恋愛探偵 恋愛

読書好きの眼鏡女子が、偶然の出会いが重なったことで、世間を騒がす連続殺人鬼と対決することに! 恋と事件の行方やいかに!
森江雅幸 392 0 0 09/02
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第一稿

○プラネタリウム・場内
   スクリーンに映る満天の星。
   客はまばら。
   一番後ろの席に並ぶ塩見竜平(23)と真美(19)。
竜平「ウナギの並と特上の違いって知っ ...続きを読む
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○プラネタリウム・場内
   スクリーンに映る満天の星。
   客はまばら。
   一番後ろの席に並ぶ塩見竜平(23)と真美(19)。
竜平「ウナギの並と特上の違いって知ってる?」
真美「何それ、知らない」
竜平「ウナギの量が多いか少ないかだけ。質は変わらないんだ」
真美「へえ・・てかさ、星見ながらする話? 変な人」
竜平「君もかなりね」
真美「ああ、さっきのこと? 初めて会う男をホテルに誘うなんて、やっぱ変?」
竜平「メールでは、もっとおしとやかだったけど」
真美「だって会ってみたらイケメンだったし、迷う理由ないじゃん」
竜平「・・・」
真美「私ってさ、自分に正直なタイプだから。取りあえず寝たかったら寝てみるの。どう? い
 い女でしょ」
竜平「・・確かに」
   2人の顔が近付き、口づけようとする。
   が、突然真美の口を手で塞ぐ竜平。
真美「!」
   竜平のもう片方の手にはナイフ。
   容赦なく真美を突き刺す。
真美「!」
   もがく真美を更に刺し続ける竜平。
   周りは気付かない。
   真美がぐったりと力尽きる。

○同・男子トイレの中
   洗面台で血の付いた手を必死に洗う竜平。洗い終えると、鏡に映る自分を見つめる。
竜平「・・・」
   と、背後に気配を感じて振り返る。
竜平「!」
   壁にもたれ、煙草を吹かしている塩見奈津(45)の姿。
奈津「(不敵な笑み)」
竜平「・・・」
   と奈津を睨み付ける。

○同・場内
   警察による現場検証が行われている。
   真美の遺体に手を合わせる警部・星野誠治(50)と刑事・若田守(28)。
若田「めった刺しですね、怨恨でしょうか」
星野「場内のカメラを押さえろ、この辺り一帯のカメラも根こそぎにな」
若田「はい」
   と去る。
   鑑識員の1人が来る。
鑑識員「警部、男子トイレの洗面台からルミノール反応が出ました」
   星野が向かう。

○啓泉堂大学・全景
   入口柱に『啓泉堂大学』の文字

○同・キャンパス
   学生が行き交う光景。
   備え付けのテーブルと椅子が並ぶ中、読書中の眼鏡女子・中島千尋(20)。
   星野大地(20)が片岡美咲(20)を連れて千尋の元へ来る。
大地「よう千尋!」
千尋「また来たの? 大学違うでしょ」
大地「まあまあ、堅いこと言わないで。俺だって本当はここに通いたかったんだし」
千尋「落ちたでしょ」
大地「それ言う? そんな軽めに言っちゃう?」
美咲「あの、初めまして。千尋さんですよね」
千尋「あ、はい(大地に)まさか」
大地「その通り! 今回の依頼人、美咲ちゃんでーす」
千尋「(ため息)・・なに依頼人て」
大地「うちの大学のサークル仲間」
美咲「すごい幼馴染がいるって聞いて。恋の悩みなんか一発で解決してくれる恋愛探偵だって」
千尋「いえ違うんです。一度だけ大地が女の子を連れて来て、少し話を聞いてあげただけで。て
 いうか、何ですか恋愛探偵って?」
美咲「大地が」
千尋「(大地に)変な呼び名付けないで」
大地「だって探偵小説オタクだし」
千尋「オタクだけど探偵じゃないし」
美咲「話だけでもいいですか? ちょっと気になったことがあって」
大地「聞いてあげてよ」
千尋「・・・」
   ×  ×  ×  ×  ×
   美咲の話を聞く千尋と大地。
   美咲、メモ用紙を2人に見せる。
美咲「これなんです」
大地「これがその、彼氏が落としたっていうメモか。日付と時間と場所が幾つか書いてあるけ
 ど、これが何か気になるの?」
美咲「デートの計画じゃないかと思って」
大地「デートね。なら気にすることないじゃない、これは見なかったことにして、楽しみに待っ
 ていればいいだけでしょ」
千尋「(メモを指し)この日が過ぎているのが問題なんじゃないですか?」
美咲「そうなんです」
大地「9月30日18時、武蔵粕谷駅東口改札って、あ、先週か。え、どういうこと?」
千尋「その日に彼氏とは会っていないんじゃないですか?」
美咲「会っていません。その日は月曜日だし。ていうか私、月曜日に塾の講師のバイトをしてい
 るんです。だから会えないって彼にも言ってあるし」
大地「でも、このメモ通りに誰かと会っていたとしても、女の子とは限らないでしょ」
美咲「彼って結構無神経に私の目の前でも携帯でやり取りするのね。見ないようにしようと思っ
 ているけど、ちょこちょこ目に入っちゃって」
大地「女の子と?」
美咲「(頷き)それも1人じゃないみたい」
大地「うーん・・」
   千尋、携帯を出し、メモと見比べる。
千尋「このメモの日付、全部月曜日ですね」
大地「ということは、美咲ちゃんが会えない日を狙って、他の子と会ってるってか」
美咲「(千尋に)私どうしたらいいですか? 彼にどう話をすればいい?」
千尋「あ、そういうの私分からないんで」
大地「千尋は恋愛音痴だから」
美咲「え? 恋愛探偵じゃ・・」
千尋「2人が付き合い始めたのはいつからですか?」
美咲「ちょうど1年前くらいです」
千尋「なら心配ないかも」
大地「どうして?」
美咲「どういうことですか?」
千尋「これが最近でなく、1年前に書かれたものだとしたらどうですか?」
大地「(気付き)そういうことか!」
美咲「え? 何が?」
大地「1年前に書かれたとしたら、この月曜日は何曜日になる?」
美咲「・・日曜日?」
千尋「1年前の日曜日、よくデートしてませんでしたか?」
美咲「してました!」
千尋「(メモを指し)こんな場所で待ち合わせしませんでした?」
美咲「しました! ここも、ここも! あ、でもこの遊園地の駅は行ったことない」
千尋「遊園地は雨だと大変ですよね? 例えば雨で予定が変更になったこととかは?」
美咲「ありました、そんな日も! だから行ったことないんだ」
大地「てことは何、このメモは去年の美咲ちゃんとのデート用ですか?」
美咲「ごめん大地、大騒ぎしちゃって。あ、私授業あるから、大学戻るね(千尋に)ありがと
 う、今度ちゃんとお礼しますね」
   と去っていく。
千尋「・・嬉しそう」
大地「さすが恋愛探偵」
千尋「いい加減にしてよ、何が楽しいの?」
大地「だって、一緒に人助け出来たじゃん。これで2人目だね」
千尋「・・好きだよね、人助け」
   と何かを思い出す。

