ジャングルの建築家たち ドラマ

美琴は戸籍上の性別が男性であるため、結婚できないことを悩んでいた。広瀬は、新しい職場で仕事に慣れず、周囲からの照明に苦しむが、美琴は彼に優しく接する。ある日、木村は、新築の建設を依頼する三間夫妻と面会するため、美琴と広瀬を同行させる。  ビル風の受信響く中、とあるレストランで美琴と三好が向き合っていた。三好は美琴に結婚を迫るが、美琴は謝罪しながら断る。 美琴は心の中で戸籍上が男性であることを悩んでいた。彼女は三好に自分の秘密を暴かれることを恐れ、結婚を拒否して逃げる。
ミニマルゲーマスJK のりピー☆ 16 0 0 08/22
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第一稿

登場人物
 レギュラー
  広瀬桃子 女だが男に見える
  林原美琴 女
  坂井典子 女
  木村剛志 男
  同僚 女
  三好琢磨 イケメン 男
 ゲスト
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登場人物
 レギュラー
  広瀬桃子 女だが男に見える
  林原美琴 女
  坂井典子 女
  木村剛志 男
  同僚 女
  三好琢磨 イケメン 男
 ゲスト

三間貴文 男

奥さん 女



 ○ビル風の音



 ○とあるレストランで、三好と美琴が向き合っている。



三好「美琴……オレと付き合わねえ?」

美琴「……ごめんなさい……。」

三好「何故だ!? 僕は背も高いし顔もいいし地位もある……いったいキミの何がそこまで男を避ける?」

美琴「それは………言えません………。とにかく、あなたとお付き合いはできません、ごめんなさい…。」



美琴(言える訳ない………だって私……結婚できないんだから……戸籍上は『男』なんだから…!)



 ○免許証を見ている美琴。



 ○去る美琴を見ている三好。



三好「アンタの秘密・・・・ぜってぇ暴いてやるぜ」



 ○ジャングルの建築家 OP



 ○三間夫妻がエントランスで言い争っている。



奥さん「もう、どこ行ってたのよ、約束の時間30分も遅れてるじゃない」

貴文「ご、ゴメン。近くに大きな水族館があるって言うから…」

奥さん「また水族館に行ってたの!? 魚じゃなくてその辺の花でも見てなさい」



 ○美琴、製図室に入る。



木村「林原君」

美琴「はい部長」

木村「今日から東京に転勤して来ることになった広瀬君を紹介する。前に僕が見てた部下なんだ。本社に早く馴れられるよう、キミからも何かと協力してやってくれ」

美琴「分かりました」

木村「広瀬君、林原美琴君だ」

広瀬「・・・・・・・・・・・・・ひ」

美琴「・・・・・ひ?」

広瀬「ひ、広瀬です・・・・。よ、よろしく・・・・・。」



 ○おそるおそる手を伸ばす広瀬。



美琴「あ、は、ハイ。よろしく。」



美琴(大丈夫なんコイツ・・・・目合わせへんし・・・・危ないヤツちゃうの?)



木村「広瀬君は東京出身だが、大学は京都で、そのまま京都部署に所属していたんだ。林原君は大阪出身だから、話が合うと思ってね。一応広瀬君の方が先輩だけど・・・まぁ呼び方は任せるよ」

美琴「は、はぁ・・・・。」

木村「広瀬君のデスクはそこだから」

広瀬「はい・・・・」



 ○何なん? 不愛想なやつ・・・・いや別に愛想は仕事のうちに入らんけど・・・と思いながら横目で見つつ二人とも席に着く。



 ○場面転換



同僚「ちょっと広瀬君、このスケールの計算間違ってるんだけど」

広瀬「えっ、あっ…す、すみません…。」

同僚「さっきも書類のコピーに失敗した挙句、失くしたでしょ!? ほんと、しっかりしてよね。ろくに挨拶もできない、簡単な計算もできない、整理もできない、何でこんな能無し、本社に来たんだか」

広瀬「す、すみ…ません…。」



 ○木村が入ってくる。



木村「広瀬君。紹介しよう、三間貴文さんだ。この度ご夫婦で新邸を建設されたいとのことだ。設計を君に任せたいそうだが、やってくれるね」

広瀬「は、ハイ。広瀬です、よろしくお願いします。」

木村「三間さんの旦那さんは足が悪いので、段差などに配慮して欲しいそうだ」

広瀬「では、詳しいお話は応接室でお受けいたします、ど、どうぞ……」

貴文「あなたの建てる建築を楽しみにしているんですよ…」



 ○去っていく三人。それを見送っている美琴。



 ○場面転換、トイレ。



美琴「あの男に家の設計なんて出来るんかな?」



 ○広瀬が入ってくる



美琴「ちょ、ちょっと! ここ、女子トイレやで!」

広瀬「あ、ハイ。あ、ぼ、僕一応女なんで」

美琴「アンタ、女なの!?」

広瀬「は、はァ、すみません…。」

美琴「あのなぁ、何で謝るねん。謝るのはうちの方やろ。」

広瀬「でもやっぱり…ヘンですよね」

美琴「ヘンて? 誰がヘンて言ったん? あたし何も言ってないですけど!」

広瀬「えっと…周りの人とか…母とか」



 ○ため息をつく美琴。そこに典子が入ってくる。



典子「…彼、ここで何してるの」

美琴「この人は今日転勤してきた広瀬さんです…女性です…広瀬さん、この人は坂井さん、同じ設計部で、今新宿の高層オフィスビルのプロジェクトに関わっています」

広瀬「あ、どうも…」

典子「この会社は実力主義。使えない奴はクビ…実力がないなら話しかけないで」

広瀬「は、ハイ…。」



 ○再びため息をつく美琴。



 ○数日後、プレゼンの準備をする広瀬と美琴。



広瀬「すみません、アシスタントをお願いしてしまって」

美琴「いや、いいけど。」

美琴(ったく、なんでアタシがこんなしち面倒臭いことしなきゃなんないのよ、自分のプレゼンで手一杯だってのに…)

広瀬「あ、気をつけて下さい、そこ…」



 ○段ボールの角に足をぶつける美琴。



美琴「痛った…」

広瀬「大丈夫でしたか?」



 ○三好が入ってくる。



三好「おい、三間さんいらしたぞ」



CM



 ○“アーキテスツ・オブ・ジャングル(※会社の名前デス)”へ車で向かっている三間夫婦。



 ○到着すると広瀬と美琴が待っている。



広瀬「この度はお越し下さいましてどうもありがとうございます」

三間「どうも。いやぁ、設計が出来たと言うには、もう、楽しみでね」

広瀬「それではお見せしますので、中へどうぞ」



 ○四方全て真っ白な何もない部屋に案内する広瀬。



広瀬「では、林原さん、お願いします」



 ○頷いて、プロジェクターの電源を入れる美琴。すると壁じゅうに風景が写る。



広瀬「それではこれより、敷地30坪、三間さん邸のご自宅のプレゼンをいたします。まず、旦那様は足がお悪いとの事でしたので、段差はすべてバリアフリーになっております。玄関のドアは遮光ガラスになっています。では、から入りますね。右手にあるのはトイレです。トイレは幅70cmと広々とした作りになっており、その右が収納スペースです。奥へ進みますと、ダイニング、キッチン、リビングとなっています」



 ○奥さん、壁近くまで行ってキッチンの高さを確認する。



奥さん「丁度いいわね。あら、庭が見えるわね」

広瀬「はい、お庭にはこちらから出られるようになっております。」

奥さん「これだけ広ければ、好きなだけお花を育てられるわ!」

貴文「ハハハ」

広瀬「こちらが奥様のお部屋です」

奥さん「この部屋からも庭が見えるのね。素敵ね」

広瀬「そしてこちらが旦那様のお部屋です。」

貴文「これは…」

広瀬「旦那様のお好きなお魚を鑑賞できるよう、壁を水槽にしてみました。勿論、上げ下ろしは自動で行います」

貴文「おお…素晴らしい…こんな夢みたいな家に住めるなんて! ああ…やっぱりここに頼んでよかった、ありがとう!」

広瀬「いえ、まだ建ってもいないですから…」

貴文「そうだった」



 ○奥さんが笑う。それを見ている美琴。



 ○場面転換。廊下とか



美琴「…好きなものなんて聞いたの?」

広瀬「は、ハイ。あの、人にはそれぞれ、不得意なものと、好きなものと言うのがあると思うんです。もちろん過ごしやすい建物を作るのが僕らの仕事です。だけど、それだけじゃなく…なにか、楽しめるものがあると、きっと人は、人生を楽しく過ごせるんですよね」

美琴「…まぁ少しはやるじゃない」

広瀬「え?」

美琴「だ、だから、気弱なだけじゃないって、言ってんの」

広瀬「…ありがとうございます。あの、林原さん」

美琴「何」

広瀬「足、平気ですか」

美琴「え?」

広瀬「さっき…怪我してましたよね」

美琴「ああ、あんなの…平気よ。」

広瀬「…関西弁でいいですよ」

美琴「美琴」



 ○立ち止まる美琴。



美琴「美琴。ハヤシバラて、呼びにくいやろ」

広瀬「美琴さん…素敵なお名前ですね」

美琴「先輩の下の名前は?」

広瀬「僕………こ…です」

美琴「え?」

広瀬「も…桃子」



 ○笑う美琴。



広瀬「そこまで笑うことないじゃないですか!」



 ○笑いながらアドリブしながら退場。



 ○典子登場。



典子「…広瀬桃子…。面白い子が入ってきたわね」



 ○ペロリと舌なめずりする典子。



<続く>[newpage]登場人物

レギュラー

木村剛志 部長

高橋孝太郎 広瀬の大学の同窓生で、坂井の幼馴染。

ゲスト

三菅 貧乏。女性でも男性でも可

白井さん

ムーコ

工事のおじさん

大人(数名)

