売るワシのシルクハット ドラマ

ある日突然家に届いたシルクハット。その裏にはおじいちゃんのおばあちゃんへの愛が隠されていた。
小林彩花 32 0 0 10/22
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第一稿

 人 物

高村いお(75)
高村修造(亨年75)いおの夫
大津かよ(52)いおの娘
春日舞(27)かよの娘。主婦
大津凛(19)かよの娘。フリーター
笹川守(35) ...続きを読む
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 人 物

高村いお(75)
高村修造(亨年75)いおの夫
大津かよ(52)いおの娘
春日舞(27)かよの娘。主婦
大津凛(19)かよの娘。フリーター
笹川守(35)メルカウ取引相手



○高村家・外観(夕)
   『故 高村修造 儀』と書かれた門標が立てかけられている。

○高村家・台所(夕)
   喪服を着た大津かよ(52)、春日舞(27)が湯のみを拭いている。
舞「おばあちゃん、大丈夫かな」
   みよ、右手を左右に振りながら、
かよ「おばあちゃん、清々してるのよ」
舞「え?」
かよ「だっておじいちゃん」

○高村家・和室(夕)
   派手なアロハシャツを着て、にかっと笑った高村修造(亨年75)の遺影を眺めている喪服姿の高村いお(75)
   廊下を走る足音。舞が入ってくる。
   舞、修造のタンスを開けると中は空。
舞「…」  
いお「ついこの間までおじいちゃんの宝物で
いっぱいだったんだけどねぇ」
かよが入ってくる。
かよ「まったく最後まで本当勝手なんだから」
舞「…知らなかった」
いお「舞ちゃんは早くに東京に行っちゃった
からねぇ」
かよ「おじいちゃんがあんなになったのは、
仕事引退してからのことだもんね」
   大津凛(19)が後ろでクスクス笑う。
凛「あんなって!故人を悪く言うもんじゃないよ?ファンキーでいいじゃん」
   かよ、凛に向かって右手を左右に大きく振って制止する。
   凛、不服そうに頷いて、視線を手元の
スマホにうつす。
かよ「余命が近いってわかったもんだから、
馬券にでも換えてすっちゃったんでしょ
うね」
   いお、修造の遺影を無言で見つめる。
○高村家・玄関(夜)
   かよ、凛、靴を履いている。
かよ「それじゃまた来るから」
いお「心配しなくて大丈夫。しばらくの間、舞ちゃんだっていてくれるんだから」
かよ「でも、何かあったらすぐ連絡してよ」
いお「はいはい」
   かよ、凛、手を振り帰って行く。

○高村家・外観(朝)
   停まっていた宅配便のトラックが走り去る。

○高村家・台所(朝)
   いお、テレビを見ている。
   舞、荷物を持ってやってくる。
舞「これ、おじいちゃん宛みたい」
いお「へぇ?なんだろね?開けてみようか」
   舞、頷いて箱を開けると、中には質の
良いシルクハットが入っている。
いお「これまたハイカラな帽子だねぇ」
   舞、箱から帽子を取り出すと、小さな紙がひらひらと床に落ちる。
   舞、紙を拾い、読み上げる。
舞「shuzoiさま。このたびは素敵なお品をお
譲り頂き、有難うございます。しかしこの
ような大切なお品を頂くわけにはいきませ
ん。お代はご返金頂かなくて結構です。い
つもお世話になっているお礼としてお納め
ください。mamorunrun…だって」
   舞、箱に貼られた伝票を読み上げる。
舞「笹川守…さん。知ってる?」
いお「知らないねぇ」
   舞、もう一度伝票を見る。
舞「メルカウ…フリマアプリだ」
いお「ふりまあぷり?」

○大津家・外観

○大津家・凛の部屋
   凛ベッドに寝転んで雑誌を読んでいる。
   舞、床に座って、凛を見ている。
凛「舞ちゃんが私を訪ねてくるなんて珍しい」
舞「フリマアプリでおじいちゃんのもの売っ
たの、凛ちゃん?」
凛「あぁ、メルカウ?はまっちゃったね、お
じいちゃん。あの歳で飲み込み早くてさ。
やっぱファンキーだよ」
舞「え、何?おじいちゃんが自分で売ったの?」
凛「私だって代理出品できる程暇じゃないよ」
   舞、溜息をつく。
凛「なに? 言いたいことあるなら言ってよ」
舞「おじいちゃんのタンスの中見たでしょ?
全部売っちゃったんだよ、おじいちゃん」
凛「うん…え?自分で自分のもの売って何が
悪いの?」
舞「おばあちゃんには何も遺らないの」
凛「うん…え?おばあちゃんあの金ぴかコレ
クション欲しかったの?」
舞「違うよ。コレクション買うのにおじいち
ゃん、お金相当つぎ込んでおばあちゃんに
苦労させたんだってよ」
凛「うん…で今度はおばあちゃんがあれ売っ
 て自分の財産にしたかった、ってこと?」
舞「そういうわけじゃないけどさ」
凛「よくわかんないな。私はただおじいちゃ
んに頼まれてメルカウの使い方教えただけ」
舞「頼まれて?」
凛「そ、スマホ買ったからってさ」
舞「え、おじいちゃん、スマホ持ってるの?」

