AppaRition GraveMarker 第2話 ドラマ

AppaRition GraveMarker 妖怪の墓標。 建設現場で、謎の中毒症状があるとの依頼を受ける。 食中毒やガス中毒、違法薬品を使用でもない。 また、苦しくても逃げれない現場。 行けるはずなのに・・・妖怪の正体とは? そして昔の建造物と深く関わっていた。
非露亞貴(令和2年8月5日開業届。脚本執筆、シナリオ代行) 10 0 0 10/24
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第一稿

【登場人物】

良心寺善 《りょうしんじぜん》(19) 妖怪ハンター

Rain  相棒の傘お化け

良心寺福弥津 《ふくみつ》(44) 住職、父親

真島明《ま ...続きを読む
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【登場人物】

良心寺善 《りょうしんじぜん》(19) 妖怪ハンター

Rain  相棒の傘お化け

良心寺福弥津 《ふくみつ》(44) 住職、父親

真島明《まじまあきら》施工主。真島建設、現場監督。

大工   化け狸

鳶1、2

左官

作業員1、2

ぬりかべ

長斉橋平《ながさいばしたいら》 一国一城の主。城主。

謎の男 草履にパーカー付きトレーナーにサングラスにマスク姿。
    正体不明。善を師と仰ぐ。

赤子の妖怪  福弥津が負ぶさっている妖怪。

ニュースキャスター


サブタイトル「建設現場の中毒症状、放水よーーいでドンと倒せ!」

 ○山間(濃霧)
 夢を見ている。
 山が膨張する。

Rain 「かささのさっ」
良心寺善「Rain、何が見える」

 飛行機に変身したRain。

Rain 「ああ、山に穴が空いた・・・」
良心寺善 「何か来る・・・!!」

 ○良心寺(朝)
 全景・山が見える。
 点景・山門前、箒で掃き掃除する良心寺善。

良心寺善M「一体、なんの夢なんだ。これから起こるのか?」
Rain 「おはよう。善、父上殿が飯だって」

 ○同・リビング食卓
 既に充電中のタブレットが置いてある。
 点けっぱなしのテレビ。
 朝のニュースが流れている。

良心寺善 「いただきます。(お茶を啜り)親父、封筒受け取ったかよ」
良心寺福弥津「ああ。ご苦労・・・」

 食べ終わっている父。食器に箸が置かれている。
 湯呑みにお茶半分。

良心寺善 「(おにぎりを囓り)何だよ?親父、見詰めんなよ。気持ち悪っ」
Rain   「落ちてるぞ。おにぎり、ご飯粒が、作務衣に付いてる」
良心寺善 「あっ、これか?言えよ」
良心寺福弥津「善、最近うなされてはおらんか。夜」
良心寺善 「あっ悪りい。なんかさ山に居てさ、Rainと・・・
       途轍も無い妖怪との戦いが始まるらしき夢を見てて」

 驚く良心寺福弥津とRain。

良心寺善 「何だよ?口、開いてんぞ」
良心寺福弥津「いやっ、何でもないわい。なっ、Rainよ」
Rain 「あっ、うん。ああ、そうそう気にするな。
       そんなことより、今日は私を箒にしなかったね」
良心寺善 「あっ」
Rain 「あっ、じゃねえよ。傘の先は頭だ。痛えんだよ」
良心寺福弥津M「(お茶を啜り)真逆、善・・・思い出さぬと思うが・・・」
ニュースキャスター「次のニュースです。昨日、大阪市中央区の工事現場で
          作業員数名が一時、不可解な中毒症状に見舞われ、
          食中毒やガス中毒、違法薬品使用でもなく、警察と
          消防は原因を特定しています」
ニュースキャスター「そして、此方がその映像です。建設現場の防犯カメラ
          なのですが、突如作業員の方々が、咳き込んだり、
          モザイク処理をしていますが、嘔吐、お腹を押さえて
          いる作業員も・・・」
Rain 「これって」
良心寺善 「作業員の人達の首。白い靄がある」
良心寺福弥津 「手が止まってるぞ。早く食え」
ニュースキャスター 「そして、不可解は此れだけでは無く、苦しみ
          逃げようとした作業員が・・・」

