ウエスタンベースボール コメディ

プロ野球球団『日中ゴンドラズ』の二軍選手である山田一行はウエスタンリーグの試合へ向かうためバスへと乗り込む。 道中、バスは雷に打たれてしまう。 球場に到着すると対戦相手の選手は銃を持ったガンマンになっていた。 山田たちは雷によってパラレルワールドへと迷い込んでしまったのだった。 その世界で行われるウエスタンリーグの試合は野球とは似て非なるスポーツ。ボール代わりに実弾を使ったデスゲームだった。
市川家の乱 24 0 0 08/06
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第一稿

《登場人物》
山田正(40) ゴンドラズ二軍投手
森繁(22) ゴンドラズ二軍野手
今井(18) ゴンドラズ二軍投手
海豊(30) 台湾人。ゴンドラズ二軍野手
村中(33 ...続きを読む
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《登場人物》
山田正(40) ゴンドラズ二軍投手
森繁(22) ゴンドラズ二軍野手
今井(18) ゴンドラズ二軍投手
海豊(30) 台湾人。ゴンドラズ二軍野手
村中(33) ゴンドラズ捕手

愛内(50) ゴンドラズ二軍監督

運転手
審判
モブA、B、C

○ 『日中ゴンドラズ』練習場前
  バスが一台停まっている。
  『日中ゴンドラズ』の二軍選手ら、次々とやってきてバスへ乗り込んでいく。

○ 走るバス

○ バスの車内
  数人の選手、携帯モードのswitchでマリカーをしている。
  後部座席に座る山田正(40)、意気揚々とswitchを操作している。
山田「坂本、俺が1位になったら他の奴らをスターで威嚇しろ。安倍、赤甲羅がきたら俺の身替わりになれ」
  マリカー画面。山田の使用キャラ、1位になる。
山田「(ニヤリ)」
  が、ゴール直前で通信エラー。
山田「だァー!!」
  とswitchを放り投げる。
山田「また通信エラーじゃねえか」
  近くの席の海豊(30)、山田を見る。  
海豊「マササン機嫌ワルイ。ナニカアッタンデスカ」
山田「…ナニカアッタンデスカじゃねえよ。Wi-Fiもろくすっぽ繋がらねえバスなんかに選手を押し込めやがってよゥ」
  横で聞いていた今井(18)、
今井「監督たちはいいですよね。新幹線のグリーン車を使えるんですから」
山田「ったく偉そうにしやがってよゥ。二軍監督の分際で」
海豊「デモマササン、私達モ二軍ジャナイデスカ」
山田「…」
  前方の席で森繁(22)、静かに小難しそうな本を読んでいる。
今井「マサさん一軍の待遇ってやっぱりすごいんですか?」
山田「当たり前だよ。ホテルは一流。移動は常に飛行機とグリーン車。グリーンもグリーン。どす黒いまでのグリーンだよ」
今井「羨ましいです。僕も早く一軍にあがりたいです」
山田「(今井をちらと見)同じ投手としていうが、お前の一軍はあと10年はない」
今井「…」
    ×     ×     ×
  山田、寝ている。
  突如車内が暗くなる。
  読書していた森繁、顔をあげ、
森繁「(窓を見て)?」
  上空で雷の轟音がする。
  山田、目を覚ます。
山田「…?」
  ますます激しくなる雷の轟音。
  車内が真っ暗闇になる。
山田「(ビビる)お、おい…」
海豊「ナンデスカコレハ!」
  次の瞬間、バスに稲妻が落ちる。

○ 道
  道路脇に停車しているバス。

○ バスの車内
  運転手、座席の方へやってきて、
運転席「皆さん、大丈夫ですか?」
  と選手らを見渡す。
  どうやら全員無事のようだ。
  運転手、運転席に戻ると、バスを発進させる。
山田「(落ち着きを取り戻し)何だったんだ今の…」
森繁「…」