友達2人



 ○屋上から東京の街を見下ろして休憩している広瀬。坂井が入ってくる。



広瀬「あ、あなたは…」

坂井「アナタ、社会を憎んでいるでしょう」

広瀬「え?」

坂井「あたしとおんなじニオイがする・・・・分かるわよ・・・・憎んで・・・・その怒りが生きるパワーなのね・・・・?」

広瀬「あの・・・あなたも・・・・?」

坂井「長い薬指…」



 ○坂井、広瀬の薬指を撫でる。



広瀬「へ、ち、ちょ…」

坂井「ね…今夜どう?」

広瀬「…へ!?」

坂井「アナタの憎しみ・・・解放させてあげる」



 ○ペロッと薬指をなめる坂井。



 ○OP



 ○広瀬と美琴、依頼人と会っている。



広瀬「この土地に4部屋のアパートですか」

三菅「ええ…無理…ですか?」

美琴「この土地に4部屋で2階建てだと、ひと部屋がかなり狭くなりますけどよろしいですか」

三菅「はい…4つないと…借金が返せないので」

広瀬「三菅さんご自身はどちらにお住まいになるのでしょうか」

三菅「こ、このアパートの部屋のうちどれかに住みます」

広瀬「分かりました。やってみます」



 ○製図室に戻ってくる広瀬たち。



広瀬「あれ?」

高橋「あ! 広瀬!」

広瀬「赤福…何でここに…?」

高橋「今日から派遣でスキャンとかの手伝いするんだ。宜しく」

広瀬「宜しく。美琴さん、彼は大学の同期の赤福孝太郎。漫画家になるために中退したんだ。彼女は同僚の美琴さん。同じ設計部だ」

高橋「あー、あなたが・・・」

美琴「はい?」

高橋「いや、広瀬が『転勤した先に可愛い子がいる』って言ってたから」

広瀬「ちょ・・・・!」

美琴「・・・・。(ジト目)」

広瀬「いやち、違うんです、別に深い意味はなくて・・・!」

高橋「そう言やこっち来たら飲もうって言ってたよな。今度飲もうぜ」

広瀬「ああ」



 ○坂井が入ってくる。



同僚「おはようございます」

広瀬「あ・・・」

坂井「おはよう、広瀬君。あれからよく眠れた?」

広瀬「あ・・・え、ええ・・・おはようございます」



 ○坂井が腕で広瀬の腕をつつく。



 ○驚いている高橋。



 ○高橋を一瞥して自分の席へ行く坂井。



高橋「…おい!」

広瀬「いや、あの人はやめといた方が…」

高橋「違うそうじゃない、あれ坂井典子だろ…!?」

広瀬「…? そうだけど」

美琴「ご存じなんですか?(さも当然そうに)」

高橋「有名なのか?」

美琴「業界では」

高橋「俺の幼馴染だ」

広瀬「へえ…」

高橋「あいつ…(まだあんな性格なのか)」

木村「挨拶終わったー? 早く仕事してー」

全員「は、はいー」

三好「おい派遣、あの女はやめとけ」

高橋「は、は?」

三好「大手ゼネコン、坂井組の社長のご令嬢なうえ、クライアントとも寝てるって噂だぜ。変な事件に巻き込まれても知らねーからな」



 ○ふと目が合う広瀬と美琴だが、美琴にぷいっとそっぽ向かれてしまう。複雑な表情をする広瀬。



広瀬「・・・・・。」



CM



 ○孝太郎の過去回想



幼少典子「見て孝太郎!」

幼少孝太郎「のりちゃんそれ、白井さんちのムーコだろ…どうしたの」

幼少典子「連れてきた」

幼少孝太郎「勝手に連れて来たら怒られるよ」

幼少典子「だって散歩してみたかったんだもーん」



 ○案の定、ムーコの強さについて行けずリードを離してしまう。勝手に走っていくムーコ



幼少孝太郎「のりちゃん!」

白井さん「コラァ! またお前か! このクソガキ!」

幼少典子「いてぇ」



 ○場面転換。学校帰り、立ち入り禁止の柵の向こうでしゃがんでいるのをみつける孝太郎



幼少孝太郎「・・・のりちゃん、なにしてるの?」

幼少典子「あ! 見て孝太郎、ここにあるの、絵が描けるよ。いろいろあんの」

幼少孝太郎「でも、『はいらないでね』って書いてあるよ」

幼少典子「入らないでって言われると、入りたくなるじゃん?」

工事のおじさん「コラッ! 立ち入り禁止が読めないのか! 危険な薬品がいっぱいあるんだぞ!!」

幼少典子「やべっ、逃げるよ、孝太郎!」

幼少孝太郎「えっ!?」



 ○走る二人。



幼少典子「あー楽しかった。あ、ねえ知ってる? このマンションの屋上から見える夕焼けがすっごく綺麗なんだよ」

幼少孝太郎「え…? でもこの屋上、危ないからのぼっちゃダメだって」

幼少典子「いいじゃん。行こう!」



 ○火災用の非常はしごをのぼる二人。



幼少典子「あー! きもちいいー!」

幼少孝太郎「…ほんとだ」

幼少典子「ここから見える建物ぜんぶ、みんな大人たちが作ったんだよね。…ねえ孝太郎、あんた将来何になるの?」

幼少孝太郎「え、僕は…」

幼少典子「あたしはね…この町を、この世界を作りたいの! それで、すべての人をしあわせにするのが夢なんだ!!」

幼少孝太郎「…うん、のりちゃんならきっとなれるよ」

大人「コラッ!! 誰だ!! 登ってるのは!!」

幼少典子「げっ…」

大人「またお前か…」



 ○大人たちの言葉が被さりながら大人になっていく典子。



大人「ほんとにあの子は…」

大人「親の顔が見てみたいよ…」

大人「どうかしてるわよ…」



 ○高校



友達「坂井さん、一緒に理科室行こ」

坂井「アンタに連れてってもらわなくても知ってるから」



 ○すたすた行く典子。



友達「何、お高くとまっちゃってんの? せっかく話しかけてあげたのに」

友達「いいよ、放っとこ」



 ○それを心配そうに見てる孝太郎



 ○現代に戻る。廊下の典子を呼び止める高橋



高橋「あの」



 ○無視される孝太郎。



高橋「坂井さん」



 ○キッと睨みつける典子



坂井「派遣社員と喋る気はないわ。話すなら課長と話してよ。じゃ」



 ○すたすた行ってしまう典子。それを茫然と見送る孝太郎。



 ○場面転換。プレゼンルーム。プレゼンが起動して、真っ白な壁が風景になる。まずは平面図が映し出される。



広瀬「それでは三菅さんのアパートのプレゼンをさせて頂きます。独特な形をしていますので、4部屋とも違う形ですが、家賃は同じになるようにしました。こことこことこことこことに窓がありまして、バスルームはこちらです。ここはロフトになっています」

三菅「・・・あの、この真ん中の空間は何でしょうか」

広瀬「ここは中庭です…三菅さんのお部屋から行けるようになってます」



 ○三菅の部屋から中庭へ進む。



三菅「え・・・」

広瀬「ここなら外からは見えませんし、住民にも気付かれずに、庭でのんびりすることができますよ」

三菅「え・・・ありがとうございます・・・実は・・・今まで一軒家に住んでいたのに・・・・庭がなくなるのがすごく惜しかったんです・・・だけど両親の介護もあるし・・・借金もどんどん貯まる一方だから・・・・仕方ないと思って諦めてた・・・・・こんなに嬉しいことはないです、本当にありがとう・・・・・!」



 ○笑う広瀬。



 ○場面転換。美琴と広瀬が歩いている



広瀬「三菅さん…借金返せるといいですね」



 ○坂井が通りかかって手を振る二人。それを見てる美琴。



高橋「よっ広瀬~今日ヒマか?」

広瀬「何で?」

高橋「お前んちで飲まねぇ? 貸したい漫画溜まってるし」

広瀬「え? 俺んち? 襲うの?」

高橋「わけねーだろ。…坂井のこと色々聞きたいしさ」

広瀬「そっか…悪いけど、今日は空いてないかな。金曜なら」

高橋「オッケ。金曜な」



 ○去る高橋。



美琴「だいぶ、友達も増えたみたいでよかったね」

広瀬「そ、そうですね。」

美琴「…今日も坂井さんと予定があるの?」

広瀬「え?」

美琴「あ、いや別に、アンタの勝手だけど…最近、仲いいから…こないだも一緒に帰ってたでしょ」

広瀬「ああ…いや、今夜は違います。」

美琴「あ、そうなん」



 ○ちょっと間



広瀬「美琴さんは…今日、空いてますか?」

美琴「あたしはほとんど用事ない。友達少ないしー」

広瀬「じ、じゃあよかったら今夜、食事一緒にいきませんか」

美琴「え? だってなにか用事あるんやろ?」

広瀬「いえ…美琴さんを誘おうと思ってただけです。色々お世話してもらったのに、しっかりお礼もできていなかったから……いいですよね?」

美琴「…別にかまへんけど?」

広瀬「良かった! じゃあ、行きましょう! 支度して来るんで!」



 ○走っていく広瀬



美琴「…もう、ハッキリしてよー」



<続く>[newpage]登場人物

木村

三好

町の人

牧師(台詞ないけどいるよ)

林原莉沙 美琴の姉。ちなみに美琴には二人姉がいるが、もう一人の姉は登場しない予定・・・。



 ○朝。朝食を食べてる美琴と莉沙。



莉沙「朝ごはんできたよー」

美琴「いただきまーす」

莉沙「美琴」

美琴「ん?」

莉沙「入社して一年過ぎたけど――会社はどう?」

美琴「うん、まぁまぁかな。大したミスもしてないし…一人、しつこい男がいたけど…ちゃんとフッたから大丈夫」

莉沙「それって、三好さんって人?」

美琴「そ。ごちそうさま、行ってきまーす」

莉沙「美琴! お弁当忘れてる!」

美琴「あ、テヘ。ありがと。お姉ちゃんってほんと頼りになる! じゃ行ってきまーす!」



 ○寂しそうな顔で手を振ってからため息をつく。



 ○会社。



美琴「おはようございまーす」

木村「あ、林原君。早速だけど、次のプロジェクトは広瀬くんと、三好くんと共にやってもらう事になった。プロジェクトの内容は海岸沿いの教会の再建だ。何せ金銭的な余裕がないと言うので、サクッとやってしまってくれ、よろしく頼んだよ」

三好「オレがチーフだから、よろしく、林原さん。」

美琴「・・・・・・げぇ」



 ○OP



 ○どっかの飲み屋



三好「んじゃ、初チーム結成を祝って…カンパーイ」



 ○乾杯する3人。



美琴(なんであたしが…)

三好「ねー何にする? 鍋は?」

広瀬「あ、僕、鍋は苦手で」

三好「へー桃子ちゃん鍋苦手なんだー。オナベのくせに」

広瀬「ハハハ」

三好「ねー、桃子ちゃんってどこ出身なのー?」

広瀬「あの・・・僕は生まれは東京ですけど大学は京都だったんです」

三好「へー。関西の女の子って可愛い? それとも林原さんみたいに気強い?」

広瀬「えーそうですね人それぞれだと思いますけど…。」

美琴「それより今回のプロジェクト、市の補助金が出るとは言え30万円しか使えないんですよ。どうします?」

三好「普通に作ればいいじゃん、普通にさ」

広瀬「普通に作ったって足りる額じゃないですよ。僕達の手で作っていくしかないです」

三好「ねぇ、なんで僕って言うの? 女なのにさ」

広瀬「…別に…いいじゃないですか」

三好「キミって処女だよねぇ?」

広瀬「そうですね…」

美琴「三好さん! もういいでしょ!」

三好「何が? ただ自己紹介してもらってるだけじゃん」

広瀬「美琴さん、いいんですよ、慣れてますから」



 ○黙る美琴。三好は「キミ、よく見ると綺麗な手してんねぇ」とか言ってる



CM



莉沙「どうしたの? 元気ないけど」

美琴「今日から肉体労働なんだよねー・・・」

莉沙「まぁ、大変ねぇ…頑張って」

美琴「はぁ~・・・・」



 ○駅前を出勤している美琴。ふと、ショーウィンドウの花束を見つける。一目惚れする美琴。



 ○場面転換、ブーケを買って浜辺出勤する美琴。



美琴(綺麗なブーケも買っちゃったし、今日はいい事ありそ♪)

美琴「おはようございます!」



 ○地元の人とかが集まってくれてる。



三好「来たね、美琴。」

美琴「三好さんこそ、こういう仕事はパスすると思ってましたよ」

三好「ま、初日くらいは来るさ。挨拶がてらね」



 ○ビスケットみたいなの食べてた広瀬が美琴に気付いてやってくる。



広瀬「美琴さん、今日はよろしくお願いします」

町の人「よーしみんな気合い入れてくぞぉー」

町の人たち「おー」



 ○昼。みすぼらしい弁当を食ってる広瀬。



 ○場面転換。建てたドームが落ちる



町の人「あー」

三好「やっぱドームは素人にゃ無理だよ」

広瀬「うーん…しかしこれがなければ教会の魅力が…」

三好「ベツに良いんじゃないのー? 充分きれーだしー」

広瀬「もう一度だけやってみませんか」

三好「うるっせーなぁ! こんな事して何になる? 部長だってサクッと済ませろって言ってたろ!? こんな仕事、俺には似合わないんだよ。そもそも居ねもしねーモン奉って、下らねー」

広瀬「三好さん、これは信仰の問題ではなくて…」

三好「オレに説教垂れんのか? だいたいお前の恰好が気に入らねーんだよ、男みたいにしやがって!」

広瀬「…。」

三好「フン、分かればいいんだよ。オレは抜けるからな。あとはお前らでしっかりやんな」



 ○去る三好。



 ○さざ波。しょげている広瀬。



美琴「…元気出しなって。アイツちょっと頭おかしいし」

広瀬「いや、三好さんは正しいです…こんな所に拘ったって、完成が遅れて皆さんから苦情が出るだけなのに…それに、僕がおかしいのも…」

美琴「先輩はおかしくないです! あっそうだ、これあげます」



 ○朝買ったブーケを広瀬にあげる美琴。



美琴「今朝お花屋さんで買ったんです。ブリザードだから長持ちしますし」

広瀬「…ありがとう。ああ、確かに綺麗ですね…」



 ○晴れてきて夕焼けがキレイになる。美琴が見ている広瀬がオレンジ色になる。



美琴「広瀬さん、見て、夕焼けめっちゃ綺麗やんなぁ」



 ○ほかの人も夕焼け見てる。ドームができてないせいでむき出しになってる教会の鐘越しに夕焼けと海が見える



広瀬「・・・」

美琴「このままでも…充分キレイやね」

広瀬「ええ…そうですね」



 ○夜、美琴んちの前



美琴「設計書き直しも通ったしもう安心やね」

広瀬「ええ。今日は色々とありがとうございました」

美琴「こっちこそ送ってもらっちゃって…広瀬さんだって女の人やのに…」

広瀬「はは、でも居たほうがいいでしょう?」

美琴「・・・うん、ありがと」

広瀬「・・・・お花・・・・ありがとうございました・・・・今度何かお礼・・・・しますね」

美琴「気にしないで」

広瀬「じゃあ…お休みなさい」

美琴「あ、待って。」

広瀬「?」



 ○美琴、広瀬の額に手を当てる。



広瀬「!?」

美琴「やっぱり、少し熱ある。」

広瀬「へっ?」

美琴「なんか体調悪そうやったから…。なんで言わへんの」

広瀬「す、すみません…。」

美琴「良かったら・・・・泊まってく?」

広瀬「・・・・へっ!?」

美琴「あいやいやちが…うち実家住まいだから! その、今日はもう遅いし、それにさ…いつもなんかしょぼいお弁当食べてるし…ちゃんと食べてるのかなって心配になって…うちなら朝ごはん食べれるし」

広瀬「えっそんな…見てたんですか…実は料理って苦手で」

美琴「じゃ、決まりね! さ、入って!」

広瀬「でもご家族に悪いのでは…」

美琴「大丈夫大丈夫。ただいまー」

莉沙「お帰りなさい、随分遅かったわね…」



 ○目が合う二人。



莉沙「…広瀬くん?」

広瀬「…莉沙…さん…!?」

美琴「え?」



<続く>

シノプシスでここにキス入れてましたけどちょっと入れられる雰囲気ではなかった

キスして、遅くなって送るくだりを別の日にして別のストーリー入れれば何とかなるかも?