 タブレットの通知音が鳴る。

良心寺福弥津   「(テレビを見て)なんとこれは・・・宙に舞ってる」
Rain 「依頼か」
ニュースキャスター 「では、次のニュースです」
 
 Kaitterを開く。

 『アカウント名・AppaRition Grave Marker @Zen卍』


 『奇妙な事件解決しますリプ下さい』

良心寺善     「(TV画面をチラ見)あっ、テレビでやってたやつだ」

 『既に、報道を見られているかもですが、マンションの
  建設現場で変な中毒症状が起きています。御時間、
  有りましたら、現場までお越し下さい。
  大阪市中央区長斉橋5-2-10真島建設・真島明』

良心寺善 「ごちそうさま。行くぞ、Rain」
 
 タブレットを作務衣に入れて持ち出す。

Rain 「あっ、だから待って。父上行って来ます」

 跳ねるRain。食べ終わった食器を重ねる父。
   
良心寺福弥津M   「寺の為だ仕方がない。だが、善がもしも知って
           しまったら・・・この寺だけでは無く、再び・・・」

 ○良心寺・外(朝)
 全景・山が見える。

良心寺福弥津OFF 「さて、わしはと・・・」

 タイトルバック 『AppaRition GraveMarker』

 ○建設現場(朝)

 ダンプがクラクションを鳴らし走って来る。
 エアブレーキ音。扉を開け、降車する
良心寺善。元に戻るRain。足下に消火栓の
 マンホール。仮囲いの工事現場。

真島明       「ややっ君が良心寺の方」
良心寺善 「はい。貴方が依頼主」
良心寺善M 「ここ確か、昔の地図では・・・」
Rain 「私がいるとわかっちゃうよね。一連は」
真島明 「どうぞ中へ」
作業員1 「ひっ、お化け」
作業員2 「ナンマイダ、ナンマイダ」
Rain         「怖くないですよ。ヘルメットちゃんとしましょう。
           安全第一、ナンマイダあ?さん」
作業員2 「(半ヘルから被り)あっ、いけねぇ」
真島明 「コンプライアンスを徹底しろ」

 ○建設中建物5階
 階段を上って来る。
 作業員数名が仕事をしている。
 コンクリートの間口から入る。
 間口の上から足場方向に防犯カメラ。

真島明        「改めまして。真島建設・現場責任者、
            真島明です。(名刺を渡す)」
良心寺善 「(名刺を受け取って)どうも。初めてでで
             す。良心寺善、19歳、獅子座です。ペコリ」
Rain          「ハハ。ガチガチじゃねえか。すいません、
             頭下げると傘折れるんで、御了承下さい」
良心寺善        「それで、ここがニュースでやってた」
真島明 「はい。その場所で、もう何がなんだか
             さっぱり。死者が出なかっただけ幸いで・・・」
真島明         「妖怪の仕業ですか・・・」

 Rainをチラ見する。

Rain          「なんか、するようでしっくりしないな。見られると。
              私も、妖怪だけど」
大工 「苦しかった。それに、跳ね返ったんだよな
              俺達。なぁ兄《あん》ちゃん」

 ドカジャンに山中工務店と書かれている大工。
 鉄パイプを担いで歩いている鳶の男。

鳶1           「(立ち止まり)ああ。なんか居そうな。気分悪くなっちまって、
             それどころじゃなかったけど、鉄パイプでやりゃあ
             良かったかな」
Rain          「なんか居る・・・?」
左官          「おう、俺もそうだ。腹いきなし、痛くなって焦ったわ」
             
 水とセメントが混ざったバケツを持っている。

良心寺善        「あの、ニュースでやってた防犯カメラの映像見れます?」
良心寺善M       「肝心な所映って無いかな」
真島明         「警察が、押収してまして」
鳶2           「それなら、俺撮りましたよスマホで、全部じゃないっす。
             でも、足場から」
良心寺善        「構いません。見せて頂けますか。何かしら映っているかも」
鳶2           「ええ?映って?いいっすよ」
真島明         「わたしの記憶も辿って、事の説明を致しましょう」
大工          「だったらワシの方が。朝のラジオ体操が終わって、ここで」       


             xxx
 事の発端の時の回想。

大工OFF        「ありゃ、仕事さ始まって、1時間くれえ経った頃だ。
             まぁ、ちっと怒号が飛んでた時なんだけどよ。
             俺達は、血の気の多い奴らだからよ」

 各持ち場で仕事を熟す。

鳶1          「おーーい、もっと足場持って来い」
鳶2          「ういっす! 今持って行きます!!」
大工          「そこの若えの、切った木材で梁を連結していけや
             ボッとするな」
左官          「だから違うって、もっと平らに伸ばせつってんだろ。
            何年目だコラッ。アイドルの方がうめえぞ」

