AppaRition GraveMarker 第4話 ドラマ

AppaRition GraveMarker 妖怪の墓標。神と老いた善現る。漁業組合からの依頼。鮭だけが盗まれる事件。 良心寺善とRainは、作戦を考えるのだが、良心寺善にとっては、マイナス方向に・・・。 またしても靄がわからず?絵具を使う? 相手は極寒でも生きていける西洋から来た妖だった。Rainもしくじった変身をして・・・?
非露亞貴(令和2年8月5日開業届。脚本執筆、シナリオ代行) 6 0 0 12/10
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第一稿

【登場人物】

良心寺善 《りょうしんじぜん》(19) 妖怪ハンター。体内に最強の妖怪を宿している

Rain  相棒の傘お化け

良心寺福弥津 《ふくみつ》(44) ...続きを読む
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【登場人物】

良心寺善 《りょうしんじぜん》(19) 妖怪ハンター。体内に最強の妖怪を宿している

Rain  相棒の傘お化け

良心寺福弥津 《ふくみつ》(44) 住職、父親

赤子  福弥津の相棒。ごぎゃ泣き(子泣き)じじい。善とRainは見えない

網地大和 《あじやまと》 東港漁業組合・組合長

上大市  《かみおおいち》 事務員。女性。妖怪マニア

人狼   西洋から来た狼。歴史と関係する?氷点下でも生きていけるらしい。
  時速70kmだが・・・


良心寺美海《みみ》  (享年32) 善の母親

良心寺幸蔵《こうぞう》(享年63) 善の祖父

良心寺穂枝《ほのえ》(享年60) 善の祖母

良心寺曽福《そうふく》(享年33) 福弥津の弟で善の叔父
   
良心寺岐依《きい》(享年36) 曽福の妻。善の叔母

良心寺千木郎《ちぎろう》(享年13) 曽福の子。善の従兄弟

神八代舞理《かみやしろまいり》(享年39) 美海の姉。善の叔母

神八代岐丸《きがん》(享年42) 舞理の夫。善の叔父

*以上8人は善の体にいる妖となっている。

船長・漁師1・2

神   善にそっくりな神

坊主  善にそっくりな老いた坊主

謎の男 草履にパーカー付きトレーナーにサングラスにマスク姿。
    正体不明。善を師と仰ぐ。2番目に強い。

化け狸


サブタイトル「海の向こうから来た妖。獣も来航。戦闘不可マイナスのバトル」

○夢の中

良心寺善OFF 「これって、俺?」

病室。産まれて間もない良心寺善。美海の横で寝ている。

良心寺美海  「仲良くしてあげてね千木郎君」
良心寺千木郎 「うん!」
良心寺福弥津 「決まったぞ!息子の名前は善、喜びと書いて善だ」
良心寺美海  「由来は?」
良心寺幸蔵  「そう、寺の跡を継ぐ孫に相応しい。仏の御加護を
        受け、産まれた子。『良心ある者邪心を持たず』」
良心寺穂枝  「善悪の善って事だね」
良心寺曽福  「寺が纏わることばっかだけどな。俺はやめた。寺に無い物をつけて息子に」
        岐丸さん夫婦の所みたいにしてしまったけど」
良心寺幸蔵  「全く。良心寺家の決まりだ。先祖代々、寺に纏わる字をな」
良心寺岐依  「その舞理さんて」
神八代舞理  「うちは神社の家系。長女と長男は・・・」
良心寺岐依  「えっ?2人って」
神八代岐丸  「従兄弟同士」
良心寺岐依  「嘘でしょ?現実にあり得るんだ」
良心寺美海  「私も、それ思いました。お姉ちゃんが結婚する時、度肝抜かれて」
神八代舞理  「私は、あんたが寺の嫁になった事が抜かれたわ」
良心寺岐依  「言っとくわ。ウチは旧姓南野だけど、そんな風習無くて一字近いで・・・」
良心寺善OFF 「俺ってそんな風に名付けられたのか。悪い事したらバチ当るな」

 突如場面が変わる。濃霧。何もない空間。

良心寺善 「ここは?母ちゃんが夢に出て来た・・・」
良心寺善   「誰?そこにいるのは?髪長いから、母ちゃんか」

 後ろ姿。白装束の格好。

神      「我は髪では無く神だ」
良心寺善   「神様?何言ってんだよ、母ちゃん」
神      「お前は、善と名付けられたにも関わらず、大層悪い事を」
良心寺善   「悪い事?そんな事したのか俺」
神      「我が、閉じ込めた者を・・・」
良心寺善   「声が変わった。その声・・・」

