エア婚 恋愛

無職で引き籠る直江修司(30)の家のエアコンの修理に来た福田理沙(27)は、その部屋のあまりの惨状に驚愕する。
マヤマ 山本 6 0 0 04/13
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第一稿

<登場人物>
福田 理沙(27)修理業者
直江 修司(30)無職

上木  (29)理沙の婚約者
直江の母



<本編> 
○メインタイトル『エア婚』

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<登場人物>
福田 理沙(27)修理業者
直江 修司(30)無職

上木  (29)理沙の婚約者
直江の母



<本編> 
○メインタイトル『エア婚』

○アパート・外観
   「直江」と書かれたポストにはチラシが大量に詰まっている。

○同・直江の部屋
   足の踏み場もないほど散らかり放題の室内。寝転がる直江修司(30)。エアコンのリモコンを押すが、反応しないエアコン。
直江「……」
    ×     ×     ×
   インターホンの音。
理沙の声「エアコンの修理に伺いました~」
   玄関にやってきて扉を開ける直江。ただしドアチェーンを付けた状態。扉の外に立つ福田理沙(27)。
理沙「(ドアチェーンを見て)? あの……直江様、ですよね?」
   一度扉を閉め、チェーンを外す直江。
理沙「すみません、お邪魔いたしま……(室内の惨状を見て)え!?」
直江「……もう靴のままでもいいですよ」
理沙「いや、そういう訳には……え~……」
    ×     ×     ×
   足の踏み場がある程度には片付いた室内。中身の詰まったゴミ袋を手に持った理沙と、部屋の隅に座る直江。
理沙「さて、と。やっとスタートラインか」
   申し訳なさそうに軽く頭を下げる直江。
理沙「(エアコンの調子を見ながら)なるほどな……。室外機って、ベランダですか?」
   頷く直江。
理沙「では、ベランダ失礼しますね」
   カーテンを開ける理沙。窓から見えるベランダ、やはりゴミの山。
理沙「う~わ~」
   直江を見やる理沙。目をそらす直江。
    ×     ×     ×
   片付いたベランダ。
   稼働するエアコン。それを見ている直江と理沙。
理沙「(疲れた様子で)直りました……」
   軽く頭を下げる直江。
理沙「(エアコンを指し)あと、吹き出し口の羽の部分がそろそろ経年劣化っぽいんですけど、ついでに交換します?」
直江「(目も合わせず)結構です」
理沙「そう、ですか……。では(書類を出し)コチラにサインをお願いします」
直江「……ペン、ありますか?」
理沙「あぁ、はい。(ペンを渡し)どうぞ」

○アパート・外観

○同・直江の部屋
   扉を開ける直江。ただしドアチェーンを付けた状態。扉の外に立つ理沙。
理沙「エアコンの修理に伺いました」
    ×     ×     ×
   エアコンの修理をする理沙とその様子を見ている直江。エアコンの吹き出し口の羽が割れている。
理沙「(小声で)だから前に言ったのに……」
直江「……何か言いました?」
理沙「いえ、何でも」
直江「いいですよ。バカにしたければ、すればいい」
理沙「いや、別にそこまで……」
直江「どうせ『働かない男なんて』って思っているんでしょ? こっちだって、好きで引き籠ってる訳じゃないんだ」
理沙「思いませんよ、そんな事」
直江「……」
理沙「私だって、働かなくても生きていけるなら、働きませんよ。ただ……」
直江「ただ?」
理沙「『働いていない自分』が嫌なら、働くか、好きになるか、どっちかにした方がいいんじゃないですかね?」
直江「……選んでいいんですかね?」
理沙「選ぶくらい、いいんじゃないですか? (作業を終え)はい、終了です」

○直江の実家・外観
   一軒家。
   インターホンの音。

○同・玄関
   扉を開ける直江。そこに立つ理沙。
理沙「エアコンの修理に伺いま……え?」
直江「……実家です」
理沙「あ、なるほど……」

○同・居間
   直江に連れられ入ってくる理沙。
   そこに立っている直江の両親。
理沙「失礼いたします」
直江「……両親です」
直江の母「修司の母です。息子がいつもお世話になって」
理沙「? あの、エアコンはどちらに?」
直江の母「あぁ、コッチです。それにしても、まさかこんな日が来るなんて……」
理沙の声「いや~、参りましたね」

○同・玄関
   帰り支度をする理沙を見送る直江。
理沙「お母さん、完全に勘違いされてて。ちゃんと言っておいてくださいよ?」
直江「……勘違いじゃないです」
理沙「え?」
直江「福田さん。僕が再就職できたら、結婚してくれませんか?」
理沙「はい? け、結婚? もう、からかわないでくださいよ」
直江「僕は本気です。お願いします」
   頭を下げる直江。
理沙「……私、婚約者がいるんで」
直江「……そう、ですか」
理沙「この仕事も、もうすぐ辞めるんで。……さようなら」
   出ていく理沙。

○同・外
   鼓動を確認する理沙。

○上木家・外観
   おしゃれな一軒家。

○同・リビング
   笑顔で食卓を囲む理沙と上木(29)。

○同・外観
理沙の声「どういうつもり!?」

○同・寝室
   裸で正座する上木を見下ろす妊婦姿の理沙。ベッドには裸の女もいる。
理沙「私が実家に帰ってる間に女連れ込んで。信じらんない!」
上木「……っせぇな」
理沙「え?」
上木「こっちはお前の分まで外で働いてんだよ。これくらい良いだろ」
理沙「何それ。浮気しといて逆ギレ?」

○同・リビング
   テーブルの上に置かれた、理沙の名前が記入された離婚届と指輪。

○理沙の実家・外観

○同・リビング
   求人誌を手にスマホで通話中の理沙。
理沙「はい、はい。そうですか……わかりました。失礼いたします」
   通話を切り、求人誌にバツ印を付ける理沙。その近くで泣きわめく理沙。
理沙「もう、どうしたの?」
   部屋のエアコンの異常に気付く理沙。
    ×     ×     ×
   家計簿をつける理沙。頭を抱える。
理沙「あーあ、もう……」
   忌々し気にエアコンを見つめる理沙。
理沙「部品さえあれば、自分やるのに……」
   インターホンの音。
直江の声「エアコンの修理に伺いました」

○同・玄関
   扉を開ける理沙。そこに立っている、修理業者姿の直江。
理沙「すみません、よろしくお願いします」
直江「……お久しぶりです」
理沙「? (思い出し)直江さん!?」

○同・リビング
   エアコンの修理を終える直江。その様子を見ている理沙。
直江「作業、終わりました。どうでした?」
理沙「うん。完璧だと思います」
直江「良かった。では、コチラにサインをお願いします」
理沙「は~い」
   理沙に婚姻届けを手渡す直江。
理沙「え……?」
直江「……覚えてますか? 『再就職できたら、結婚してください』って話」
理沙「覚えてます。覚えてますけど、あの時、お断りしたハズじゃ……?」
直江「でも、それで僕が諦めるか諦めないか、選ぶくらい良いんじゃないですか」
理沙「……」
直江「お願いします」
   頭を下げる直江。
理沙「直江さん」
直江「はい」
理沙「……ペン、あります?」
                  (完)

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