与論ドル ドラマ

政治家への接待の為に与論島を訪れた岡翔平。新規事業を受注する為、不正な仕事に手を染めようとしていた。与論島の独立を目指して活動する朱里と出会い、自分の仕事に徐々に疑問を抱き始める。 南のシナリオ大賞に応募した、ラジオドラマ用脚本です。(10分間)
桐乃さち 738 0 4 11/01
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第一稿

登場人物

岡翔平(26) 不動産会社社員
阿野朱里(23) 居酒屋「ティダ」オーナー
浅野(58) 県議会議員
佐藤(47) 岡の上司
与論島の男達
おじいさん
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「与論ドル」(PDFファイル:233.66 KB)
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登場人物

岡翔平(26) 不動産会社社員
阿野朱里(23) 居酒屋「ティダ」オーナー
浅野(58) 県議会議員
佐藤(47) 岡の上司
与論島の男達
おじいさん
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岡N「鹿児島県最南端にある与論島。
 俺は、接待の準備で、一人与論島を訪れていた」

   電話の発信音。

岡「あ、もしもし。岡です。接待の手配終わりました」
上司の声「おう、ご苦労さん」
岡「お部屋はスイート。翌日は、シーサイドゴルフ場を貸し切りにしてあります」
上司の声「宴会の準備も出来てるよな?」
岡「海が見えるお庭でのBBQ。ワインはロマネコンティです!」

上司の声「コンパニオンは?」
岡「コ、コンパニオン?」
上司の声「おいおい。まさか手配してないのか?
 浅野先生だって、出張の時ぐらい羽をお伸ばしになりたいんだから」

岡「いや、でも。本当に何もない島なので」
上司の声「それを何とかするのが、お前の仕事だろ!
 いいか?浅野先生のお好みは、色白ぽっちゃりだぞ!」

   電話が切れる音。

岡「くそ!なんなんだよ!」

岡M「接待相手は県議会議員。政治家への接待は不正行為だが、
 与論島の再開発案件を受注する為には、やらない訳にはいかなかった」

   海の音。砂浜を歩く足音。

岡M「どうして俺はこんな仕事を……。いや、余計なことは考えない。
 とにかく今日は酒を飲んで寝てしまおう」

「カラン」とドアが開く音。賑やかに笑い合う声。食器のぶつかる音。

朱里「いらっしゃい!」
岡「一人なんですけど」
朱里「お客さんたびんちゅだね。どこから?」
岡「あぁ、東京です。観光じゃないけど」
朱里「わざわざ、与論まで!」

岡「ここ、いいお店ですね。ティダ?」
朱里「こっちの言葉で、太陽って意味だよ」

岡M「笑顔が素敵な女性だった。色白ぽっちゃりじゃないけど、頼んでみるか」

岡「あの……」
朱里「うち、与論ドルしか使えないけど、いい?」
岡「よ、与論ドル?」
朱里「あはは。大和の人は知らないよね。これだよ」

岡M「ペラペラの、おもちゃのような紙幣だった」

朱里「一枚1000円だよ」
岡「500与論ドル?それ、日本円にするといくら分なんですか?」
朱里「そのまんま。500円分だよ」
岡「え!?二倍の値段!?ぼったくりじゃないか!」

朱里「嫌なら買ってくれなくていいよ。これ、うちの団体への活動支援だから」
岡「団体って?」
朱里「与論独立同盟」
岡「与論、独立、同盟!?」

朱里「与論島を、日本から独立させたいの」
岡「何で?何のために?って言うか、そんなこと出来るんですか?」
朱里「出来るかどうかはやってみないと分からない」
岡「はあ?」
朱里「ここで飲んでる連中は、みんな私の仲間さ」

岡M「なんだか面倒くさいことになって来た。
 さくっと飲んで、とっとと引き上げよう」

岡「分かりました。じゃあ、1000与論ドル分下さい。あ、領収書も」
朱里「ちょっと、待って」
岡「え?」
朱里「与論ドルを買ってくれるお客様には、私達の理念を話すことにしているから」
岡「えっと、じゃあ、お願いします」
朱里「今の日本の政治って腐ってるよね」
岡「はあ……」