○(回想)公園(10年前)
   ベンチで読書する千尋。
   男の子たちが来る。
男の子1「中島また本読んでるぜ」
男の子2「いっつもじゃん」
男の子1「何読んでるんだよ」
   と千尋から本を奪う。
千尋「返して!」
   男の子たち、千尋をからかって本を返さない。
千尋「返してよ!」
大地の声「やめろ!」
   大地が来る。
男の子1「何だよ大地、いいカッコすんな」
大地「返してやれよ」
男の子1「取れるもんなら取ってみな」
   大地、男の子1に強烈なタックル。あっという間に本を奪う。
男の子1「てめえ!」
大地「やんのか!」
男の子1「・・・」
   大地の気迫に去っていく男の子たち。
   ×  ×  ×  ×  ×
   ベンチに座る大地と千尋。
千尋「・・・ありがとう」
大地「別に。弱い者いじめとか嫌いだから」
千尋「・・・」
大地「いつも何読んでるの?」
   と千尋の本を見る。
大地「推理小説? 面白いの、こういうの?」
千尋「(頷く)」
大地「よーし、俺も読んでみよう」
千尋「それ貸してあげる」
大地「サンキュー(本を見て)あれ、この字何て読むの?」
千尋「どれ?」
大地「あれ、これも読めない、これも。ま、いっか。漢字の勉強にもなるよな」
   笑っている千尋。
大人の大地の声「あ、それ新作じゃん!」

○元の啓泉堂大学・キャンパス
   座っている千尋と大地。
   はっと我に帰る千尋。
千尋「え?」
大地「その小説。この前推理大賞取ったやつだろ、読みたかったんだ」
千尋「貸してあげる」
大地「マジで?」
千尋「もう1回読んでるから」
大地「ラッキー、買わずに済んだ」
千尋「大地も好きだね」
大地「千尋のせいだからな」
千尋「私が悪いみたいじゃない」
大地「ところでさ、あそこに座っているピンクの子、さっきからちらちらこっちを見てるけど気
 付いた?」
   離れたテーブルで携帯を操作しながら、こちらを見る遠藤加奈(20)。
千尋「大地のせいだからね」
大地「え?」
千尋「もしさっきの会話を聞いて恋愛相談でもしてきたら、責任取ってもらうから」
大地「そりゃ構わないけど、もう一つの可能性を忘れてない?」
千尋「?」
大地「他の大学から俺が来てるんだぜ」
千尋「(呆れ顔)」
大地「あるでしょ」
千尋「ないない」
   加奈が2人の元へ来る。
加奈「あの・・」
大地「はい」
加奈「あの、さっき恋愛探偵って言ってるのを聞いたんですけど」
大地「そっちかい!」