 神が振り向く。

良心寺善   「お、お前、俺?」

 善の顔をした神。

良心寺善   「貴様!妖か?何者だてめーー」

 肩を掴もうとする。

良心寺善   「あれ?どこ行った、消え・・・」

 背後に作務衣を着た者が居る。


 ○良心寺・リビング(朝)

Rain 「頂きます。(おにぎりを食べ)うん。ホント美味しい。父上のおにぎりは格別だ」
良心寺福弥津 「ありがとう。ワシは、嬉しいぞ。涙出てこいや」

  考え込む善。手におにぎりを持ったまま肘を立てている。

良心寺福弥津 「行儀が悪いぞ」
良心寺善   「親父、寺に神なんて居ないよな。仏様だけだろ?」
Rain 「父上、今、さりげなく高田延彦になったね」
良心寺福弥津 「そうでもないぞ。神仏習合と言ってな、我々にも、それが如何した?」
良心寺善   「夢でよ、母ちゃんが神様で、俺の声と顔で。妖かな?」
良心寺福弥津 「えっ?そりゃ変な夢を見たんだの善(お茶を啜る)」
良心寺福弥津M 「善、お前の失われた記憶が、覚醒してるのか?このままだと・・・」
良心寺善   「親父、後ひとつ」
良心寺福弥津 「あっ」
良心寺善   「さっきからよ、何でか膝が重くて」
赤子     「(石の状態)父上、お腹減ったぞ!重くなる為、おにぎり100個よろしく」
良心寺福弥津 「なな何でだろう〜」


タイトルバック『AppaRition GraveMarker』

良心寺福弥津 「通知音お前にも来とるぞ」
Rain 「父上はガラケーなんですね。善は?」
良心寺善   「わーってるよ。食ってんだろうよ」

 充電中のタブレットを手にする。kaitterを開く。

 『アカウント名・AppaRition GraveMarker @Zen卍』

良心寺善   「漁業組合からだ」
良心寺福弥津 「(ニヤつき)かぼちゃ、猫」

 『東港漁業組合組合長、網地大和と申します。鮭が盗まれる事件が多発しており、
  御相談させて頂けたらと。恐れ入りますが、許可が必要ですのでご連絡下さい
  電話番号は・・・』

 携帯電話を棚から取る。

良心寺善   「俺のはプリペイド携帯だ。ネット出来ない機種。あ、もしもし良心寺です」
Rain 「そうなんだ、足がなんか」
良心寺善   「ええ。kaitterの。そうです。今から、お伺いしても。では、後程」
Rain 「あはっ、こそばい、あしーー」
良心寺善   「(電話を切り)何言ってんだよ。机の下に誰も居ねえぞ。行くぞ」
赤子     「こしょ、こしょ〜」
良心寺福弥津 「良心ある者邪心を持たずだぞ善」
良心寺善   「わかってるよ。何ニヤついてたんだ気持ち悪い」
Rain 「行って来ます。父上」
良心寺福弥津 「ああ。ワシはこの後(机の下を覗き小声で)おい赤子」
赤子     「ええ父上。父上は何処に?」


 ○東港漁業組合

 堤防、軽トラが走って来て停止。Rainが変身中。一隻の漁船からクレーンで陸揚げの様子。

良心寺善   「(助手席から降り)自動運転、近未来的だな」
Rain 「(元に戻り)漁業組合って軽トラ止まってそうだし、善、免無しだもん」
良心寺善   「教官が偉そうだったから途中で帰って来て・・・あのすいません網地さんは」
船長     「事務所の中じゃけど、コスプレか。今日は」
Rain 「あ、そうっすね。リアルでしょ」
RainM    「足一本ですけど」
船長     「許可・・・」
良心寺善   「取ってます。連絡済みです」
Rain 「(跳ねながら)待って。置いてかないで」

 ○同・事務所

 事務員達が居る。黒色のベルトチョーカーを
 身に付け、上大市と書かれた名札の女性が1人。
 その奥に向かい合う座席に網地が居る。

船長     「組合長さん客人じゃ」
良心寺善   「どーも。先程、お話ししました善と」
Rain 「Rainです。こう見えても、皆さんより年上です。よろしこ」

 パーテーションで区切られた応接間で話す、善と網地大和。
 机上に名刺。『東港漁業組合・組合長網地大和《ルビ・あじやまと》』と表記。

良心寺善    「(ストローでジュースを啜り)鮭泥棒?」
網地大和    「何故か鮭ばかりで。不審な指紋や靴の跡すらない。何故だろうと、不思議
         と思いつつも、厳戒態勢して、関係者以外は、許可が必要でして、それで」
良心寺善    「あ、いえ構いませんけど、鮭・・・」