 足の横にバケツの水とセメントの袋が置いてある。

大工OFF        「そしてよ・・・」

             xxx

○戻って同・5階

Rain          「ハハ。ガテン系だもんね。元ヤンが多いもんね」
大工          「この後だったんだよな兄ちゃん達」
Rain          「まだ撮ってなかったの?」
鳶2          「足場上がってからっす」


             xxx

真島明OFF 「ここで私が、 本社から現場に到着しまして。その直後に」
                            
真島明        「皆さんお疲れ様です。精が出ていますね。
            呉々も事故の無いよう・・・ゲホゲホゲホ」
大工         「なんだ、現場監督さんよ風邪ひいちまっ、ガッハッ」
真島明・大工     「(倒れ込み)あがっ、ああ、あがっ、がっ、がががががっ」
鳶1          「なっ、大丈夫かよ。おいしっか、うっなんだ口が、粉っぽい
            (飲み込み)うっ」

 ここで嘔吐する。

左官          「ひっ、なんだっつうんだよ。口になんかへいった
             (飲み込み)なな、なんだ(腹が鳴り、押さえて)
             うっ、やべえ急に腹痛がトイレ」
鳶2           「先輩、鉄パイプ持って・・・うわっどうしたんすかっ?
              皆んな倒れてる。そ、そうだ」
鳶2OFF         「あっ、大体それくらいから。ええっとスマホです」

              xxx

○戻って同・5階
 ニッカポッカからスマホを取り出す。

大工 「じゃあこのあとなわけですわ」
鳶2      「ありました。これです。再生します」

              xxx

真島明          「あがっ、みみ皆さん、とどりあえず、に、にげ、がっはっ
              まじょゔーー」

 背中越しからの映りとなる。
 真島明、大工、がなんとか立ち上がる。
 よろめく鳶1、前屈みの左官。

左官            「待ってくれ、はは腹が痛くて、動きにくい」


 一目散に間口へ走って行く、真島明と大工。
 まるで壁が有り、打つかるかのように弾き飛ばされる。

真島明・大工・鳶1・左官OFF 「えっ?なんだこれ」
鳶2OFF 「こんなの撮ってた時映ってなかった」

 薄っすらと映る四角い妖怪。

良心寺善OFF 「やっぱりな」
RainOFF             「彼奴だよ」

 一瞬、宙を舞って、真島明はコンクリートの床面に落ち、
 大工はセメントの袋に落ちる。弾みでバケツがひっくり返る。
 見たのを驚き、腰を抜かしている鳶1。

左官            「(上体を起こし)おわっびっくりした。大丈夫かよ?今の何?」

 水が流れて来て消える妖怪。
 動画が終わる。
              xxx

○戻って同・5階


大工             「なんだ、今のは。なんか映っとったぞ。それに
                ああっと兄ちゃんしっかりせい」

 腰を抜かした鳶1。

鳶1              「すいません」
大工              「いやええわい。大丈夫か手掴め(手を差し出す)」

  手を借り立ち上がる鳶1。

左官              「マジかよ。俺達の首にもなんか」
真島明             「この後、嘘みたいに、外に逃げれて。
                 途端に苦しかったのが治って、皆んな。
                 あれから私は、コルセット巻いてて、
                 中毒の原因、四角いやつの仕業ですか」
鳶2              「ひぃっ」

 スマホを落とす。

良心寺善         「心霊現象と同じです。撮影時は何も。
                 ところが、時間が経つにつれて念がこもり
                 浮かび上がる」
鳶2 「俺、しし、死にた・・・」
Rain              「大丈夫。善と私が、倒すからさ。
                 はいスマホ。傷付いてない。良かったね」
良心寺善            「真島さん、ここ地下も建設中ですよね。
                 さっき見ました。階段上がる時、下りる方も」
鳶2             「あ、どうもっす」
真島明             「ええ。地下は駐車場、地上5階建てのマンションで」
良心寺善 「城も5重6階」
真島明              「城って昔、ここにあった長斉城ですか」
大工 「兄ちゃん達はわからねえだろうが、
                  地下1階地上5階の城の事を指すんだ」
Rain               「外の屋根を重、内部の床数を階。
                  地下1階、地上5階を足すんだ」
鳶2                「それと何、関係あるんすっか」
Rain                「善、そろそろだぞ」
良心寺善              「ああ。居るんですよまだ此処に」
真島明               「ええ?ど、何処に?」
大工                「退治してくれや。おっと、兄ちゃん
                   しっかり踏ん張っとけよ」
鳶1                 「はいっ」
左官                 「どこか見えねえ」
鳶2                  「俺のスマホで」
良心寺善               「いえ。僕のタブレットで。特殊な
                    アプリがないとダメなので」
 作務衣からタブレットを取り出す。
 ホームボタンを押しカメラをタップする。
 持ちながら左から右へ、辺りを見回す。