○車道沿いの歩道(夜)
   物陰にいる大地。道路向かいのイタリアンレストランを見ている。
大地「・・・」
   ガラス越しに徳田充(21)が働く様子が見える。

○住宅街の道(夜)
   歩く充と隠れながら後を追う大地。
   大地、携帯で電話をする。

○千尋の家・千尋の部屋(夜)
   勉強中の千尋が、電話に出る。
千尋「大地? 今どこ?」
大地の声「今、彼氏がバイト終わって帰り道」

○住宅街の道(夜)
   充の後方を歩く大地。
大地「今のところ女っ気なし」
千尋の声「そんなに頑張らなくていいんじゃない? 空いてる時間でいいって言ってたし」
大地「だってバイト代くれるって言うし、ちゃんとやらなきゃ。あ、ちょっと待って」
   充がアパートの階段を上がっていく。
大地「聞いていた住所と違うな。家じゃないってことは女の家か?」
千尋の声「どうしたの?」
大地「知らないアパートに来たんだ」
   充がドアを叩き、ドアが開く。

○千尋の家・千尋の部屋(夜)
   電話をする千尋。
千尋「大地?」
大地の声「違った、男友達のとこだ」
千尋「もう今日はいいんじゃない? 帰って寝れば?」
大地の声「了解」

○住宅街の道(夜)
   電話を切る大地。
大地「しかし本当に浮気なんかしてるのかな」

○(回想)啓泉堂大学・キャンパス
   加奈の話を聞く千尋と大地。
大地「彼氏が浮気?」
加奈「しているような気がして」
大地「女の勘てやつ?」
加奈「(頷く)」
千尋「付き合ってどれくらいですか?」
加奈「半年くらいです」
千尋「具体的な証拠はないのですね?」
加奈「ないですが、色々違和感を感じることがあって」
大地「例えば?」
加奈「・・キスとか」
大地「キス? そういうのもあるか」
千尋「そういうのはよく分からないので、他に何かありませんでしたか、例えば携帯の使い方。
 ロックをよく掛けるようになったとか?」
加奈「はい、電源もこまめに切るようになりました」
千尋「携帯を手離さなくなった?」
加奈「はい、トイレにも持っていくように。それとメールが来ても私の前では絶対確認しようと
 しません」
千尋「急に優しくなったりしますか?」
加奈「そうですね、最近急に私の料理をベタ褒めするようになりました」
千尋「突然筋トレを始めたりしますか?」
加奈「(頷き)はい、確かに」
千尋「あなたのスケジュールとかを気にしたりしませんか?」
加奈「そういえば最近やたらとスケジュールを聞かれます・・何で分かるの?」
千尋「一般的に浮気の兆候とされる事例を聞いてみただけです」
大地「ということは、やっぱり・・」
千尋「あくまで可能性を探っただけ。証拠は何もない」
加奈「(考え)あの、図々しいお願いですけど、何日か彼を見張ってくれませんか?」
大地「え?」
加奈「空いている時でいいんです、ちゃんと報酬もお支払いします」
大地「マジで?」
加奈「私、家が厳しくて。門限とかもあって」
   と携帯の写真を何枚か見せる。
加奈「これが彼です。こっちは飲み会の時、みんなで撮った写真ですけど」
大地「俺と同じ」
千尋「何が?」
大地「イケメン」
千尋「・・・」
加奈「あの、やってもらえませんか?」
大地「いいよ」
千尋「軽っ」
加奈「ありがとうございます」

○竜平のアパート・中
   安っぽい畳敷きの室内。
   犯行に使ったサバイバルナイフで林檎
   を剥いている竜平。
   携帯の電話に出る。
竜平「優花ちゃん? 掛けてくれたんだ、ありがとう。うん、会う前に声だけでも聞いておいた
 方がお互い緊張しないで済むかと思って。それより明日大丈夫?・・そうか、良かった、じゃ
 待ってるね」
   と電話を切ると、背後に気配を感じて振り返る。
   襖にもたれ、煙草を吹かしている奈津。
奈津「(不敵な笑み)」
竜平「・・・」
   と、いきなりナイフを握り、奈津へと
   突っ込む。
竜平「!」
   竜平のナイフが襖に刺さっている。
   奈津の姿はない。
竜平「(荒い息)・・・」

○人見橋公園
   林の中に血まみれの若い女性の遺体。
   警察による現場検証が行われている。
   星野と若田。
若田「凶器はナイフのようですね」
星野「プラネタリウムの事件と同一犯の可能性があるな」
若田「遺体の詳しい検死はこれからですが、昨夜の犯行とみて間違いないようです」
星野「ここら辺、夜はカップルとか多かったような気がするが」
若田「その通りです。ただ今のところ目撃情報は出ていません」
星野「自分たちのことに夢中だしな」

○商店街
   歩く千尋。ふと電気店のテレビに足を止める。
   テレビでは殺人事件のニュース。
アナウンサーの声「今朝6時頃、人見橋公園の林で、若い女性の遺体が発見されました。遺体に
 は複数の刺し傷があり、殺人事件と見られています。警察では、身元の特定を急ぐと共に、先
 週発生したプラネタリウムでの殺人事件との関連も視野に入れ、捜査を進める方針です」
千尋「・・・」

○駅前・改札口
   誰かと待ち合わせの充。
   携帯をチラ見しながら充を見張る大地。
   改札から新海早苗(19)が来て充の元へ。
大地「!」

○商店街
   歩く千尋の携帯が鳴る。
千尋「(出て)もしもし」
大地の声「千尋、やっぱ女の子と接触したぜ」
千尋「え?」
大地の声「例の依頼人の彼氏だよ、駅で誰かを待っている感じだったんだけど、ビンゴってや
 つ! あ、喜んじゃいけないか」
千尋「ねえ、その子の写真撮れる? 撮ったら送って」
大地の声「了解」

