て待て」
   足を止める二人。
誠「お前、スチールって言った?」
昇「そうだよ」
誠「スチールって、あれだろ? 記録の、え? なにあの写真、作品ですらなかったの?」
昇「そうだよ」
誠「まじかよ。スチールであのクオリティとかありえねー……天才くんかよ。で? 再提出だっ
 け、いいなー俺もやり直したいわ」
   二人、歩き出す。
昇「しないよ」
誠「は? いやいや、しろよ」
昇「……」
誠「あ、なに? 風景で賞を取り続けてきたから今さら恥をかきたくないとか?」
昇「……誰にも見せたくないんだ」
誠「なんだよそれ。あんだけコンクールにバンバン送ってたやつが言うセリフかよ」
昇「そう。そうなんだよ」
   昇、足を止めて誠を見る。
昇「僕は今まで、撮ってきた写真に対してなにも思わなかったんだよ。クオリティがいいものを
 ただ出していただけ。なのに」
   誠、昇を見ている。
昇「あれは、あの写真だけは、ダメなんだ。あの瞬間の、彼女だけはどうしても……」
   誠、昇の背中を強く叩く。
   昇、驚く。
   誠、また叩く。
   昇、わけがわからない。
昇「なに」
誠「わかんない? なにも? わかんねーの?」
   誠、ニヤニヤしている。
誠「いやあ、そっか。そうだよな、お前も凡人だったわけだな」
昇「なんのこと」
誠「お前がなんでその写真を提出できなかったか教えてやろう」
昇「え」
   誠、胸を張る。
誠「好きなんだよ」
昇「なにが」
誠「お前が」
昇「なにを」
誠「彼女を」
昇「……」
誠「そうかあ、天才くんも恋の魔力には勝てないかあ。わかるよ、人を狂わせるからな、恋は。
 けどな、感情を出していい時とダメな時があってだな。撮影が終わったら感情を一切抜かない
 と完成しなくなるぞ」
   荷物を抱えた田畑が誠の横を通る。
   田畑の荷物が昇にぶつかる。
田畑「あ、ごめん」
誠「こっちからモデルを頼んだわけだから? 少なくとも好みであるわけじゃん? そこで生ま
 れるわけよ、どうしても生まれてしまうわけよ」
   昇、倒れる。
田畑「えっ、えーー! ちょっとーー!」
   誠、声に驚く。
誠「昇⁉」
   鈍い音。
   誠、駆け寄る。
誠「大丈夫か? すげー音したから思いっきり頭打ったよな」
   昇の顔が赤くなっていく。
   田畑、うろたえる。
昇「信じられない」
田畑「そんな強く当たってないし! なんで倒れるわけ⁉」
誠「あー……(笑う)大丈夫大丈夫。全然平気。こいつ今それどころじゃねーんだわ」
   昇、顔を覆う。
   誠、笑っている。
   田畑、戸惑っている。
   植木、教室から出てくる。
   植木、床に倒れている昇を見て驚く。
   駆け寄る植木。
   誠、笑い転げる。

〇マンション・昇の部屋(夕)
   昇、うつ伏せで寝ている。
   顔だけ動かしてパソコンを見る。
   画面には雪奈の写真。
   昇、顔を伏せる。

〇回想・張谷家・リビング・11年前(夜)
   昇、金賞のリボンが付いた写真を抱えている。
   匡彦(40)、昇を見て。
匡彦「昇は風景ばかり撮っているな」
昇「……」
匡彦「少しは挑戦というものをしてみたらだろうなんだ」

〇回想・駅前・大通り・11年前(昼)
   歩いている昇。
   目の前に人だかり。
   全員が上を見ている。
   昇、上を見る。
   ぼんやりと見える人影。
   昇、カメラを構える。
   シャッター音。

〇回想・展示会・11年前(昼)
   床に落ちるカメラ。
匡彦「お前はもう二度と、人を撮るな」
   空中浮かぶ足と広がる真っ白なワンピースの写真。
   その下のボードに、金賞題名「天使」撮影者張谷昇と書かれている。
匡彦「いいな」
   昇、見上げる。
   匡彦と目が合う。
匡彦「わかったな。お前は風景で十分だ」

〇マンション・昇の部屋(夕)
   昇、ベッドから落ちる。
   その拍子でファイルが落ちる。
   風で舞う写真、その全てが風景写真。
   雪奈の写真が見え隠れする。
   昇、家を飛び出す。

〇カフェ・外観(夜)
   雨が降り出す。

〇同・店内(夜)
   空いている店内。
   雪奈、掃除をしている。
   突然開く扉。
   雪奈、驚いて振り返る。
   びしょ濡れの昇、肩で息をしている。
雪奈「びっくりした……。どうしたの?」
   昇、せき込む。
雪奈「とにかく入って。今タオル持ってくるから」
   雪奈、バックヤードへ向かう。
   昇、雪奈を引き留める。
昇「写真のことで」
雪奈「なにかあった?」
   昇、息を整えながら。
昇「ごめん、提出できなかった」
雪奈「そうなんだ。いいよ気にしないで。やっぱりちゃんとしたモデルさんの方が」
昇「(遮って)違うんだ。僕の問題で、僕がちゃんと作品として作れなかったから」
   昇、雪奈を見て。
昇「だからもう一回、モデルをやってくれないかな」

〇大学・廊下(朝)
   植木、歩いている。
   昇、植木を見つけて駆け寄る。
昇「先生! 植木先生!」
植木「どうしました?」
昇「あれってまだありますか!」
   昇、箱のジェスチャー。
植木「(気づく)どうでしたかね。私が現役だったころに使ったのが最後ですから、使える
 かわかりませんし。それに、あれはなかなか苦労しますよ?」
昇「はい、覚悟の上です」

〇同・倉庫(朝)
   懐中電灯で照らしながら歩く昇、部屋の隅に布に覆われた大きなものを見つける。
   昇、布を引っ張る。
   舞い上がる埃。
   昇、嬉しそうな顔。

〇同・中庭(昼)
   植木、ふと足が止まる。
   大人数の学生が大きな水槽を運んでいる。
   水道近くに下ろすと皆に頭を下げる昇。
   昇、水槽に向き合う。

〇同・教室前(夜)
昇「お願いします衣装作ってください」
田畑「嫌」
昇「一着だけ」
田畑「やだよそんな時間ないの」
昇「話だけでも聞いて」
田畑「やだやだ絶対めんどくさい」
昇「頼めるのは田畑だけなんだよ」
田畑「いーやーでーすー」
   田畑、背を向けて歩き出す。
   昇、追いかける。
昇「今回は本気なんだよ」
   田畑、窓から見える大きな水槽に目を奪われる。
昇「あれで撮影するの、楽しそうじゃない?」
田畑「……(興味あり)」
昇「こんな感じの衣装が欲しくて」
   昇、田畑の目の前に紙を差し出す。
   田畑、見る。
田畑「……」
昇「どう?」
   田畑、歩き出す。
   昇、肩を落とす。
田畑「サイズ今日中な」
昇「! ありがとう!」

〇同・中庭(朝)
   水槽を洗う昇。

〇同・食堂(昼)
   田畑、試作品を昇に渡す。
   昇、しばらく眺めて電話をかける。

〇同・写真部撮影スタジオ・外(昼)
   部屋の前で待っている昇。
   田畑、昇を呼ぶ。

〇同・内(昼)
   衣装を着ている雪奈。
   二人、雪奈を見て相談する。
   田畑、雪奈を採寸する。
   資料に赤字が増えていく。

〇同・中庭(夕)
   学生の視線が一点に集中している。
   その先には運ばれていく水槽。

〇同・写真部撮影スタジオ(夕)
   昇、水槽に水を入れている。
   誠、差し入れを置いていく。
   手を上げてお礼を言う昇。
   水槽に水が溜まっていく。

