スカウト(百演・採用作品) コメディ

レプロエンターテインメント「百演」に応募・採用されたコント作品です。 芸能事務所のスカウト担当・須賀智子は、今日も女優の卵を発掘すべく街中でスカウト活動を続けていた。その日の収穫は香山マヤカという女子高生。しかし、上京したばかりのフリーター・相原藍も芸能事務所にスカウトされるべく須賀の視界に入ろうと必死の抵抗を見せるのであった。
井出眞諭 15 0 0 11/21
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第一稿

登場人物
 須賀智子(29)芸能事務所のスカウトマン
 相原藍(17)フリーター
 香山マヤカ(17)女子高生
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登場人物
 須賀智子(29)芸能事務所のスカウトマン
 相原藍(17)フリーター
 香山マヤカ(17)女子高生
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本文
   街の喧騒。
   パンツスーツの須賀が歩いてくる。
須賀「新宿まで出てきたけど、スカウト出来
 そうな子なかなかいないなぁ。でもまあ、
 一応アルタ前も見て行くか」
   舞台心まで進む須賀。
   下手に相原藍が立っている。高いヒー
   ルの靴を履いている。
藍「アルタ前って立つだけで緊張するなぁ。
 あ……あの人、もしかしてスカウトの人か
 しら」
   藍、須賀の横にわざとらしく立つ。
   須賀、行き交う人を目で追い、追いか
   けて名刺を出す。(マイム)
須賀「すいません。私、こうゆう者なんです
 が……はい。あ、もう事務所入られてるん
 ですね。ですよねー。ダメか……」
   藍、須賀を横目で見て、
藍「んっんっんー(と咳払い)」
   須賀は、藍を一瞥するのみ。
須賀「誰かいい子いないかなー」
   藍、カニ歩きで少しずつ須賀から離れ
   ていき、下手に消える。
須賀「……(行き交う人を眺めている)」
   下手から再び藍が歩いてくる。
   高いヒールに慣れていないのか、膝が
   曲がったままアヒルのように歩く。
須賀「……(藍から目をそらす)」
   藍、少しバックする。
須賀「……(さらに目をそらす)」
藍「(独白)なんだよっ!」
   藍、上手へ歩き去って消える。
   間。
   上手から、藍がまた歩いてくる。
須賀「……(藍に見向きもしない)」
   藍、すれ違いざま須賀をガン見する。
   須賀、目を合わせない。
藍「あ、あの!」
須賀「はい?」
藍「ここってアルタ前ですよね?」
須賀「ですよね」
藍「あ、なるほどなるほど。じゃあ、あたし
 ここに立ってますんで」
須賀「はい」
藍「別にいいですよね?」
須賀「はい」
   藍、キメ顔でしゅっと立つ。
須賀「……」
藍「……」
   女子校制服姿の香山マヤカが歩いてく
   る。キラキラした笑顔。
須賀「あ!」
   須賀、藍を押しのけてマヤカを追いか
   ける。
須賀「あのー。すいません」
マヤカ「え、アタシですかぁ?」
須賀「私、こうゆう者なんですが、芸能関係
 の仕事に興味ないですか?」
マヤカ「えー! あります!」
藍「(極めて心外)えーー?!」
須賀「あの決して怪しいものじゃないので、
 これ名刺、もし気が向いたらここに電話し
 ていただけますか?」
マヤカ「わかりました! 連絡します!」
藍「えーー?! それ、えーー?!」
須賀「あのお名前だけ、いいですか?」
マヤカ「香山です。香山マヤカです。下から
 読んでもカヤママヤカです!」
須賀「あ、それいいですねー。それじゃ」
マヤカ「ありがとうございます!」
   笑顔で去っていくマヤカ。
   殺し屋のような目でマヤカの背を睨み
   つけている藍。
須賀「よし、今日はこのへんにしとくか」
   歩き出そうとする須賀の前に、突然倒
   れこむ藍。
須賀「え……。あの、大丈夫ですか?」
藍「……(須賀の様子を伺う)」
須賀「困ったな。救急車呼んだ方がいいのか
 なこの場合」
   顔を上げる藍。
藍「どうでした?」
須賀「え?」
藍「だから今の倒れ方」
須賀「え、どういう意味ですか?」
藍「失恋したショックで倒れる女です」
須賀「失恋? 貧血で倒れたのかと思った。
 びっくりした」
   行こうとする須賀。
   藍、須賀の足を掴んですがりつく。
須賀「ちょっと! なにするんですか!」
藍「相原藍って言います!」
須賀「そうですか!」
藍「下から読んでも藍原相です!」
須賀「山本山みたいですね!」
藍「あぁ! なんかさっきのパターンとぜん
 ぜん違う! もうぜんぜん違う!」
須賀「もういいから離してください!」
藍「あたし芸能界に興味あって、歌とかお芝
 居とかも勉強したいんです!」
   須賀、藍の手を振りほどく。
須賀「勉強したいなら、いい先生を紹介して
 あげるから、お金払って教えてもらいなさ
 い! 興味があるってだけで出来るほど甘
 い世界じゃないのよ!」
藍「あたしもスカウトされるようになります
 か……?」
須賀「だから、スカウトされるのがゴールじ
 ゃないの。そこからみんな死ぬほど努力し
 て努力して、それでも成功するのは一握り
 なのよ。あなたにその覚悟はあるの?」
藍「あたしのゴールはスカウトされることな
 んです! それ以上は何も望まない。なに
 もいらない……」
須賀「根本的に間違ってるのよね……」
   マヤカが戻ってくる。
マヤカ「良かった、まだいた」
須賀「あ、どうしたんですか?」
藍「……」
マヤカ「さっき両親に電話したら、お母さん
 は賛成してくれたんですけど、お父さんが
 大反対で。だから、今回はごめんなさい」
   深々とお辞儀するマヤカ。
須賀「そう……残念だけど。また状況が変わ
 ったら連絡ください」
マヤカ「はい! ありがとうございます!」
   去っていくマヤカ。
藍「(ニヤリ)勝った……」
須賀「ああゆう子もいるんです。やりたくて
 もやれない子がたくさん」
藍「あたしは両親も賛成してくれてます!」
須賀「まだわかんないかな……」
藍「スカウトだけはされてこい。あとはどう
 なったっていい。そう言われて本日、茨城
 の実家から新宿アルタに降り立ちました」
須賀「今日来たんだ……?」
藍「スカウトの為だけにやって参りました」
須賀「そう言われてもねぇ」
藍「(咳き込んで)あたしにはもう時間がな
 いんです! 残された時間はあとわずかし
 かありません。どうかスカウトだけでもし
 ていただけないでしょうか」
須賀「どうゆうこと? あなたまさか、病気
 とか? そうゆうこと?」
藍「もうこの時間は取り返せないんです……」
須賀「そう……よかったら詳しく聞かせても
 らってもいいかな」
   うつむく藍、何かを須賀に差し出す。
須賀「これは……。切符……?」
藍「思ったより終電が早いんです」
須賀「日帰りで来たのかよ」

   暗転。

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