○駅前・改札口
   楽しそうに話す充と早苗の姿。
   携帯で2人を撮る大地。
   充と早苗は歩いていく。

○商店街
   携帯のメールを待つ千尋。
   着信があり、見ると充と早苗の写真。
   千尋、早苗の写真を拡大する。
千尋「(考え)この子、どこかで・・」

○千尋の家・玄関前(夜)
   大地が走って来て、チャイムを押す。
静江の声「はーい」
   中島静江(48)が出て来る。
静江「あら大地くん、久し振りねえ」
大地「ご無沙汰しています」

○同・千尋の部屋(夜)
   読書中の千尋。
   ノックの音。
千尋「はい」
大地「よお」
   と入ってくる。
千尋「大地! 何で入ってくるの」
大地「だって今『はい』って言ったろ」
千尋「『はい』って言ったけど、『入っていい』とは言ってない」
大地「だっておばさん、いいって言ってたよ」
千尋「もう」
大地「よく来てたじゃん、この部屋」
千尋「それは子どもの頃の話でしょ。今は女子の部屋なんだから」
大地「昔は違うの?」
千尋「昔は・・女の子の部屋」
大地「違いが分からないんですけど」
千尋「だから大地なんだよ」
大地「あ、何か意識しちゃってる俺のこと?」
千尋「バカじゃないの。それより、どうだった尾行は?」
大地「それそれ、すごいの撮れちゃったよ。あの後、2人はお茶したり、ビリヤード行ったりし
 たけど、別れ際の公園でさ」
   と携帯の動画を再生する。
   画面に見つめ合う充と早苗の姿。
   早苗が充に抱きつく。
千尋「・・・」
大地「ありゃ~って感じだろ。これで確定だな」
千尋「う~ん」
大地「何か変?」
千尋「変」
大地「どこが?」
千尋「もし大地が浮気していたとして、浮気相手が抱きついてきたらどうなる?」
大地「どうなるって・・」
   と考え、立ち上がって腕を広げる。
大地「はい」
千尋「え?」
大地「抱きついてみて」
千尋「何で私!」
大地「自分で言い出したんだろ、やってみなきゃ分からないし」
千尋「(心の声)しまった、この展開は読み切れなかった」
大地「ほら早く。やっぱ俺のこと意識してるの?」
千尋「し、してないから!」
   と立ち上がる。
千尋「・・・」
大地「ほら」
   千尋、意を決して大地に抱きつく。

○(回想)小学校・校庭(10年前)
   サッカーをしている男子たち。
   遠くからそれを見ている千尋。
   大地がドリブルで次々と相手をすり抜け、ゴールを決める。
   見ていた女子たちから『大地ー!』『かっこいい!』など歓声が上がる。
千尋「・・・」

○(回想)小学校・下駄箱前(10年前)
   片隅で待っている千尋。
   下校の大地が出て来る。
   千尋が近づこうとすると、女子たちが大地にチョコレートを次々に渡す。『大地これ』 
   『はい、チョコレート』『私のも』などの声。
千尋「・・・」
   千尋の手にもチョコレート。が、渡せずに去っていく。

○元の千尋の家・千尋の部屋(夜)
   抱き締め合う大地と千尋。
千尋「・・・」
   お茶を持った静江が入ってくる。
静江「お茶どうぞ(見て)あ~!」
千尋と大地「あ~!」
千尋「違うのお母さん!」
大地「違う、違います」
静江「ごめんなさい! いいの、いいのよ。大丈夫だから大丈夫、ごゆっくり」
   とお茶を置いて出ていく。
   見送る千尋と大地。
千尋「あ~もう」
大地「(笑って)やばいね」
千尋「何で笑ってるの」
大地「で、今ので何が分かった?」
千尋「え? あぁだから、やっぱりそう、今抱き締めたでしょ、私のこと」
大地「そりゃ浮気相手との別れ際って想像したから」
千尋「でも、この動画は抱き締めてない」
   と動画を再確認すると、充の手は早苗を抱き締めていない。
大地「本当だ。でもそういう男もいるだろうし」
千尋「それと、この女の子、どこかで見たことがあるのよね」
大地「同じ大学じゃない?」
千尋「そうじゃなくて、もっと別の所で・・あ! 加奈さんから彼氏の写真、何枚か貰ったよ
 ね」
大地「ああ」
   と携帯の写真を見せる。
千尋「これじゃなくて、飲み会の写真。あ、これ!」
   とその中に早苗が写っている。
大地「この子だ! てことは加奈さんの知り合いとか、友達?」
千尋「(頷く)」
大地「どうする?」
千尋「どうするって、正直に言うしかないんじゃない?」
大地「だよね。明日加奈さんと会うんだけど、その前にメールしとくわ。明日付き合ってくれ
 る?」
千尋「いいよ、乗り掛かった船だから」
大地「サンキュー。じゃ」
   と部屋を出かけて、
大地「あのさ、さっき抱き締めて分かったんだけど、結構胸あるね」
千尋「バカ!」
   大地、逃げるように去る。