〇同(朝)
   スタジオに入ってくる田畑。
   昇、座っている。
   田畑、昇の頭に袋を乗せる。
   昇、受け取って中を確認する。
   衣装が入っている。
昇「ありがと」
田畑「アンタがここまで力入れてるの初めてなんじゃない?」
昇「そうかも」
田畑「いいもの撮りなよ」
昇「うん」
   田畑、あくび。
田畑「じゃ、あたしは帰って寝るわ」
昇「ありがと、気を付けてね」
田畑「今度撮影に付き合えよー」
昇「(笑う)わかったよ」
   × × ×
   水が入った水槽。
   衣装を着た雪奈、見上げている。
   昇、カメラを提げて雪奈の横に立つ。
雪奈「すごい、すごいね! これもなにかの課題なの?」
昇「いや、これは僕の自己満足。……ごめんね、付き合わせて」
雪奈「(首を振る)だってこんな経験、もう一生できないから」
昇「ありがとう。じゃ、よろしくお願いします」
雪奈「こちらこそ、お願いします」
   雪奈、脚立を上る。
   下を見るとかなりの高さ。
昇「大丈夫?」
雪奈「平気!」
   雪奈、上りきって水槽の淵に腰かける。
昇「入った瞬間から撮影始めるから、自由に泳いで」
雪奈「気を付けた方がいいことってある?」
昇「大丈夫。楽しんでくれればいいよ」
雪奈「わかった!」
   昇、深呼吸をしてカメラを構える。
   雪奈、覚悟を決めて飛び込む。
   泡に包み込まれる雪奈。
   昇、シャッターを懸命に切る。
   泳ぐ雪奈。
   真剣な表情の昇、シャッターを切る度に笑顔になっていく。
   × × ×
   昇、片づけをしている。
   扉が開き、植木が入ってくる。
   昇、植木に気づく。
植木「満足できる写真は撮れましたか?」
昇「はい」
植木「そうですか」
   植木、空の水槽を見上げる。
植木「大変だったでしょう」
   昇、水槽を見る。
昇「僕は今まで楽をし過ぎていたので、これぐらいがちょうどいいです」
   植木、昇を見てほほ笑む。
植木「片付けも頑張ってください」
昇「はい」
   植木、去っていく。

〇カフェ・店内(昼)
東「へーすごいね。いい経験したね」
雪奈「そうなんです! もうめちゃくちゃ楽しくて、いい思い出です」
東「どこかに出したりしたの?」
昇「最初の写真も発表できてないので、まずは順番でいこうと思っているんですけど、どこも募
 集期間が終わっていて」
東「へー……。じゃあここ貸そうか?」
昇「え?」
雪奈「店長天才! お店を貸し切って展示会やろう!」
東「そうそう、ゆきちゃんの写真を大きくここら辺にバーンと」
雪奈「えっいやいやそれはちょっと言いすぎですって」
昇「わかりました」
雪奈「えっ冗談だよね?」
   東と昇、笑う。
雪奈「冗談だよね⁉」

〇大学・廊下(夕)
   大荷物を抱えて歩く昇。
   曲がり角で誠とぶつかりそうになる。
昇「ごめん、当たってない?」
誠「大丈夫大丈夫。すげえ荷物、手伝おうか?」
昇「いや、平気」
誠「そう。あっそうだ、俺、今年山行くことにしたから」
   誠、誓約書をひらひら見せる。
昇「あんなに怖がってたのに?」
誠「怖がってねーし」
   昇、笑う。
誠「俺もちょっと、頑張ってみたくなっただけだよ。じゃ」
   誠、去っていく。
   昇、見送って歩き出す。

〇カフェ・店内(夜)
   昇、机の上に写真を広げる。
   段ボールを開けて額縁を出す。
   写真を額に入れていく。

〇同(朝)
   昇、壁に写真を飾る。
   数歩下がってそれを眺める。
   東が入ってくる。
東「おはよー(気づく)おっこれ?」
昇「はい」
   東、写真の前に立つ。
東「いやあー……想像以上だねこれは」
昇「今日はお店を貸していただいてありがとうございます」
東「いやいや、こちらこそこんな良いものを見せてもらって、大満足だよ」
   雪奈が入る。
雪奈「おはようございま──えっ」
   二人、振り返る。
   雪奈写真に駆け寄る。
雪奈「大きすぎない? ちょっとサイズ間違えてるよね?」
昇「間違えてないよ」
東「そうそう、間違えてない」
雪奈「いや、でも……ねえ?」
   二人、そろって首を振る。

〇同・外観(朝)
   Openの看板の横に写真展の張り紙。

〇同・店内(朝)
   数人の客が写真を見ている。
   カウンターから様子を見ている三人。
   雪奈、入り口を見る。
雪奈「あっ」
   驚く東と昇。
   雪奈、カウンターを出る。
   二人、あとに続く。
雪奈「来なくていいって言ったのに」
聡子「でも」
東「いらっしゃいませ」
雪奈「……両親です」
   聡子(46)と辰巳(47)、会釈。
聡子「母です。いつも雪奈がお世話になってます」
辰巳「アルバイトに限らずこんな写真展までしてくださって」
東「あ、いや、写真を撮ったのはこの子でして」
   東、少しずれる。
   昇、会釈。
昇「初めまして、張谷昇です」
聡子「あらあら、こんな若い方が。そうでしたか。(手を握る)本当にありがとう。今日のこと
 は一生の宝物です」
   辰巳、聡子のあとに昇の手を握る。
辰巳「ありがとう」
   昇、両親の態度に少し引き気味。
雪奈「もーやめてやめて、恥ずかしい。ぱっと見てぱっと帰って」
   雪奈、両親の背中を押す。
   雪奈、振り返ってごめんと合図。
東「ごゆっくりー」
   昇、ぼんやりしている。
   東、昇の様子に気づく。

〇大学・研究室(昼)
   植木、椅子に座ろうとする。
   机の上に一枚のチラシ。
   植木、座ってそれを見る。

〇カフェ・バックヤード(夕)
   机に伏して寝ている昇。
   東、扉を閉める。

〇同・店内(夕)
   学生が店を出て行く。
誠「おじゃましましたー」
雪奈「ありがとうございました」
   東、カウンターから出てくる。
   雪奈、振り返る。
東「大丈夫、ゆっくり眠ってる。疲れが出たんだと思うよ」
雪奈「ならそっとしておいた方がいいですね」
東「あ、ごめん。ブランケットこっちだった。(取り出す)ゆきちゃん掛けて来てくれる?」
雪奈「わかりました」
   雪奈、バックヤードへ。
   扉が開く。
東「いらっしゃい」
   植木、ゆっくり写真を見て回る。
   雪奈の写真の前で足を止める。
東「お知合いですか?」
植木「いえ。ただの通りすがりです」
東「そうですか」
   東、下がる。
   植木、しばらく写真を眺め、店を出る。
   雪奈、戻る。
東「誰なんだろ」
雪奈「どなたかいたんですか?」
東「そう、しばらくゆきちゃんの写真見てたんだけど」
雪奈「偶然見つけて来てくれたんじゃないですか?」
東「いや、あの人チラシを持ってたんだよ。だからゆきちゃんじゃなければ昇くんの知り合いで
 はあるはずなんだけど」