○ 『広島プーカーズ』二軍球場前
  山田、バスから降りる。
  先に降りた選手ら、棒立ちしている。
山田「…どうした?」
  山田、グラウンドを見て唖然とする。
  対戦相手の選手ら、西部劇よろしくウエスタンハットにダスターコートを身にまとった姿でグローブをつけ、グラウンドに立っている。
山田「な、何だァ?」
海豊「カウボーイガイマスネ」
  相手選手に目を凝らすと、腰にピストルの入ったホルスターを装着している。
今井「ピストルまで…」
  と愛内(50)、やってくる。
愛内「きたか」
山田「…監督、これって」
愛内「どうした。試合時間ギリギリだ。早く着替えろ」
山田「…」
  今井、監督の顔をまじまじと見る。
  今井、はっと声をあげる。
山田「何だ?」
今井「(取り乱し)監督の顔、微妙に違います」
山田「何いってる?」
今井「黒子の位置が違うんですよ。右頬のホクロが左にきています」
山田「知らん。監督の顔のホクロの位置なんかいちいち覚えてねえよ」
森繁「(今井へ)確かか?」
今井「間違いありません。観察眼には自信ありますから」
森繁「…」
山田「…つまり、どういうことだ?」
  と銃声。
  山田ら、驚いて振り返る。
  ピッチャーマウンドに立ったガンマンがキャッチャーに向かってピストルの弾を撃ち込んでいる。
山田「(動揺し)何してる?」
  キャッチャー、軽々と弾丸を受け止めている。
森繁「…どうやら我々はとんでもない世界に迷い込んでしまったようですね」

○ 同・ゴンドラズのロッカールーム
  山田をはじめ選手はパニック。
山田「何がどうなってるんだ!」
今井「きっと悪い夢ですよ」
海豊「夢カドウカ頬ヲツネレバワカリマス」
  海豊、自分の頬をつねる。
海豊「痛イデス」
  森繁、部屋の机の上にルールブックがおいてあるのを見つける。
森繁「(ルールブックを手に取る)」
海豊「マササンモツネッテミテクダサイ」
山田「うるせえ」
海豊「ツネッテミテクダサイヨ」
山田「(海豊の頬を思いきりつねる)」
海豊「イテテテテテ」
今井「ふざけてる場合ですか」
村中「そうですよ。こんなの絶対おかしいですよ」
山田「(ルールブックを読む森繁へ)おい。こんな時に読書か?」
森繁「試合のルールを確認してるんですよ」
山田「ふんッ。何が試合だ」
今井「そうですよ。そんなことよりこの状況を何とかしないと」
森繁「(本を閉じる)慌てたところで状況は変わりません。まずはこの現実を受け入れて客観的に物事を捉えていくことが大事です」
山田「…そうかい(と呆れる)」
今井「それで何かわかったんですか?」
森繁「ええ。この現実における野球のルールは我々がやっている野球のルールと変わりません」
山田「変わらないだ?」
森繁「ある一点を除いて。つまり、ルールの違いはたった一つ。ボールの代わりにピストルの弾丸を用いること。違いはそれだけのようですね」
山田「…バカバカしい」
  山田、出ていこうとする。
今井「どこへ?」
山田「決まってんだろ。バックレるんだよ」
海豊「イインデスカ?」
山田「ノコノコ試合に出るバカがいるか」
  山田、部屋から出ていく。
海豊「イッチャイマシタ…」
森繁「…」

○ 同・バックヤード
  のしのし歩く山田。
  山田、駐車場へのドアを開ける。
  山田、ドアの向こうへ出る。

○ 同・ゴンドラズのロッカールーム
  山田、入ってくる。
山田「??」
海豊「マササン?」
山田「(混乱し)どうなってんだ?」

○ 同・バックヤード
  のしのし歩く山田。
  山田、駐車場へのドアを開ける。
  山田、ドアの向こうへ出る。

○ 同・ゴンドラズのロッカールーム
  山田、入ってくる。
山田「…」
    ×    ×    ×
森繁「どうやら我々は球場の中に閉じ込められたようですね」
山田「おい。さっきから自分だけわかったような顔しやがって」
森繁「パラレルワールドですよ」
山田「あ?」
  森繁、自分のスポーツバッグを開けてみせる。
  中にガンマンの服とピストルが入っている。
  他の選手も自分のバッグを開ける。
村中「(あ然)そんな…ユニフォームが変わってる…」
森繁「つまり現実とは似て非なる世界に我々は迷い込んでしまった。そう考えるのが妥当でしょう」
今井「自分もそんな気がします」
山田「…そんなこと信じられるか」
森繁「信じる信じないは関係ありません。僕はただ目の前で起きている事実の積み重ねによって結論を出して…」
山田「うるせえ」
  山田、懲りずに出ていく。

○ 同・ゴンドラズのベンチ
  ガンマン姿に着替えたゴンドラズ選手。
  その中に山田もいる。
  愛内、やってくる。
愛内「(選手へ)先発は山田でいく」
山田「監督」
愛内「何だ」
山田「今日は休ませてください」
愛内「ダメだ」
山田「今井が投げたがってます」
今井「(ちょっ…)」
愛内「俺に指図する気か。先発はお前だ。一軍にあがりたければ結果を出すことだな」
山田「…」