あと『ジャングルの建築家』っていうタイトルにするのであればこの辺に東京という名のジャングル~みたいな台詞入れないと・・・・。

[newpage]

登場人物

子美琴

子広瀬

美琴の母

美琴の父

莉沙

木村

莉沙の教え子

三好

同僚

ガス会社の人



 ○過去回想。雨。小学校で子美琴(すでに女装している)が泣いている



子美琴「うぇ~ん、お母さ~ん・・・」



 ○子広瀬(すでに男装している)がやって来て、傘をさしてあげる



子広瀬「どうしたの?」



 ○広瀬の顔をまじまじと見る美琴。



子広瀬「はぐれちゃった? ボクがさがしてあげようか?」

子美琴「・・・・うん」



 ○手をつなぐ二人。



子美琴「見て、きれいなお花でしょ」

子広瀬「あ~うん…だれかの花壇のお花をつむと怒られちゃうよ」

子美琴「む・・・・」

子広瀬「でも、綺麗だね」

子美琴「・・・・! でしょっ!」

美琴の母「美琴! 見つかってよかった、探したのよ。大丈夫だった?」

子美琴「うん。あのね、おにーちゃんがたすけてくれたの」

美琴の母「そう、よかったわねぇ、あ、莉沙のお友達よね。ありがとう」

子広瀬「見つかってよかったね。バイバイ」

子美琴「バイバイ」



 ○歩いていく広瀬。



子美琴「しゅてきなひとだね、ママ。また会えるかな?」

美琴の母「そうね、きっとね」

子美琴「あたち、ああいうしゅてきなひとと結婚ちたい!」

美琴の母「ふふふ、美琴ならきっとできるわよ」



 ○歩いている広瀬。



広瀬の母「あっ、いた。もうどこ行ってたの。伸びちゃうでしょ」

子広瀬「ちょっと、迷子の子を…」

広瀬の母「まったくいつもどっかフラフラして、学校でみんなに迷惑かけてないでしょうね!? ほら、また青い帽子にしてる。女の子は赤って言われてるでしょ! 恥ずかしいったらありゃしない。これ以上恥かかせるようなら、お母さん帰るよ!」



 ○子広瀬、寂しそうに、きた方向に目をやる。



 ○回想終了、朝。美琴の二人目の姉の部屋で目を覚ます広瀬。



OP



美琴の母「これ、ジャムね。それからバターに、マーガリン」

広瀬「あああのあの、お構いなく…」

美琴の母「いいのよ、ありったけ食べてってね」

美琴の父「そうだぞ、食事は基本だ、戦う男にはな」

広瀬「えーと・・・は、はい・・・」

美琴「パパ、広瀬さんは女の人って言ってるじゃん」

美琴の父「俺は気概の話をしてるんだ」

莉沙「ゴメンね、うるさくて」

広瀬「いえ、うちの母は料理とかしなかったので、なんだか、新鮮です…」

美琴の母「ふふ、このまま美琴をもらってくれてもいいのよー」

美琴「ちょ、お母さん何言ってんの!?」

美琴の母「あら、だって昔…」

美琴「あ、大変もうこんな時間、行こ、広瀬さん!」

広瀬「ご馳走様でした」

美琴の母「また食べにいらしてね」

莉沙「あっ、広瀬くん」



 ○ネクタイをしている広瀬に莉沙が話しかける。



莉沙「ちょっと、相談したいことがあるの。今度会える…?」

広瀬「はい、僕にですか…? 僕でよければ・・・」

莉沙「よかった…また、連絡するね。あの・・・会えてよかった。ちゃんとお返事できてなかったから…」

広瀬「…ぼ、僕も…です」

莉沙「行ってらっしゃい」

広瀬「行ってきます」

美琴「・・・・・?」



 ○歩いている



美琴「昨日、眠れた? もう一人のお姉ちゃんの部屋なんだけど、すっごい散らかってて、汚かったでしょ。花梨おねーちゃんオタクだからさ」

広瀬「いえ、よく眠れましたよ。何から何までしていただいて…申し訳ないです」

美琴「今度あんたの家にも行かせてよ」

広瀬「僕の家は、本当に何もないですよ」

美琴「へー?」



 ○会社に着くと、みんなが広瀬を見る。



広瀬「…?」

同僚「ちょっと広瀬、あんた三好さんに黙って勝手に設計変えたんだって? そういうことするの、やめてくれない?」

広瀬「へ? いえ、僕はちゃんと連絡…」



 ○ニヤニヤしている三好。



同僚「とにかくこれ以上勝手な仕事するようなら、私たち黙ってないから」

広瀬「…すみません」

美琴「ちょっと、広瀬さんはちゃんと連絡したって言ってるじゃない!」

同僚「アンタ、三好さんよりクズヒロセの肩を持つつもり?」

美琴「広瀬さんはクズじゃない! センスあるし、優しいし、かっこいいし…」

広瀬「美琴さん…」

木村「おーい、林原と広瀬、ちょっと来い。」

次のプロジェクトでは…

木村「今回のプロジェクトはお台場に新しくできる帝都ガスのツインタワーなんだが、ちょっと遠くて構造設計上ブリッジが作りにくい。しかしビル間の移動ができるようにとのクライアントの依頼なんだ。みんなの知恵を貸してくれ。坂井、何かあるか?」

坂井「…部長、ここは皆で答えを見つていくべきでは?」

木村「ふむ、まあ期限まであと一週間ある。それまでに各自アイディアを出してきてくれ」

全員「はい」



 ○場面転換、カフェで待ち合わせる莉沙と広瀬。



広瀬「すみません、待ちました?」

莉沙「いいえ。こちらこそ、学校近くまで来てもらってありがとう」

広瀬「いえ…」

莉沙「広瀬君…変わらないね。あの、私ずっと謝らなきゃって思ってたの、あのあと、お父さん、大阪に転勤が決まっちゃって…」

広瀬「いえ全然、こちらこそ…ヘンなことを言って…申し訳なかったです」

莉沙「変じゃない…あの…美琴と付き合ってるの?」

広瀬「え!? あ、いや、えーと・・・・ま、まだ・・・・」

莉沙「まだ?」

広瀬「あ、いやその、まだ僕が勝手に思ってるだけで!」

莉沙「広瀬君・・・・あの時の返事って…まだ、聞きたい? 告白の返事・・・」



CM



広瀬「・・・もし良ければ・・・・」

莉沙「私は…広瀬くんのことは尊敬してる…努力家で、真面目で…けど、ごめんなさい。私は…あなたが思ってるほど出来のいい人間じゃないの」

広瀬「えっ・・・?」

莉沙「だから……私の事は忘れてください」



 ○励ましても無駄と悟る広瀬。



広瀬「そうですか・・・あの、それで、相談と言うのは・・・?」

莉沙「あ、そ、そうなの。うちの生徒のことなんだけど・・・女の子なんだけど、自分のことを男の子だって言うの」

広瀬「あ・・・・はい」

莉沙「更衣室も男子のを使いたがるし、胸が成長してきてるのに上半身を脱いだりするし…それで周りとうまく馴染めなくて…教師としてどう対応していけばいいのか、広瀬くんにアドバイスをもらおうと思ったの」

広瀬「僕なら…やっぱり…全部、受け入れてもらいたいです。特に大人には…更衣室も、修学旅行も…否定されるのは、やっぱり悲しいです」

莉沙「でも…何か間違いが起こったらどうするの? 学校が責任を取らなくちゃいけないのよ。もちろんそんな人は一部だし、起こるかどうか分からないことで二の足踏んで、その子を蔑ろにするのもどうかしてるけど、でも…やっぱり生徒にも保護者にも、色んな人がいるから」

広瀬「そうですね…学校に迷惑は掛けられません。だけどせめて、先生には…理解してほしい。現実に男子と同じ輪に入れなくても、いつかは入れるって励ましてほしいです。できれば卒業したあとも」

莉沙「そうだよね、生徒を励ますのが教師の仕事だもんね…広瀬くんのおかげで吹っ切れた…ありがとう。」

広瀬「莉沙さんなら、きっと安心ですね。すごく優しいですから…僕は、そんな所が好きだったんです。初恋…でした」

莉沙「美琴のことは、どう思ってる?」

広瀬「美琴さんも…すごく優しいです。ご家庭が愛に溢れていて…僕みたいに、愛を知らない人間には、本当に魅力的です。彼女は意志も強いですし、いつも凜としていて・・・」

莉沙「美琴のこと、よろしくね」

広瀬「い、いやまだ決まったわけじゃ…」

莉沙「ふふふ」



 ○場面転換



美琴「以上が私の提案です」

木村「じゃ次広瀬」

広瀬「はい」



 ○眼鏡をかける広瀬。



広瀬「今回提案させていただくのは『気球タクシー』です。ガス会社ですから宣伝にもなりますし、東京の町が一望できます。コストもかからず済みます」

ガス会社の人「しかし、雨風の日は使えんじゃないか」

広瀬「ええ…」

坂井「雨風の日はブリッジを作ったとしても耐えられない可能性がある。危ない橋を作って災害で壊れて非難を受けるのとどちらがいいかしら」

ガス会社の人「うむぅ」

坂井「あたしは好きよ。東京の町を気球でのんびり眺められるなんて、そうできる体験じゃないものね」

ガス会社の人「考えてみよう」



 ○ホッとする広瀬



 ○場面転換



美琴の母「それではプロジェクト通過を祝って・・・」

全員「カンパーイ!」

広瀬「ありがとうございます」

美琴の母「どう? おいしい?」

広瀬「こんなに手の込んだ料理食べるの初めてで…」

美琴の母「やーね、ほめても何も出ないってー」



 ○場面転換、花梨ねーちゃんの部屋



美琴「もー、わざわざ掃除なんかしなくていいのに」

広瀬「でもそのくらいはしないと悪いですよ…大丈夫、ものを動かしたりはしないですから…あ」



 ○つまづく広瀬で床ドン



美琴「・・・・・」

広瀬「あ、ち、違います、ホントにつまづいて…ご、ごめんなさい!」

美琴「……待って」



 ○広瀬のネクタイを掴む美琴。



広瀬「・・・・・!」



 ○キスしようとする広瀬。



莉沙「どう? 手伝おうか?」



 ○莉沙の声がしたので慌てて離れる二人



美琴「だ大丈夫! 大丈夫だから!」

莉沙「そう、お願いね」

広瀬「・・・・・・・・・」

美琴「…やっぱり、片付けよ」



<続く>[newpage]

登場人物

広瀬

モブ×6

保健士

木村

社長

部下1



 ○広瀬の過去。大学。



モブ「へーでその人今何やってんの」

モブ「テストどうやったー?」



 ○笑い声



 ○しょんぼりして歩いている広瀬。



保健士「広瀬さん」

広瀬「…斎藤さん」

保健士「久しぶりやね。卒業制作の方は捗ってる?」

広瀬「はい…」

広瀬("でも、就活がうまくいきません"なんて、言っても仕方ない。ただ、上辺だけの励ましをくれるだけなんだから)

保健士「じゃ、頑張ってね」

広瀬「はい、ありがとうございます」



 ○自分の卒業制作のノートを見る。そこには「車いすの人のためのスポーツ施設」とある。



 ○広瀬の回想



モブ「なんで目ェ合わせへんの?」

モブ「性格がねぇ」

モブ「それでやっていけると思ってんの?」

モブ「男か女かはっきりしないんじゃねぇ」



 ○場面転換で面接のシーン。





木村「へぇ、ずいぶんいい大学だね」





広瀬「べ、勉強だけは、得意…です」

木村「どうして目を合わせないの?」

広瀬「・・・・目を合わせる資格が・・・・ないから・・・・」

広瀬(僕はクズで・・・・・生きる資格なんてないから・・・・・)



 ○涙が出る広瀬。



広瀬「あ・・・す、すみません」

広瀬(泣くな・・・・泣いたって何も変わらないのに・・・・)



