その時はきっと、最高だ 日常

コロナウイルスが流行する世の中、 カップルの日常を描いた、 人々の不安にそっと寄り添う物語。 ※ZOOM撮影ものです
おの ゆう 17 0 0 04/26
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第一稿

『その時はきっと最高だ』

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登場人物
・彼(25)
・彼女(28)

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ZOOM にてお互いの部屋 (夜)

ZOOM が繋がり、2人の顔が画 ...続きを読む
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『その時はきっと最高だ』

***
登場人物
・彼(25)
・彼女(28)

***

ZOOM にてお互いの部屋 (夜)

ZOOM が繋がり、2人の顔が画面に映る。
彼、スーツを着ていて、椅子に座りながら、机に置いたパソコンでズームをしている。
彼女、を部屋着を着ていて少し化粧をしている。床に座りながら、テーブルにご飯を準備し携帯でズームをしている。
2人はZOOM が繋がった事に対して、久々にお互いの顔を見れた事に喜ぶ。

彼「ごめんね、まったよね、ほんとごめんね」
彼女「ううん、大丈夫」
彼「あれ待って、ご飯準備してる?」
彼女「そりゃそうだよ。19時(7時)から一緒に食べるって約束したでしょ」
彼「そう!まてよ、今…」
彼女「20時(8時)」
彼「本当ごめんね」
彼女「仕方ないよ、仕事だし。会議、結構長かったね。」
彼「2時間ちょっとくらいかな。うちみたいな中小企業はさ、
  こんな時にもどうにかして稼いで行かないといけないから。」

彼女は真剣な表情でウンウンと頷ずきながら、
少しずつ笑顔になっていく。

彼「何?」
彼女「え?」
彼「何で笑ってんの。」
彼女「スーツがお似合いだなあと思いまして」
彼「やった。嬉しい」
彼女「我が彼氏ながら、素晴らしい」
彼「じゃあ俺からサプライズ良い?」
彼女「え、なになに。」

彼はゆっくりと画面から居なくなる。
ささっと椅子の後ろに立つと、上半身はビシッとスーツを着ているが
下半身は派手なボクサーショーツをはいている。
彼女、驚いた顔をし、声を殺して大爆笑する。

彼「待って、これで終わりじゃないから」
彼女「何?」

彼、ゆっくりと片足を持ち上げると、モコモコの靴下をはいている。
彼女、大爆笑する。
彼もつられて笑う。

彼女「そんな間抜けな格好で会議出てるの?」
彼「そうだよ。」

彼、再び椅子に座って真面目な顔をしたり、立ち上がったりして彼女を笑わせる。

彼女「面白すぎる。天才だよ。」
彼「会社の人にはバレてないんだよ」
彼女「バレたら大変だよ、笑い者になるよ」
彼「笑顔を提供しようかな」
彼女「え、良いと思う」
彼「いや、止めて、そこは彼女として止めて」

二人、笑い合う

彼「あ、ごめん!ご飯持ってくるから待ってて」
彼女「おっけー」

彼、画面から居なくなる

彼女「あ!ちょっと待って」

彼、画面に戻ってくる

彼女「ちゃんとズボン履いてきて」

彼、わかったよと笑いながら画面から居なくなる。
彼女、テーブルに置いてあったご飯のお皿を手に取り、画面から居なくなる。遠くから彼女の鼻歌と電子レンジを使う音がする。
彼女、画面内に戻ってくると、じっと画面を見つめ髪を整えたり、アイラインを気にしたり、リップクリームを塗り始める。
そこに彼が部屋着に着替えを済ませ、ご飯を持って画面内に戻ってくる。

彼「何、化粧してるの?」
彼女「まあ、少し可愛く映る程度にはしますよ」

彼、画面を覗き込む。
彼女、かわい子ぶった表情を見せる。

彼「はいはい、いつも可愛いね」
彼女「は?めっちゃ適当じゃん」
彼「そんな事ないよ」
彼女「・・・」
彼「見て、ちゃんと着替えた」
彼女「へ~」
彼「めっちゃ適当じゃん」
彼女「真似すんな」
彼「真似すんな」
彼女「あのね、可愛くする努力されなくなったら終わりだからね」
彼「わかったよ、いつもありがとう」
彼女「・・・まあ、今日は許すよ」
彼「ありがとう」
彼女「はい!じゃあ食べましょうか」
彼「はい、せーの」
彼・彼女「いただきます」