朱里「政治家は椅子取りゲームに夢中だし、国民は、見ざる聞かざる言わざる。
 選挙にも行かないくせに、SNSで文句だけは言ってる」
岡「まあ、そうですね……」
朱里「誰かに期待するのも、無視されるのもうんざり!
だから、私達は自分達で理想の国家を作ることにしたの」

岡「理想の国家って?」
朱里「誰もが自分の国に誇りを持てる国。胸を張って生きられる国」

岡「あの、お言葉ですけど」
朱里「うん?」
岡「それって、あなた達が政治家になって、今の日本を変えればいいんじゃないですか?」

朱里「茹でガエルの法則って知ってる?」
岡「いや、知りません」

朱里「カエルは、常温の水に入れて徐々に水温を上げていくと、
 死ぬまで気が付かないんだってさ。今の政界は茹でガエルの温床だよ。
 私は茹でガエルになりたくない」
岡「茹でガエル……」
朱里「どう?理念に賛同してくれる?」

岡「それって、大人の考えじゃない」
朱里「え?」
岡「誰だって、お金を稼いで生きて行かなきゃならない。
 少しの熱湯ぐらい、生きる為なら、飲むべきなんじゃないかな?」
朱里「そう」

岡「気に入らないことから逃げ出すのが偉いとは思わない。少なくとも俺は、逃げない」
朱里「いいよ。考え方はそれぞれだもん。だけど、与論ドルは売れない。ごめんね」

岡「そうですか、じゃあ、いいです」
朱里「ありがとうございました~」

岡「あ!あの」
朱里「何?」

岡「明日の夜って、空いてますか?」
朱里「え?」
岡「ある大物の先生が来るんです。
 それで、一緒に飲んでくれる女性を探していて」
朱里「何、それ?」
岡「3時間で1万円、いや、2万円でどうですか?そうだ!与論ドルで払いますよ。
 悪い話じゃないでしょ?」