 ○出ていく広瀬。



広瀬「失礼しました」



 ○広瀬の卒業制作を見ている木村。



社長「どうかね」

部下1「話になりませんね、社会不適合者じゃないですか。あんなのを採用したら会社の品格が疑われる」

木村「けど、設計はちゃんとできる。足りない所は我々で補えばいい。それが上司の仕事だろう。実力はこうやって示されているんだ。このまま潰したらもったいない」

社長「では、君のところで試してみるかい?」



 ○ベッドでうずくまっている広瀬。まだ泣いてる。



広瀬(神様なんていない)

広瀬(もし神様がいるのなら、僕だけが不幸せになるわけないから)



 ○電話が鳴る



広瀬(また不採用通知か。もういい、傷つくのはこりごりだ。)



 ○チャイムが鳴る



広瀬「・・・・・・。」



 ○チャイムが鳴る



広瀬「うるさいな・・・・・」



 ○ドアを開けると、木村がいる。きょとんとする広瀬。



木村「覚えてる? ジャングル・オブ・アーキテクツの木村だけど」

広瀬「・・・・・あのときはすみません」

木村「別に君が泣いたことは関係ないよ。それで内定決まったから知らせに来たんだ。僕が上司になるからよろしく」

広瀬「・・・・・え・・・・いいん・・・ですか・・・・?」

木村「『車いすの人のためのスポーツ施設』、良かったよ。特に、給湯室や保健室と、一体になっている所がいい。空間を最大限に利用しているね。それにコンセプトがいい。卒業制作で弱者のための建築を作る学生はほぼいないんだよ。優しさが、君の最大の武器だろう」

広瀬「本当に・・・・僕・・・・働いても・・・・いいんですか・・・・?」

木村「いいよ。壊れる前に間に合ってよかったね」

広瀬「・・・?」

木村「君の心だよ。壊れる前に間に合ってよかった」



 ○泣く広瀬。



 ○目を覚ます広瀬。横に典子が寝ている。



広瀬「・・・・・夢か」



 ○安らいだ顔の広瀬。



広瀬「典子さん・・・・あなたにもいつかきっと・・・愛してくれる人が現れるはずです」



<続く>[newpage]

登場人物

広瀬

莉沙

美琴

三好

坂井

孝太郎

木村

子供

父親

母親

医師

看護師

社員

人×3

コンシェルジュ

広瀬(男) 男性 ※似ている別人



○会社。みんな働いている。坂井、誰かに指示を出すなどしている。それを歩きながら見ている高橋。前を見ておらず柱にぶつかる。



高橋「あっすみません」



○柱だと気付く高橋



高橋「…。」



 ○それを見ていた広瀬、吹き出す。



高橋「な、なンだよ。悪いか。」

広瀬「いや…まだ話してないの?」

高橋「バカ…こっちは一介の派遣だぞ。そうそう近づけるもんか」

広瀬「うーん、それもそうか…」

社員「おーいそこの派遣君。ちょっと手伝ってくれ」

高橋「は、はい。じゃな」

広瀬「無理すんなよ」



 ○広瀬の背中を触ってくる三好。



広瀬「わ」

三好「広瀬。聞いたか? 今度の社内コンペは坂井組のプロジェクトだってよ」

広瀬「坂井組…典子さんのお父さんの会社ですね」

三好「レジャーホテルだってよ。今度こそ…負けねぇからな」



 ○自信がついてきた広瀬はむっとする。



広瀬「僕だって…」



 ○去る三好。莉沙やって来る



莉沙「あっ、広瀬君」

広瀬「莉沙さん? あの・・・何かありました?」

莉沙「美琴のお弁当を持ってきたの、私丁度お休みだったから。あの子よく忘れるのよ」

広瀬「美琴さんは今会議なので、僕が渡しておきましょうか」

莉沙「ありがとう、助かるな」



 ○何か言いたそうだが(「美琴から告白された?」的なこと)、仕事中なので言わない莉沙。



広瀬「・・・・?」

莉沙「じゃあ、またね。お仕事がんばって」

広瀬「はい、ありがとうございます」



 ○莉沙の過去回想。自宅で美琴と会話している。



莉沙「ねぇ、広瀬さんとはどうなの?」

美琴「えっ? え、えーと・・・ま、まぁまぁかなー」

莉沙「でも、脈はあるんでしょう? それとも貴方の方がいまいち?」

美琴「・・・広瀬先輩って、臆病で、失敗ばっかりで、ほんとに情けないよね」

莉沙「あら・・・」

美琴「でも、それを励ましたり、慰めたりするのが、なんだかすごく楽しい。今まであんな人に会ったことなかった・・・・ペットを飼うってこんな感じなのかな?」

莉沙「え、、、!? ペ、ペットなの? 広瀬君。」

美琴「分かんない。でも・・・広瀬先輩といる時のあたし・・・なんか、『生きてる!』って感じがするんだ・・・・」



 ○回想終わり。頬に手をあててはらはらしている莉沙。



 ○美琴にお弁当渡す広瀬、無音声シーン。



莉沙(off)「あの二人、ちゃんと通じ合えるのかしら・・・。」



CM



 ○家族四人(1人は赤ちゃん)でドライブをしている。



子供「パーパーまだー?」

父親「もうすぐ着くぞー」



 ○トンネルを抜けると、レジャーホテル「パラディーモール」登場。



家族「わ~」



コンシェルジュ「ようこそ、レジャーホテル「パラディーモール」へ。館内のご案内をさせて頂きます。フロントのございます2階には託児所、保育園が備わっており、未就学児童のお子様でも楽しめるイベントを開催しております。3階より上各階にはマシンジムが備わっておりますので、ご自由にご利用頂けます。各お部屋には最新の電化製品が備わっており、ゲームも充実しておりますので是非お試し下さいませ。中央吹き抜けには噴水がございます、水の流れ落ちる様子をお楽しみください。エレベーターは屋上庭園、各宿泊フロア、1階プール、隣接致します動物園まで直通となっております。医務室は4階と1階にございます。そしてプール入り口は3階となっております。2階から1階へウォータースライダーがございますのでお楽しみくださいませ。冬はスキー場としても開設しております。2階お土産コーナーでは様々なパーティードレス仮装グッズ、おしゃれ雑貨なども販売しております。3階にございますお子様専用入り口からお入りいただきますと、ちょっとした迷路と壁に備え付けられたすべり台で楽しむことができます。他にもお子様専用通路、トンネル、隠しプレイルームなどがホテル内のあらゆる所にございますので、ぜひ探してみてくださいね。また、『火山の部屋』前の『きのこの相談室』では、お子様や保護者様のお悩み相談をお受けする専門カウンセラーが常駐しております。日常生活にお悩みの方は是非ご利用下さい。それでは「パラディーモール」でごゆっくりお寛ぎくださいませ」



 ○入っていく家族。



 ○朝、美琴が出勤してくると、何やら騒がしい。みんなテレビを観ている。



美琴「何かあったの?」

社員「坂井組の社長が逮捕されたんだって。労働基準法違反で」

美琴「え!?」



 ○思わず典子を見る美琴。切ない顔をしている。



人「あの人が娘…」

人2「やっぱりね、あの娘にしてこの父親あり…」

人3「いい気味だわ」



 ○ふいっと逃げる典子。



高橋「坂井さん!」



 ○それを追う高橋。



高橋「坂井さん! あの・・・・」

坂井「あなたもパパを悪く言うのね・・・」

高橋「いや・・・」

坂井「いや、やめて、聞きたくない・・・罵らないで・・・どんな人でも・・・あたしのパパなの・・・・」

高橋「・・・昔君は言った。東京中の建物を自分が建てたいって。そしてみんなを幸せにするんだって。君と父親は違うものじゃないか。」

坂井「・・・・そうよ、うちの父親はクズで我が侭で畜生で、娘にも平気でセクハラする最低の男だった…私は…私は…!」

高橋「辛かったね・・・でももう父親は捕まったんだ・・・もう大丈夫だから・・・・のりちゃん」

坂井「…孝太郎? あなた、孝太郎なの・・・・?」



 ○うなずく高橋。泣き出す坂井。



坂井「…会いたかった…! どこ行ってたの!」



 ○抱きつく坂井。



坂井「あたしが間違ってた…あたしもやっとそこまで来れた。もう誰も、憎んでないよ」



 ○ざわざわしているオフィスに三好がやって来る。みんなの前で言う



三好「プロジェクトは中止になったとはいえ、結局・・・・またあんたの案が通った」

広瀬「・・・・・。」

三好「ふん、まあいい。その代わり・・・・お前に一ついいことを教えてやろう。林原美琴は・・・・男だぞ」



 ○お弁当持った莉沙がやって来る。

広瀬「・・・え?」
美琴「・・・・!」

 ○しーんとなる周り

三好「調べたんだ・・・」

 ○免許証を見せる三好。

美琴「う、うちの免許証・・・・!」
三好「まああいつが男でお前は女・・・お似合いのカップルなんじゃねーの?」



 ○ざわつく周り。



広瀬「・・・・・逆です」

三好「あ?」

広瀬「逆です・・・確かに僕は気弱だし、ヘタレだけど・・・男です。そして彼女は・・・・女性です!」

美琴「・・・・・・・・・・・・先輩・・・・」

広瀬「…僕の人生は、恵まれていたと思います。木村部長に出会えて、男友達もできて、同僚にも恵まれた・・・・もしかしたら、恵まれすぎたのかもしれない。このままじゃ、何かばちが当たるかも知れないとさえ、思っていました」

美琴「・・・・・!」

広瀬「それでも、僕は・・・・今の幸せを失いたくない・・・・このまま終わりたくないって、思ってしまった。例えそれがわかままだとしても・・・・美琴さん」

美琴「は、はい。あの、手術とかはちゃんとしてるし、戸籍も大阪に色々手続き行くのが面倒なだけで」

広瀬「僕と・・・・お付き合いして下さい!」



 ○間(5秒くらい)



 ○はらはらしている莉沙。



美琴「・・・・・はい」



 ○ガッツポーズを取る高橋と、ふふんみたいな顔の坂井と、よしっとかいって飛び上がる木村。



 ○歓声が沸いて、抱きしめる広瀬。



美琴「あたし・・・・信じてた・・・・あんたならそう言ってくれるって・・・!」



 ○笑って見つめている莉沙。ぼーっとしてぶつかった人をよけられなかった。



三好「あっ、すみません…」



 ○三好と目が合う莉沙。



三好「…何て美しい人なんだ!」

莉沙「へ?」



 ○5年後、広瀬のアパート



三好「そうそう、あれが出会いだったね」

莉沙「私、思ったの。"この人になら、気兼ねなく甘えてもいいんじゃないか"って」

三好「俺もだよ、ベイビー」



 ○キスしようとする三好。



莉沙「ちょ、ちょっと、今はだめ…」

美琴「ははは…」

莉沙「美琴のほうは、どうなの?」

美琴「うん、お互い、戸籍も変え終わったし、完全に適合したよ」

三好「なぁ、手術でキンタマつけても、やっぱ勃つの?」

美琴「…勃つ…よ」

莉沙「やだ、もう…ごめんね」

広瀬(男)「美琴さん」

美琴「何?」

広瀬(男)「なんだかこげくさいんですけど、もう炒めるのやめていいですか?」

美琴「え? ちょ、こげたらダメに決まってるやんかもぉ~ちょ貸し!」



 ○二人のもとにやって来る広瀬。



莉沙「それでね、広瀬くん。きょうは報告があって…」

三好「俺たち、結婚するんだ」

広瀬「…それは…おめでとうございます!」

三好「式はハワイで挙げるから旅費があれば来いよ」

莉沙「心配しないで、こっちで持つから」

広瀬「…本当に…おめでとうございます」

莉沙「…ありがとう」



 ○玄関。見送る広瀬。



広瀬(莉沙さん、さようなら。初恋でした…)



 ○ドアが開いて、美琴が不安げな顔で出てくる。



美琴「桃ピー。あんたのお母さんが・・・」

広瀬「・・・・僕の・・・?」



 ○病院



医師「三ヶ月ほど前から何も分からない状態でして、多分あなたの事も覚えていないかと」

広瀬「それでいいんです」



 ○病室に入る広瀬と美琴。



広瀬「母さん」

広瀬母「なーに? あんただれなの?」

広瀬「あなたの子供だよ」

広瀬母「あたし――あたしの――? うそ・・・・ほんとに? お医者様は娘だって言ってたけど・・・・」

広瀬「息子だったら――嫌かな」

広瀬母「そんなことないわ――嬉しい! ずっと子供が欲しかったの! 男でも女でもどっちでもいいわ! 抱きしめさせて! ああ・・・・大きいね・・・・あたしがあんたのお母さんなのね・・・・・大好きよ・・・・」