 飼い猫が善の足をスリスリする。

網地大和    「思いました。うちのトラじゃないかって皆んな。でも、防犯カメラには
         ここで、餌を食べ、寝たりしてて、船が戻れば、出迎えてくれるけど、
         釣ってばっかりの生ものですし、アニサキスになる恐れがあり、あげるのは
         焼いてから。それに、魚倉の蓋はプラスチック製ですけど、トラが
         開けられる訳がなく、ここ建物の奥の、冷凍倉庫なんかも人以外は・・・」
良心寺善    「ぎょそう?」
網地大和    「漁船にある、海から収穫したばかりの魚を氷の入った所に保管する倉庫で」
         

 漁船、魚倉を映す。

良心寺善    「確かに。トラが、開けるには・・・それに、冷凍倉庫も鉄製の扉ですし、
        (冷凍倉庫が映る)どう思うRain(振り返る)」
上大市     「きゃっ、可愛い〜。アタシ妖怪マニアなんですよね〜」
Rain 「えっそう?皆んな普通は怖がるんだけど、そのつけま、何処のブランド?」
良心寺善    「・・・他に何か。例えば、物音がしたとか、夜ですか?」
網地大和    「いえ。丁度この時間です。(時刻は午前9時30分を過ぎる)獣の臭いもして」
良心寺善    「ケモノ?取り敢えず漁船のとこに」
網地大和    「そりゃもうありがたい事です。ささっ行きましょう」

 立ち上がる2人。笑い声がする。

上大市     「綺麗な足〜細くて。いいなぁ」
Rain 「お姉さんも綺麗じゃない。ヒールが似合って江角見たい。ストッキングは
         何処のブランド?」
事務員     「100均よ。伝線いってもいいように、ロッカーにもう一足」
Rain 「大変よね〜女性って。善?」
良心寺善    「何してんだよ。行くぞビニール!」
網地大和    「新人さん、仕事中ですよ。私語禁止」
上大市     「えっ、すみません」
Rain 「言ったねあんた。ヒールとビニール全然掛かって無いんだから」


 ○堤防

 陸揚げ作業が続く網に大漁の鮭。

網地大和   「すいませんがちょっと止めていただけますか」
 
 クレーンが停止する。

船長     「あ、もしや2人が組合長の言ってた。イベントの仲間じゃ」
Rain 「今日は今日でも、依頼を受けたんだよね」
網地大和   「相談してみるよって言ってた」
船長     「妖怪ハンターさんか?てことは」
良心寺善   「はい。お話ししていただけますか」
Rain 「リアル妖怪だよ」


 風が吹く。

良心寺善  「ううさびっ」
Rain 「もう、季節の変わり目だもんね」
船長    「作務衣だもんな。そうそう、ずっと前から鮭が盗まれてて。なぁお前等」
漁師1 「ええ。海から揚げた鮭は、魚は鮮度が命。直ぐ様、魚倉に入れる。蓋ちゃんと」
漁師2 「閉めました。俺、今年高校卒業したばっかで新人の仕事ですから」
良心寺善  「一個下か。でも、何で今頃依頼を」
漁師2 「僕が教えまして」
Rain 「アナログ人間ね」

 苦笑する、網地大和と船長と漁師1。


 ○山間(濃霧なし、日陰)

 鴉が飛ぶ。不気味な感じ。木の上に立つ謎の男。茂みの上で目を覚ます化け狸。

化け狸  「んあっ、おはようございます」
謎の男  「いつ迄寝てんだ。狸寝入りしやがって」
化け狸  「はぁ、すいません。確かに狸ですけど」
謎の男  「お前、遠くに親戚がいるって言ってたよな」
化け狸  「ええ?ああ、古代の異国で生まれて、江戸の時に・・・」
謎の男  「ほう。そうか。あの歴史上の人物とな。成る程。新しく学習か」
化け狸  「それが何か?」
謎の男  「どうするよ。化け狸」
化け狸  「ションベンして来て良いっすか?一緒にう・・・」

 鴉がけたたましく鳴く。


 ○戻って・堤防

 くしゃみを連発する良心寺善。

船長   「大丈夫か?ハンターさん」
良心寺善 「大丈夫・・・」
Rain 「またかよ。鼻水垂れてるぞ」
良心寺善 「寒いの苦手。(又くしゃみ)れ、Rain。あーーさみっ」
Rain 「かささのさっ」
網地大和・船長・漁師1・2「おお」