〇同(夜)
   片づけをしている昇。
   雪奈の写真の前に立つ。
   バックヤードから雪奈が出てくる。
雪奈「昇くん?」
   昇、振り返る。
昇「ごめん、すぐ片付けるから」
雪奈「いいよゆっくりで。私も手伝う」
   雪奈、カウンターから出てくる。
雪奈「写真はこのあとどうするの?」
昇「ネガはあるから基本処分か寄付だよ」
雪奈「そっかあ」
   昇、写真を見る。
昇「これは捨てないよ」
   雪奈、昇を見る。
昇「絶対捨てない」
   雪奈、照れる。
昇「あのあと連絡があって、ぜひくださいって。ご両親が貰っていくそうだよ」
雪奈「あっ、だよね! そうだよねってなんで⁉ これがうちに来るの?」
   昇、笑う。
昇「僕も持って帰ろうかなって思ったんだけど、さすがに大きいから」
雪奈「作品を大事にするのはいいことだけどさあ」
昇「……、好きなんだよ」
雪奈「ん?」
昇「写真もそうだけど、僕は雪奈が好きなんだ」
   固まる雪奈。
昇「ごめんね、変なこと言って」
   昇、片づけを再開。
雪奈「……全然、そんな……」
昇「気を使わないで。迷惑だったら言ってくれていいんだ」
雪奈「迷惑なんかじゃないよ! その……嬉しい、すごく嬉しい」
   昇、手を止めて雪奈を見る。
昇「それは期待していいってこと?」
   雪奈、はっとする。
雪奈「それは……。ごめん、付き合うとかは、出来ないの。ごめんね」
昇「……そっか」
雪奈「うん、ごめん」
   黙々と作業をする。

〇大学・教室(昼)
誠「はっ⁉ 今なんて言った⁉」
   昇、教科書を出しながら。
昇「好きだって言った」
誠「え、え? どこからそんな行動力出してんの? 怖いんだけど」
昇「自分でもよくわかんない」
田畑「なになに、混ぜてよ」
   田畑、誠の横に座る。
誠「昇がさー……(昇を見て)あ、これ言っていいやつ?」
   昇、田畑を見る。
昇「好きって言った」
田畑「まじで⁉ あの子に? アンタが? このナンパ野郎じゃなくて?」
誠「通りすがりで俺をけなさないでくれる?」
田畑「(無視)で? で? なんて?」
昇「嬉しいけど付き合えないって」
田畑「なんでぇ? あの子彼氏いないって言ってたのに」
誠「どこ情報だよ」
田畑「衣装合わせの時に本人から聞いたんだよ」
誠「すげえ」
田畑「あたし、絶対ここくっつくと思ってたんだけどなあ」
昇「付き合いたくて言ったつもりはないんだけど」
田畑「はあ~ピュア~。マジこの女遊び野郎とは違うわ」
誠「なんで俺さっきからボロクソに言われてんの」
   昇、少し笑う。
昇「誠はいいやつだよ」
誠「昇~~」
   誠、昇の肩を抱く。
田畑「キモ」
誠「まあさ、そろそろ山登りだし? 失恋の痛みも時間が経てば消えるって。今回は俺も一緒な
 んだし?」
田畑「は? アンタも行くの?」
誠「おうよ。ってお前も? なにしに行くんだよ」
田畑「写真撮りに行くに決まってんでしょ」
昇「え~? だってお前、風景めちゃくちゃ下手じゃん」
田畑「うるっさいなあ、ちょっとぐらい挑戦してみてもいいじゃん」
   二人、言い合いを続ける。
   昇、窓の外を見る。
   山が白く雪化粧されている。

〇カフェ・店内(夕)
   店内に入る昇。
東「あ、いらっしゃーい。ちょうどいいところに」
   手招きする東。
昇「なんですか?」
   昇、カウンター席に腰を下ろす。
東「来週あたり空いてないかな? 知り合いが写真撮れる人を探しててね」
昇「あー、えっと来週は山に行く予定なんですよ」
東「そっかー、残念。どこ行くの?」
昇「たぶん近くだと思います。そこらへんは山岳部の人に任せているのでわかりませんけど、大
 体毎年同じところですね」
雪奈「昇くん山に行くの? 雪山?」
   昇、雪奈を見る。
   雪奈、お盆をカウンターに置く。
昇「(視線をそらして)あ、うん。そう」
雪奈「いいなあ」
東「ゆきちゃんが貰った写真、雪山だったね」
雪奈「そうです! 雪景色ってすごくきれいだし、別世界って感じなので好きなんです」
東「そうかー」
雪奈「写真、見せてね。約束だからね」
昇「……うん」
   嬉しそうに笑う雪奈。
   雪奈に合わせて微笑む昇。

〇雪山・斜面(朝)
   一面の雪景色。
   白い世界に数人の人影。
   列を作って登っていく。

〇同・平面(昼)
   テントを張るグループ。
   離れた場所で写真を撮る昇。
   昇、撮れた写真を確認する。
誠「昇ー、そろそろ」
昇「(振り返って)分かったよ」
   誠、戻っていく。
   昇、足元の荷物を持って歩き出す。
   突然足元の雪が崩れる。
田畑「(気づいて)張谷!」
誠「え?(振り返る)」
   昇、バランスを崩す。
誠「昇!」

〇カフェ・バックヤード(朝)
雪奈「おはようございまーす」
   床に布巾が落ちている。
   雪奈、拾う。
雪奈「店長?」
東「ゆきちゃん……」
   東、テレビを指さす。
   雪奈、見る。
アナウンサー「──山で遭難者が出た件について続報です。行方不明なのは大学生だそうです。サ
 ークルで登頂し、テントを張っていたところ突然雪が崩れ始め、それに一名が巻き込まれたの
 こと。雪崩がおさまり次第、レスキュー隊が捜索を開始する予定です」
   雪奈、布巾を落とす。

〇同・外観(昼)
   土砂降りの雨が降る。

〇同・店内(昼)
   東、忙しくコップを磨いている。
   雪奈、携帯でニュースを見ている。
東「ゆきちゃん」
雪奈「……はい」
東「奥で休んできな」
雪奈「いや、でも」
東「お客さんいないから」
雪奈「……すみません」

〇同・バックヤード(昼)
   雪奈、椅子に座る。
   テレビをつけるが雪崩に関係ないニュースばかり。
   雪奈、テレビを消す。
   雪奈、顔を覆う。

〇同・店内(夕)
   暗い店内にたばこの煙。
   東、外を見る。
   雨の勢いは変わらない。
   東、煙草を消してバックヤードへ。

〇同・バックヤード(夕)
   雪奈、眠っている。
   東、ブランケットを雪奈にかける。
   雪奈の目から小さな涙が落ちる。
   店の方から扉が開く音。
   東、顔を上げる。

〇同・店内(夕)
   カウンターから顔を出す東。
   店には誰もいない。
   風に押されて扉が動いている。
   東、溜息を吐く。
   東、煙草に火をつける。
   扉が開く。
   東、入り口を見る。
   昇、上着に着いた雨のしずくをはらっている。
昇「お久しぶりです」
   東、煙草を落とす。
東「アッチ! あちあち」
   東、煙草を消す。
昇「東さん、煙草吸うんですね」
東「張谷くん?」
昇「え? はい……」
東「張谷くんだ!」
   東、カウンターから出る。
東「どこも怪我してない? 大丈夫? なんか少し焼けたね、髪も短くなって」
   東、昇を触る。
昇「なん、なんですか」
東「雪崩のニュース! もう本当に心配したんだよ」
昇「ああ、僕らが登ったのは違う山なんですよ。いつも同じだから今回は変えてみようってなっ
 て。結果としてそれがよかったみたいで」
東「そっか、そっかそっか。あー、よかった」
昇「心配かけました」
東「いやいや。……あ、そうだ」
   東、バックヤードへ。
   昇、カウンター席に座る。