広瀬「あれ・・・・ははは、なんか・・・・思ってたのと違うな・・・・?」

看護師「広瀬さんは聞き分けのいい、素直でいい子なんですよ。こんな患者さんも珍しいんです」

広瀬「・・・・きっと母さんも、たくさん苦労してきたんだね。そうだよ、俺が息子だよ、お母さん・・・お母さん」



 ○病院の外、雨が降ってる。広瀬、傘をさしながらハンカチで手をふきながら出てくる。



広瀬「・・・何してるんですか? 傘もささないで・・・」

美琴「あっ、雨降ってきてたの気付かんかった。見て、綺麗やろ!」



 ○花を見せる美琴。



広瀬「・・・」

美琴「(何か言おうとした広瀬の口を指でふさぐ)あっ、ちゃんと許可は取ってあんで~」

広瀬「(ふふと笑って)・・・・綺麗だね、とても」



 ○にやっと笑う美琴。



広瀬「そうだ、僕からも渡すものがあるんだ」



 ○指輪を取り出す広瀬。



美琴「え・・・これって・・・・?」

広瀬「雨の日も風の日も雪の日も…あなたを愛することを誓います。ぼくと…結婚してもらえませんか?」

美琴「・・・・・・はい」



 ○指輪を受け取る美琴。笑う広瀬。



広瀬「本当にいいんですか? 僕・・・メンヘラですよ?」



 ○傘をさし出す広瀬。



美琴「あんたは頑張ってるやんか」


登場人物
 レギュラー
  広瀬桃子 女だが男に見える
  林原美琴 女
  坂井典子 女
  木村剛志 男
  同僚 女
  三好琢磨 イケメン 男
 ゲスト
  三間貴文 男
  奥さん 女

 ○ビル風の音
 ○とあるレストランで、三好と美琴が向き合っている。

三好「美琴……オレと結婚しねえ?」
美琴「……ごめんなさい……。」
三好「何故だ!? オレは背も高いし顔もいいし地位もある……いったいキミの何がそこまで男を避ける?」
美琴「それは………言えません………。とにかく、あなたとお付き合いはできません、ごめんなさい…。」
美琴(言える訳ない………だって私……結婚できないんだから……戸籍上は『男』なんだから…!)

 ○免許証を見ている美琴。
 ○去る美琴を見ている三好。

三好「アンタの秘密・・・・ぜってぇ暴いてやるぜ」

 ○ジャングルの建築家 OP
 ○三間夫妻がエントランスで言い争っている。



奥さん「もう、どこ行ってたのよ、約束の時間30分も遅れてるじゃない」

貴文「ご、ゴメン。近くに大きな水族館があるって言うから…」

奥さん「また水族館に行ってたの!? 魚じゃなくてその辺の花でも見てなさい」



 ○美琴、製図室に入る。



木村「林原君」

美琴「はい部長」

木村「今日から東京に転勤して来ることになった広瀬君を紹介する。前に僕が見てた部下なんだ。本社に早く馴れられるよう、キミからも何かと協力してやってくれ」

美琴「分かりました」

木村「広瀬君、林原美琴君だ」

広瀬「・・・・・・・・・・・・・ひ」

美琴「・・・・・ひ?」

広瀬「ひ、広瀬です・・・・。よ、よろしく・・・・・。」



 ○おそるおそる手を伸ばす広瀬。



美琴「あ、は、ハイ。よろしく。」



美琴(大丈夫なんコイツ・・・・目合わせへんし・・・・危ないヤツちゃうの?)



木村「広瀬君は東京出身だが、大学は京都で、そのまま京都部署に所属していたんだ。林原君は大阪出身だから、話が合うと思ってね。一応広瀬君の方が先輩だけど・・・まぁ呼び方は任せるよ」

美琴「は、はぁ・・・・。」

木村「広瀬君のデスクはそこだから」

広瀬「はい・・・・」



 ○何なん? 不愛想なやつ・・・・いや別に愛想は仕事のうちに入らんけど・・・と思いながら横目で見つつ二人とも席に着く。



 ○場面転換



同僚「ちょっと広瀬君、このスケールの計算間違ってるんだけど」

広瀬「えっ、あっ…す、すみません…。」

同僚「さっきも書類のコピーに失敗した挙句、失くしたでしょ!? ほんと、しっかりしてよね。ろくに挨拶もできない、簡単な計算もできない、整理もできない、何でこんな能無し、本社に来たんだか」

広瀬「す、すみ…ません…。」



 ○木村が入ってくる。



木村「広瀬君。紹介しよう、三間貴文さんだ。この度ご夫婦で新邸を建設されたいとのことだ。設計を君に任せたいそうだが、やってくれるね」

広瀬「は、ハイ。広瀬です、よろしくお願いします。」

木村「三間さんの旦那さんは足が悪いので、段差などに配慮して欲しいそうだ」

広瀬「では、詳しいお話は応接室でお受けいたします、ど、どうぞ……」

貴文「あなたの建てる建築を楽しみにしているんですよ…」



 ○去っていく三人。それを見送っている美琴。



 ○場面転換、トイレ。



美琴「あの男に家の設計なんて出来るんかな?」



 ○広瀬が入ってくる



美琴「ちょ、ちょっと! ここ、女子トイレやで!」

広瀬「あ、ハイ。あ、ぼ、僕一応女なんで」

美琴「アンタ、女なの!?」

広瀬「は、はァ、すみません…。」

美琴「あのなぁ、何で謝るねん。謝るのはうちの方やろ。」

広瀬「でもやっぱり…ヘンですよね」

美琴「ヘンて? 誰がヘンて言ったん? あたし何も言ってないですけど!」

広瀬「えっと…周りの人とか…母とか」



 ○ため息をつく美琴。そこに典子が入ってくる。



典子「…彼、ここで何してるの」

美琴「この人は今日転勤してきた広瀬さんです…女性です…広瀬さん、この人は坂井さん、同じ設計部で、今新宿の高層オフィスビルのプロジェクトに関わっています」

広瀬「あ、どうも…」

典子「この会社は実力主義。使えない奴はクビ…実力がないなら話しかけないで」

広瀬「は、ハイ…。」



 ○再びため息をつく美琴。



 ○数日後、プレゼンの準備をする広瀬と美琴。



広瀬「すみません、アシスタントをお願いしてしまって」

美琴「いや、いいけど。」

美琴(ったく、なんでアタシがこんなしち面倒臭いことしなきゃなんないのよ、自分のプレゼンで手一杯だってのに…)

広瀬「あ、気をつけて下さい、そこ…」



 ○段ボールの角に足をぶつける美琴。



美琴「痛った…」

広瀬「大丈夫でしたか?」



 ○三好が入ってくる。



三好「おい、三間さんいらしたぞ」



CM



 ○“アーキテスツ・オブ・ジャングル(※会社の名前デス)”へ車で向かっている三間夫婦。



 ○到着すると広瀬と美琴が待っている。



広瀬「この度はお越し下さいましてどうもありがとうございます」

三間「どうも。いやぁ、設計が出来たと言うには、もう、楽しみでね」

広瀬「それではお見せしますので、中へどうぞ」



 ○四方全て真っ白な何もない部屋に案内する広瀬。



広瀬「では、林原さん、お願いします」



 ○頷いて、プロジェクターの電源を入れる美琴。すると壁じゅうに風景が写る。



広瀬「それではこれより、敷地30坪、三間さん邸のご自宅のプレゼンをいたします。まず、旦那様は足がお悪いとの事でしたので、段差はすべてバリアフリーになっております。玄関のドアは遮光ガラスになっています。では、から入りますね。右手にあるのはトイレです。トイレは幅70cmと広々とした作りになっており、その右が収納スペースです。奥へ進みますと、ダイニング、キッチン、リビングとなっています」



 ○奥さん、壁近くまで行ってキッチンの高さを確認する。



奥さん「丁度いいわね。あら、庭が見えるわね」

広瀬「はい、お庭にはこちらから出られるようになっております。」

奥さん「これだけ広ければ、好きなだけお花を育てられるわ!」

貴文「ハハハ」

広瀬「こちらが奥様のお部屋です」

奥さん「この部屋からも庭が見えるのね。素敵ね」

広瀬「そしてこちらが旦那様のお部屋です。」

貴文「これは…」

広瀬「旦那様のお好きなお魚を鑑賞できるよう、壁を水槽にしてみました。勿論、上げ下ろしは自動で行います」

貴文「おお…素晴らしい…こんな夢みたいな家に住めるなんて! ああ…やっぱりここに頼んでよかった、ありがとう!」

広瀬「いえ、まだ建ってもいないですから…」

貴文「そうだった」



 ○奥さんが笑う。それを見ている美琴。



 ○場面転換。廊下とか



美琴「…好きなものなんて聞いたの?」

広瀬「は、ハイ。あの、人にはそれぞれ、不得意なものと、好きなものと言うのがあると思うんです。もちろん過ごしやすい建物を作るのが僕らの仕事です。だけど、それだけじゃなく…なにか、楽しめるものがあると、きっと人は、人生を楽しく過ごせるんですよね」

美琴「…まぁ少しはやるじゃない」

広瀬「え?」

美琴「だ、だから、気弱なだけじゃないって、言ってんの」

広瀬「…ありがとうございます。あの、林原さん」

美琴「何」

広瀬「足、平気ですか」

美琴「え?」

広瀬「さっき…怪我してましたよね」

美琴「ああ、あんなの…平気よ。」

広瀬「…関西弁でいいですよ」

美琴「美琴」



 ○立ち止まる美琴。



美琴「美琴。ハヤシバラて、呼びにくいやろ」

広瀬「美琴さん…素敵なお名前ですね」

美琴「先輩の下の名前は?」

広瀬「僕………こ…です」

美琴「え?」

広瀬「も…桃子」



 ○笑う美琴。



広瀬「そこまで笑うことないじゃないですか!」



 ○笑いながらアドリブしながら退場。



 ○典子登場。



典子「…広瀬桃子…。面白い子が入ってきたわね」



 ○ペロリと舌なめずりする典子。



<続く>[newpage]登場人物

レギュラー

木村剛志 部長

高橋孝太郎 広瀬の大学の同窓生で、坂井の幼馴染。

ゲスト

三菅 貧乏。女性でも男性でも可

白井さん

ムーコ

工事のおじさん

大人(数名)