 鮭に変身する。両手を広げて乗せる良心寺善。ピチピチ跳ねるRain。

Rain 「何かさ嫌だな縁起でも無いって言うか」
漁師2 「ちょっと待ってください。僕が先に乗って」
 
 漁船に乗り込む。

良心寺善 「何言ってんだよ今更」
船長   「気いつけるんだぞ」
組合長  「私が先にで、手を貸します」

 漁船に乗り込む。続いて良心寺善と船長。

Rain 「棺や墓に入るみたいでやだわ。お盆とお彼岸だったじゃ無い此の間まで」
良心寺善 「とっくに、傘お化けなんだからよ。そんな事言うなって。あらよっと」

 Rainを魚倉に入れる。  

Rain 「チョベリバ〜。最悪なんですけど〜私に墓碑は無いし〜」

 赤子OFF・T『注釈。この場合は墓標ではなくて墓碑だぞ』

良心寺善 「ちょべりば?良いから閉めるぞ」

 漁師2が蓋を閉める。 その様子を見ている者が居る。

 
 妖怪(目線からの映像)   「ものの見事な変身だ」

 刻々と時間が過ぎる。地平線上に大型客船が走る。

良心寺善  「カイロ買えば良かったな」
船長    「匂いはするのか?鮭の、Rainさんは」
良心寺善  「ええ。Rainは事細かく変身出来るんです(鼻を啜る)」
網地大和  「ハイカラじゃな」*洒落たの意とする
良心寺善  「・・・テンション上がるカラオケ?」
漁師1 「いや、そうじゃ無いけど、ホント商売はあがったりでね」
良心寺善  「お気持ちお察します」
漁師2 「まだかよ、まだかよ」

 足音を立てる。

船長    「やめれ。船をカンカンするな。下に」
Rain 「むっちゃ響くし、此処も氷のある魚倉で寒い。そんな私は寒い顔の形相だよ」
良心寺善  「面白くね〜。山田くん座布団全部持っててだわ」
Rain 「黄色い人じゃねえって善」
上大市   「あのっ皆さん」
良心寺善  「おわっびっくりした」
上大市   「皆さん寒い中、ささっ熱いお茶でも(満面の笑み)」
網地大和  「気が効くじゃねえか!新人さん」
上大市   「よいしょっと、(漁船に乗り込む)わわ危なかった。お茶を溢すところでしたわ」
Rain 「ちょっと待って(変身している鮭が魚倉の中で跳ねる)」

 魚倉の蓋の上に立つ上大市。

 良心寺善達が茶を飲む。

良心寺善  「ふぅ五臓六腑に染み渡るぜ」
網地大和  「ハハ。年若いわりに、言うことがおっさんじゃのハンターさん」
漁師2 「どう言う意味ですか」
良心寺善  「いやっ、俺も。親父が時々言うんです」
船長    「飲み物が内臓に行き渡るって事だ」

 湯呑みが落ちて割れる。倒れる漁師1。

船長    「おい、しっかりしろ」
網地大和  「どうしたんだ?ハンターさん救急車!」
良心寺善  「あっ、僕持って来てません」
漁師2 「だったら、僕が・・・」

 倒れる船長と漁師2

網地大和   「・・・!!しかっりせ、ふた・・・」

 倒れる網地大和。

良心寺善   「何で粋なし、み・・・急に眠気が。上大市・・・さん?」

 不気味に笑う上大市。


Rain 「おい、善、聞いてんのか?おい!善妖気を感じた・・・」

 魚倉の蓋を開ける上大市。


上大市     「ごちゃごちゃ煩いのよ。同種族。化けるってことね」
Rain 「お姉、何者・・・」

 制服のポケットからスプレーを出してRainに噴射する。

Rain 「おわっ!何だこ・・・」



○夢の中

 何もない空間。濃霧が更に大きくなる。

良心寺善    「何も見えねえ。俺の顔をした妖、何処だ。出て来い、偽者!!」
背後にいる者  「おい、善ってのはお前か」
良心寺善    「(振り向き)えっ?お、親・・・じ、じゃねえ、俺だと!!」

 作務衣を着た老いた善が居る。
 
良心寺善    「なっ?又、俺?」
背後にいる者  「よう!俺は、お前、お前は俺で、俺は、俺も坊主だよ。さっき神に」
良心寺善    「神仏習合・・・?なわけねえわ!!てめーーいい加減正体を」
坊主      「戯け!未熟者」

 鈴の音が鳴り響く。錫杖で善を跳ね除ける。

良心寺善    「てぇな(痛えな)」
坊主      「場数を踏め。善。お前の脳は衰退している。全てがわかる。だが
         己を忘れるな。善、お前は善悪の善。良心あるもの、だ」
良心寺善    「あん?じっちゃんか?親父か?おい!消えるなてめーー」
坊主      「その前に、目先にあるものを片付けろ。このままでは、死ぬぞ善」
良心寺善    「目先?そう言えば俺、消えた一体・・・」