○喫茶店・中
   加奈と話す千尋と大地。
加奈「本当に色々とありがとうございました。きちんとしてもらって、報告もして頂いて。あ
 の、これ」
   と謝礼の封筒を出す。
千尋「いえ、そういうのは」
大地「(取って)あざす」
千尋「・・・」
大地「でも、彼氏の充さんと会っていた子って、お友達だったんだよね?」
加奈「(頷き)早苗とは昨夜連絡を取りました。親友なんです彼女。前から何となく充に好意が
 あるんじゃないかと感じていました」
大地「そうなんだ」
加奈「早苗も泣きながら謝ってくれたし、それはもういいんです。そんなことより、充の様子ど
 うでしたか?」
大地「様子?」
加奈「楽しそうでしたか、デート?」
大地「まあ普通って言うか何て言うか。あ、そうだ」
   と携帯を見せる。
大地「これ、2人の動画なんだけど」
   加奈、動画をじっと見ている。
   その加奈を見つめる千尋。
千尋「・・・」
大地「浮気相手って、彼女かな、やっぱり」
加奈「誘ったのは昨日が初めてだって早苗は言っていました」
大地「本当かなあ」
加奈「他に会っていた人はいますか?」
大地「彼女以外には誰も。ああ、男友達のアパートに2回ほど入って行きましたけど」
加奈「(はっとして)男友達? 誰ですかそれ? 泊まったりしたんですか?」
大地「いや、朝まで見張った訳じゃないので」
加奈「(動揺)・・・」
千尋「加奈さん、幾つか聞いていいですか?」
加奈「はい」
千尋「充さんと、キス以上のことをしたことはありますか?」
加奈「え?」
大地「(焦って)何聞いてるんだよ」
加奈「いえ・・ありません」
大地「付き合って半年で?」
   頷く加奈。
千尋「充さんについてですけど、鏡をよく見ますか?」
加奈「はい、髪の手入れとか、よくしています」
千尋「ピアスは?」
加奈「付けます。ピアスホールも開けています」
千尋「ファッションにも興味が?」
加奈「ファッションやジュエリーは好きです」
千尋「下着は? 派手ですか?」
大地「おい」
加奈「買い物に行った時、派手な物ばかり選んでいました」
大地「どういう質問だよ、それ?」
千尋「ちょっと違和感があったから」
大地「違和感て?」
千尋「だって、親友に裏切られるって、精神的にもかなりショックな出来事だと思わない?」 
大地「そりゃまぁ」
千尋「でも加奈さんはさっき『そんなことより』って言ったでしょ?」
   ×  ×  ×  ×  ×
【インサート】
   先ほどの加奈の発言。
加奈「そんなことより、充の様子どうでしたか?」
   ×  ×  ×  ×  ×
千尋「加奈さんが、親友の裏切りより彼氏の様子を気にするのはなぜなのか。それともう一つ、
 男友達の話をしてから、ずっと動揺しているのはなぜか。普通なら聞き流してもいい話なの
 に」
加奈「・・・」
大地「だから?」
千尋「だから、もう一つの可能性を考えてもいいんじゃないかと思って。加奈さんが心配する充
 さんの浮気相手が、女だとは限らないってこと」
大地「まさかそんな、それは飛躍しすぎでしょう(加奈に)ねえ?」
加奈「(動揺)・・・」
大地「あれ?」
千尋「だから、まず2人に肉体関係があるか聞いてみたの。ピアスやファッションの質問は、一
 般的にゲイの人の特徴とされる事例を聞いてみただけ」
大地「ゲイって・・」
千尋「(加奈に)最後の質問です。充さんが加奈さんといる時、他の男性に興味を示したことは
 ありますか?」
加奈「・・・」

○(回想)レストラン・中
   食事中の充と加奈。
   カップルが来て、少し離れた席に座る。
   2人をじっと見ている充。
充「おしいな」
加奈「え?」
充「髪型変えれば、もっとイケてると思わない?」
   と2人を指す。
加奈「あの彼女?」
充「違う、彼氏だよ。ケミストルマッシュかリバースショートにすれば変わるのになあ」
加奈「・・・」
充「イケメンが台無しだ、勿体ない」

○元の喫茶店・中
   加奈と話す千尋と大地。
加奈「そんなようなことが何度かありました。彼が私に触れないのも、最初はただ奥手な人なの
 かなと思っていましたが、だんだん違う気がしてきました。本当は男の人が好きなのではない
 かと」
大地「マジか。それが本当なら、あのアパートの男が・・で、どうするつもり?」
加奈「・・・」
大地「じゃあさ、そういう疑問とか今の気持ちを全部彼にぶつけてみるか。それも一つの手だと
 思うよ」
千尋「無責任なこと言わないで。まだちゃんとした証拠も」
加奈「(遮って)私もそう思います!」
千尋「え?」
加奈「ずっと不安を抱えたままなんて、もう耐えられません。思い切って彼に打ち明けてみま
 す! 付き合ってくれますか?」
大地「え? 僕らも?」
   目を見合わせる千尋と大地。

