砂田さとみ(31) 会社員
鈴木渉(27) さとみの会社の後輩
タカシ(34) 消防士
木口理沙(30) さとみの友達
藤井元太(35) さとみの同僚会社員男性
玉城ゆい(29) 最近結婚した女性社員
ウエイトレス イタリアン店のウエイトレス
〇居酒屋(夜)
賑やかな居酒屋。
数名の会社員が席に座っている。
藤井元太(35)が片手にビールを持ち、立ち上がる。
藤井「玉城さん、ご結婚おめでとうございます」
藤井、玉城ゆい(29)を見ながら。
玉城「ありがとうございます」
拍手する社員たち。
拍手する砂田さとみ(31)。
藤井「では、乾杯!」
乾杯する社員たち。
〇会社・ロッカー(夕方)
さとみ、玉城、鈴木渉(27)が着替えている。
玉城「お疲れ様です」
玉城が部屋から出ていく。
部屋には鈴木とさとみ。
さとみの隣のロッカーの前で着替える鈴木。
鈴木「さとみさん今日空いていたりしますか」
さとみ「今日?今から?」
鈴木「はい。もしよかったら来てくれたらなぁと思って。消防士ですよ!」
テンション高めで話す鈴木。
さとみ「あぁ、合コン?」
鈴木「はい!」
さとみ「……私はいいや。若者だけで楽しみなよぉ」
着替え終わりロッカーを閉じるさとみ。
鈴木「なんか用事あるんですかぁ?あ、彼氏出来ちゃいました?」
着替え終わるさとみ。
さとみ「別に出来てないよ。私そういうの苦手なのよ。ごめんっ」
両手でゴメンのポーズ。
さとみ「また来週ね!」
そそくさと部屋を出るさとみ。
鈴木「お疲れ様です」
ロッカーの前でポツンとさとみを見送る。
〇さとみの部屋(夜)
リビングで一人テレビを見ながら夕食をとる。
スマホを見ている。
さとみ「結婚かぁ。合コンかぁ。まぁ、アラサーあたりの女子はそういうのなるよね」
スマホに入っている写真をスライドする。
さとみ「アラサーだし、一人だし……」
木口理沙(30)と撮った写真で止まる。
〇会社・デスク前(夕方)
デスクの前でキーボードを打つさとみ。
玉城がさとみに近寄って来る。
玉城「さとみさんっ」
振り返るさとみ。
さとみ「おー終わったの?」
玉城「はい。あの、お祝いありがとうございます。言うの遅くなってしまって」
さとみ「あぁ、大したもんじゃないけど、旦那さんと使ってよ」
玉城「いいえ、嬉しかったです。旦那も喜んでました! 大切に使わせていただきます」
さとみ「うん」
玉城腕時計を見て、
玉城「あ、じゃあ、お疲れ様です!」
さとみ「お疲れ様」
小走りで会社を出ていく。
パソコンを閉じてコートを着た鈴木はさとみの隣に来る。
キーボードをたたいているさとみ。
鈴木「お疲れ様です」
さとみ「お疲れ様。もう終わるよ、私も」
鈴木を見上げる。
鈴木「玉城さん旦那さんの為に急いで帰ったんですかね」
さとみ「新婚って感じだな」
鈴木が頷く。
鈴木「そういえば、昨日……」
さとみ「あぁ! 昨日どうだった?ごめん行けなくて」
鈴木「まぁまぁでしたよぉ。さとみさんにも来てほしかったですよ」
さとみ「まぁまぁって。」
クスっと笑う。
鈴木「連絡先もらってきました一応」
さとみ「そっかそっか」
鈴木「さとみさんに……」
さとみ「え?私に?」
キーボードをたたく手が止まるさとみ。
さとみ「はい。なんか好きなタイプの女性聞いていたら、さとみさんが思い浮かんでついいい人 いるって言っちゃいました」
さとみ「まじ?」
鈴木を見上げるさとみ。
鈴木「まじです」
頷く鈴木。
さとみ「あ、あのわた……」
鈴木「なのでこれ送ってあげてください!」
連絡先の書いた紙を無理やり渡す鈴木。
鈴木「送ってあげてくださいね! では、お疲れ様です!」