 咀嚼音が聞こえる。


 ○東港漁業組合・冷凍倉庫

 冷凍機の音が響いている。水滴が出ている(煙状)。白い吐息を吐く者達。

網地大和    「ハンターさん、ハンターさん、ダメだ。覚ませ!目を!!」
Rain 「善、善!!しょうがない。こうなったら・・・」

漁師1 「何してんだ、ここから出せ!!ひっ、それ、人の常軌を逸してやがる」
船長      「組合長さんとこの、嘘だろ。そのままたべっ」
漁師2 「死にたくねえって!死にたくねえええええ!!」
良心寺善OFF 「そう言えば俺、上大市さんにお茶をもらって、眠気が・・・痛っ」

 目を覚ます良心寺善。顎に、Rainの頭が炸裂している。

Rain 「起きた?良かった」
良心寺善   「痛っ、危ねえんだよ!傘の先は。ここ、寒っ、何で一人ずつ縛られて?はっ」

 上大市の背中が見える。

Rain 「お姉さんじゃねえんだ善」
網地大和   「覚めたか!ああ、あれ。ははっ、ハンターさん」

 顔を動かして、顎を突き出し、示す。

上大市    「美味い、美味い、美味い、美味い、うま」

 冷凍している生鮭を手にして食べている。


良心寺善   「・・・!」
Rain 「善、あれは、あや・・・」
良心寺善   「いやぁ、脂がのっててホント美味しいですよね。でも、捌いて
        焼かないとアニサキスになる。せめて、刺身か寿司で・・・」
Rain 「馬鹿野郎!そう言う、問題じゃねえ!満面の笑みで言うなーー」
良心寺善   「妖か!何もんだ、正体を現せ」

 食べるのをやめる。

上大市   「なんだ気付いたの。ふーーん」

 くしゃみを連発する良心寺善。

良心寺善  「(震えて)チッ、此処で戦えってのかよ。やばいぞ、さっきから、体が」
上大市   「私は、ケモノ。この位の寒さじゃ、どうこうないわ」
良心寺善  「Rain!切れ!」
Rain 「かささのっさ」

 鎌に変身する。

Rain 「善、動くなよ」

 縄を切る。

良心寺善   「皆んなにも」
網地大和   「ありがとうハンターさん。行くぞ皆んな」
漁師1 「ちょっ、無理じゃ。冷凍倉庫の鍵・・・!」

 棒状の鍵が転がっている。

漁師2    「やばいっすよ!誰か居るなら、外に」
網地大和   「そうだ!他の事務員達に」
船長     「頼む!誰か開けてくれ!頼む!おーーい」

 善とRain以外が向かって行き、オレンジ色の暖簾(ビニール製)を潜る。
 船長が内側から鉄製の扉を叩く。通路を挟み、別に間口があり、
 そこに暖簾がある。
 


 ○東港漁業組合・事務所
 
 扉を叩く音が響いて来る。4人の事務員が倒れている。机に
 湯呑み。ポットが置いてある棚下のゴミ箱に睡眠薬の瓶。

 ○戻って・同・冷凍倉庫

良心寺善   「姑息な真似を」
上大市    「どうした?顔も白いぞ」
Rain 「善・・・」
良心寺善M 「このままだと、皆んなもう」

 作務衣からタブレットを取り出す。

Rain 「早くしろ!皆んなが、扉の方で屈んでる。
        お前も。ここは人間にとってはダメージ!」
良心寺善   「わかってる。俺も、タタ、タブレット使える」

 歯を鳴らす。手が思うように使えない。
 震えている良心寺善。何とかカメラを起動する。

良心寺善   「はぁーはぁー、早く正体を現せ、寒っ」
Rain    「靄がわかんないんじゃ。当たり前に白い煙が、水滴だけど出てるし」
網地大和   「(寒くて苦しみながら)ハンターさん、こっ、
        こっ、ここならば、冷気漏れを防いでいる」
上大市    「蜜柑色の暖簾か?不思議な見え方だ。見ると、先が蜜柑色に見える」
良心寺善   「オレンジ色、そうか。ぐっ、足も痛い」