○駅前の広場(夕)
   充と話す加奈。
   少し離れて千尋、大地。
   充、振り返り、
充「僕が浮気をしていると思って、尾行してたって訳?」
加奈「・・・」
充「しかも僕がゲイだって?」
加奈「・・・」
充「本当にそう思っているの?」
加奈「・・ごめん、私」
充「ごめんなさい!」
   と深々と頭を下げる。
   驚く加奈、千尋、大地。
充「謝るのは僕の方だよ。全部加奈の言う通りだ、僕は浮気してた、相手は竜平っていう男性で
 す」
   唖然とする加奈、千尋、大地。
充「ずっと悩んでいた、子供の頃からずっと。男しか好きになれないなんて、自分はおかしいん
 じゃないかって。そんな自分をずっとごまかし続けてきた」
加奈「そのために私と付き合ったの?」
充「(頷く)・・・」
   加奈、充の頬を叩く。
加奈「私の気持ちはどうでもいいの?」
充「(土下座して)本当にごめん。加奈にはずっと打ち明けなきゃって思ってた。でもなかなか
 言い出せなかった」
加奈「・・・」
充「でも竜平には僕が必要なんだ、彼は小さい頃から母親の虐待を受け続けて、心が壊れ掛けて
 る。僕が支えてやらなきゃ・・だけど、もう遅いかも知れない・・」
   と頭を抱える。
千尋「すみません、遅いってどういうことですか?」
充「今起きてる連続殺人事件です、もしかしたら竜平の仕業かも知れない」
大地「え、ちょっと待って。何か話がすげえぶっ飛んでんだけど」
千尋「なぜそう思うのですか?」
充「竜平は女性に強い憎しみを持っています。特に母親みたいな軽い女は許さないって」
大地「それだけで犯人とは言えないんじゃないかな?」
充「実際、女性を半殺しにして捕まった経験があるんです。それと、この前彼のアパートでプラ
 ネタリウムの半券を見つけました」
千尋「最初の事件があった場所ですか?」
充「(頷き)日付が・・事件の当日でした」
大地「嘘だろ・・」
   千尋、ショッピングモール『エピナール』の看板を見つける。
千尋「・・・」
大地「それって、警察には?」
充「いいえ」
大地「犯人かどうかは抜きにして、チケットがあるってことだけでも重要な情報だよ、なあ千
 尋」
   千尋、看板に向かってふらふらと歩く。
大地「・・千尋?」
千尋「・・・」
   ×  ×  ×  ×  ×
【インサート】
稲妻と雷の轟音。
   ×  ×  ×  ×  ×
千尋「キャー!」
   と頭を抱え込む。
大地「おい、どうした!」
千尋「雷が」
大地「雷なんてどこにも」
千尋「大地、私大変なことしちゃった!」
大地「何の話だよ」
千尋「(指さし)あのショッピングモール、確か出来てから1年経ってない筈」
大地「え? そうだっけ?」
加奈「あれが出来たのは半年前です。オープニングの時、2人で来たよね?」
   と充を見る。
   頷く充。
千尋「美咲ちゃんのメモを思い出して。メモにあのショッピングモールのロゴが入ってた」
大地「何でここで美咲ちゃんなの? てかメモなら持ってるよ、返し忘れちゃって」
   とメモを出す。
大地「確かにロゴと名前が入っているけど」
千尋「このメモ帳はオープニング記念で配られたの、うちのお母さんも持ってた(加奈に)です
 よね?」
加奈「はい、貰いました」
大地「だから何?」
千尋「このメモが半年前に配られたってことは、この日付と場所は1年前に美咲さんのために書
 かれたデートの日程じゃなくて、今年の予定だってこと。私の推理は間違っていたの」
大地「そういうことか、だったらまぁその件は俺から美咲ちゃんに謝っておくよ。今大騒ぎする
 問題じゃないだろ」
千尋「違うの、メモを見て、最初の日の待ち合わせ場所」
大地「(見て)武蔵粕谷駅東口改札」
千尋「事件があったプラネタリウムがある駅、日付も事件があった日でしょ」
大地「偶然じゃないのか」
千尋「次が10月7日西京沼駅中央改札。近くに人見橋公園がある、2番目の殺人事件があった
 場所よ、日付も事件の日」
大地「ちょ、ちょっと待ってくれ、どういうことだ? さっきの充さんの話もあって、頭がごち
 ゃごちゃだ」
千尋「そのごちゃごちゃが1つに繋がったら大変なことになるってこと。もし美咲さんの彼氏
 と、その竜平さんて人が同一人物だったら、犯人である可能性はかなり高くなる」
大地「まさか」
充「竜平がどうしたんですか?」
千尋「(大地に)美咲さんの彼氏ってどんな人?」
大地「(気付いて)写真がある」
   と携帯の写真を探す。
大地「自慢げにツーショットの写真を送ってきたことがある」
   と美咲と竜平の写真を見せる。
   千尋、それを充に見せて、
千尋「この人が竜平さんですか?」
充「(頷き)そうです」
大地「でも竜平って人、ゲイじゃないの?」
充「彼はバイセクシャルです」
大地「てことは、これってすごくやばくない? ていうか、今日月曜日じゃない? 事件て月曜
 日に起きてるよね」
千尋「メモ!」
   2人でメモを見る。
大地「今日の日付だ、柴崎港駅南口改札」
千尋「今日もここで誰かが殺されるかも」
大地「あぁ!」
千尋「何?」
大地「誰かじゃなくて、美咲ちゃんかも知れない」
千尋「だって美咲さんは塾のバイトでしょ」
大地「担当の中3生が修学旅行で今日は休みなんだ。彼氏と会うって言ってた」
千尋「(充に)竜平さんていう人、今日はどこへ?」
充「どこだかは分りませんが、今日は休みです、勤めている飲食店が月曜定休日なので」
千尋「おじさんに連絡して!」
大地「親父に?」
千尋「早く!」
大地「そうだな」
   と電話を掛ける。