○ 同・グラウンド
  審判の「プレイボール!」の声が響く。
  一回の表。ゴンドラズの攻撃。
  打席に立つのは森繁。
  森繁、バットを構える。
  マウンドの対戦投手、ホルスター付近に手を構え、早撃ち。
  捕手、事も無げに弾丸を受け止める。
森繁「…」
審判「ストライク!」
  森繁、あっけなく三振。

○ スコアボード
  一回の表に"0"の数字。

○ 同・ベンチ
愛内「(選手へ怒鳴る)何やってる?! なぜバットを振らん!」

○ 同・グラウンド
  山田、ピッチャーマウンドに立つ。
  捕手の村中、やってくる。
村中「マサさん。やっぱり無茶ですよ」
山田「しょうがねえだろ。球場から出れねえんだから」
村中「絶対コース外して下さいね」
山田「わかってるよ」
  村中、戻っていく。
  山田、ピストルを構える。
  怯える村中。
  山田、ピストルを撃つ。
  大暴投といえるくらいボールが逸れる。
審判「ボール!」
村中「(ほっとする)」
  と、愛内、ベンチから出てくる。
  愛内、ピッチャーマウンドへいく。
愛内「何のつもりだ?」
山田「いや、だって危ないでしょう」
愛内「今度ふざけた真似をしたら交代させるからな」
  愛内、ベンチへ戻る。
  山田、ピストルを構える。
  また大暴投。
審判「ボール!」
村中「(ほっとする)」
  山田、暴投。
審判「ボール!」
  山田、また暴投狙いで引き金を引くが、弾が出ない。
山田「??」
  山田、カチャカチャしていると弾が暴発する。
  暴発した弾が村中に直撃。
  村中、血を流して倒れる。

○ バス・車内
  山田、目覚める。
  山田、周りを見渡す。
山田「なんだ。夢か」
海豊「…夢デヨカッタ」
山田「え?」
海豊「エ?」
森繁「…球場につくと対戦相手がガンマンだった。逃げられずに勝負するハメになり、山田さんのピストルが暴発したことによって村中さんが撃たれた。そこで意識が飛び、目が覚めた」
山田「なんでわかった?」
森繁「(選手らへ)皆さんもそうですか?」
一同「(頷く)」
森繁「…夢にしては妙ですね。皆が同じ夢を見るなんて」
山田「何がいいたい?」
森繁「あまりいい予感がしません」
山田「あ? 夢だよ。今時はそうなんだ。何でもシェアする時代なんだ」
森繁「…」

○ 広島プーカーズ二軍球場前
  バス、停まる。
  降りてくる山田ら。
  愛内、やってくる。
愛内「どうした。試合時間ギリギリだ。早く着替えろ」
今井「(囁く)ほくろの位置が左です」
山田「あ?」
今井「本物の監督のほくろは右頬です。やっぱり逆ですよ」
  グランドから銃声が響き渡る。
山田「…」

○ 同・ロッカールーム
  山田ら、困惑している。
山田「何なんだこれは?」
森繁「…確証はありませんが、この世界では我々の誰かが死ぬとループが起きるのかも知れません」
山田「ループだと?」
森繁「誰かが死ぬとバスに戻って一からやり直しになる。そしてそれは死者が出る度に繰り返される」
山田「何でそんなことがわかるんだ。村中が死んだと何でいえる?」
今井「そうですよ。ループだってたまたまかもしれないじゃないですか」
森繁「推測ですよ。これまでの現象を見渡していったとき、死もしくは瀕死の重症によってループが起きる。そう考えるのが最も合理的です」
  村中、頭を抱える。
村中「悪い夢だ」
  山田、立ち上がり、
山田「よし。試合をボイコットするぞ」
今井「…そうですよ。選手だからって監督の命令に従うことはないんだ」
海豊「賛成デス」
山田「決まりだな」
森繁「自分は反対ですね」
山田「そうか。誰もとめんからお前だけ試合に出ればいい」
森繁「ここは正攻法で様子を見るのが最善かと。試合に出ることで脱出の糸口が見つかるかもしれません」
山田「正攻法もクソもあるか。おい、バリケード作るぞ。イスもってこい」
     ×    ×    ×
  椅子でドアが封鎖されている。
  外から愛内の怒鳴り声。
愛内の声「おい! 何やってるッ! 試合が始まるぞ!」
山田「(知らんぷり)」
    ×     ×    ×
  室内の時計は14時5分を指している。
  山田、手持ち無沙汰にピストルをくるくる回して遊んでいる。
館内アナウンス「…お客様にお知らせします。プレイボール開始後に日中ゴンドラズの選手がグラウンドに現れなかったため規定により没収試合とさせて頂きます」
  観客の大ブーイングが室内まで響く。
山田「終わったか」