○高村家・和室
   舞、タンスを開けて何かを探している。
いおがやってくる。
いお「舞ちゃん。何してるの?」
舞「おじいちゃんってスマホ持ってたの?」
いお「すまほ?」
舞「(自分のスマホを見せ)こういうの」
いお「あぁ!持ってたよ。ほら?」
   いお、引き出しから、スマホを出す。
   舞、電源を入れメルカウアプリを開く。
   取引履歴にmamorunrunを見つける。

○カフェ・店内
   舞、小太りの笹川守(35)と向き合って座っている。
守「そうですか…shuzoiさん…もう…」
舞「あの…mamorunrunさん」
守「笹川です。Shuzoiさんにはいつもrunrunって呼ばれてたんですけどね。はは」
舞「あのshuzoiって」
守「あぁ。奥さん、いおさんっていうんですよね?修造といお、合わせてshuzoiだって」
   守、ナプキンにshuzoiと書いて
守「逆から読むと、ほら」
舞「それでshuzoi!あの…あの帽子は何で」
守「あぁ。僕も購入後に知ったんですけど、
Shuzoiさん、あれを被っていおさんとクル
ーズに行く予定だったそうなんです」
舞「え、クルーズ?」
守「やっぱり聞いてないですか?」
舞「えっと…はい…」
守「そうか…それじゃshuzoiさんの気持ちが
報われない。舞さん、聞いてくれますか」

○高村家・台所(夕)
   いお、テレビを見ている。
   玄関の開く音がして、舞がやってくる。
いお「舞ちゃんおかえり。(箱を指さしながら)また届いたの」
   舞が箱を開けると、中には上質なドレスが入っている。
   舞、メルカウの取引履歴を開くと、ドレスの購入履歴がある。購入後に『購入キャンセル希望』のメッセージを送っているが、有効期限が切れている。
舞「これ、着てみてよおばあちゃん」
いお「へ?」

○高村家・和室
   凛、かよが座って待っている。
   ばっとふすまが開いて、ドレスを着たいおが恥ずかしそうに入ってくる。
凛「おばあちゃん!いいじゃーん!!」
かよ「本当。お母さん、素敵!似合うわね」
いお「なんだか、恥ずかしいよ…」
   舞、いおの背中を押して、修造の遺影の前に立たせる。
舞「どう?おじいちゃん」
凛「(修造の声色を真似して)さすがワシの愛
した女だ。よう似合っとる!」
  一同、笑う。
   いお、遺影にシルクハットを被せる。
凛「自分の宝物を売ったお金でおばあちゃんとクルーズに行こうなんて、おじいちゃん、やっぱりファンキー!」
かよ「約束してたの?」
いお「前にテレビでやってたクルーズ特集を
一緒に見てた時、行きたいって言ったのよ。
嫌みの一つでも言ってやるつもりで」
かよ「なるほど」
凛「でも何でその帽子、売ろうとしたんだろ?」
かよ「思っていたよりも余命が短くて、自分が一緒に行けないとわかったから、かな」
舞「そりゃまた自己中心的な…」
いお「それがおじいちゃんの可愛いところよ」
かよ「あれでいてお父さん、お母さんのこと
大好きだから。自分が一緒に行きたかった
んでしょう」
凛「でもさ、クルーズに行くために貯めたお
金はどこに消えたんだろう?」
   舞、修造のスマホのメルカウの売上・振込申請画面を皆に見せる。売上全ていおの口座に振込済みになっている。
   いお、タンスから通帳を取り出す。
残高の横の欄に汚い字で【ワシの愛す女へ!ありがとう】と書かれている。
凛「おじいちゃん、やっぱりファンキー!」
   いお、舞、凛、かよ、笑って高村の遺
影を眺める。

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