 悴む手も足も。引きずるように歩く。

上大市    「さっきから何だ。板みたいなのを持ち、何をする気よ。このっ」

 善に背後から襲い掛かろうとする。

Rain 「させるかよ!善に指一本触れさせね」
上大市    「もう、傘を開くんじゃないわよ。目に刺さったらどうすんのよ」
良心寺善   「潜ったら、寒くないわりと」
網地大和   「ここからじゃと、中が、けむり、水滴も」
良心寺善   「はい、見づらいです。オレンジ色、で、中が、灯りが薄暗くなった」
良心寺善M 「一か八か、奴の正体を、目を凝らして」
漁師2 「早く助けて、縛られてた間に寒い」
良心寺善   「ぐぐ、てて手が!言う事聞かない」

 手に息を吹きかける。

上大市    「退きなさいよ。何、私を掴んでんのよ。それ、人間の世界でセクハラよ」
Rain 「って!足蹴るなよヒールで」
上大市    「ヒール、役よ」
漁師1 「寒い、寒い体が、痛い痛い」
船長     「しっかりするんだ。寝るなよ凍死するぞ。頑張れ」

 くしゃみをする良心寺善。

良心寺善 「ぐふっ、えっ、絵の具だ」
網地大和   「えのぐ?」
Rain 「離すかよ」
上大市   「離せ!離せ!離せーー。エッチーー」
Rain 「何がエッチだ。善、そっちに行って何してる?早くしてくれ。って叩くな破ける」

 足一本で踏ん張っている。足が震えている。

良心寺善  「ハァハァ、おお、おうっ!熱い。寒いの後に。よし、カメラ再起動」

 卍型フォーカスが上大市に合うが、読み込み難く、彼方此方動く。

良心寺善  「ハァハァ、オレンジと靄の白が混ざると・・・」

 眉をひそめて、暖簾越しに上大市を酷使する。


上大市   「こうなったら、噛みちぎってあげるわ。透明の唐傘!」
Rain 「ヒェッ、やや、やめれーー!食ったらピーピーになるぞ」


 上大市の黒のベルトチョーカーでフォーカスが止まる。

良心寺善  「そこか!まずは、オレンジと黒。焦茶色・・・」
上大市   「唐傘、海月みたいで美味しそうだわ」
Rain 「NO!美味くない!お姉さん、猫じゃないでしょ。猫も食わんと思うよ」
Rain M   「(振り向き)善、調子悪いのか?肩で息をしているのか」

 よろめく良心寺善。汗を掻く。


良心寺善  「ふぅ、ふぅ。か、体が。Rain!フォーカスがそいつの首の・・・
       (タブレットを見て)オレンジと靄が、白だ!混ざって」

上大市  「貴様、何暖簾越しから睨みをつけておる」
良心寺善 「出た、奴の首元から。焦茶色が無くなって、フワッと薄い橙色が!今だ!」

 
  シャッターを押す。シャッター音が鳴る。

上大市  「何?私が裸にされた・・・?」
Rain 「えっ?裸?お茶の間の男性所君ってうわわわわーー!!」
良心寺善 「やはり貴様山犬か!」
Rain 「(慌てて傘を閉じ)狼さん狼さんがやって来たぞ」

 人狼が現れる。灰色が掛かっている獣毛。

上大市  「・・・ほう。私の正体は人狼。見破るとはね。その板、大したものよ。
      さて飼い主は」
Rain 「ぜっ、善?」
良心寺善 「・・・ハァハァ、Rain」
Rain 「かささのっさ」
人狼   「猿か!」
Rain 「ウキキ」
人狼   「おおっと」
Rain 「ウキッ」
人狼   「ほいさ」
Rain 「キキッ」
人狼   「どこ見てんの。そっち向いてたんじゃ当たらない。気になる?飼い主が」
良心寺善 「ふらつく・・・熱っぽい。引いたな。ずっと寒かったから」

 倒れる良心寺善。

網地大和 「ハンターさん!」
人狼   「ガルルルル、バウバウ!」
Rain 「痛っ!噛みやがった。ザクッと手首」
      
 元に戻る。尻もちをつき、立ち上がる。

Rain 「(暖簾を潜って)善、大丈夫か」
良心寺善 「タブレット、託す・・・」
Rain 「・・・!!」
良心寺善 「どうした」
Rain 「そんな。電池が切れた」