○ 同・バックヤード
  山田を先頭に、選手ら、ぞろぞろと歩いている。
  山田、駐車場へと続くドアを開けると、奥へ進んでいく。

○ 同・ロッカールーム
  山田、入ってくる。
  ぞろぞろと他の選手らも入ってくる。
山田「…」

○ 同・バックヤード
  山田、別の出口へ向かう。
  山田、ドアを開けて入るが…

○ 同・ロッカールーム
  山田、出てくる。  
山田「(わめき散らす)おい! 試合は終わったんだ! さっさと出せ!」
  今井、入ってくる。
今井「向こうの出口もダメですね」
  海豊、入ってくる。
海豊「(がっかり)ダメデシタ」
山田「…」
     ×    ×     ×
  うなだれる選手ら。
  と、海豊、壁時計を見上げ、
海豊「時計…トマッテマスネ」
  時計の針が試合終了後の14時5分で止まっている。
  森繁、窓の外を見る。
森繁「おかしいですね。ゲーム終了から時間が経ったのに陽が落ちていません」
村中「(見て)本当だ…」
森繁「…没収試合という予期せぬ事態が発生した。それによって我々はこの世界に取り残された」
山田「何をいってる?」
森繁「仮説ですよ」
今井「要はRPGでいったら本来発生するはずだったイベントフラグをバグによってすり抜けてしまった。だから次のイベンドが起こらなくなったみたいなことですか?」
森繁「その通り」
山田「何だかわからねえが、じゃあ、どうすんだ? ずっとこのままか?」
一同「…」
  途方に暮れる一同の視線がテーブルへ向く。
  テーブルの上、キラリと光るピストル。
    ×    ×    ×
  ピストルを見つめる一同。
山田「村中、お前一回死んで慣れただろ。死んでくれ」
村中「…」
海豊「マササン。死ニタクナイノハミンナ同ジデス。ココハ平等ニ決メマショウ」
山田「仕方ない。ここはロシアンルーレットだ。ピストルに込められる弾は6発。ジャンケンに負けた6人がロシアンルーレットをするってのはどうだ?」
今井「何もそんなことしなくても…」
山田「冗談だよ」
森繁「いや、その方が案外スムーズに事が運ぶかもしれません」
    ×    ×    ×
  ジャンケンに負けた6人がひとかたまりになっている。
  山田、村中、海豊、モブA、モブB、モブCの6人だ。
山田「何で俺が…」
  森繁、ピストルのシリンダーに弾を一つ込めると、シリンダーを回す。
  森繁、ピストルを村中へ渡す。
森繁「最初は村中さんです」
村中「…」
  村中、ピストルをこめかみにあてる。
  なかなか撃てない。
村中「ダメだ」
山田「ビビってねえでさっさと撃っちまえ。死んだってどうせバスからやり直しだ」
村中「じゃあマサさんやってくださいよ!」
山田「俺の番は最後だ」
村中「(覚悟を決め、歯を食いしばる)」
  固唾をのむ一同。
村中「(引き金をひく)」
  弾は出ない。セーフだ。
村中「(天を仰ぐ)」
  モブAの番。
モブA「(撃つ)」
  セーフ。
モブB「(撃つ)」
  セーフ。
モブC「(撃つ)」
  セーフ。
森繁「残りは二回。確率は二分の一」
山田「(焦ってくる)」
  海豊、ピストルをこめかみにあてる。
海豊「(呻く)ウウーーー」
山田「(撃たれろ!)」
  海豊、引き金をひく。
  弾は出ない。セーフだ。
海豊「助カッタ…」
今井「マサさんで決まりですね…」
山田「…」
海豊「マササン、オネガイマス」
  とピストルを渡す。
山田「…ヤだ」
今井「マサさん?」
山田「ルール変更だ。ジャンケンで最後まで負けた奴だ」
  一同、あ然とする。
今井「何いってるんですか?」
山田「俺を撃ちたいんならお前らが撃て。自殺だけはできん。田舎の母ちゃんが泣く」
  山田、海豊からピストルを奪うと、他の選手に押しつける。
山田「どうした? 早く撃てよ!」
  一同、戸惑っている。
山田「撃てないならジャンケンだ」
森繁「…ではこうしましょう。マサさん以外でジャンケンをして負けた人間がマサさんを撃つということで」
山田「…」
     ×    ×    ×
  森繁、ピストルを手にしている。
森繁「321でいきますよ」
山田「頼む! もう一度やり直そう!」
森繁「321でいきます」
山田「(目をつぶる)」
森繁「3(発砲)」
  銃声が轟く。