会社を飛び出す鈴木。
連絡先が書いてある紙を見るさとみ。
〇駅のホーム(夜)
夜遅くあまり人がいないホーム。
電車を待つさとみがホームの椅子に座って、理沙にメールを打つ。
さとみ「お疲れさま。私は今帰りだよ。最近忙しいよ。」
理沙「お疲れ! 帰り遅いし気を付けて帰りなよ」
スマホを見ながら嬉しそうに微笑む さとみ。
電車アナウンス「一番ホームに急行海老名行きが通ります……」
電車が来る。スマホをしまいドアが開き乗る。
〇さとみの部屋(夜)
帰宅したさとみは電気をつけてベッドに座る。
さとみ「あー疲れた。こんな時間か」
鞄から鈴木に渡された紙を取り出す。
メールを打つ。
さとみ「こんばんは。初めまして、鈴木から聞きました」
ベッドに横になる。
着信音。
タカシ(34)「こんばんは。遅くまでお仕事お疲れさまです。タカシといいます。よろしくお願い します」
さとみ「始まっちゃった……」
さとみ「こちらこそよろしくお願いします」
メッセージを打つ。
タカシ「お互い仕事も忙しそうですし、時間がある時でいいのでお話し
しましょう」
さとみ「そうですね。ではまた明日も早いのでおやすみなさい」
タカシ「おやすみなさい」
スマホを置き電気を消すさとみ。
〇街中
休日に街中をぶらつくさとみ。
人がちらほら歩いている。
着信音。スマホをみる。
タカシ「こんにちは! 今日時間あったらご飯でもどうですか?」
さとみ「予定ないし、行ってみるか」
メールを打つ。
さとみ「いいですよ」
タカシ「本当ですか! では何時頃がいいですか?」
さとみ「じゃあお昼頃、11時くらいはどうですか?」
タカシ「いいですね。じゃあ11時に駅前で待ってます」
〇駅前
駅前には男女のカップルや家族が通りかかる中一人待つさとみ。
タカシ「さとみさんですか?」
さとみ「あ、はい。タカシさんですか?」
タカシ「はい。こんにちはタカシです」
爽やかに笑う。
タカシ「すいませんなんか突然誘ってしまって。あ、お腹すいてます?」
さとみ「ま、まぁ」
タカシ「じゃあ、知っているお店あるんでそこ行きますか?イタリアン食べられますか?」
さとみ「はい。食べられます!」
お店に向かって歩きだす二人。
〇イタリアン料理店
賑やかな店内で真正面に座る二人。
メニューを開くタカシ。
タカシ「ここ実は美味しくて評判いいみたいなんですよ。何にしましょうか。何でも食べられますか?」
さとみ「はい。な、何にしようかな」
タカシ「じゃあ一枚ピザ頼みますか」
メニューのピザを指さすタカシ。
さとみ「じゃあパスタ選びますね」
メニューをのぞくさとみ。
〇同・食事
注文したピザ、パスタを食べている二人。
さとみ「美味しいですね」
パスタを食べながら。
タカシ「さとみさんってどんな人がタイプなんですか?っていうか敬語やめません?あ、やめない?」
クスっと笑うタカシ。
さとみ「そうですね。あ、そうだね」
二人で笑う。
さとみ「うーん、タイプか……」
タカシ「もしかして、理想高い?」
さとみ「え、そう見える?」
笑いながら応える。
タカシ「だって、美人だし、いい感じなのに……」
さとみ「なのに?」
クスっと笑う。
タカシ「いや、本当に誰かと付き合いたいのかなぁって」
さとみ「……」
水を飲む。
さとみ「タカシさんはタイプある?」
タカシ「うーん、俺は……優しい人かなぁ」
さとみ「優しい人かぁ、王道だね」
クスっと笑う。
タカシ「あとは……ずっと一緒にいてくれる人かなぁ」
さとみ「一緒にいてくれる人?」
タカシ「うん。この歳になってちょっと恥ずかしい話なんだけどさ。
自分の事を大事に思って一緒にいてくれる人がいいなって」