友達2人



 ○屋上から東京の街を見下ろして休憩している広瀬。坂井が入ってくる。



広瀬「あ、あなたは…」

坂井「アナタ、社会を憎んでいるでしょう」

広瀬「え?」

坂井「あたしとおんなじニオイがする・・・・分かるわよ・・・・憎んで・・・・その怒りが生きるパワーなのね・・・・?」

広瀬「あの・・・あなたも・・・・?」

坂井「長い薬指…」



 ○坂井、広瀬の薬指を撫でる。



広瀬「へ、ち、ちょ…」

坂井「ね…今夜どう?」

広瀬「…へ!?」

坂井「アナタの憎しみ・・・解放させてあげる」



 ○ペロッと薬指をなめる坂井。



 ○OP



 ○広瀬と美琴、依頼人と会っている。



広瀬「この土地に4部屋のアパートですか」

三菅「ええ…無理…ですか?」

美琴「この土地に4部屋で2階建てだと、ひと部屋がかなり狭くなりますけどよろしいですか」

三菅「はい…4つないと…借金が返せないので」

広瀬「三菅さんご自身はどちらにお住まいになるのでしょうか」

三菅「こ、このアパートの部屋のうちどれかに住みます」

広瀬「分かりました。やってみます」



 ○製図室に戻ってくる広瀬たち。



広瀬「あれ?」

高橋「あ! 広瀬!」

広瀬「赤福…何でここに…?」

高橋「今日から派遣でスキャンとかの手伝いするんだ。宜しく」

広瀬「宜しく。美琴さん、彼は大学の同期の赤福孝太郎。漫画家になるために中退したんだ。彼女は同僚の美琴さん。同じ設計部だ」

高橋「あー、あなたが・・・」

美琴「はい?」

高橋「いや、広瀬が『転勤した先に可愛い子がいる』って言ってたから」

広瀬「ちょ・・・・!」

美琴「・・・・。(ジト目)」

広瀬「いやち、違うんです、別に深い意味はなくて・・・!」

高橋「そう言やこっち来たら飲もうって言ってたよな。今度飲もうぜ」

広瀬「ああ」



 ○坂井が入ってくる。



同僚「おはようございます」

広瀬「あ・・・」

坂井「おはよう、広瀬君。あれからよく眠れた?」

広瀬「あ・・・え、ええ・・・おはようございます」



 ○坂井が腕で広瀬の腕をつつく。



 ○驚いている高橋。



 ○高橋を一瞥して自分の席へ行く坂井。



高橋「…おい!」

広瀬「いや、あの人はやめといた方が…」

高橋「違うそうじゃない、あれ坂井典子だろ…!?」

広瀬「…? そうだけど」

美琴「ご存じなんですか?(さも当然そうに)」

高橋「有名なのか?」

美琴「業界では」

高橋「俺の幼馴染だ」

広瀬「へえ…」

高橋「あいつ…(まだあんな性格なのか)」

木村「挨拶終わったー? 早く仕事してー」

全員「は、はいー」

三好「おい派遣、あの女はやめとけ」

高橋「は、は?」

三好「大手ゼネコン、坂井組の社長のご令嬢なうえ、クライアントとも寝てるって噂だぜ。変な事件に巻き込まれても知らねーからな」



 ○ふと目が合う広瀬と美琴だが、美琴にぷいっとそっぽ向かれてしまう。複雑な表情をする広瀬。



広瀬「・・・・・。」



CM



 ○孝太郎の過去回想



幼少典子「見て孝太郎!」

幼少孝太郎「のりちゃんそれ、白井さんちのムーコだろ…どうしたの」

幼少典子「連れてきた」

幼少孝太郎「勝手に連れて来たら怒られるよ」

幼少典子「だって散歩してみたかったんだもーん」



 ○案の定、ムーコの強さについて行けずリードを離してしまう。勝手に走っていくムーコ



幼少孝太郎「のりちゃん!」

白井さん「コラァ! またお前か! このクソガキ!」

幼少典子「いてぇ」



 ○場面転換。学校帰り、立ち入り禁止の柵の向こうでしゃがんでいるのをみつける孝太郎



幼少孝太郎「・・・のりちゃん、なにしてるの?」

幼少典子「あ! 見て孝太郎、ここにあるの、絵が描けるよ。いろいろあんの」

幼少孝太郎「でも、『はいらないでね』って書いてあるよ」

幼少典子「入らないでって言われると、入りたくなるじゃん?」

工事のおじさん「コラッ! 立ち入り禁止が読めないのか! 危険な薬品がいっぱいあるんだぞ!!」

幼少典子「やべっ、逃げるよ、孝太郎!」

幼少孝太郎「えっ!?」



 ○走る二人。



幼少典子「あー楽しかった。あ、ねえ知ってる? このマンションの屋上から見える夕焼けがすっごく綺麗なんだよ」

幼少孝太郎「え…? でもこの屋上、危ないからのぼっちゃダメだって」

幼少典子「いいじゃん。行こう!」



 ○火災用の非常はしごをのぼる二人。



幼少典子「あー! きもちいいー!」

幼少孝太郎「…ほんとだ」

幼少典子「ここから見える建物ぜんぶ、みんな大人たちが作ったんだよね。…ねえ孝太郎、あんた将来何になるの?」

幼少孝太郎「え、僕は…」

幼少典子「あたしはね…この町を、この世界を作りたいの! それで、すべての人をしあわせにするのが夢なんだ!!」

幼少孝太郎「…うん、のりちゃんならきっとなれるよ」

大人「コラッ!! 誰だ!! 登ってるのは!!」

幼少典子「げっ…」

大人「またお前か…」



 ○大人たちの言葉が被さりながら大人になっていく典子。



大人「ほんとにあの子は…」

大人「親の顔が見てみたいよ…」

大人「どうかしてるわよ…」



 ○高校



友達「坂井さん、一緒に理科室行こ」

坂井「アンタに連れてってもらわなくても知ってるから」



 ○すたすた行く典子。



友達「何、お高くとまっちゃってんの? せっかく話しかけてあげたのに」

友達「いいよ、放っとこ」



 ○それを心配そうに見てる孝太郎



 ○現代に戻る。廊下の典子を呼び止める高橋



高橋「あの」



 ○無視される孝太郎。



高橋「坂井さん」



 ○キッと睨みつける典子



坂井「派遣社員と喋る気はないわ。話すなら課長と話してよ。じゃ」



 ○すたすた行ってしまう典子。それを茫然と見送る孝太郎。



 ○場面転換。プレゼンルーム。プレゼンが起動して、真っ白な壁が風景になる。まずは平面図が映し出される。



広瀬「それでは三菅さんのアパートのプレゼンをさせて頂きます。独特な形をしていますので、4部屋とも違う形ですが、家賃は同じになるようにしました。こことこことこことこことに窓がありまして、バスルームはこちらです。ここはロフトになっています」

三菅「・・・あの、この真ん中の空間は何でしょうか」

広瀬「ここは中庭です…三菅さんのお部屋から行けるようになってます」



 ○三菅の部屋から中庭へ進む。



三菅「え・・・」

広瀬「ここなら外からは見えませんし、住民にも気付かれずに、庭でのんびりすることができますよ」

三菅「え・・・ありがとうございます・・・実は・・・今まで一軒家に住んでいたのに・・・・庭がなくなるのがすごく惜しかったんです・・・だけど両親の介護もあるし・・・借金もどんどん貯まる一方だから・・・・仕方ないと思って諦めてた・・・・・こんなに嬉しいことはないです、本当にありがとう・・・・・!」



 ○笑う広瀬。



 ○場面転換。美琴と広瀬が歩いている



広瀬「三菅さん…借金返せるといいですね」



 ○坂井が通りかかって手を振る二人。それを見てる美琴。



高橋「よっ広瀬~今日ヒマか?」

広瀬「何で?」

高橋「お前んちで飲まねぇ? 貸したい漫画溜まってるし」

広瀬「え? 俺んち? 襲うの?」

高橋「わけねーだろ。…坂井のこと色々聞きたいしさ」

広瀬「そっか…悪いけど、今日は空いてないかな。金曜なら」

高橋「オッケ。金曜な」



 ○去る高橋。



美琴「だいぶ、友達も増えたみたいでよかったね」

広瀬「そ、そうですね。」

美琴「…今日も坂井さんと予定があるの?」

広瀬「え?」

美琴「あ、いや別に、アンタの勝手だけど…最近、仲いいから…こないだも一緒に帰ってたでしょ」

広瀬「ああ…いや、今夜は違います。」

美琴「あ、そうなん」



 ○ちょっと間



広瀬「美琴さんは…今日、空いてますか?」

美琴「あたしはほとんど用事ない。友達少ないしー」

広瀬「じ、じゃあよかったら今夜、食事一緒にいきませんか」

美琴「え? だってなにか用事あるんやろ?」

広瀬「いえ…美琴さんを誘おうと思ってただけです。色々お世話してもらったのに、しっかりお礼もできていなかったから……いいですよね?」

美琴「…別にかまへんけど?」

広瀬「良かった! じゃあ、行きましょう! 支度して来るんで!」



 ○走っていく広瀬



美琴「…もう、ハッキリしてよー」



<続く>[newpage]登場人物

木村

三好

町の人

牧師(台詞ないけどいるよ)

林原莉沙 美琴の姉。ちなみに美琴には二人姉がいるが、もう一人の姉は登場しない予定・・・。



 ○朝。朝食を食べてる美琴と莉沙。



莉沙「朝ごはんできたよー」

美琴「いただきまーす」

莉沙「美琴」

美琴「ん?」

莉沙「入社して一年過ぎたけど――会社はどう?」

美琴「うん、まぁまぁかな。大したミスもしてないし…一人、しつこい男がいたけど…ちゃんとフッたから大丈夫」

莉沙「それって、三好さんって人?」

美琴「そ。ごちそうさま、行ってきまーす」

莉沙「美琴! お弁当忘れてる!」

美琴「あ、テヘ。ありがと。お姉ちゃんってほんと頼りになる! じゃ行ってきまーす!」



 ○寂しそうな顔で手を振ってからため息をつく。



 ○会社。



美琴「おはようございまーす」

木村「あ、林原君。早速だけど、次のプロジェクトは広瀬くんと、三好くんと共にやってもらう事になった。プロジェクトの内容は海岸沿いの教会の再建だ。何せ金銭的な余裕がないと言うので、サクッとやってしまってくれ、よろしく頼んだよ」

三好「オレがチーフだから、よろしく、林原さん。」

美琴「・・・・・・げぇ」



 ○OP



 ○どっかの飲み屋



三好「んじゃ、初チーム結成を祝って…カンパーイ」



 ○乾杯する3人。



美琴(なんであたしが…)

三好「ねー何にする? 鍋は?」

広瀬「あ、僕、鍋は苦手で」

三好「へー桃子ちゃん鍋苦手なんだー。オナベのくせに」

広瀬「ハハハ」

三好「ねー、桃子ちゃんってどこ出身なのー?」

広瀬「あの・・・僕は生まれは東京ですけど大学は京都だったんです」

三好「へー。関西の女の子って可愛い? それとも林原さんみたいに気強い?」

広瀬「えーそうですね人それぞれだと思いますけど…。」

美琴「それより今回のプロジェクト、市の補助金が出るとは言え30万円しか使えないんですよ。どうします?」

三好「普通に作ればいいじゃん、普通にさ」

広瀬「普通に作ったって足りる額じゃないですよ。僕達の手で作っていくしかないです」

三好「ねぇ、なんで僕って言うの? 女なのにさ」

広瀬「…別に…いいじゃないですか」

三好「キミって処女だよねぇ?」

広瀬「そうですね…」

美琴「三好さん! もういいでしょ!」

三好「何が? ただ自己紹介してもらってるだけじゃん」

広瀬「美琴さん、いいんですよ、慣れてますから」



 ○黙る美琴。三好は「キミ、よく見ると綺麗な手してんねぇ」とか言ってる



CM



莉沙「どうしたの? 元気ないけど」

美琴「今日から肉体労働なんだよねー・・・」

莉沙「まぁ、大変ねぇ…頑張って」

美琴「はぁ~・・・・」



 ○駅前を出勤している美琴。ふと、ショーウィンドウの花束を見つける。一目惚れする美琴。



 ○場面転換、ブーケを買って浜辺出勤する美琴。



美琴(綺麗なブーケも買っちゃったし、今日はいい事ありそ♪)

美琴「おはようございます!」



 ○地元の人とかが集まってくれてる。



三好「来たね、美琴。」

美琴「三好さんこそ、こういう仕事はパスすると思ってましたよ」

三好「ま、初日くらいは来るさ。挨拶がてらね」



 ○ビスケットみたいなの食べてた広瀬が美琴に気付いてやってくる。



広瀬「美琴さん、今日はよろしくお願いします」

町の人「よーしみんな気合い入れてくぞぉー」

町の人たち「おー」



 ○昼。みすぼらしい弁当を食ってる広瀬。



 ○場面転換。建てたドームが落ちる



町の人「あー」

三好「やっぱドームは素人にゃ無理だよ」

広瀬「うーん…しかしこれがなければ教会の魅力が…」

三好「ベツに良いんじゃないのー? 充分きれーだしー」

広瀬「もう一度だけやってみませんか」

三好「うるっせーなぁ! こんな事して何になる? 部長だってサクッと済ませろって言ってたろ!? こんな仕事、俺には似合わないんだよ。そもそも居ねもしねーモン奉って、下らねー」

広瀬「三好さん、これは信仰の問題ではなくて…」

三好「オレに説教垂れんのか? だいたいお前の恰好が気に入らねーんだよ、男みたいにしやがって!」

広瀬「…。」

三好「フン、分かればいいんだよ。オレは抜けるからな。あとはお前らでしっかりやんな」



 ○去る三好。



 ○さざ波。しょげている広瀬。



美琴「…元気出しなって。アイツちょっと頭おかしいし」

広瀬「いや、三好さんは正しいです…こんな所に拘ったって、完成が遅れて皆さんから苦情が出るだけなのに…それに、僕がおかしいのも…」

美琴「先輩はおかしくないです! あっそうだ、これあげます」



 ○朝買ったブーケを広瀬にあげる美琴。



美琴「今朝お花屋さんで買ったんです。ブリザードだから長持ちしますし」

広瀬「…ありがとう。ああ、確かに綺麗ですね…」



 ○晴れてきて夕焼けがキレイになる。美琴が見ている広瀬がオレンジ色になる。



美琴「広瀬さん、見て、夕焼けめっちゃ綺麗やんなぁ」



 ○ほかの人も夕焼け見てる。ドームができてないせいでむき出しになってる教会の鐘越しに夕焼けと海が見える



広瀬「・・・」

美琴「このままでも…充分キレイやね」

広瀬「ええ…そうですね」



 ○夜、美琴んちの前



美琴「設計書き直しも通ったしもう安心やね」

広瀬「ええ。今日は色々とありがとうございました」

美琴「こっちこそ送ってもらっちゃって…広瀬さんだって女の人やのに…」

広瀬「はは、でも居たほうがいいでしょう?」

美琴「・・・うん、ありがと」

広瀬「・・・・お花・・・・ありがとうございました・・・・今度何かお礼・・・・しますね」

美琴「気にしないで」

広瀬「じゃあ…お休みなさい」

美琴「あ、待って。」

広瀬「?」



 ○美琴、広瀬の額に手を当てる。



広瀬「!?」

美琴「やっぱり、少し熱ある。」

広瀬「へっ?」

美琴「なんか体調悪そうやったから…。なんで言わへんの」

広瀬「す、すみません…。」

美琴「良かったら・・・・泊まってく?」

広瀬「・・・・へっ!?」

美琴「あいやいやちが…うち実家住まいだから! その、今日はもう遅いし、それにさ…いつもなんかしょぼいお弁当食べてるし…ちゃんと食べてるのかなって心配になって…うちなら朝ごはん食べれるし」

広瀬「えっそんな…見てたんですか…実は料理って苦手で」

美琴「じゃ、決まりね! さ、入って!」

広瀬「でもご家族に悪いのでは…」

美琴「大丈夫大丈夫。ただいまー」

莉沙「お帰りなさい、随分遅かったわね…」



 ○目が合う二人。



莉沙「…広瀬くん?」

広瀬「…莉沙…さん…!?」

美琴「え?」



<続く>

シノプシスでここにキス入れてましたけどちょっと入れられる雰囲気ではなかった

キスして、遅くなって送るくだりを別の日にして別のストーリー入れれば何とかなるかも?