○ バス・車内
  山田、はっと目覚める。
山田「(森繁へ)おい。よくも3で撃ちやがったな」
森繁「(涼しい顔で)これでも先輩思いなんですよ」
山田「(コイツ…)」
森繁「ともあれこれで死によってループが発生することが確定しました」
  山田、席を立つ。
山田「(運転手へ)おい! とめろ!」
  バス、停まる。
  山田、バスから降りる。
  降りた途端に入り口から現れる山田。
山田「なんだってんだ!」
海豊「…マササン。イイカゲン諦メマショウヨ」
山田「(ふてくされる)」

○ 広島プーカーズ二軍球場前
  バス、停まる。
  降りてくる山田ら。
  愛内、やってくる。
愛内「どうした。試合時間ギリギリだ。早く着替えろ」
今井「(囁く)ほくろの位置が左です」
山田「うるせえな。もう覚えたよ」

○ 同・ロッカールーム
  ゴンドラズの選手ら、輪になっている。
海豊「次ノ作戦ハナンデスカ?」
森繁「…仮にここから脱出できる条件があるとすれば、一人も死者を出さずに試合を終えること…でしょうね」
今井「しかも試合に勝たなきゃいけないとか」
森繁「それはあり得る」
山田「俺に策がある。没収試合に持ち込もう」
今井「ダメだったじゃないですか」
山田「話は最後まで聞け。要は試合に勝ちゃいいんだろ。相手をデッドボールで撃ち殺しまくって9人以下にすんだよ。そしたら試合続行不可で俺らの勝ちよ」
今井「そんな恐ろしいことできませんよ」
山田「仕方ねえだろ」
森繁「ムダなあがきだと思いますけど」
山田「お前は黙ってろ」
森繁「ここはやはり正攻法で…」
山田「今井、お前やれ」
今井「自分でやってくださいよ」

○ 同・グラウンド
  ピッチャーマウンドに山田。
  山田、それとなくバッターめがけてピストルをぶっ放す。
  バッター、流血して倒れる。
審判「デッドボール!」
  その瞬間、相手ベンチから二丁拳銃をぶっ放しながらグラウンドへ乱入する選手ら。
  乱闘という名の殺戮が始まる。
  山田、銃弾の雨の中、逃げまどう。

○ バスの車内
  選手ら、目を覚ます。
村中「…悪夢だ」
  山田、大きく一つ頷くと、
山田「これからは正攻法でいくぞ」
          
○ プーカーズ二軍球場・ロッカールーム
  作戦会議するゴンドラズ選手ら。
山田「何かいい作戦はないのか」
今井「…そもそもの話、キャッチャーが弾丸を受け止められなきゃ試合のしようがないですからね」
海豊「相手キャッチャー、スゴイデス。弾、バンバンウケトメテマシタ」
  森繁、ルールブックを読んでいる。
山田「(森繁へ)おい、そこに弾丸の捕り方、書いてねえのか」
森繁「これはルールブックです。書かれているのは野球規則だけです」
山田「(舌打ち)使えねえな」
森繁「(本を閉じ)そもそもの話、目視によって弾丸を受け止めることは物理的に不可能です」
山田「あたりめえだ。捕れてたまるか」
森繁「ということは発砲のタイミングを知らせるサインのようなものが必ずあるはずです」
今井「サインが出たタイミングでグローブを閉じる。そうすることで結果的に弾丸を捕ってるってことですか?」
森繁「そういうことです」
山田「それを見破って真似ればいいってことか?」
森繁「ええ」
山田「…今井、見つけろ」
今井「自分ですか?」
山田「そういうの得意なんだろ」