 電池残量0%と共に電源が落ちる。

良心寺善 「ちゃんとしてたのにな。寒い所で、バッテリーは急激に減るらしい。
      でも実際は、減ってないんだとよ。ええっと、ちょっと待って」
Rain 「辛そうなら、もう喋るな」
良心寺善  「思い出した。低温だから、放電が狂って、バッテリーの中の放電、リチウム
       イオンだけど、プラス極、マイナス極の、化学反応が、遅くなるか、止まって
       しまうんだとよ。因みにリチウムイオン、電池は、プラス極から、マイナス極
       へ電流が流れる際に放電するんだぜ。拡散しろよって誰に言ってんだろうな」
Rain 「善!善!気絶してるだけか。物凄く熱いじゃねえかよ!」
人狼   「アハハ。人間は哀れな生き物だわ。狼はね、極寒でも生きていけるのよね。
      なんてたって、氷点下20度から50度まで生きていけるの。私は元々は、そう、
      シベリアオオカミ。ツンドラオオカミとも名がある。ここの、蔵は、氷点下
      18度から20度以下と、そこの組合長に聞いたわ」
船長   「わしも、体が・・・」
漁師2 「ヤバイ!ヤバイっすよ。手も足も全部、ううっ、ささ寒いし意識が」
網地大和 「寝るんじゃない、皆さん。ハンターさん起きてくれ」
Rain M 「ぐっ、電源が落ちたんじゃ、地獄に・・・くそっ、焼却工場の時みたいに」

  気絶している善。網地大和が体を揺さぶるが反応しない。

人狼   「何か言いたそうだな。唐傘。日本の妖怪さん」
Rain 「お前、西洋の妖だったのか」
人狼   「ええ。その昔、アダム・ラクスマンにひっそりと付いてきたのよ」
Rain 「アダム・ラクスマン、砲艦外交か!」
人狼   「そうよ。妖だからあなたも詳しいわね。その時代前からいたんだから。
      1793年6月、北海道は箱館港に入港して上陸。松前に赴いて漂流して
      いた、大黒屋光太夫らを日本側に引き渡した、その砲艦の、大砲を
      入れる筒に紛れていたのよ。興味本位でね。フフフ。ウケるかしら?」
Rain 「なわけないだろう。歴史が変わっちまうよ。その狼が妖だったなんてな」
人狼  「変えるわ。歴史を。私が、この人間界を支配する事を。言われてんのよ、
     山に居る男から、善の記憶を呼び起こせ、それが出来れば支配させてやるってね」
Rain M 「男って父上を傷付けた・・・」

  謎の男の姿を映す。

Rain 「ざけんな!犬っころ!忠実に従う気か?」
RainM 「でも然し、善の体内に居る妖を・・・。タブレットが使えない今となっては」

  気絶している善を見る。


良心寺千木郎OFF 「善!善!なぁ善って」


○夢の中

 山道をそさくさと走る良心寺善(9)。追い掛ける千木郎(13)。鴉が飛ぶ。
 木に止まってもいる。不気味。

良心寺善  「千木郎兄ちゃん、早く!早く!」
良心寺千木郎「ハァハァ、待てって!何だよ粋なし、ついて来いって!しんど、ダルっ」
良心寺善  「トロイな兄ちゃんは。普段携帯ばっかしてるからさ」
良心寺千木郎「何だと!こんやろっ」
良心寺善  「痛い!何も、拳骨する事・・・」
良心寺千木郎「うっせーー。俺はな、中学の番張るんだよ!関先輩の後に」
良心寺善  「知らないよそんな人。おお痛い。うん?」
良心寺千木郎「ヒェッ、犬、犬だ。お、俺っ、犬嫌いなんだよ」
良心寺善  「えっ?あれ、わぁ犬じゃなくて、丸っこいから」
良心寺千木郎「っち行けっ、しっしっ、あっち行けっ!善、近づくなって、野生だぞ
       善!善、公園に帰るぞ。付いて来るのか、あっちに、い・・・」

 ○戻って・東港漁業組合・冷凍倉庫

良心寺善  「行けぇえええええーー」
人狼 「何ですって?目を覚ました・・・」
Rain 「声が違う。善じゃ、な、妖気・・・真逆(傘が開く)」

 善の口から、闇が出て来る。人の姿になる。

良心寺千木郎 「ハァ、ハァ、ハァ、ぐっ、いぬっ」
Rain 「一か八か・・・おい妖!」
良心寺千木郎 「あっ?無理だよ。俺は、犬がだいっきれぇ。やれ、善!」

 炎を吹く。善の体が炎に包まれる。

Rain 「あちち。火の粉が」
良心寺善   「(薄く目を開け)千木郎兄ちゃん?夢?」
人狼     「どこへ行く貴様!」

 炎が消え、闇となり善の体へ消えて行く。

Rain 「おっ、気づいたかよ」
良心寺善   「(目を覚まし起き上がる)Rain!やっ山犬てめぇ」

 電源が入るタブレット。電池100%表示。

良心寺善   「電源が、奇跡!やるぞRain」
良心寺善   「ここがお前の墓標だ!」

 『Zigoku okuru Map』を起動する。カメラは、鮭に卍型フォーカスを合わせる。

Rain 「かささのっさ」
人狼     「羊か」
Rain     「おう!さっさと堕ちろ。敵が来て怖いだ・・・」
良心寺善  「馬鹿野郎!逆だ逆!!羊の天敵が狼だよ」
Rain 「・・・嘘!どうし吉田かしら〜羊なだけに」
人狼    「そう言えば、魚にも飽きてきた所なのよね」