あと『ジャングルの建築家』っていうタイトルにするのであればこの辺に東京という名のジャングル~みたいな台詞入れないと・・・・。

[newpage]

登場人物

子美琴

子広瀬

美琴の母

美琴の父

莉沙

木村

莉沙の教え子

三好

同僚

ガス会社の人



 ○過去回想。雨。小学校で子美琴(すでに女装している)が泣いている



子美琴「うぇ~ん、お母さ~ん・・・」



 ○子広瀬(すでに男装している)がやって来て、傘をさしてあげる



子広瀬「どうしたの?」



 ○広瀬の顔をまじまじと見る美琴。



子広瀬「はぐれちゃった? ボクがさがしてあげようか?」

子美琴「・・・・うん」



 ○手をつなぐ二人。



子美琴「見て、きれいなお花でしょ」

子広瀬「あ~うん…だれかの花壇のお花をつむと怒られちゃうよ」

子美琴「む・・・・」

子広瀬「でも、綺麗だね」

子美琴「・・・・! でしょっ!」

美琴の母「美琴! 見つかってよかった、探したのよ。大丈夫だった?」

子美琴「うん。あのね、おにーちゃんがたすけてくれたの」

美琴の母「そう、よかったわねぇ、あ、莉沙のお友達よね。ありがとう」

子広瀬「見つかってよかったね。バイバイ」

子美琴「バイバイ」



 ○歩いていく広瀬。



子美琴「しゅてきなひとだね、ママ。また会えるかな?」

美琴の母「そうね、きっとね」

子美琴「あたち、ああいうしゅてきなひとと結婚ちたい!」

美琴の母「ふふふ、美琴ならきっとできるわよ」



 ○歩いている広瀬。



広瀬の母「あっ、いた。もうどこ行ってたの。伸びちゃうでしょ」

子広瀬「ちょっと、迷子の子を…」

広瀬の母「まったくいつもどっかフラフラして、学校でみんなに迷惑かけてないでしょうね!? ほら、また青い帽子にしてる。女の子は赤って言われてるでしょ! 恥ずかしいったらありゃしない。これ以上恥かかせるようなら、お母さん帰るよ!」



 ○子広瀬、寂しそうに、きた方向に目をやる。



 ○回想終了、朝。美琴の二人目の姉の部屋で目を覚ます広瀬。



OP



美琴の母「これ、ジャムね。それからバターに、マーガリン」

広瀬「あああのあの、お構いなく…」

美琴の母「いいのよ、ありったけ食べてってね」

美琴の父「そうだぞ、食事は基本だ、戦う男にはな」

広瀬「えーと・・・は、はい・・・」

美琴「パパ、広瀬さんは女の人って言ってるじゃん」

美琴の父「俺は気概の話をしてるんだ」

莉沙「ゴメンね、うるさくて」

広瀬「いえ、うちの母は料理とかしなかったので、なんだか、新鮮です…」

美琴の母「ふふ、このまま美琴をもらってくれてもいいのよー」

美琴「ちょ、お母さん何言ってんの!?」

美琴の母「あら、だって昔…」

美琴「あ、大変もうこんな時間、行こ、広瀬さん!」

広瀬「ご馳走様でした」

美琴の母「また食べにいらしてね」

莉沙「あっ、広瀬くん」



 ○ネクタイをしている広瀬に莉沙が話しかける。



莉沙「ちょっと、相談したいことがあるの。今度会える…?」

広瀬「はい、僕にですか…? 僕でよければ・・・」

莉沙「よかった…また、連絡するね。あの・・・会えてよかった。ちゃんとお返事できてなかったから…」

広瀬「…ぼ、僕も…です」

莉沙「行ってらっしゃい」

広瀬「行ってきます」

美琴「・・・・・?」



 ○歩いている



美琴「昨日、眠れた? もう一人のお姉ちゃんの部屋なんだけど、すっごい散らかってて、汚かったでしょ。花梨おねーちゃんオタクだからさ」

広瀬「いえ、よく眠れましたよ。何から何までしていただいて…申し訳ないです」

美琴「今度あんたの家にも行かせてよ」

広瀬「僕の家は、本当に何もないですよ」

美琴「へー?」



 ○会社に着くと、みんなが広瀬を見る。



広瀬「…?」

同僚「ちょっと広瀬、あんた三好さんに黙って勝手に設計変えたんだって? そういうことするの、やめてくれない?」

広瀬「へ? いえ、僕はちゃんと連絡…」



 ○ニヤニヤしている三好。



同僚「とにかくこれ以上勝手な仕事するようなら、私たち黙ってないから」

広瀬「…すみません」

美琴「ちょっと、広瀬さんはちゃんと連絡したって言ってるじゃない!」

同僚「アンタ、三好さんよりクズヒロセの肩を持つつもり?」

美琴「広瀬さんはクズじゃない! センスあるし、優しいし、かっこいいし…」

広瀬「美琴さん…」

木村「おーい、林原と広瀬、ちょっと来い。」

次のプロジェクトでは…

木村「今回のプロジェクトはお台場に新しくできる帝都ガスのツインタワーなんだが、ちょっと遠くて構造設計上ブリッジが作りにくい。しかしビル間の移動ができるようにとのクライアントの依頼なんだ。みんなの知恵を貸してくれ。坂井、何かあるか?」

坂井「…部長、ここは皆で答えを見つていくべきでは?」

木村「ふむ、まあ期限まであと一週間ある。それまでに各自アイディアを出してきてくれ」

全員「はい」



 ○場面転換、カフェで待ち合わせる莉沙と広瀬。



広瀬「すみません、待ちました?」

莉沙「いいえ。こちらこそ、学校近くまで来てもらってありがとう」

広瀬「いえ…」

莉沙「広瀬君…変わらないね。あの、私ずっと謝らなきゃって思ってたの、あのあと、お父さん、大阪に転勤が決まっちゃって…」

広瀬「いえ全然、こちらこそ…ヘンなことを言って…申し訳なかったです。あの、それで、相談と言うのは・・・?」

莉沙「あ、そ、そうなの。うちの生徒のことなんだけど・・・女の子なんだけど、自分のことを男の子だって言うの」

広瀬「あ・・・・はい」

莉沙「更衣室も男子のを使いたがるし、胸が成長してきてるのに上半身を脱いだりするし…それで周りとうまく馴染めなくて…教師としてどう対応していけばいいのか、広瀬くんにアドバイスをもらおうと思ったの」

広瀬「僕なら…やっぱり…全部、受け入れてもらいたいです。特に大人には…更衣室も、修学旅行も…否定されるのは、やっぱり悲しいです」

莉沙「でも…何か間違いが起こったらどうするの? 学校が責任を取らなくちゃいけないのよ。もちろんそんな人は一部だし、起こるかどうか分からないことで二の足踏んで、その子を蔑ろにするのもどうかしてるけど、でも…やっぱり生徒にも保護者にも、色んな人がいるから」

広瀬「そうですね…学校に迷惑は掛けられません。だけどせめて、先生には…理解してほしい。現実に男子と同じ輪に入れなくても、いつかは入れるって励ましてほしいです。できれば卒業したあとも」

莉沙「そうだよね、生徒を励ますのが教師の仕事だもんね…広瀬くんのおかげで吹っ切れた…ありがとう。」

広瀬「良かった。莉沙さんは強いですから、きっと負けないですよ。僕はそんな所が…あ、いや…忘れて下さい」

莉沙「…ねぇ、美琴と付き合ってるの?」

広瀬「え!? あ、いや、えーと・・・・ま、まだ・・・・」

莉沙「まだ?」

広瀬「あ、いやその、まだ僕が勝手に思ってるだけで!」

莉沙「広瀬君・・・・あの時の返事って…まだ、聞きたい? 告白の返事・・・」

CM

広瀬「…告白の…返事? Noだったんじゃ…」

莉沙「違うの、さっきも言ったけど急に引っ越すことになっちゃって…返事は…Yesです。私、ずっと広瀬君のこと、尊敬してた…けど自分に自信が持てなくて…お返事できないままでいたの」

広瀬「…莉沙さん…」

莉沙「でも、もう広瀬君には、美琴がいるんだもんね。ごめんなさい、忘れて」

 ○立ち去る莉沙。

広瀬「り、莉沙さん!」

 ○場面転換

美琴「以上が私の提案です」

木村「じゃ次広瀬」

広瀬「はい」

 ○眼鏡をかける広瀬。

広瀬「今回提案させていただくのは『気球タクシー』です。ガス会社ですから宣伝にもなりますし、東京の町が一望できます。コストもかからず済みます」

ガス会社の人「しかし、雨風の日は使えんじゃないか」

広瀬「ええ…」

坂井「雨風の日はブリッジを作ったとしても耐えられない可能性がある。危ない橋を作って災害で壊れて非難を受けるのとどちらがいいかしら」

ガス会社の人「うむぅ」

坂井「あたしは好きよ。東京の町を気球でのんびり眺められるなんて、そうできる体験じゃないものね」

ガス会社の人「考えてみよう」



 ○ホッとする広瀬



 ○場面転換



美琴の母「それではプロジェクト通過を祝って・・・」

全員「カンパーイ!」

広瀬「ありがとうございます」

美琴の母「どう? おいしい?」

広瀬「こんなに手の込んだ料理食べるの初めてで…」

美琴の母「やーね、ほめても何も出ないってー」



 ○場面転換、花梨ねーちゃんの部屋



美琴「もー、わざわざ掃除なんかしなくていいのに」

広瀬「でもそのくらいはしないと悪いですよ…大丈夫、ものを動かしたりはしないですから…あ」



 ○つまづく広瀬で床ドン



美琴「・・・・・」

広瀬「あ、ち、違います、ホントにつまづいて…ご、ごめんなさい!」

美琴「……待って」



 ○広瀬のネクタイを掴む美琴。



広瀬「・・・・・!」



 ○キスしようとする広瀬。



莉沙「どう? 手伝おうか?」



 ○莉沙の声がしたので慌てて離れる二人



美琴「だ大丈夫! 大丈夫だから!」

莉沙「そう、お願いね」

広瀬「・・・・・・・・・」

美琴「…やっぱり、片付けよ」



<続く>[newpage]

登場人物

広瀬

モブ×6

保健士

木村

社長

部下1



 ○広瀬の過去。大学。



モブ「へーでその人今何やってんの」

モブ「テストどうやったー?」



 ○笑い声



 ○しょんぼりして歩いている広瀬。



保健士「広瀬さん」

広瀬「…斎藤さん」

保健士「久しぶりやね。卒業制作の方は捗ってる?」

広瀬「はい…」

広瀬("でも、就活がうまくいきません"なんて、言っても仕方ない。ただ、上辺だけの励ましをくれるだけなんだから)

保健士「じゃ、頑張ってね」

広瀬「はい、ありがとうございます」



 ○自分の卒業制作のノートを見る。そこには「車いすの人のためのスポーツ施設」とある。



 ○広瀬の回想



モブ「なんで目ェ合わせへんの?」

モブ「性格がねぇ」

モブ「それでやっていけると思ってんの?」

モブ「男か女かはっきりしないんじゃねぇ」



 ○場面転換で面接のシーン。





木村「へぇ、ずいぶんいい大学だね」





広瀬「べ、勉強だけは、得意…です」

木村「どうして目を合わせないの?」

広瀬「・・・・目を合わせる資格が・・・・ないから・・・・」

広瀬(僕はクズで・・・・・生きる資格なんてないから・・・・・)