〇同・バックヤード(夜)
   東「ゆきちゃん起きて」
雪奈「(起きる)ごめんなさい寝てしまって……」
東「いいよいいよ。それよりちょっと出てくるからお店、よろしくね」
   東、裏口から出る。
   雪奈、席を立って店へ。

〇同・店内(夕)
   バックヤードから出てくる雪奈、おしぼりをお盆に乗せてカンターを出る。
   昇、顔を上げる。
   雪奈、立ち止まる。
昇「ただいま」
   雪奈、お盆を落として泣きだす。
   驚く昇、雪奈に駆け寄る。

〇同・外観(夕)
   雨が止んでいる。

〇同・店内(夕)
昇「大丈夫?」
   泣く雪奈、涙をぬぐう。
雪奈「雪崩に大学生が巻き込まれたってテレビでやってて、もう昇くんに会えないかと」
昇「写真、見せてほしいって言ってたしね」
   雪奈、昇の服をつかむ。
   昇、雪奈を見る。
   雪奈、昇の胸に額をくっつける。
雪奈「私はね、昇くんに会いたかったんだよ」
昇「……、それは」
   雪奈、昇から離れる。
雪奈「ごめん! 変なこと言った。ほら、昇くん髪型代わってなんかカッコよくなったし、新し
 い好きな人ができて心機一転? みたいな──」
   雪奈、昇から距離を取ろうとする。
   昇、雪奈の腕をつかむ。
昇「僕はまだ、雪奈のことが好きだよ」
   雪奈、戸惑う。
昇「髪は友だちに切ってもらっただけで、気持ちはなにも変わってない」
雪奈「……そういうつもりじゃ……」
   昇、雪奈の腕を離す。
   雪奈、昇を見る。
昇「わかったよ」
雪奈「……、ごめん。嫌なこと言った」
昇「そうだね、雪奈は意地悪だ」
雪奈「(むっとして)昇くんだって、無事なら連絡ぐらいくれたっていいじゃん」
昇「携帯は家。さっき帰ってきたばかりでこっちに寄ったから今も持ってないよ」
雪奈「携帯なんだからいつも持っててよ」
昇「滅多に連絡来ないから別にいいかなって」
雪奈「じゃあ今日、帰ったら私が連絡するから! 絶対持っててよ!」
昇「わかったよ」
   昇、笑う。

〇同・外観(夕)
   東、店の中を覗く。
   楽しそうに話している二人。
   東、微笑む。

〇マンション・昇の家(夜)
   散らかっている部屋。
   昇、カメラをパソコンにつなげてデータを送る。
   昇、登山の荷物を片付ける。
   携帯が鳴る。
   昇、電話に出る。
昇「はいはい」
雪奈(声)「やっぱりそばに置いてなかったんでしょ」
昇「ちょっと片づけしてて」
雪奈(声)「荷物そんなに多いの?」
昇「うんまあいろいろ。日帰りならそんなに多くないんだけど、泊りだったから」
雪奈(声)「そっかそっか。あのね、店長から伝言なんだけど」
昇「うん?」
雪奈(声)「お店に飾る写真が欲しいんだって」
昇「あー、そういえば代わりまだ持って行ってなかったね」
雪奈(声)「うん、それでさあ……」
昇「雪奈の写真?」
雪奈(声)「なんでわかったの」
昇「なんかそんな感じした」
雪奈(声)「えー」
   昇、笑う。
   昇、パソコンからカメラを外す。
雪奈(声)「でもさ、働いているところに自分の写真とか恥ずかしいじゃん? だからなんかい
 い感じにごまかしておいてくれないかな? 手だけとか、あまり写ってない写真ってない?」
昇「それはなあ……難しいかも」
雪奈(声)「そこをなんとか」
昇「わかった、探しておくよ」
雪奈(声)「お願いね」
昇「ねえ、雪奈」
雪奈(声)「ん? なに?」
   昇、少し悩んで。
昇「デートしようよ」
雪奈(声)「いいよ?」
昇「ホントに?」
雪奈(声)「うん、いいよ、デート」
昇「あー、じゃあいつ空いている?」
雪奈(声)「えっとね……。あーごめん、今週色々予定入ってて、来週なら大丈夫なんだけど」
昇「そっか、わかった」
雪奈(声)「ごめんね」
昇「いや、僕も言うの急だったし。部活の予定がわかったらまた誘うね」
雪奈(声)「うん、楽しみにしてる。じゃそろそろゆっくり休んで」
昇「ありがと。おやすみ」
雪奈(声)「おやすみー」
   昇、電話を切る。
   昇、しばらく余韻に浸ったあとパソコンを操作する。

〇駅前・大通り(昼)
   紙袋を提げて歩く昇、横断歩道で止まる。
   反対側の歩道に歩いている雪奈。
   すぐその横に看護師の汐見(20代)。
   二人を見ている昇。
   二人、仲よさそうに歩いていく。
   汐見、ふらついた雪奈を支える。
   角を曲がり、見えなくなる二人。
   信号が青に変わる。
   昇、動けない。
   周りの人たちが迷惑そうに昇を見ながら進んでいく。

〇カフェ・店内(夕)
   写真を見ている東。
東「いやーいい写真だねえ」
   昇、コーヒーを飲む。
   東、写真を壁に飾る。
   花で顔が隠れた雪奈の写真。
東「もうちょっとゆきちゃんの顔がばーんって出てもよかったんだけど」
昇「お店の雰囲気を考えるとこのくらいの方がいいかと」
東「確かにそっか、さすが張谷くんだね」
昇「ありがとうございます」
   昇、外を眺める。
東「なんかあった?」
昇「……いえ」
東「そう? 若いんだから色々悩みなー」
昇「東さんもまだ若いじゃないですか」
東「いやいや、この歳になればわかるよ?」
昇「老人みたいなこと言わないでくださいよ」
   バックヤードから雪奈が出てくる。
東「お疲れー」
雪奈「遅くなってすみません」
東「いいよー、家の用事あったんでしょ?」
雪奈「ありがとうございます」
   雪奈、写真に気づく。
   東、にっこり微笑む。
東「いいでしょー」
雪奈「いや、大きすぎません? もうちょっと小さく、ね! 小さく」
東「ここにはこの大きさでなくちゃ」
雪奈「なんのこだわりですか」
昇「……ごちそうさまでした」
東「またおいでー」
   昇、店を出る。

〇大学・食堂(昼)
誠「修羅場だ」
田畑「乗り込んでないんだから違うだろ」
誠「なんで乗り込まなかったんだよ」
田畑「行ってどうすんだよ」
誠「俺だったら追いかけてどういう関係か聞くね」
田畑「バカはそうするだろうね」
誠「さっきから俺に当たり強くない?」
田畑「オメーがちゃんと見てたら、張谷が雪に埋まったりしなくて済んだんだろうが!」