さとみ「……」
タカシ「というか自分ばかりで、さとみさんは?」
ウエイトレス「お待たせしました。タンドリーチキンです」
ピザをずらして、タンドリーチキンをテーブルに置く。
ウエイトレス「失礼します」
テーブルから離れる。
さとみ「タンドリーチキンってイタリアン料理だったんだね、知らなかった」
タカシ「確かに、トルコとかあそこらへんだと思ってた」
タンドリーチキンをつまみ口に入れる。
さとみ「美味しい?」
口にタンドリーチキンをほおばりながら縦に首を振るタカシ。
さとみ「私もいただきまーす」
タンドリーチキンを食べるさとみ。
さとみ「美味しい!」
タカシ「それで、どんな人がタイプなの?」
さとみ「……あのね、私さ……」
うつむき加減になるさとみ。
タカシ「ん?」
さとみ「……」
タカシ「彼氏いるとか?」
さとみ「いや、彼氏はいない」
タカシ「好きなタイプじゃないとか?」
さとみ「私気になる人いてさ」
タカシの顔を見て話す。
タカシ「……そっかぁ。残念だな知らなかった」
さとみ「でも彼女にはまだ言えてないけど」
タカシ「彼女?」
さとみ「うん」
タカシ「恋愛の好きってこと?」
さとみ「うん」
タカシ「そっか」
さとみ「そうなの」
タカシ水を飲む。
さとみ「今日っていうかこの事言うつもりは無かったんだけど……。なんか言いたくて。ってい うか言わないとって」
タカシ「……そっか。その人には伝えるの?気持ち」
さとみ「え、いやまだ……」
少しうつむきながら。
さとみ「ていうか……ごめん急に、色々驚いたでしょ」
タカシ「……」
さとみ「気分悪くさせ……」
タカシ「いや、ありがとう話してくれて。俺ささっき言ったじゃない?自分の事を好きな人、大 事に思ってくれる人がいいって……」
タカシを見るさとみ。
タカシ「それってさぁ、なんていうか、俺自身を好きになってくれるっ
て事なんだよね。タカシを。あ、なんか自分でタカシとか言っちゃった」
笑うタカシ。さとみもクスっと笑う。
タカシ「だから、多分さとみさんは自分に正直に誰かを、その人自身を好きになってそれが女性だってことでしょ?」
さとみ「うん」
タカシ「好きなんでしょ?その人を」
さとみ「うん」
タカシ「俺応援するよ」
さとみ「ありがとう」
タカシ「……俺も合コン頑張ろっ」
さとみ「タカシさんならすぐ出来るよ」
タカシ「だといいな」
店内に貼ってあるタンドリーチキンのメニューを見つけるタカシ。
タカシ「あ、タンドリーチキンってインド料理だった」
さとみ「どっちも間違ってたね」
笑う二人。
〇駅(夕方)
夕暮れの駅前。
さとみ「今日はありがとう本当」
タカシ「こちらこそ。楽しかった。会えてよかった」
さとみ「じゃあまたね」
タカシ「また!」
タカシが駅から帰っていく。
夕日がさとみを照らす。
夕日をみつめたあとさとみも歩き出す。
〇会社(夕方)
キーボードエンターを押すさとみ。
さとみ「終わったぁ」
パソコンを閉じて帰る準備をする。
鈴木が現れる。
鈴木「お疲れさまです」
さとみ「お疲れ様。終わったの?」
鈴木「終わりましたよ」
さとみ「そっか、私も終わったから帰るよ」
コートを着るさとみ。
さとみ「あ、そう会ったの」
鈴木「タカシさん……?ですか?」
さとみ「そう」
鈴木「あー!どうでした?」
声のボリュームが上がる。
さとみ「すごくいい人だった」
鈴木「よかったです! ……それで、どうでした?」
さとみ「いや、どうでしたって」
クスっと笑って歩き出すさとみ。
鈴木もついていく。
〇会社の外・玄関(夕方)
入口の前で立ち止まるさとみと鈴木。