大工                「(ピースして微笑む)すまんつい(腕を下げる)」
鳶2                 「(指を指し)あれ見て下さい。壁から煙りが」
Rain                 「靄だ!妖気を感じたぞ」

 傘が開く。
 間口の横のコンクリートの壁に
 卍型フォーカスが合う。
 シャッター音が鳴る。

良心寺善              「そこか!出て来い、ぬりかべ!!」
真島明・大工・鳶1・左官・鳶2 「ぬりかべって、あの?」

 壁から出て来るぬりかべ。
                  「塗った城はどこだ。それに何だこのかべ〜」

真島明               「白い壁の中の人間?」
鳶1              「ぬりかべって、蒟蒻みたいなのじゃないのか?」
左官                「全身も壁もペンキだらけだ」
大工                「いや漆喰だ。知らんのか?月代の
                   頭に鉢巻き。江戸の時の左官じゃわ」
鳶2             「壁に何故・・・」
良心寺善              「行くぞ! Rain」
Rain                「おうよ!」
ぬりかべ              「・・・お前、見た事ある。一緒にいた」
良心寺善              「Rain居たって、知り合いか?いつ」
ぬりかべ              「れいん? お前、唐傘小僧じゃ」
Rain                「破けたんだよ。雨が降る時に使うから。
                   それに言うなーー」

 傘が開く。
 回転させながら飛び蹴りを入れる。
 跳ね返って弾き飛ばされる。

Rain                「あれま〜目が回るぅ」
良心寺善               「Rain!!」
真島明               「(爪先を掴み)だめだ。サンダルが取れた」
大工                「あ、くそっ、間に合わん。兄ちゃん達頼む」
鳶1 「おわっ」
左官                「っぶね〜」
鳶2  「(スマホを持ちながら)わわっ打つかる
                   (頭を下げる)」
良心寺善              「(叫び)れ、Rain」

 外に飛び出したRain。

Rain                 「飛んで飛んで回って回って、落ちる〜
                    まどか、いやあしばから」

 真下で音がする。

 ○建設現場・外

作業員2 「お化けさん、大丈夫か」
Rain                  「(閉じていて)何とか折れてません。
                     良かった〜マジで」

 資材置き場のブルーシートに落ち助かる。

作業員1 「(見上げて)5階の現場で何が起きてるんだ」

 反動をつけて起き上がるRain。

Rain                  「あれは」

 消火栓のマンホールに視線を向ける。

 ○戻って・建設中建物5階

 外を振り向いている、良心寺善
 真島明・大工・鳶1・左官・鳶2(スマホを持っている)

ぬりかべ                「馬鹿な奴め。この俺に攻撃しても
                     無理だ。硬い壁であろうぞ。   
                     それより城はどこだーー。この
                     壁はなんだーー」
良心寺善                「(前を向き)コンクリートだ」
ぬりかべ                「こんくり?」
良心寺善                「江戸時代末期からだあるのは。
                     それに城はもう・・・それに、
                     (タブレットを落とし、拳を握って)
よくもRainをーー」

 突っかかりに行く良心寺善。

大工                  「無茶だ兄ちゃん」
真島明                 「おお、落ち着いて」
左官                   「スデゴロか」
鳶1                   「お前、不謹慎だぞ」

 まだスマホを持っている鳶2。

良心寺善                「よくも、よくも・・・ううっ」

 両拳で殴り傷だらけになる。

ぬりかべ                「痛くも痒くも無い。そして」


手を広げるぬりかべ。

大工                  「なんじゃ此奴、深呼吸でもするのか」
真島明                 「こんな時にですか?」
良心寺善M               「真逆、体の中のものを変化させて?」

 息を吸うぬりかべ。

良心寺善                「伏せて、息止めて下さい」

真島明                 「伏せる?」
大工                  「何故、息我慢せにゃあいけんのだ。
                     なっ?」
鳶1・左官・鳶2(スマホを持っている)   「なんか出たぞ口から。こなっ?」