朱里「だから、与論ドルは売れないって」
岡「活動資金なんでしょ?協力しますよ」
朱里「……あんたも、茹でガエルって訳だ」

   パンパン、と手を叩く音。

朱里「お客様に与論献奉をご用意して!」
男達「おーーー!」

   歓声と手拍子が上がる。

岡「な、何ですか?」
朱里「気が変わった。あんたを歓迎することにする」
岡「え?」
朱里「与論には、昔から伝わる、与論献奉って言うもてなしがあるんだ」

   盃に、酒を汲む音。

朱里「いい?こうやって、盃にいっぱい焼酎を注いで。はっかーなーど!」
男達「はっかーなーど!」

岡「え?え!?」
朱里「東京から来たお客さん!お名前は?」
岡「あ、えっと、あの。岡です」

朱里「岡さんね!私は朱里」
岡「朱里さん……」
朱里「じゃあ、まずは私から!私は、皆が誇りを持って生きられる国を作ります!」

男達「はっかーなーど!はっかーなーど!はっかーなーど!」

   ぐびぐびと焼酎を飲み干す音。拍手。
   盃に、酒を汲む音。

朱里「さぁ!次は岡さんの番だよ!」
岡「えっ、あの」
朱里「与論島に来た目的を言って、それから飲むの!はっかーなーど!」

男達「はっかーなーど!」

岡「えっと、あの、じゃあ、いただきます」
朱里「待って!あなたは、与論島に何をしに来たの?」
岡「え?」
朱里「神様が見てる。話して」

岡「俺、俺は……。仕事で。不動産業をやっていて、次の仕事を受注する為に……」

朱里「次の仕事って?」
岡「新しい街を作るんです。住民の皆さんが喜んでくれるような、そんな街を」
朱里「素敵な仕事じゃない」

男達「はっかーなーど!」
朱里「はっかーなーど!さ、飲んで!」


   ぐびぐびと焼酎を飲み干す音。拍手。

岡「ぐはぁ!きっつー!」
朱里「岡さん、与論島へようこそ!とうとぅがなし!」
男達「とうとぅがなし!」

   口笛や、歌い踊る声。

朱里「岡さん。仕事、頑張って。私は協力出来ないけど」
岡「ありがとう……」
朱里「さ、飲もう!」

岡M「俺は、なんだか自分が情けなくて、苦しくて、
 その思いを押し流すように、酒を飲み続けた」

   パチパチと火がはぜる音。

浅野「いやー、ここは最高だね!」
佐藤「ありがとうございます」
浅野「海を見ながらBBQなんていいじゃない!」

佐藤「うちの岡が、全て手配致しまして」
浅野「そう!なかなかやるね、若いのに」
佐藤「(小声)おい、岡!コンパニオンは?」

岡「それが、あの……」
佐藤「(小声)何やってるんだよ!せめて、二次会はクラブを予約しておけよ!」
岡「この辺、地元の人がやっている居酒屋ぐらいしかなくて」
佐藤「女の一人や二人、いるだろ!?しっかりしろよ!ここが、正念場だぞ!」

岡「はい、でも、あの。浅野先生!」
浅野「んあ?」
岡「今度の再開発事業のことですけど」
佐藤「おいおい、こういう場で仕事の話なんかするんじゃないよ!」
浅野「いや、いいよ。その為の出張だからね」

岡「道路が広くなるのはいいけど、海や自然は守られるのかって言う質問が、
 住民の方から来ていまして」
浅野「道路?違う、違う。ゴルフ場ね」
岡「え?」

浅野「あの辺の畑や山全部つぶして、大きなゴルフ場を作るの!」
岡「ゴルフ場?いや、あの、道路拡張工事の計画でしたよね?」
佐藤「おい、岡!」

岡「皆さん、与論島に遊びに来てくれる人が安全に過ごせるならと、
 それで、大切な土地を手放す決心をしてくれたんですが」

浅野「ははは、それは70代80代のじいさん達の意見でしょ。
 あと、10年の我慢じゃないか」
佐藤「そうだぞ、岡!もうその計画で進んでいるんだ!話を蒸し返すな!」
浅野「海の見えるでっかくて、立派なゴルフ場を作るのよ。
 その方が、観光客も喜ぶでしょうが!がっはっはっは」
佐藤「申し訳ありません、先生!ささ、ワインをどうぞ!」

    ワインをグラスに注ぐ音。

岡「は、ははは。そうか、そう言うことなのか」
佐藤「おい、岡。どうした」

岡「先生、これを事務所にお送り致します」
浅野「ん?何だ、これは」
岡「今回の旅行の、先生の分の費用です」

浅野「何だって?」
岡「政治家の方への、利害関係を含む飲食の寄付は、法律で禁止されていますから」
佐藤「おい、岡!」

岡「払っていただけない場合は、今回の再開発の件も含めて、新聞社にリークします」
佐藤「おい、岡!どういうつもりだ!?会社をつぶすつもりか!?冷静になれよ!」
岡「自分に胸を張って生きたいだけです。失礼します!」

浅野「待ちたまえ、君。岡君だっけ?」
岡「はい」
浅野「払うよ、旅の資金。最初からそのつもりだったんだから。
 もちろん、私のポケットマネーでね。あっはっはっは」

岡M「政治家って、すごいな」

   波音。

岡M「三か月後。会社は、再開発案件から外された。俺は会社を退職した。
 今は東京で、フリーのアドバイザーとして、地権者さん達のお手伝いをしている」

おじいさん「うーん。岡君、この資料、わしにはちょっと読みづらいんだけどね」
岡「あ!僕がお読みしますよ。えっと、これはですね……」

岡M「与論島の再開発事業は住民の猛反対にあったが、
 あっけなく進められているらしい。

 与論島が独立すると言うニュースが入って来るのも、時間の問題かもしれない。
 俺は時々財布を見る。
 朱里さんに頼み込んで譲ってもらった、与論ドルが一枚入っている」 
     
                                了

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