〇回想・雪山・平面(昼)
田畑「張谷!」
誠「え?(振り返って)昇!」
   倒れる昇、カメラを庇って高く上げる。
   頭から雪に突き刺さる。
   カメラを持った手と足だけが雪から出ている。
   誠、爆笑。
田畑「バカ。お前、バカ」
   田畑、誠の頭を叩く。
   誠、腹を抱えて笑う。
   田畑、山岳部の部員を連れて斜面を降りていく。
   引っこ抜かれる昇。

〇大学・食堂(昼)
誠「すみませんでした」
昇「誠が笑っているところの写真撮れてたんだけど、いる?」
田畑「いるいる! 引き延ばして部室に張ってやろ!」
誠「え、恨んでる?」
昇「全然? むしろ面白かったよ。いい写真撮れてたし」
誠「いいやつだな……これやるよ」
   誠、サラダを昇のお盆に置く。
田畑「苦手なもの押し付けただけじゃん」
誠「おま、お前ホントなに⁉」
田畑「あたしはねえ、張谷に幸せになってほしいんだよ。適当な写真しか撮ってこなかったやつ
 があんな楽しそうに撮影に向き合うとこ見たらもう……」
誠「ババア精神かよ」
田畑「は?」
誠「ナンデモナインデス」
田畑「正直、昔のなんでもこなしちゃいます~の張谷は気に食わなかったけど、今の張谷はいい
 やつだよ」
昇「褒められてる?」
田畑「褒めてんだよ! だから自信持ちな。あの子は変な嘘つくような子じゃないと思うから、
 気になるなら直接聞いた方がいい」
昇「……、課題が終わってからかな」
   田畑と誠、うなだれる。
田畑「それを言うな」
誠「透明を撮れってなに、わかんねーって」

〇水族館・外観(昼)
   受付に話をする昇。
   身分証をもらって中へ。

〇同・館内(昼)
   人が少ない館内。
   昇、水槽を見ながら歩く。
   カメラバックを置いて水槽の前に立ち止まる。
   昇の目の前に広がるクラゲの水槽。
   昇、撮影を始める。

〇カフェ・バックヤード(昼)
   まかないを食べている雪奈。
   携帯を見るが新着のメッセージはない。
   食べ終わって椅子から立ち上がる。
   その瞬間、倒れる。
   皿が割れる。
   床に落ちたポーチから薬が出ている。


〇水族館・館内(昼)
   ベンチに座って写真をチェックしている。
   クラゲの水槽の前にカップルが歩いて来る。
   楽しそうに笑う彼女。
   それぞれが雪奈と昇に。
   相手が昇から街中で見た男に変化。
   昇、カメラバックのファスナーを閉める。
   昇、溜息を吐き携帯を取り出す。

〇病院・受付前・ロビー(昼)
   ベンチに座っている雪奈、携帯を出す。
昇(文字)「しばらく予定が空かないみたい」
   雪奈、文字を打ち込む。
雪奈(文字)「わかった。私もちょっと難しいかもしれないからちょうどよかった」
昇(文字)「ごめんね」
雪奈(文字)「むしろ忘れてくれて」
   雪奈、消して打ち直す。
雪奈(文字)「気にしないで」
看護師「岡崎さーん、岡崎雪奈さーん」
雪奈「はい」
   雪奈、携帯をしまって立ち上がる。

〇大学・教室(夕)
   にこにこしている植木。
   げっそりしている学生たち。
植木「今回の課題は苦労したみたいですね」
   植木、資料を配る。
植木「提出率は過去最低です。撮影対象が不明瞭でも思考を凝らして提出した人もいますので見
 習うようにしてください」
   植木、電気を消してプロジェクターで写真を映し出す。
   ペットボトルやシャボン玉など様々な透明の写真が映る。
   植木、評価をしていく。
   サイダーの写真。
植木「曽根くん」
誠「(立つ)はい!」
植木「雰囲気がガラッと変わりましたね、前より良くなっています。ライトの使い方を工夫すれ
 ばもっといい写真が撮れると思いますよ」
誠「ありがとうございます!」
   誠、座る。
   琥珀糖の写真。
植木「ほう、えー……これは(資料を見て)田畑さんの作品ですね」
   学生、声を上げる。
   田畑、ゆっくり立ち上がる。
植木「田畑さんは人物写真が得意のようでしたが、(田畑を見て)成長しましたね。撮影対象も
 いいものを選んだと思います」
田畑「ありがとうございます」
   学生、拍手。
   田畑、座る。
   植木、次に移って昇のクラゲの写真を出す。
   静まり返る室内。
植木「……。これはまた、とんでもないものを出してきましたね。(昇を見て)張谷くん」
   学生全員、昇を見る。
   立っている昇。
植木「なにも言うことはありません。素晴らしい作品です」
昇「ありがとうございます」
   昇、会釈。

〇同・廊下(夕)
   教室から出てくる学生たち。
   田畑と誠、並んで歩く。
田畑「あーくやしー! 今回めちゃくちゃ頑張ったんだけどなあ」
誠「いいよ、きれいだったよあれ。なんかあの透明な石鹸みたいなやつ」
田畑「琥珀糖ね。でもやっぱ張谷だよなあ、あれはすごいわ」
誠「水族館に許可取ってまで撮影したんだってさ、熱量が違うわ。俺なんか買ったものだし」
田畑「……でもさ、ちょっと昔の張谷っぽくなかった?」
誠「あ、やっぱり? お前も思った?」
   足を止める二人、見つめ合って頷き、来た道を戻る。

〇同・教室(夕)
   昇、植木との話を終える。
   田畑と誠、教室に入ってくる。
田畑「張谷、焼き肉行こ! (誠を指さして)こいつのおごりで」
誠「嘘だろ、割り勘割り勘」
   言い合う二人。
   昇、笑う。

〇焼き肉店・店内(夜)
   煙たい店内。
   肉を焼いている田畑と昇。
   机の上に大量の肉が並ぶ。
誠「今回マジで頑張ったって」
田畑「わーかったって、さっきも聞いた」
誠「得意分野もない俺が初めて褒められたんだよ、すごくね? この先食べ物専門でいこうか
 な。あ、でもあれ飲み物か。広くとって静物にすっかな」
田畑「誰か酒頼んだ?」
昇「頼んでない」
田畑「じゃああいつ素面であれってこと?」
昇「そう、ウーロン茶であれ」
田畑「手に負えねー。うるせー!」
誠「なんだよいきなり。っていうかなんでちまちま焼いてんだよ。まだこんなにあるんだから一
 気に焼けばいいじゃんか」
   誠、肉を放り込む。
   火柱が上がる。
田畑「バカー! お前はバカ!」
   田畑と昇、肉を救出。
   誠、笑っている。
   田畑、誠の頭を叩く。
誠「なんだよ、ちょっと面白かっただろ」
   誠、へらへらしている。
   田畑、誠の皿に生の玉ねぎを盛る。
田畑「食え。食ってちょっと黙ってろ」
誠「嘘だろ」
   笑う昇。

〇駅前・大通り(昼)
   田畑、カメラショップの紙袋を下げて歩く。
田畑「あー買った買った。散財したー」
   昇と誠、その後ろを歩く。
   その手には同じ紙袋。

〇同・本屋前(昼)
   通り過ぎる三人。
   田畑と誠、戻ってくる。
   あとに続く昇。
   店に張られた新刊のポスター。
   表紙は昇が撮ったクラゲの写真。
   二人、昇を見る。
昇「ああ、そういや今日か」
誠「なんだよ! いつの間にこうなってんだよ」
田畑「なんでなにも言わないの」
昇「いや、植木先生に話をもらってそれから忘れてたっていうか」
田畑「そんな大事なこと忘れないの!」
   二人、店内へ。
   昇、笑っている。