 ぬりかべが粉を吹きつけ、順に中毒症状に陥っていく。

良心寺善                「くっそーー間に合わな・・・ゲホゲホ
                      上気道炎・・・か」
 吸引してしまい咳き込む良心寺善。

真島明                  「ぐあっ、今度は目が痛い」
大工                   「目真っ赤じゃわ現場監督さん。
                      なんか口が・・・」
 
 目に入り充血する真島明。

鳶1                   「くちびるが爛れてますよ・・・」
大工                「なんじゃ・・・と、言やあヒリヒリしてき」                  
鳶1                   「あっ、どが、痛い、ああがのどが、
                      喉がいい痛い、ズキズキ痛え」
口唇と咽頭に付着、びらんと疼痛の症状が出る。

ぬりかべ                 「現世の人間よ、再び苦しみを味わうのは
                      どうだ?ふふ、フハハハハ」

 スマホを持っている、鳶2 。
 その前で、跪く左官。


鳶2                    「粉が、熱い、あつっ、腕が」
左官                    「うっ、(嘔吐する)い、胃が痛い」
鳶2                    「腕に水膨れなんなんだよーー」

 経口して胃、皮膚に付着、胃痛と化学熱傷の症状。
 スマホを落とす鳶2。

ぬりかべ                  「苦しむが良い。現世の人間、
                       城を粗末にした、お主達よ。
                       あの城主は、きっとそう・・・
                       そして、お主達も地獄へ堕ちるのだ」
良心寺善                  「ゲホゲホ、ゲホッ。うっ、くっ、
                       くそ〜、俺は、俺は、ここで終わる
                       のか。太刀打ちでき」
Rain                    「ぜーーん!!」

 消防用ホースになってRainが足場から戻ってくる。

良心寺善                   「Rain、お、お前」
ぬりかべ                   「なんだそのカッコ。生きていたのか」


               xxx


○建設現場・外

作業員2                 「おい無理するなよ。足、擦りむいてるぞ」
作業員1                  「お化けも救急車でいいのかな」
Rain                    「(指を指し)あれ、何?」
作業員2                  「消火栓だ。水が供給されて」
Rain                    「み、水、水が出るんですか」
作業員1                  「上、火事が起こってるのか?」
作業員2                  「消防用ホースを挿し込めば、
                       出る仕組みだが」
Rain                    「かささのさっ」

 消防用ホースに変身する。

作業員2                  「蛇以上に長いな」
作業員1                  「ニョロニョロ浮いてる」
Rain                    「早く、その消火栓に挿して」

 消火栓のマンホールを開ける。

作業員2                  「う、動くな。挿しにくいわ」
Rain                    「だって、だって、足の傷が疼くん
                       だもん。それに生足触られてイヤン」
作業員1                   「痛っ、蹴らないでくれます」


 消火栓に差し込まれる。

Rain                    「ありがとう。ナンマイダさんと
                       蹴られた人〜ごめんね〜。
                       またよろしく」

 5階へ龍のように昇る。


作業員1                   「すごっ」


                xxx

○戻って建設中建物・5階

Rain                     「感動のご対面やってる場合
                        じゃないぞ善」

 涙を流している善。無言。目を潤ませる。

左官                     「あれってホース、何故?」
真島明                     「そうか、奴は漆喰だ。調湿性は
              あっても撥水性は無いと言われる」
大工                      「ほう。考えたではないか。ククッ」

 不敵な笑みを浮かべる大工。

Rain                     「大丈夫か?行くぞ善」
良心寺善                   「ゲホゲホ、ああ。気合いだ。
                        シャーー」

 両手で顔を叩く。


Rain                     「放水よーーい」 

○建設現場・外

Rain OFF                   「放水よーーいお願いします」
作業員2                    「ガッテン!しょうちのすけ」

 消火栓を開ける。
 水で膨張するホース。

作業員1                    「(5階を見上げて)行きましたーー」


 ○戻って・建設中建物5階

ぬりかべ                    「何をする気だ貴様等。水はやめ」
良心寺善                     「報いを受けろ。(ホースを手にし)
放水はじめっ」
 大量の水が放たれる。

ぬりかべ                    「グハッ、ブハッ」

 口から水を吐き出すぬりかべ
 の壁にも掛かっている。
 足元がふらつく良心寺善。

Rain                      「ちゃ、ちゃんと持ってくれ善」

 ホースが振れる。
 ぬりかべから照準が外れ
 建設中の壁と天井の間に
 あたってしまう。水飛沫が飛散する。

ぬりかべ                    「くっ、水が。ックショーー」
大工                      「兄ちゃん、足を広げて、腰に
                         力を入れて、踏ん張るんだ。
                         膝にも力を入れろ」
                          