○人見橋公園(夕)
   カップルに聞き込みをしている星野と若田。
若田「(警察手帳を見せ)お忙しい所すみません。先週の月曜日にここに来られましたか?」
   星野の携帯が鳴る。
星野「(出て)何だ大地、後で掛け直せ・・ん? 何だ落ち着け、どうした・・次の事件が起き
 る? どういうことだ? うん、うん」

○駅前の広場(夕)
   大地、千尋、加奈、充。
大地「(電話を切って)俺たちも行こう」
   と千尋と行こうとする。
充「すみません! 自分も行っていいですか?」
大地「行きましょう」
   充、加奈を振り返る。
加奈「(頷き)本当なら止めてあげて」
   走る大地、千尋、充。通りでタクシーを拾う。

○タクシー・車内(夕)
   千尋、大地、充が乗っている。
   千尋、携帯で検索している。
千尋「でも、どこにいるか分からない。映画館やボーリング場や公園もあるし」
大地「美咲ちゃんに電話して危険を知らせよう」
千尋「待って。美咲さんが動揺したり、逃げ出したら、すぐ殺されちゃうかも知れない」
運転手「何ですかお客さん、怖いんだけど」
千尋「とにかく自然に、今どこにいるかだけを聞き出して」
大地「分かった」
   と携帯で電話を掛ける。

○港の公園・ベンチ(夕)
   ベンチに座る美咲。
   周りにはカップルなどちらほら。
   美咲の携帯が鳴り、携帯に『大地』の文字。
美咲「(出て)大地? どうした?」
大地の声「美咲ちゃん、今どこにいるの?」
美咲「今、彼氏と一緒」
大地の声「そうじゃなくて、どこにいるかって聞いてるの」
美咲「え、どうしたの急に」

○タクシー・車内(夕)
   電話中の大地と千尋、充。
大地「いや、ちょっと用事があってというか何というか」
美咲の声「何でそんなこと聞くの?」
大地「いや、あの」
美咲の声「ごめん彼氏来た、切るね」
大地「ちょっと待って、どこにいるの、それだけ教えて」
美咲の声「公園公園」
   と通話が切れる。
大地「公園だ」

○港の公園・ベンチ(夕)
   ベンチの美咲。
   飲み物を持って竜平が来る。
竜平「美咲」
   携帯をバックに入れる美咲。
美咲「ありがとう」
   と飲み物を受け取る。
竜平「電話?」
美咲「え?」
竜平「掛けてたろ?」
美咲「うん、お母さん」
竜平「・・・」
   とじっと美咲を見る。

○タクシー・車内(夕)
   千尋、大地、充が乗っている。
   千尋が携帯で検索中。
千尋「え、公園が2つあるけど、どっちだろ。駅前と港の方と」

○柴崎港駅前(夕)
   タクシーが止まり、千尋、大地、充が降りる。
充「じゃ僕はそこの公園を探します」
大地「俺たちは港の公園に行きます」
   と分かれて走っていく。

○街中(夕)
   走る大地と千尋。
   大地、走りながら携帯を掛ける。
大地「あ、親父? 公園だ、公園!」

○港の公園・水際(夕)
   水平線の夕日を見ている美咲と竜平。
   辺りに人影はない。
美咲「ここから見る夕日って綺麗だよね。前にも見たよね、ここで」
竜平「1年前」
美咲「出会った頃だ、もう1年も経つんだねえ」
竜平「そうだな、1年間見事に俺は騙され続けたって訳だ」
美咲「何それ?」
竜平「お前だけはって信じてたよ、最後の砦だったのに」
美咲「何の話?」
竜平「結局女なんて全部同じだ」
美咲「ねえ何のこと?」
竜平「お前が浮気しまくっていることなんか、とっくにお見通しなんだよ」
美咲「・・・」
   竜平、美咲を海に突き落とす。
美咲「!」

○同・離れた水際(夕)
   大地と千尋が来る。
大地「くそ、どこだ」
千尋「もう1回携帯掛けてみる?」
   大地、遠くに立つ竜平を発見する。
大地「いた!」
   走り出す2人。