 ○涙が出る広瀬。



広瀬「あ・・・す、すみません」

広瀬(泣くな・・・・泣いたって何も変わらないのに・・・・)



 ○出ていく広瀬。



広瀬「失礼しました」



 ○広瀬の卒業制作を見ている木村。



社長「どうかね」

部下1「話になりませんね、社会不適合者じゃないですか。あんなのを採用したら会社の品格が疑われる」

木村「けど、設計はちゃんとできる。足りない所は我々で補えばいい。それが上司の仕事だろう。実力はこうやって示されているんだ。このまま潰したらもったいない」

社長「では、君のところで試してみるかい?」



 ○ベッドでうずくまっている広瀬。まだ泣いてる。



広瀬(神様なんていない)

広瀬(もし神様がいるのなら、僕だけが不幸せになるわけないから)



 ○電話が鳴る



広瀬(また不採用通知か。もういい、傷つくのはこりごりだ。)



 ○チャイムが鳴る



広瀬「・・・・・・。」



 ○チャイムが鳴る



広瀬「うるさいな・・・・・」



 ○ドアを開けると、木村がいる。きょとんとする広瀬。



木村「覚えてる? ジャングル・オブ・アーキテクツの木村だけど」

広瀬「・・・・・あのときはすみません」

木村「別に君が泣いたことは関係ないよ。それで内定決まったから知らせに来たんだ。僕が上司になるからよろしく」

広瀬「・・・・・え・・・・いいん・・・ですか・・・・?」

木村「『車いすの人のためのスポーツ施設』、良かったよ。特に、給湯室や保健室と、一体になっている所がいい。空間を最大限に利用しているね。それにコンセプトがいい。卒業制作で弱者のための建築を作る学生はほぼいないんだよ。優しさが、君の最大の武器だろう」

広瀬「本当に・・・・僕・・・・働いても・・・・いいんですか・・・・?」

木村「いいよ。壊れる前に間に合ってよかったね」

広瀬「・・・?」

木村「君の心だよ。壊れる前に間に合ってよかった」



 ○泣く広瀬。



 ○目を覚ます広瀬。横に典子が寝ている。



広瀬「・・・・・夢か」



 ○安らいだ顔の広瀬。



広瀬「典子さん・・・・あなたにもいつかきっと・・・愛してくれる人が現れるはずです」



<続く>[newpage]

登場人物
  広瀬
  莉沙
  美琴
  三好
  坂井
  孝太郎
  木村

  子供
  父親
  母親
  医師
  看護師
  社員
  人×3
  コンシェルジュ
  広瀬(男) 男性 ※似ている別人

○会社。みんな働いている。坂井、誰かに指示を出すなどしている。それを歩きながら見ている高橋。前を見ておらず柱にぶつかる。

高橋「あっすみません」

○柱だと気付く高橋。

高橋「…。」

 ○それを見ていた広瀬、吹き出す。



高橋「な、なンだよ。悪いか。」

広瀬「いや…まだ話してないの?」

高橋「バカ…こっちは一介の派遣だぞ。そうそう近づけるもんか」

広瀬「うーん、それもそうか…」

社員「おーいそこの派遣君。ちょっと手伝ってくれ」

高橋「は、はい。じゃな」

広瀬「無理すんなよ」



 ○広瀬の背中を触ってくる三好。



広瀬「わ」

三好「広瀬。聞いたか? 今度の社内コンペは坂井組のプロジェクトだってよ」

広瀬「坂井組…典子さんのお父さんの会社ですね」

三好「レジャーホテルだってよ。今度こそ…負けねぇからな」



 ○自信がついてきた広瀬はむっとする。



広瀬「僕だって…」



 ○去る三好。莉沙やって来る



莉沙「あっ、広瀬君」

広瀬「莉沙さん? あの・・・何かありました?」

莉沙「美琴のお弁当を持ってきたの、私丁度お休みだったから。あの子よく忘れるのよ」

広瀬「美琴さんは今会議なので、僕が渡しておきましょうか」

莉沙「ありがとう、助かるな」



 ○何か言いたそうだが(「美琴から告白された?」的なこと)、仕事中なので言わない莉沙。



広瀬「・・・・?」

莉沙「じゃあ、またね。お仕事がんばって」

広瀬「はい、ありがとうございます」



 ○莉沙の過去回想。自宅で美琴と会話している。



莉沙「ねぇ、広瀬さんとはどうなの?」

美琴「えっ? え、えーと・・・ま、まぁまぁかなー」

莉沙「でも、脈はあるんでしょう? それとも貴方の方がいまいち?」

美琴「・・・広瀬先輩って、臆病で、失敗ばっかりで、ほんとに情けないよね」

莉沙「あら・・・」

美琴「でも、それを励ましたり、慰めたりするのが、なんだかすごく楽しい。今まであんな人に会ったことなかった・・・・ペットを飼うってこんな感じなのかな?」

莉沙「え、、、!? ペ、ペットなの? 広瀬君。」

美琴「分かんない。でも・・・広瀬先輩といる時のあたし・・・なんか、『生きてる!』って感じがするんだ・・・・」



 ○回想終わり。頬に手をあててはらはらしている莉沙。



 ○美琴にお弁当渡す広瀬、無音声シーン。



莉沙(off)「あの二人、ちゃんと通じ合えるのかしら・・・。」



CM



 ○家族四人(1人は赤ちゃん)でドライブをしている。



子供「パーパーまだー?」

父親「もうすぐ着くぞー」



 ○トンネルを抜けると、レジャーホテル「パラディーモール」登場。



家族「わ~」



コンシェルジュ「ようこそ、レジャーホテル「パラディーモール」へ。館内のご案内をさせて頂きます。フロントのございます2階には託児所、保育園が備わっており、未就学児童のお子様でも楽しめるイベントを開催しております。3階より上各階にはマシンジムが備わっておりますので、ご自由にご利用頂けます。各お部屋には最新の電化製品が備わっており、ゲームも充実しておりますので是非お試し下さいませ。中央吹き抜けには噴水がございます、水の流れ落ちる様子をお楽しみください。エレベーターは屋上庭園、各宿泊フロア、1階プール、隣接致します動物園まで直通となっております。医務室は4階と1階にございます。そしてプール入り口は3階となっております。2階から1階へウォータースライダーがございますのでお楽しみくださいませ。冬はスキー場としても開設しております。2階お土産コーナーでは様々なパーティードレス仮装グッズ、おしゃれ雑貨なども販売しております。3階にございますお子様専用入り口からお入りいただきますと、ちょっとした迷路と壁に備え付けられたすべり台で楽しむことができます。他にもお子様専用通路、トンネル、隠しプレイルームなどがホテル内のあらゆる所にございますので、ぜひ探してみてくださいね。また、『火山の部屋』前の『きのこの相談室』では、お子様や保護者様のお悩み相談をお受けする専門カウンセラーが常駐しております。日常生活にお悩みの方は是非ご利用下さい。それでは「パラディーモール」でごゆっくりお寛ぎくださいませ」



 ○入っていく家族。



 ○朝、美琴が出勤してくると、何やら騒がしい。みんなテレビを観ている。



美琴「何かあったの?」

社員「坂井組の社長が逮捕されたんだって。労働基準法違反で」

美琴「え!?」



 ○思わず典子を見る美琴。切ない顔をしている。



人「あの人が娘…」

人2「やっぱりね、あの娘にしてこの父親あり…」

人3「いい気味だわ」



 ○ふいっと逃げる典子。



高橋「坂井さん!」



 ○それを追う高橋。



高橋「坂井さん! あの・・・・」

坂井「あなたもパパを悪く言うのね・・・」

高橋「いや・・・」

坂井「いや、やめて、聞きたくない・・・罵らないで・・・どんな人でも・・・あたしのパパなの・・・・」

高橋「・・・昔君は言った。東京中の建物を自分が建てたいって。そしてみんなを幸せにするんだって。君と父親は違うものじゃないか。」

坂井「・・・・そうよ、うちの父親はクズで我が侭で畜生で、娘にも平気でセクハラする最低の男だった…私は…私は…!」

高橋「辛かったね・・・でももう父親は捕まったんだ・・・もう大丈夫だから・・・・のりちゃん」

坂井「…孝太郎? あなた、孝太郎なの・・・・?」



 ○うなずく高橋。泣き出す坂井。



坂井「…会いたかった…! どこ行ってたの!」



 ○抱きつく坂井。



坂井「あたしが間違ってた…あたしもやっとそこまで来れた。もう誰も、憎んでないよ」



 ○ざわざわしているオフィスに三好がやって来る。みんなの前で言う



三好「プロジェクトは中止になったとはいえ、結局・・・・またあんたの案が通った」

広瀬「・・・・・。」

三好「ふん、まあいい。その代わり・・・・お前に一ついいことを教えてやろう。林原美琴は・・・・男だぞ」



 ○お弁当持った莉沙がやって来る。

広瀬「・・・え?」
美琴「・・・・!」

 ○しーんとなる周り

三好「調べたんだ・・・」

 ○免許証を見せる三好。

美琴「う、うちの免許証・・・・!」
三好「まああいつが男でお前は女・・・お似合いのカップルなんじゃねーの?」



 ○ざわつく周り。



広瀬「・・・・・逆です」

三好「あ?」

広瀬「逆です・・・確かに僕は気弱だし、ヘタレだけど・・・男です。そして彼女は・・・・女性です!」

美琴「・・・・・・・・・・・・先輩・・・・」

広瀬「…僕の人生は、恵まれていたと思います。木村部長に出会えて、男友達もできて、同僚にも恵まれた・・・・もしかしたら、恵まれすぎたのかもしれない。このままじゃ、何かばちが当たるかも知れないとさえ、思っていました」

美琴「・・・・・!」

広瀬「それでも、僕は・・・・今の幸せを失いたくない・・・・このまま終わりたくないって、思ってしまった。例えそれがわかままだとしても・・・・美琴さん」
美琴「は、はい。あの、手術とかはちゃんとしてるし、戸籍も大阪に色々手続き行くのが面倒なだけで」
広瀬「僕と…お付き合いして下さい!」
美琴「…ゴメン!」

 ○ざわつく社内。

美琴「アンタは優しくて、かっこよくて、イイヤツだけど…三好さん!」
三好「へ、俺!?」
美琴「わざわざこんな事までするその根性、気の強さ…好き❤」
三好「あっ!?」
広瀬「ええッ!?」
美琴「こないだは振ってゴメン。アタシと…結婚して❤」
三好「いやいやいや!!! ムリムリムリ!!!」
美琴「何でよ!! あんなに相性良かったじゃない!!」
三好「何の話!?」
美琴「三好美琴…ステキな響きー❤」
三好「だ…誰か助けてくれ!」
広瀬「何を今更」
三好「く、来るなオカマ!」
美琴「オカマに求婚してきたのは誰だったかしらー?」

 ○逃げる三好を追いかける美琴。

<終わり>
参考:LGBTのキャリアや働く環境について(CREATIVE VILLAGE)、等









































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三好と莉沙は僕もひどいと思ってます 本当はあと2人男女キャラ出してそれぞれとくっつける予定だったんですけど…忘れてました あんまり長いのもアレかなと思ったので

孝太郎と広瀬の関係ももっと掘り下げてよかったですね

あ、テーマパークやりわすれた~

あとがき
つーか毒親て今時古くないかい
莉沙の同僚の英語教師を出してそいつとくっつけて広瀬の同僚のヤンデレ女性と三好くっつけようと思ったけどヤンデレは悪くないんじゃないかなと思ってこのままにしました。三好と莉沙の出会いのくだりは無理矢理だったと思ってます。

この話は嫌いじゃないんだけど就職してるのが癪に障るので没

高校生か、それかフリーランスの建築家のほうがむしろいいのかな。でも建築家になるには3年は就職はしてないといけないし。まあその辺はファンタジーでもいいし、無免許でもいいか。あ、二級建築士なら就職したことなくてもいいんだっけ。

思い出した、この作品のテーマは「メンヘラでも優しい人は優しくしてくれるんじゃね?」だった
あと今読み返したら主人公の母親が全然出てこないのでその辺は書き足すかも
宗教とかやってて聞く耳持たないといいよな、現実的な話が通じないみたいな、統合失調症的な

ジャングルと東京を引っ掛けた台詞とかを書いてない気がする
ほかにも母親登場させたり 広瀬と母親の過去回想もっと色々やったりさ
母親が嘘ついて学校休ませるとかさ色々
あと広瀬の家(ワンルームマンションでよくね?)出したいし

 ○相合傘で帰る二人。



<終わり>
参考:LGBTのキャリアや働く環境について(CREATIVE VILLAGE)、等









































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