                          
大工が平然とし手を貸す。
一緒にRain変身のホースを持つ。

良心寺善M                   「えっこの人。何ともないのか?
                         唇の爛れが治ってる。まだ、
ぬりかべを倒してない。他の人は」

 ホースをしっかり持ち直しながら、振り返る。
 
 
 


真島明                     「め、目の中がーー。張り付いた、
                   感覚がーー」

 角膜に糊状となり固着している。

大工                      「兄ちゃん、強いんだろう。早うせい
                         よ。皆、死んじまうぞ」 

 もがき苦しむ、真島明・左官・鳶1・2。

良心寺善                    「は、はい・・・(前を向いて)
    行くぞRain」

 ホースを下げる。

ぬりかべ                    「グハッ、やや、やめろ。水を
                         掛けるなぁ」
左官M                     「まだ、胃が。でも、水でぬりかべ
                         壁と月代の頭の左官が」
ぬりかべ                    「くそっくそっ(粉を吐くが)プハッ
               ゲホゲホ。このままでは」

 ぬりかべから水飛沫が飛散。
壁にも体にもひびが入る。

大工M                      「実力だけでは無く、頭脳もある
                          見たいだなぁ。なるほど。
                          ぬりかべは漆喰。水を吸水させる
                          事で、中にある水酸化カルシウム
                       を溶解、溶かすの溶解ってわけだ
                          ククククク」
大工                       「兄ちゃんやれ。妖怪ハンターの
                          力を見せて、葬れ」
良心寺善                     「えっあの何でわかったんですか」
大工                   「あっいや、見りゃわかるんだって
                          退治しとるじゃろ。ほれ、これ
                          使うんじゃないのか」

 タブレットを拾い、渡す大工。
 一時的に元に戻るRain。

Rain                        「善、墓場だ」

 タブレットの『Zigoku okuru Map』をタップ起動する。
 カメラも連動し辺りを映し出す。
 画面が飛沫で濡れている。

ぬりかべ                       「くっ、かひゃだがーー、そんな
                            何故?あの城主が悪いのだ。しし
                            城を」

 ひび割れた体に焦りを感じ、震えてもいる。

良心寺善                      「墓標は何処だ!」
大工M                       「ハイテクじゃねえか。だが、
                           機械なんぞに頼っていたら、
                  いざって時困るぜククククク」
Rain                        「何してんだ。下げるなよ」
良心寺善                      「待ってくれよ。やっぱ手が滑るし
                           潰れたらシャレになんねえし」

 画面が飛沫で濡れていた為袖口で拭く良心寺善。

Rain                        「あったか?」
良心寺善                      「(タブレットを前に向け)待て。
                           あったぞRain」

 墓の形をしたピンが間口を指す。

良心寺善                      「ここがお前の墓標だ」

 十六小地獄が現る。
 チェーンを振る鬼とその周りに数多の蛇が待ち構える状態。
 南無阿弥陀仏とお経が聞こえる。
 沢山の卒塔婆が突き刺さっている岩盤。


ぬりかべ                       「(泣きながら)体が動けん。
                            チックショーー!俺は、
                            被害者だ。あの城主が、城を
                            ・・・。だから、だから、もの
                            申しに行った。そしたら刀で」
良心寺善                      「そうかそれは災難だったな」
ぬりかべ                       「だったらお主、許してくれるのか」
良心寺善                       「いや、駄目だ。ぬりかべ、
                            お前は、現世の人を苦しめた」
鳶2                      「熱い、熱い」

 左官が手で口を押さえている。

真島明                        「目が・・・」
鳶1                          「喉が治らねえ」
良心寺善                       「堕ちる前に教えておきたい事が
                            ある。城はな、もうとっくに、
                            存在してないんだ」
ぬりかべ                        「なに?何故だ」
良心寺善                        「幕末から、明治時代、太政官
                             から大蔵省に渡り、長斉城は
                             売却。その後、廃城令で無く
                             なったんだ。お前が造った
               壁もな」
大工                          「兄ちゃんよう知っとるな。そう
                             いう事じゃ。ぬりかべさんや
                             罪を償えやのう。(小声で)
                             負けた同志よ、馬鹿が。クク」
ぬりかべ                        「なんだとそんなぁーー」
良心寺善                        「Rain、あれに変身だ」
Rain                          「かささのさっ」