〇マンション・昇の部屋(夕)
   昇、カメラのレンズをはめてファインダーをのぞき込む。
   机の上に昇の写真が使われた本やグッズ。

〇貸しスタジオ・室内(朝)
   機材を組み立てる田畑。
   周りを見渡しながら歩いてくる昇。
田畑「(気づいて)こっちこっち」
昇「こんな広いところ借りたの?」
田畑「スペース指定して時間制にしたらそんな高くないよ。本当はもっと大人数だけど」
昇「へー。で、僕はなにすればいい? 補助?」
田畑「撮影だよ」
昇「誰の」
田畑「あたしのねーちゃん。ついでにあたしも」

〇病院前・歩道(朝)
   花束と買い物袋を持って歩く誠。
   携帯と周りを交互に見る。
誠「だめだ」
   誠、仕方なく病院へ。

〇病院・受付前・ロビー(朝)
   道を聞く誠。
誠「ありがとうございました」
   誠、出口に向かう。

〇同・中庭(朝)
   携帯に着信。
   誠、電話に出る。
田畑(声)「遅い! なにやってんだよ」
誠「迷ったんだよ、しかたねーだろ」
   雪奈とすれ違う。
   誠、足を止めて振り返る。
   入院着の雪奈、病院の中へ。
田畑(声)「小道具がなきゃ撮影始められないの!」
誠「わかった、わかったから!」
   誠、急ぐ。

〇貸しスタジオ・室内(昼)
誠「来たぞー」
   椅子に座っている昇、振り返る。
昇「ありがと」
   昇、荷物を受け取って中を見る。
誠「あれ、もう終わった?」
昇「前半は。今から後半」
誠「なに撮ったの」
   昇、パソコンで撮った写真を出す。
   マタニティーフォトが出る。
誠「すっげ、知り合い?」
昇「田畑のお姉さん」
誠「あいつねーちゃんいたの? ってか本人はどこよ。あんだけ人を急かしておいてー」
田畑「集合時間から三時間遅刻しておいてなに言ってんだよ」
   誠と昇、振り返る。
   田畑、アニメキャラクターのコスプレをしている。
   二人、驚く。
昇「変わるねえ」
   昇、椅子から立ち上がる。
   誠、呆然としている。
   ドヤ顔の田畑。
誠「いやマジで誰⁉」
田畑「うっせえ! 耳死ぬだろうが!」
   田畑、誠の頭を叩く。
誠「田畑じゃん」
田畑「なに」
誠「田畑じゃん!」
田畑「お前マジなんなの」
誠「おま、お前さあ、そんなかわい……きれ、きれ? ちゃんとできんなら普段からそうしろ
 よ! 温度差で殺す気かよ!」
田畑「このギャップがいいんだろうがギャップがあ」
   田畑、髪をなびかせてから歩き出す。
   誠、田畑に見惚れている。
   誠、はっと我に返って昇の横に移動。
誠「え、マジこれなに? どういうこと?」
昇「コンテストに出したいんだって」
誠「あ~なるほどね。それで昇に写真をね。ほぉ~ん、へーそういうことねー」
   誠、そわそわ。
   昇、誠を見て微笑む。
   田畑、小道具を選んでいる。
昇「撮影対象としてしか見てないから安心しなよ」
誠「な、なに? いきなりなに言ってんの?」
   昇、笑う。
昇「始めようか」
   撮影を始める。
   シャッターを切る昇。
   次々とポーズを変える田畑。
   誠、田畑を見ている。
   × × ×
   昇、機材を片付ける。
誠「あ、そうだ」
   誠、昇のそばに行く。
誠「あのこさ、あのモデルやってた子、水槽の。あの子ってなんか体弱いの?」
昇「……聞いたことないけど」
誠「俺今日、道に迷った時にでっかい病院の受付に聞きに行ったんだけど、その病院にその子っ
 がいた気がすんだよね」
昇「……」
誠「入院した時に着る服? みたいなの着てたかな? まあ、すれ違っただけだし俺の見間違い
 かも」
田畑「あースッキリしたー」
   化粧を落とした田畑が合流する。
田畑「あ? なに、進んでないじゃん」
   誠、片づけを再開。
   昇、考え込んでいる。

〇マンション・昇の部屋(夕)
   昇、携帯のトーク画面を出す。
   雪奈が見当たらない。
   履歴を見るが見つからない。
   昇、家を出る。

○カフェ・店内(夕)
   東、皿を拭いている。
   扉が開く。
東「いらっしゃい」
昇「お久しぶりです」
   カウンター席に座る昇。
   店には昇と東しかいない。
   東、昇の前にコーヒーを出す。
昇「ありがとうございます」
   昇、コーヒーを飲む。
東「なにしてたの?」
昇「えっと、友達と遊んだり撮影したり」
東「そっかそっか、それは楽しいね」
   昇、店内を見渡す。
昇「あの……」
東「ゆきちゃんならいないよ」
昇「休みですか?」
東「辞めたんだよ」
昇「え」
   東、ミルに豆を入れて挽く。
昇「その、辞めた理由って……」
東「張谷くんは今、学校が楽しくなってきたころでしょ?」
昇「え、……まあ、そうかもしれないです」
東「なら、楽しいところにいた方がいいんじゃないかな」
昇「……それは、僕が知ることじゃないってことですか」
東「そうとも言えるね」
   昇、うつむく。
   コーヒーに映る昇の顔が揺らいでいる。
   昇、ふと気づく。
昇「僕、まだ雪奈に山の写真を見せてあげれてないんです」
   昇、顔を上げる。
昇「約束は守らないと」
東「……そうか、そうだね。それは守らないといけないね」
   東、昇の目の前にメモを差し出す。
東「後悔しない?」
昇「……後悔は、するかもしれないです。でも、あとで知るよりましです」
   東、微笑む。
   昇、メモを取る。
東「さあ行った行った。今日はもう終わりだよ」
   東、昇を店の外に追い出す。

〇同・外(夕)
   昇、押されて店から出る。
東「またおいで」
   東、扉を閉めて看板をcloseに変える。
   昇、頭を下げて駆けだす。

〇病院・外観(夕)
   病室に明かりがともっている。
   昇、見上げて病院の中へ。

○同・病室(夕)
   ノックの音。
   雪奈「はーい」
   昇、戸をゆっくり開ける。
   雪奈、昇に気づいて固まる。
汐見「面会? すぐ出るからちょっと待ってね」
   汐見、器具を片付ける。
   昇、駅前で見かけた人物を思い出す。
昇「あ……、いえ」
   汐見、病室を出る。
   昇、戸を閉める。
雪奈「ごめんね、こんな格好で。もうちょっとちゃんとした服着ておけばよかった」
   雪奈、布団を引き寄せる。
昇「いや……」
   昇、雪奈のそばへ。
雪奈「元気にしてた?」
昇「うん、雪奈は……」
雪奈「元気元気」
昇「……」
雪奈「本当だよ? あっそうそう、(指さして)そこにね、昇くんがくれた写真飾ってるんだ」
   昇、振り返る。
   壁に雪山の写真。
雪奈「ここで死にたい」
   昇、雪奈を見る。
雪奈「その写真を見た瞬間、そう思ったの」
昇「……」
雪奈「昇くんに会えた時はすごくうれしかったんだ。撮影場所を聞いて終わり。それでよかった
 のに、モデルを頼まれてからすごく楽しくなっちゃって。撮影も展示会も夢中になって、余命
 宣告されたことなんかとっくに忘れてた」
昇「……余命……」
雪奈「けどちょっと贅沢し過ぎちゃったかな。今じゃ場所を教えてもらってもどうにもできない
 や」
   雪奈、笑う。
雪奈「ごめんね、好きになってもらったのに。すごく嬉しかったの、それは本当。でもこんなん
 じゃ、昇くんになにもしてあげられないから」
昇「終わりみたいに言うなよ」
   雪奈、昇を見る。
昇「わからないじゃん。だって、元気なんだろ?」
雪奈「わかるよ」
昇「雪奈がそう思ってるだけで」
雪奈「(遮る)わかっちゃうの!」
   布団に涙が落ちる。
雪奈「自分の限界ぐらいわかるよ……」
   雪奈、顔を覆う。
昇「ごめん……」
   昇、雪奈を抱きしめる。
   雪奈、昇にすがりつく。