○ 同・グラウンド
  バッターボックスに村中。

○ 同・ベンチ
  今井、相手投手の仕草を観察する。

○ 同・グラウンド
  投手、ウインクし、発砲。
審判「ストライク!」

○ 同・ベンチ
今井「(わからない)」

○ 同・グラウンド
  投手、ウインクし、発砲。
審判「ストライク!」

○ 同・ベンチ
今井「(わからない)」

○ 同・グラウンド
  投手、ウインクし、発砲。
審判「ストライク! バッターアウト!」

○ 同・ベンチ
今井「(気づく)あーー!!」
    ×    ×    ×
森繁「なるほど。ウィンクでサインか」
海豊「イマイサン、ナイスデスネ」

○ 同・グラウンド
  山田のいるマウンドに集まる選手ら。
山田「(ボヤく)っくツイてねえよ。二軍になんか落ちなきゃこんな目に遭うこともなかったのに」
村中「マサさんは弾を撃つだけじゃないですか。こっちは命懸けなんですよ」
山田「うるせえな、危ないのは皆同じだ。お前だけ不幸面するな」
村中「(むっとして)気づいてないようだけど、最年長のマサさんが二軍にいるせいでみんな迷惑してるんですよ」
山田「あ?」
村中「…」
山田「なんだ。俺に文句か?」
海豊「マアマア。仲間割レハヤメマショウ」
山田「…」
  選手ら、守備位置へ戻っていく。
  山田、ピストルを構える。
山田「(いくぞ)」
村中「(…はい)」
山田「(ウィンク)」
村中「(ミットを閉じる)」
山田「(発砲)」
  目を閉じる村中。
  目を開けると、ミットの中に弾丸が収まっている。
審判「ストライク!」
村中「…捕れた!」
山田「マジでか…」
  ピッチャーマウンドに集まる選手ら。
村中「やった! 捕れました!」
海豊「ヨカッタ」
森繁「これで第一関門は突破ですね。次の問題は打撃ですが…」

○ 同・グラウンド
  相手投手、ウィンクし、発砲。
  海豊、タイミングを見てバットを振る。 
  弾がバットに当たる。
海豊「当タッタ!」
      ×   ×    ×
  ゴンドラズの選手、打ちまくる。
  ヒットの嵐。
  森繁、ホームランを打つ。
森繁「なるほど。カラクリさえわかれば打てるものですね」
 
○ 同・スコアボード
  9回裏、7対5。
  ゴンドラズのリード。

○ 同・グラウンド
  山田のいるマウンドに選手らが集まる。
山田「気合いを入れろ」
選手ら「はい」
海豊「アト一人デスネ」
山田「こんなチャンスはもうないと思え。最後まで気を抜くなよ」
海豊「ワカリマシタ」
  一同、気合いが入る。
村中「そうやっていつも引っぱってくれればいいんですけどね」
山田「あ?」
村中「今のマサさん、少し頼もしいです」
山田「…うるせえ(照れる)」
  と、相手監督、出てくる。
  審判に何か告げる。
アナウンス「選手の交代をお知らせします。代打、藤江ーー」

○ 同・ベンチ
  今井、藤江を見て息をのむ。

○ 同・グラウンド
  藤江、貫禄を醸し出してバッターボックスに立つ。
山田「…一軍の四番打者が相手ってわけか」
  山田、ウィンクし、撃つ。
  藤江、打つ。
  弾丸は大きく伸びて、逆転サヨナラホームラン。
審判「ゲームセット!」
  うなだれる山田。
  突然、辺りが暗くなる。
山田「なんだ?」
森繁「試合終了はこれが初めて。何が起こるかわかりません」
山田「どうなっちまうんだ?!」
  次第に真っ暗になる。
海豊「アア闇二ノミコマレテユクーーー!」

○ バス・車内
  選手一同、目を覚ます。
  選手ら、顔面蒼白で荒い息を吐いている。
森繁「…やはり試合に勝つ必要がありますね」

  以下カットバック

○ プーカーズ二軍球場・グラウンド
  藤江、ホームランをかっ飛ばす。
  辺りが暗くなる。

○  同・グラウンド
  藤江、ホームランをかっ飛ばす。
  辺りが暗くなる。

○ 同・グラウンド
  山田、ウィンクし、撃つ。
  藤江、デッドボール。
山田「(しまった!)」

○ 同・相手ベンチ
  二丁拳銃の選手らがピストルをぶっ放しながらベンチから出てくる。

  カットバック終わり

○ 同・ロッカールーム
  選手ら、輪になっている。
山田「今回こそ決めるぞ」
海豊「ソノセリフ、モウキキアキマシタヨ」
森繁「211回目ですね」
山田「うるせえな。今度こそはマジだ」