 3回変身するRain。

Rain                          「ラーメン」
良心寺善                        「違う!」
Rain                          「かささのさっ。つけ麺」
良心寺善                         「違う!」
Rain                          「かささのさっ。僕イケメン」
良心寺善                        「テメェ〜怒るでしかし」
Rain                          「いや、もう怒ってんじゃねえか。
                             やりたい衝動が、止まらなかった
                             んだよ。善は、一昔前だね」
大工                          「それ、10年前、『来年一発屋で
                             消えそうな芸人』にランク入り
                             した人のネタじゃのう。お化け
                             さんの。古っ」
良心寺善                        「恥ずかしいぞRain」
Rain                          「わ、悪かったな。人の事言え
                             るのかよ」
大工M                          「お前の記憶も消えたのか?
                             えっ?良心寺善よ・・・」
ぬりかべ                        「貴様らで何盛りがっているのだ。
                             死にたくない、頼むーー」
良心寺善                        「良心あるもの邪心を持たず。
                             その壁、安心しろ。残して
                             やるから」
ぬりかべ                        「俺も・・・悪いのか。嫌だぁぁぁ
                             ぁぁぁ」
Rain                          「壁ドン! 」

 地獄に堕ちるぬりかべ。月代の左官が
 ひび割れから崩れていく。蛇が、先に、
 木っ端微塵になった、体から丸呑みし、
 最後に残った顔を丸呑みする。
 残るひび割れた漆喰の壁は、
 水を含んだが崩れず、両端
 2枚を鬼がチェーンで縛り
 達成感で掲げる。雄叫びを上げる。
 高鳴るお経。一枚はぬりかべの
卒塔婆に。もう一枚卒塔婆が岩に
 突き刺さる。間口が普通に戻る。


Rain                         「(元に戻り)善、もう一枚って」
大工                         「兄ちゃんら元気になったか」
真島明・左官・鳶1・2                 「治った・・・」
鳶1                          「お前、何撮ってたんだよ」
鳶2                          「すいません。MyTubeに上げて、
                             再生回数と登録数稼ごうとして」

 スマホを拾い撮影していた動画を確認する。


Rain                          「まったくもう。炎上だよね」
真島明                         「あの、良心寺さん、今回の件、
                             長斉城の怪奇伝説と何か、関係
                             が?」
良心寺善                        「ええ。その様だった、様ですね」
左官                          「なんすかそれ」
良心寺善                         「その昔、ここにあった長斉城
                             が一国一城令を受け・・・」
鳶1                           「一国一城令?」


 鳶2が動画を見て驚いた表情をしている。


Rain                          「江戸幕府が作った法令で、
                             1615年慶長20年8月7日、  
                             大名に、居城以外の城を
                             廃城にするという命令を
                             出したものさ」
左官                          「廃墟の城って事ですか」
鳶2                           「あ、あの・・・」
Rain                          「そう廃墟。長斉城は免れた
                             筈が、まあ黙って聞けって」

    
                 xxx

 ○江戸時代・長斉城(夕方)

良心寺善OFF                      「長斉城には長斉橋平と言う
                             大名で城主が居たのですが」


 高欄付き廻縁。月代の左官、
 足元に水桶が置いてある。
 長斉橋平との会話。


月代の左官                        「終わりました。長斉橋平様」
長斉橋平                         「ご苦労じゃ。お主のお陰で
                             ひび割れておった、壁が、
                             綺麗になったよの。なんせ、
                             安土桃山時代から建っておる
                             城じゃ。傷みが激しかったわ」
もじもじしている長斉橋平。

月代の左官                        「いえいえ礼にはお呼びません」
長斉橋平                         「なんせ、一国一城の主を手に
                             入れたのじゃ。大切にせんと
                             いけんわの。ハッハッハッ」
月代の左官                        「ええ。その通りで。あの、
                             呉々も染みになる様な事は。
                             漆喰は水湿しに弱いので」
長斉橋平                         「わかっておる。ほれ、妻と子が
                             待っておるのじゃろ。早よ帰ら
                             んか」

○城下町(夜) 
 満月が出ている。
 家路まで歩く。


月代の左官                        「あっ、しまった水桶忘れたわ」


長斉城へ引き返す。


Rain OFF                       「そう、この後だったんだな」

○長斉城・城門前

 城門に入ろうとする、
 月代の左官。上を見上げる

月代の左官                        「(拳を握り)あの野郎ーー!」

 怒りをあらわにし城内へと走って行く。


○長斉城・高欄付き廻縁

 壁に向かい小便をしている。


長斉橋平                         「年取ると近くていけんの」
月代の左官                          「貴様よくも!」
長斉橋平                            「がはっ」