〇カフェ・店内(夜)
   カウンターで煙草を吸っている東。
   写真を見上げる。
   東、雪奈に笑いかける。
   溜息を吐くように煙を吐く。

〇病院・病室(夜)
昇「昔、一回だけ人を撮影したことがあるんだ。でも、それは絶対に撮影しちゃいけない瞬間
 で、僕はそれから人を撮らないようにしてたんだけど」
   二人、ベッドの上であおむけに寝ている。
昇「さすがに先生に言われてさ。でも撮らない理由を話すわけにもいかないから適当にごまかす
 つもりだったんだけど、雪奈との撮影がすごく楽しかったんだ。風景よりもずっと」
雪奈「昇くんはずっと人を撮りたかったのかもね」
昇「たぶんそう。だから雪奈と出会ったことは僕にとってすごく大切なことなんだ」
雪奈「その、一番初めに撮った写真はどんなのだったか、聞いてもいい?」
昇「……飛んでる人」
雪奈「飛んでる?」
昇「ビルから人が飛んだ瞬間の写真」
雪奈「……ごめん」
昇「いいんだ、もう昔のことだから」
   昇、横向きに体勢を変える。
昇「僕が雪に刺さった話をしようか」
雪奈「聞きたい」
   雪奈、同じように体勢を変える。
   向かい合う二人。
昇「撮影を切り上げてキャンプ地に戻ろうとした時に雪が急に崩れてね」
雪奈「えー(笑う)」
昇「後ろに転がるかなって思ったんだけど崩れた部分が大きかったらしくて、結局頭から雪に刺
 さってさ、両足とカメラを持った手以外埋まっちゃってね、山岳部の人に足を引っ張ってもら 
 ってやっと抜け出せたんだ。その時も写真撮ってたんだけど、見る?」
雪奈「見たい!」
昇「わかった、明日持ってくる」
   雪奈、背中を丸める。
雪奈「……行ってみたかった」
   昇、雪奈を抱きしめる。
昇「行こう」
雪奈「行けるかな」
昇「大丈夫。僕が連れてく」
雪奈「……うん、約束」

〇マンション・昇の部屋(朝)
   昇、リュックに写真のファイルとパソコンを押し込む。
   昇、紙袋も持って家を出る。

〇病院・病室(朝)
   ノックの音。
雪奈「はーい」
   昇、戸を開ける。
雪奈「おはよ」
昇「おはよ、いいもの持って来たよ」
   昇、紙袋を掲げる。

〇大学・教室
   誠、教科書を出している。
   田畑、誠の隣に座る。
誠「おはよ」
田畑「はよ、張谷見ないけどどうした?」
誠「俺も知らない」
田畑「……ちゃんと見といてやんなよ、友達でしょ」
誠「それは、お前もだろ」
   田畑、誠を見る。
誠「なんだよ」
田畑「……そっか。あたしもか」

〇病院・病室(朝)
   ベッドの上に写真。
   雪奈、ファイルをめくる。
   昇、一緒に写真を見ている。
   爆笑している誠の写真に空の写真、凍った昇の髪の写真。
   髪を切ってもらっている昇の写真。
   笑う雪奈。
   ノックの音。
   二人、顔を上げる。
   器具が乗った台を押しながら汐見が入ってくる。
   昇、写真を片付けて部屋を出る。

〇同・病室前・廊下(朝)
   戸を閉める昇。
   少し離れた場所に聡子が立っている。
   昇、会釈。

〇同・病室(朝)
汐見「彼氏?」
雪奈「そっんなんじゃ、ないです」
汐見「ただの友達って距離でもなさそうだけど?」
雪奈「(写真を見て)大切な人です」
   汐見、写真を見る。
汐見「いい写真だね」
   雪奈、嬉しそうに笑う。

〇同・病室前・廊下(朝)
   ベンチに座っている聡子と昇。
聡子「これ、雪奈に渡しておいてください」
   聡子、紙袋を昇に差し出す。
昇「え、いや会って渡されては」
聡子「私がいると無理して元気に見せようとしますから」
昇「……わかりました」
   昇、紙袋を受け取る。
   聡子、席を立つ。
   昇、立って見送る。
   戸が開いて汐見が出てくる。
汐見「お待たせしました。もう入っていいよ」
昇「あ、どうも」
汐見「写真、撮ってるんだって?」
昇「あ、はい」
汐見「結婚式の写真って撮れる? 前撮りも含めて」
昇「えっと、やったことないのでなんとも言えないですけど、最近は人も撮ってますのでなんと
 か」
汐見「ホント? じゃあお願いしてもいい?」
昇「いいですけど、どなたの……?」
汐見「俺俺、近々結婚するんだ。またあとで連絡先教えて、ちゃんと依頼するから」
昇「はい」
   汐見、手を振って去っていく。
   昇、嬉しそうな顔。

〇同・病室(朝)
   病室に入る昇。
   ベッドの周りにカーテンが引かれている。
昇「雪奈?」
   雪奈、カーテンの隙間から顔だけを出す。
   にこにこしている雪奈。
   雪奈、カーテンを開ける。
   衣装を着ている雪奈。
   昇、驚く。
昇「着たの?」
雪奈「見つけちゃったから」
   雪奈、くるくる回る。
   ふわふわと舞う裾。
雪奈「かわいいね」
昇「うん、かわいい」
   雪奈、笑う。
   昇、雪奈を抱きしめる。

〇同・中庭(昼)
   雪奈、ベンチに座っている。
   昇、カメラを構える。
   雪奈、照れて顔を隠す。
   昇、構わず撮影。
   雪奈、昇に近づきレンズを手でふさぐ。
   昇、微笑む。
   雪奈、レンズから手を離す。
   昇、下がって雪奈を撮り続ける。