○ プーカーズ二軍球場・グラウンド
審判「プレイボール!」
  バッターボックスに森繁。
  相手投手、ウィンクし、撃つ。
審判「ストライク!」

○ 同・ベンチ
  選手ら、話している。
山田「いいか。藤江をどう抑えるか。その方法さえわかれば勝てる試合なんだ」
選手ら「はい」

○ 同・グラウンド
  山田、ウィンクし、撃つ。
審判「ストライク! バッターアウト!」
  順調に三振を重ねていく。

○ 同・スコアボード
  3回表。
  0対0の表示。

○ 同・グラウンド
  ランナー塁。
  バッターボックスに森繁。
  相手投手、ウィンクし、撃つ。
  森繁、打つ。
  打球はセンター前へ。

○ 同・スコアボード
  4回裏。
  1対0でゴンドラズのリード。

○ 同・ベンチ
  湧き上がるナイン。
山田「しゃー。まずは一点」

○ 同・グラウンド
  相手バッター、打つ。
  三塁に転がる弾丸。
  森繁、弾丸を拾う。
  森繁、ウィンクし、撃つ。
  一塁手、見事に弾丸を受け止める。
審判「アウト!」
山田「ナイスだ!」

○ 同・スコアボード
  6回表。
  4対1でゴンドラズのリード。

○ 同・グラウンド
  ツーアウト2、3塁。
  山田、ウィンクし、撃つ。
  バッター、打つ。
  弾は二塁方向へ飛んでいく。
  弾の行く先に海豊。
  強烈な日差しが照りつける。
海豊「(マ、眩シイ)」
  海豊、弾を見失う。
  弾が海豊の目の前に落ちる。
  ランナー、次々とホームインする。
山田「何してる?! さっさと弾を拾え!」
  が、海豊、弾を完全に見失っている。
  走る打者。
山田「どうした! 弾を拾え!」
  海豊、やっと弾を見つける。
  焦った海豊、ウィンクをせず、打者の向かう三塁へ発砲してしまう。
山田「バカ!」
  不意をつかれた三塁の森繁、ピストルの弾をモロに食らう。
山田「クソ! やっちまった!」 
  と目を閉じる山田。
山田「…?」   
  血を流す森繁のもとへ駆け寄る選手ら。
森繁「(呻く)」
山田「森繁、大丈夫か」
村中「急所を外れたのでしょうか。まだ息がありますね」
山田「…しかし、こうなっちゃ試合は終わりだ。またやり直しだろう」
森繁「…いえ、試合を続けてください」
山田「だけどよぅ」
森繁「我々はプロです…二軍といえども…」
山田「…」
森繁「…マサさん。まだ終わってない試合を投げ出すなんてプロとしてあるまじき行為ですよ」
山田「…森繁」
森繁「僕は大丈夫ですから…最後まで試合を続けてください」
山田「…」

○ 同・スコアボード
  0行進が続いてゆく。

○ 同・ベンチ
  重体の森繁、寄り添う今井に何かを訴える。
今井「…森繁さん?」
    ×   ×    ×
  守備を終えて戻ってくる選手らへ、
今井「マサさん! 森繁さんが藤江さんの攻略法を思いついたと」
山田「何だと?」
森繁「(力を振り絞って)…ウィンクの…」
今井「(森繁へ顔をよせる)何ですか?」
山田「おい、何ていってる?」
  森繁、今井の耳元へ、
森繁「…サイン…を…変更…んだ」
山田「森繁! 死ぬな!」
海豊「アアー私ノセイダ。森繁サン、死ンダラダメデス」
  森繁、意識を失う。
山田「…これまでか」
  が、試合は続く。
山田「…?」
今井「森繁さん、まだ息をしてます…」
海豊「ヨカッタ。マダ死ンデナイ」
山田「それで、奴はなんて言ってた?」
今井「すみません、よく聞き取れなかったんですが、ウィンクのサインをヘンコウンダ、とか…」
山田「ウィンクのサインをヘンコウンダ?」
村中「…わかりませんね」
山田「しかたない。これまで森繁の頭脳に頼りっぱなしだった。ここは俺たちで乗り越えるんだ」
選手ら「はい」
山田「今井、ダイイングメッセージの解読はお前に任せた」
今井「…まだ死んでませんけどね」

○ 同・スコアボード
  9回裏。
  5対3でゴンドラズのリード。

○ 同・グラウンド
  ランナー1、2塁。
  一発が出ればサヨナラの場面。
  相手監督、出てくる。
  審判に何か告げる。
アナウンス「選手の交代をお知らせします。代打藤江…」  
  現れた藤江、バットを力強くぶんぶん振る。
     ×    ×    ×
  マウンドに集まる選手ら。
村中「マサさん、勝てば元の世界に戻れるんですよね」
山田「そう信じるしかねえよ」
  選手ら、散らばる。
  山田、ピストルを構える。
  山田、ウィンクし、撃つ。
  藤江、打つ。
  打球が大きく飛ぶ。
山田「(しまった!)」
  弾はポールの外側へ飛んでゆきわずかにファール。
山田「(ほっとする)」