 水桶で殴る。頭を押さえる長斉橋平。
流血する。

月代の左官                        「ああ小便で染みに。あれ程、
                             言ったのに」
長斉橋平                         「(刀を引き)貴様、この私目に
                             成敗してやろうぞ」
月代の左官                        「ぐああああーー」

 振り向き様に首を切られる。
血飛沫が飛ぶ。

長斉橋平                            「ハァハァハァ」

 刀を放り投げ、よろめく。

良心寺善OFF                      「左官は、首を切られ、城主は
                             漆喰が入った水桶で、脳挫傷
                             を起こし、二人とも床板に倒
                             れ死んだ筈が、何故か壁には
  血で姿形が染み込んでいた。
                             壁が墓石と言わんばかりに。
                             月夜に照らされて」
鳶1OFF                         「もう一人居たのかよ」
Rain OFF                        「怨念の方が強かったんだな。
跡継ぎが居たから、存続した
                             けど、明治に無くなったんだな」


              xxx

○戻って建設中建物・5階

真島明                          「我々が中毒になったのは?」
良心寺善                         「ぬりかべは二酸化炭素を吹き
                             込みました。よって、体内の
                           水酸化カルシウムが、炭酸
                             カルシウムに変化。乾燥剤を
                             吸ったり、目に入ったり、直接
                             触れたりした時の様な症状に、
                             陥ったのです」
鳶2                          「映ってない。おっちゃんがだけ」
大工                          「アホ言え!生身の人間じゃワシは」
Rain                          「やっぱ壊れてんじゃないの。
                             サンダル取って」
良心寺善                           「ではそろそろ僕達は」
真島明                         「誠に有難う御座いました。私が
                            代表して報酬をお渡し致します。
                            あと、はい、サンダル」
Rain                         「わっ懐が良いですね。お布施が
                            封筒に10万もある。流石、大手」


 サンダルを履く。

○良心寺・玄関(夕方)


Rain                         「ケチだな善。何かさ甘いものでも」
良心寺善                        「駄目だ。只今親父ーー」


○同・リビング

 メモの書き置きが食卓テーブルにある。

『お勤めが終わったらお勤めだぜ。オヤジ』

良心寺善                        「パチンコに行きやがったな」


○山間(夕方)

 直立で太る化け狸が木の上を見て話す。


化け狸                         「良心寺善はまだまだです。腕と
                            頭脳はありますが、見る目はあり
                            ありません。唐傘も同様で」
 木の枝に立つ謎の男。変装。
(人物欄参照)
 正体不明。謎の男。飛んで降りて来る。


謎の男                          「(跪き立つ)ほう。我々、妖は
                             化けるか、出るかだが」
化け狸                           「時期に辿り着く。それに」
謎の男                          「ああ。記憶が無いとは言え、
                             我々の師であるぞ狸!」
枯れ葉を踏む音がする。

化け狸                          「福弥津か」

 良心寺福弥津現る。赤子の妖怪を負ぶさっている。


謎の男                          「久しぶりだな。10年振りか」
良心寺福弥津                       「化けやがって。ささっと帰れ」
化け狸                        「それは無理だぜ。場数を踏ませろ。
                           お前の息子を。なんせ、善は・・・」
良心寺福弥津                     「2人よ。この、良心寺住職、良心寺
                           福弥津が、お前らを地獄に送るぞーー
                           世のため、善の為にな!!」
化け狸                        「面白えじゃねえか。じじい」
謎の男                        「まあ待て。福弥津、その赤子の妖怪
                           で俺と戦おうってのか。かかって来い
                           父親の実力を試してやろう」

 濃く霧が立ち込めて来る。

良心寺福弥津                     「貴様らを山へ返り討ちにしてやるわ」

 赤子の妖怪が背中から降りて来る。


謎の男                        「サングラスにマスクは邪魔だな」


 サングラスとマスクを外し、足元に落とす。

第2話了















                         





                             
                        












                

                             
                         

                              

  
                            
                    









                             







                                                   







                             
                             
                           

 
 


 
         

                                          
   
                            






                             






            
           


                           








 





              

                        
                        
                           
                            
                 
 
                        
                        
                        
                           
                        
             
                            






                                        




                       


 
                  





                  






 

 






  





             

 
                  







            


 


         










          


  




 

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