〇同・病室(夜)
   雪奈、紙袋を開ける。
雪奈「あっお母さん持って来てくれたんだ」
   雪奈、白いワンピースを広げる。
昇「懐かしいね」
雪奈「ねー、明日着ようかな」
   雪奈、ワンピースをたたむ。
昇「あのさ、変なこと聞いてもいい?」
   昇、ベッドに座る。
雪奈「ん? いいよ?」
   雪奈、ワンピースを棚に置く。
昇「雪奈って、僕のこと好きだよね」
雪奈「えっ⁉」
昇「僕の勘違い? うぬぼれているかな?」
   雪奈、赤くなった顔をそらす。
昇「答えたくない?」
   昇、雪奈の手を握る。
雪奈「……ずるい。ずるいよ、それは」
   雪奈、俯いたまま。
雪奈「私は、そういうこと言っちゃだめだから」
昇「どうして?」
雪奈「だって……気持ちはずっと残るでしょ? 私じゃなくて、昇くんに」
昇「それは、そうだね」
雪奈「それってなんか呪いみたいじゃない?」
昇「僕はそれでも嬉しいよ」
雪奈「やだー」
   雪奈、離れようとする。
   昇、離さない。
   雪奈、力ずくで手を引き抜こうとする。
   昇、離さない。
昇「いや?」
雪奈「……、……好き」
   昇、雪奈を抱きしめる。
   雪奈、昇の背中に手を回す。
   しばらくして体を離す。
   昇、額をくっつける。
昇「嬉しい」
   雪奈、微笑む。
   昇、雪奈を見る。
   目が合う二人。
   昇、顔を少し動かす。
   雪奈、目を伏せる。
   床に月の光で作られた影が映る。

〇マンション・昇の部屋(朝)
   携帯が鳴っている。
   昇、起きて携帯を見る。
   誠からの着信。
昇「はい?」
誠(声)「今どこにいる?」
昇「どこって、家だけど」
誠(声)「今日課題の説明会があるの忘れてないよな?」
昇「……あーそうだっけ」
   昇、布団にもぐる。

〇大学・教室前(朝)
   学生たちが教室に入っていく。
誠「……まだ間に合うから来いよ」
   田畑、駆け寄って誠の携帯を奪う。
誠「ちょ、なんだよ」
田畑「次、風景だとしても絶対負けないから」
   田畑、電話を切る。
誠「なにしてんだよ、昇じゃなかったらどうすんだよ」
田畑「アンタがそんな顔して電話してんのは張谷ぐらいでしょ」
   田畑、教室に入る。
誠「え、どんな顔?」
   誠、教室へ。

〇マンション・昇の部屋(朝)
   昇、笑っている。
昇「はー……行くかあ」
   昇、ベッドから出て支度を始める。

〇病院・病室(朝)
   窓の外を見ている雪奈。
   空が曇っている。

〇大学・教室(昼)
   教室に入ってくる昇、誠の横に座る。
   誠、資料を昇に渡す。
誠「おはよ」
昇「おはよ」
   植木、教室に入り教壇に立つ。
植木「資料にもある通り、テーマは自由です。好きなものを撮ってください」
   学生、ざわつく。
植木「冬休みも含め、撮影期間は長くとれると思います。今年一番の力を入れて取り組んでくだ
 さい。以上です」
   植木、教室を出て行く。
誠「決まりもなしの自由かあ」
田畑「(立ち上がりながら)好きなもん撮ればいいんでしょ、簡単じゃん」
誠「もう決まってんの?」
田畑「もち。食べ物にする」
誠「人物じゃないんだ」
田畑「んー、コスはやっぱ趣味だな。前の琥珀糖撮ってた方が楽しかったし。じゃ」
   田畑、教室を出て行く。
誠「昇は? なに撮んの?」
昇「決まってない」
誠「風景じゃねーの?」
昇「……どうしようかな」
誠「(立って)ま、飯でも行って考えよーぜ」
昇「(笑って)それもいいかも」
   昇の携帯に着信。
   昇、画面を確認する。

〇病院・廊下(昼)
   昇、走る。

〇同・病室(昼)
   病室に駆け込む昇。
   雪奈の両親が振り返る。
   ベッドの周りに医者と複数の看護師。
   聡子、昇の背中を押してベッドへ促す。
昇「雪奈……?」
   雪奈、目を開ける。
昇「どうしたの、ちょっと疲れちゃった?」
雪奈「ごめんね」
昇「なにが、なにがごめんなの? ねえ、山行こうって、元気になって一緒に行こうって言った
 よね」
   雪奈、目を閉じる。
昇「……僕はまた、最後を撮ってたの?」
   昇、こぶしを握る。
昇「写真なんか、あの時に辞めればよかった」
   雪奈、昇の手を握る。
雪奈「そんなこと言わないで」
   昇、雪奈を見る。
雪奈「私は、昇くんの写真を見て、生きたいって思ったんだよ」
   × × ×
   フラッシュバック。
   雪山の写真。
   それを見ている雪奈。
   × × ×
雪奈「昨日の撮影、私は嬉しかったよ。最後があんなにきれいに残ることなんてないでしょ? 
 昇くんだから出来たことだよ。だから、お願い。そんな悲しいこと言わないで。私、昇くんの
 写真大好きだけど、写真を撮ってる昇くんも大好きなの」
   雪奈、昇の涙を指で拭う。
   昇、雪奈の手を握る。
昇「……わかったよ、雪奈がそう言うなら。もっといい写真撮るから─」
   雪奈、微笑んで目をつむる。
昇「雪奈?」
   反応がない。
昇「ねえ、ゆき─」
   昇の手から雪奈の手が落ちる。
   心停止の音。
   静まり返る病室内。
   辰巳、聡子の肩を抱く。
   看護師たちが機械を片付ける。
   医者、両親を病室の外へと促す。
   昇を残して全員病室を出る。
   昇、呆然と立っている。
   昇、顔を上げて写真を見る。
   昇、涙を拭って雪奈を抱き上げる。

〇雪山・斜面・現在(昼)
   真っ白な世界。
   昇、シャベルで雪を掘っている。
   穴の横に毛布。
   × × ×
   昇、雪にシャベルを突き刺す。
   人が余裕で入る大きさの穴。
   昇、毛布を取る。
   昇、雪奈を穴の中へ。
   昇、毛布を雪奈にかける。
   手袋を外し、頬を撫でる。
   昇、しばらく眺め、手で雪をかける。
   少しずつ雪に埋まっていく雪奈。
   真っ赤になっていく昇の手。
   × × ×
   雪の上に仰向けで寝ている昇。
   青空に鳥が飛んでいる。
   昇、体を起こして雪を払う。
   昇、歩き出す。
   昇、立ち止まって振り返る。
   写真と同じ景色。
   昇、ゆっくりと山を下りる。

〇同・麓・駐車場(夕)
   下ってくる昇。
   パトカーが数台止まっている。
   警察と話している聡子と辰巳と匡彦(50)、昇に気づく。
   辰巳と聡子、昇に駆け寄る。
   昇、頭を下げる。
   匡彦、昇を殴る。
匡彦「お前というやつは……!」
   辰巳、昇と匡彦の間に入る。
辰巳「待ってください」
匡彦「しかし!」
聡子「いいんです」
   聡子、昇の殴られた痕にハンカチを添える。
聡子「あの子の夢を叶えてくれただけですから。(昇に)そうよね?」
昇「……はい」
   昇、涙を流す。
   聡子、昇を抱きしめる。
   辰巳、二人の肩を抱く。
   救助隊の一人が昇に話しかける。
   昇、地図を渡す。
   救助隊が山に入っていく。

〇カフェ・外観(朝)
   東、看板をopenに変える。
   東、振り返る。
   その先に昇。
昇「コーヒー、飲みに来ました」
   東、微笑む。
東「ケーキもあるよ」
   東、昇と店内へ。

〇ギャラリー・外観・二年後(朝)
   入口に張られたポスター、張谷昇写真展。

〇同・室内(朝)
   様々な写真が飾られている。
   中央に大きな写真。
   その前に立っている昇(23)、微調整して立ち去る。
   水槽の中を泳ぐ雪奈の写真。
   題名「人魚」
       終わり

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