○同・水際(夕)
   溺れている美咲。
美咲「助けて!」
   上から冷たく見下ろす竜平。
竜平「・・・」
   と美咲の服を掴み、引っ張り上げる。
   ずぶ濡れの美咲。
美咲「何でこんなことするの?」
竜平「なぜなのかは、お前が一番よく知っているだろ」
   とナイフを出す。
美咲「!」
竜平「苦しまずに殺してやるなんて言わない、苦しんで死ね」
   と歩み寄る。
大地の声「やめろ!」
   竜平が振り返ると大地と千尋。
美咲「大地!」
竜平「誰だ、お前」
大地「誰だっていいだろ」
千尋「大地、危ない」
大地「引っ込んでろ、美咲ちゃんは死なせねえ!」
千尋「・・・」
竜平「お前も浮気相手か」
大地「しょうもないこと言うな。お前みたいな野郎は許さねえ」
竜平「やるのか」
大地「上等だ、来いよおら、来い!」
   竜平が突っ込んでくる。
   ナイフを押さえる大地。
   2人の激しい格闘が続く。
   と、竜平がナイフを大地の首元へ。
大地「!」
千尋「大地!」
充の声「もうやめてくれ竜平!」
   竜平が振り返ると充がいる。
竜平「・・・」
充「辛かったよな、苦しかったよな、でも、もうやめてくれ」
竜平「・・・」
充「まだ人を殺したいのなら、俺を殺してくれ!」
   と両手を広げる。
   竜平、ふらふらと充に向かって歩く。
充「・・・」
   竜平、充の背後に奈津の姿を見る。
竜平「!」
   煙草を片手に不敵に笑う奈津。
   竜平、充の横を通り過ぎ、奈津の元へ。
   奈津の笑いはだんだん大きくなる。竜
   平を指さし、大笑いしている。
竜平「うわー!」
   と奈津にナイフを振り回す。
   何もない空間でナイフを振り回す竜平を見つめる面々。
充「竜平!」
   と背後から竜平を抱き締める。
   がっくりとうな垂れる竜平。
充「愛してる」
   星野と若田が走ってくる。
星野「大地!(若田に)あいつを押さえろ!」
若田「はい!」
   と竜平に飛び付き、手錠を掛ける。
   美咲が大地に抱きつく。
美咲「大地!」
   美咲を抱き締める大地。
千尋「(見て)・・・」
   星野が千尋の元へ。
星野「千尋ちゃん、怪我はないか?」
千尋「はい」
   と抱きあう大地と美咲を見る。
千尋「・・・」
   ×  ×  ×  ×  ×
   日が暮れている。
   パトカーが数台来て、現場検証が行われている。
   少し離れたベンチに座る千尋。
   大地が来る。
大地「大丈夫?」
千尋「・・・」
大地「美咲ちゃん、取りあえず病院に行った
から」
千尋「・・・」
大地「もしかしてさ、俺と美咲ちゃんのこと疑ったりしてる?」
千尋「・・・」
大地「違うんだよ、俺と美咲ちゃんは何の関係もないっていうか、ただのサークル仲間だから」
千尋「・・・」
大地「まぁ俺のことなんてどうでもいいか」
   千尋、立ち上がって大地の胸を叩く。
大地「いて!」
千尋「・・・」
大地「どうした?」
千尋「どうでも言い訳ないでしょ! あんな危ないことして! 死んだらどうするの! 大地が
 死んだらって・・怖かった・・すごく怖かった・・」
   と泣いている。
   大地、千尋を抱き締める。
大地「・・ごめん、本当にごめん」
千尋「・・・」
大地「俺、細かいこと色々分かんねえけど、でも、あの時も本当は千尋のことを守りたかったん
 だ。絶対に傷つけさせねえって」
千尋「え?」
大地「俺、千尋が好きだ」
千尋「何で今?」
大地「加奈さんも充さんも、みんな自分の気持ちぶつけてたろ? 俺もちゃんと向き合わなき
 ゃ」
千尋「ちょ、ちょっと待って」
大地「俺が推理小説読むのだって、千尋と沢山話がしたいから」
千尋「そんな急に」
大地「大学で色々遊んだりしたけど、やっぱり俺には千尋しかいない」
千尋「そ、そういうストレートなの、無理だから」
千尋の声「まずい、堕ちちゃう」
大地「好きなんだ、駄目か?」
千尋「だ、だからそういうストレートなのは」
千尋の声「このままじゃ堕ちちゃう。逃げ道は? そうだ、おじさんを呼べば」
   と辺りを探す。
大地「千尋」
   と千尋の顎を引き寄せ、口づける。
千尋「!」
千尋の声「もう駄目、堕ちる・・」
   口づける2人。
   遠くから星野が歩いて来る。
   それを追って若田も来る。
若田「警部、署の方から連絡がありました。ホシが連続殺人を認めたそうです。それともう一つ
 の殺人も」
星野「もう一つ?」
若田「五年前に母親を殺害したそうです」
   と大地と千尋を見つける。
若田「ああ2人とも、署で事情聴取を」
星野「(止めて)後にするか」
若田「あ、はい」
   と星野と去っていく。
   抱き合う大地と千尋。
大地「ずっと、こうしたかった」
千尋「・・美咲さん、大丈夫かな?」
大地「大丈夫、今頃別の彼氏が駆け付けてる」
千尋「え?」
大地「彼女、何て言うか、自由な人でね。ま、世の中には色々な恋愛の形があるってこと。俺達
 のは、どんな形かな」
   見つめ合う2人。
   波がキラキラと輝いている。

               【END】

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