○ 同・マウンド
  集まる選手ら。
村中「マサさん…」
山田「くそっ。どこに撃っても打たれる気がする」

○ 同・ベンチ
  今井、考えている。
今井「サインをヘンコウンダ…ヘンコウンダ…変更うんだ…変更するんだ」
  今井、思わず立ち上がる。
今井「あーー!」

○ 同・マウンド
  今井、駆けつける。
今井「森繁さんのダイイングメッセージは…死んでませんけど。ウィンクのサインを変更するんだです。ウィンクに拘ることはなかったんですよ」
山田「盲点だな」
海豊「ナルホドデス」
山田「それなら話は早い。サインを変えよう」
村中「この土壇場でですか?」
山田「厳しいか?」
村中「いえ。やりましょう」
今井「でも、サインはどうしましょう」
山田「…こういうのはどうだ?」
  山田、舌なめずりをする。
村中「タイミングが取りにくいかと」
山田「ダメか」
  審判、やってくる。
審判「何をしてる。早くしなさい」
海豊「…コウイウノハドウデス?」
  海豊、舌をべーっと出す。
山田「…いや…それは…」

○ 同・グラウンド
  山田、あっかんべーをする。
  山田、撃つ。
  藤江、見逃す。
審判「ストライク!」
山田「…あと一球」
  山田、あっかんべーをする。
  山田、撃つ。
  藤江、打つ。
  打球はファール。
山田「早速対応されたか…」

○ 同・マウンド
  選手ら、再び集まる。
村中「読まれてますね…」
海豊「ドウスルンデスカ」
山田「(ふいに)なァ。ここにきてから笑ったことがあるか?」
一同「…」
山田「いや、ここにきてからというより、二軍に落っこちてからだ。ふてくされて、ぶーたれて、ろくに練習もしないでマリカーばかりだ」
海豊「マササン?」
村中「どうしたんですか?」
山田「まァきいてくれ。振り返ると、年長者として手本とならなきゃいけない俺がふんぞり返ってチームの足を引っ張ってた。悪かったと思ってる」
村中「そんな…否定はしないですけど」
海豊「ソウデスヨ。シンミリスルノハマダ早イデス」
山田「いや、そうじゃない」
一同「…?」
山田「決めたよ。最後のサインを」

○ 同・グラウンド
  山田、ピストルを構える。
山田「(ニヤリと笑う)」
  そう。
  サインは笑顔。
  藤江、一瞬、気を取られる。
  山田、発砲。
  藤江、それでもバットをふる。
  弾がセンター方向へ飛ぶ。
山田「センター!」
  が、センター、完全に弾を見失っている。
  弾が落ちるかと思った瞬間、海豊がカバーに入る。
  弾に飛びつく海豊。
山田「海豊!」
  海豊、グローブをかざす。
海豊「…捕レマシタ」
試合「ゲームセット!」
  選手ら、喜び合う。
  山田は、ふとベンチに駆け寄る。
  瀕死の森繁へ、
山田「森繁! 勝ったぞ! 俺たちは勝ったんだ!」
  森繁、返事がない。
山田「森繁! 森繁!」

○ バス・車内
  目覚める選手ら。
山田「…」

○ プーカーズ二軍球場・外
  バスから選手ら、降りてくる。
  愛内、待ちかまえている。
愛内「どうした。試合時間ギリギリだ。早く着替えろ」
  今井、監督の顔をまじまじと見る。
  今井、はっと声をあげる。
山田「…?」
今井「監督の顔のほくろ、逆の逆です」
山田「…」
今井「逆の逆は本物ってことですよ」
山田「…本物?」
海豊「(思わず)ア!」
  グラウンドを見下ろす海豊。
  ユニフォーム姿のプーカーズが投球練習をしている。
  パシっという硬球のグローブに収まる心地よい音が響く。
今井「戻ってこれたんだ!」
海豊「ヤッター!」
  大喜びする選手ら。
森繁「マサさん。やりましたね」
山田「…ああ。お前のおかげだ」
森繁「いえ、最後の試合で僕は役に立っていません。チームを引っ張りあげたマサさんの手柄です」
山田「(ふっと笑う)」

○ 同・グラウンド
  ガラガラのスタンド。
  ゴンドラズの選手ら、円陣を組む。
山田「気合いをいれろ!」
選手ら「はい!」
山田「ベンチも声出してけ!」
選手ら「うす!」
山田「いくぞ!」
選手ら「おう!」
  選手らの頭上に晴れ渡った青空が広がっている。

(おわり)

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