 四足立ちになり、後ろ足を砂を掻くような仕草をする。

良心寺善  「Rain。(羊の頭をポンと叩く)お仏壇の傘や〜」
Rain 「手を合わせるな!怒られるぞ!ヒェッ」
良心寺善  「速いっ」

 暖簾を潜る。冷凍倉庫の入り口。鍵が壊れていた、鉄製扉を蹴り上げる人狼。方向転換。

網地大和
船長 「うわっ」
漁師2

良心寺善  「Rain、そっちに行ったら・・・」

 鮭の前に居るRain。人狼は善の前へ飛び降りて来る。暖簾に頭を潜らせる。

人狼    「狼はね時速70キロで走るのよ。唐傘、そっちは地獄じゃないの?(後ろ足を掻く)」
Rain 「くそっ!このままでは」

 鮭を見る。穴が渦を巻いて開いており、十六小地獄が見える。
 チェーンを振る鬼とその周りに数多の蛇が待ち構える状態。
 南無阿弥陀仏とお経が聞こえる。沢山の卒塔婆が突き刺さっている岩盤。

Rain M 「でも、今のうちに善!」
漁師2 「(小声で)扉が反動で隙間が扉が開きました」
網地大和  「(同)今ならそっと出れるんじゃないのか」
船長 「(同)あのっ」

良心寺善、タブレットのメモアプリを打つ。

『今の内に、出て下さい。その人を運んで。早く救急車を。かなりヤバイですよ』

 漁師1を3人で運び、冷凍倉庫から出る。漁師1顔が真っ白になっている。

人狼    「チッ!他の獲物が。いいわ。羊食べてあげる。頂き」
良心寺善  「こんにゃろ(手を伸ばす)」
人狼    「おっと!触らないでくれる?(後ろ足で善を蹴る)」
良心寺善  「ガハッ!鼻が痛い」

 スッと通る者が居る。

良心寺善  「何だ?今、何か居るのか」
人狼    「バウバウ!」
Rain 「わわっこっち来ないでーー」

 頭突きをかまされる。堕ちるRain。

良心寺善  「Rainーー(走りながら暖簾を潜って向かう)」
人狼    「なにっ?」
良心寺善  「どうなってる?お前浮いてんのか」
赤子    「石になった俺が手を伸ばして掴んでいるぞ。お前の手を。重しだ」
Rain 「なんでかな善」
人狼M   「あんた達は見えてないの。何よ、この赤ん坊。日本の妖!」
良心寺善  「Rain待てよ手貸してやる」
Rain 「早く早く」
赤子    「馬鹿。暴れるな、ズズズって石の俺が滑って行くからよっと!」
Rain 「わぁ、善と狼が低くなったね」

 宙を舞うRain。

Rain 「(両腕を横へ伸ばし)はいっ!」

 一本足で着地する。拍手が鳴り響く。

良心寺善  「おおRain凄いぞ〜」
人狼    「(二足立ち)Blabo。ほら、手を前に広げれば、はいすしざんまいよね」
赤子    「善の台詞はしんちゃんみたい。俺は、ひ」
Rain 「はい堕ちて惨敗(人狼の腹を蹴る)」
人狼    「そんな。酷いわ。DVよーー。因みにメスでも去勢してたのよ」
赤子    「バイバイ」

 鬼がチェーンで縛り蛇が喰う。掲げる。雄叫び。チョーカーが卒塔婆に。岩に突き刺さる。
 元に戻る。

 ○堤防(夕)

 救急車が去って行く。

網地大和  「ありがとうございました。これ」
良心寺善  「(封筒を受け取る)いえ」
Rain 「犬と戦っただけに11万」
船長    「鮭廃棄だな」
漁師2 「アイドルが来たらタダで」

 ○山間(夕)

鴉が飛ぶ。木が揺れる。

化け狸  「くそっ、くそっ、くそっ。良くも親戚を」
謎の男  「いきり立ってるなぁ狸。手が腫れるぞ」
化け狸  「当たり前っすよ!身内がやられたんですから」
謎の男  「仕返し」
化け狸  「ええやりますよ」
謎の男  「彼奴はNo1だぞ」
化け狸  「考えがあるんすっよ」
謎の男  「考え?やってみろ。狸」

第4話了






































        

  




































































  

 
















    

















 












































         
































    

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