2人、食べ始める。

彼女「何食べてるの?」
彼「カップ麺、そっちは?」
彼女「本日は麻婆茄子です」
彼「うわ、うまそ~。いい匂いする気がする。」

彼女、料理を画面に映し、説明を話し始める。
彼、微笑んで聞いている。

彼「俺にも作ってほしいなあ」
彼女「そうだねえ。いつになるかなあ」
彼「う~ん。とりあえず5/6までじゃない?」
彼女「う~ん、本当いつになるんだろうね」
彼「今日は?何してたの?」
彼女「今日はね、まず8時に起きて、朝ごはんにフレンチトーストを焼いたでしょ。
   で、会社のメールを確認して、週明けに発送する商品を梱包して、
   あとは掃除機して、洗濯して、お昼はお腹すかなかったから食べなかったんだけど
   3時にポテトチップス食べちゃって、また商品を梱包して、
   テレビ見て、で、夕飯の準備しながら、お母さんと電話してた。」
彼「商品持って帰ってきてるの?」
彼女「そう。少しだけどね。接客業だからさ、今できることはお店で売ってたオイルとかを、通販で売ったり。」
彼「なるほどね。お母さんは?元気にしてた?」
彼女「うん、元気そうだったよ。お父さんも在宅勤務だって。
   弟も、大学はまだ始まってないみたいよ。」
彼「今は4年生だよね。」
彼女「そう、就活も今は大変みたい。合同説明会とかなくなったりね。」
彼「なるほどね。就職や転職も、今するのは大変だろうな」
彼女「そっちは?今日は何してたの?」
彼「今日は10時に起きて、そのままパソコン開いて、仕事して、
  昼はオムライス作って食べた。」
彼女「へえ!ちゃんと料理してんだね。」
彼「するときはね」
彼女「それで?」
彼「で、今日の会議の準備したりして、会議終わって、今かな」
彼女「結構仕事してるんだね」
彼「在宅だと仕事とプライベートの区切りがうまくつかないよ。
  会社に行ってる時に比べたら仕事量は減ってると思うんだけど
  なんだかプライベートに仕事が踏み込んで来てるみたいで疲れる。」
彼女「それはちょっと嫌になるね。」
彼「まあね。でもまあ、仕方ないよな。今の状況じゃ」

彼女、箸を置き、少し曇った表情をする。

彼「どうした。」
彼女「いや。ちょっとね。本当に先が見えなくて不安だなと思って。
   ここ最近誰にも会ってないし。本当は明日から地元に帰ろうと思ってたけど帰れなくなったしさ。
   朝起きて、パソコン立ち上げて仕事して、あとはご飯食べたり、テレビ見たり。
   何か辛いことがあった訳じゃないんだよ。でも毎日起きるとさ、胸が苦しいんだよね。」
彼「じゃあ、明日から行っていい?」
彼女「どこに?」
彼「家」
彼女「ダメだよ、自粛して。」
彼「だって寂しいって言うからさ」
彼女「寂しいとは言ってないじゃん」
彼「似たようなこと言ったから」
彼女「今はお互い、会わないほうがいいでしょう」
彼「そうだね」
彼女「・・・」

彼女、テーブルに顔を伏せる。
彼、箸を置き、頭を撫でるそぶりをする。

彼「でもさ、今は会えないだけだよ。」

彼女、顔を上げる

彼女「会えないだけ?」
彼「そう。今は会えないだけ。他のことはいつも通り。全部あるよ。」
彼女「全部?」
彼「まあ、全部は言い過ぎたかも。でも他のことは大体ある。
  スーパーも薬局も空いてるしさ、食べれてるし。
  こうやって大切な人と近況報告し会えるし。本当ありがたいよな。
  なんなら俺を想う気持ちは倍になったでしょ?」
彼女「・・・まあ少しは。」
彼「少しかよ!・・・俺はね、次会うときまでに、ムキムキな細マッチョ男子になれるように頑張ってるから」
彼女「うそ、全然変わってないじゃん」
彼「うるさい、バッキバキだから楽しみにしておきなさい」
彼女「ヒョロヒョロじゃん」
彼「透視すんな」
彼女「わかった、じゃあ私は次会うときまでに、今よりももっと美しいオンナになっておくよ」
彼「言ったね?嘘ついたら何する?」
彼女「え?嘘ついたら?そうだなあ。じゃあそっちはさっきの格好でハロウィン行って」
彼「ハロウィン行って??渋谷ってこと?じゃあその横にいてよ」
彼女「嫌だよ!1人で行って!」

2人、笑い合う。

彼「早く毎日一緒に居れるようになるといいね」

彼が話したと同時に、彼女の携帯が倒れる。
彼女、携帯を元の位置に戻す

彼女「ごめん、笑いすぎて携帯倒れちゃった」
彼「ううん、大丈夫。あ、ねえ、昨日のお笑いの番組見た?」
彼女「え、どっち?」
彼「どっち?」
彼女「ふたつやってたよね?」
彼「22時(10時)にやってた方!」
彼女「あ~見てない。お風呂はいってた。」
彼「勿体無い!あれ観なかったとか勿体無いよ!」
彼女「そんなに?」
彼「そんなに!あれはもう過去1笑った。25年間生きてきて1番笑った」
彼女「嘘だあ」
彼「いやいや、本当だから、今度うちに来たら見せてあげるから」
彼女「録画してたの?」
彼「そう。予告観ただけてわかったんだよ。次の流行はここから生まれるって」
彼女「何いってんの」

2人、楽しそうに話し続ける。

ブラックアウト
「その時はきっと、最高だ」の文字

彼・彼女「その時はきっと、最高だ」

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