さとみ「あんたが無理やり教えちゃって始めたやりとりだけどさ、実際にお会いしていろんな話 して楽しかったし、タカシさんみたいな人に会えてよかったと思ってる。……くらい良かった よ」
鈴木「それって好きになりそうってことですか?」
さとみ「いや、友達としてね」
鈴木「なるほど!」
さとみ「とにかく良かったよ。ありがとう鈴木」
鈴木「いいえいいえ!じゃあ、お疲れ様です」
二人が別れる。
〇さとみの部屋・ベッドルーム(夜)
ベッドの上でスマホを触っている。
理沙にメッセージを送ろうとしている。
さとみ「お疲れ様!理沙……明日用事ある?明日さ、ご飯行かない?」
スマホを置いてベッドに横になるさとみ。
天井を見つめる。
〇同・ベッドルーム(朝)
目覚ましに音。
目を覚ますさとみアラームを止める。
隣に置いたスマホを見る。
理沙「お疲れ様! いいよ明日ご飯行こう」
スマホを見てニコッと笑い、ベッドから起き上がるさとみ。
さとみ「おはよう。昨日寝ちゃったよ。じゃあ今日12時に駅で」
スマホを置く。
〇駅前
さとみお気に入りのジャケットを着て待っている。
理沙が現れる。
理沙「さとみっ」
理沙が走ってさとみのところに。
理沙「ハァハァ。ギリギリ間に合った」
さとみ「久しぶり理沙」
理沙「久しぶり!ハァハァ。間に合わなかったらどうしようと思った」
息を切らせながら、明るく話す理沙。
さとみ「確かに。会うのは久しぶりかもね! 連絡はよく取ってたけどね」
理沙「お互い忙しかったし、職場も前より遠くなったしね。でも元気そうだね」
さとみ「まぁね。ちょっと歩かない?」
理沙「いいね。最近運動してないし」
二人歩き出す。
〇歩道橋
静かな歩道橋にさとみと理沙が歩いている。
理沙「さとみもでしょ?なのになんか太っちゃった」
さとみ「そう?いや、全然細いから」
理沙「さとみは変わらないねぇ」
さとみ「一応たまにジムとか行ってる。一応」
理沙「偉いわぁ」
歩道橋の真ん中で止まるさとみ。
さとみ「最近どうよ?」
理沙「え、何最近どうよって」
笑う理沙。
さとみ「いや、なんかさ……」
理沙「なになになに?怖いんだけど」
笑いながら。
理沙「……うーん、報告かはわからないけど、好きな人できた」
さとみ「……」
理沙「あ、でも付き合ったりしてない、職場が一緒だしちょっと気になるくらいだから」
さとみ「そ、そっか。へーいいじゃん!(動揺しながら) 同じ職場とか毎日会えるね」
理沙「まぁ何にもなってないけどね。さとみはなんかあるのぉ?ニュース」
さとみ「わ、私はないかなぁ。仕事ばっかりだし……ごめん自分から近状聞いておいて私特別な しみたいな」
ハハハと笑いながら。
理沙「でも今日は忙しかった分ゆっくりしようね!」
さとみ「うん!」
話しながら歩き出す二人。
〇さとみの部屋(夜)
ベッドの上でスマホに入っている理沙との写真を見て。
さとみ「終わっちゃった……」
スマホを置いて電気を消す。
〇会社(夕方)
キーボードを打っているさとみ。
鈴木「お疲れ様です」
さとみの横に現れて。
さとみ「おーつかれさまぁ」
鈴木「さとみさん、今日空いてたりしますか?」
さとみ「また合コン?」
キーボードを打ちながら。
さとみ「終わった!」
キーボードのエンターを叩いてパソコンを閉じる。
鈴木を見上げるさとみ。
さとみ「あのね、鈴木……私……」
鈴木「彼氏できちゃいました?」
さとみ「い、いや出来てない」
首を横に振りながら。
鈴木「……誰か気になる人いるんですか?」
さとみ少し息を吐いて。
さとみ「あのね、合コンは私今行きたくないのよ……誰か違う人誘ってほしいの。その……実は 私……」
鈴木「合コンには、もう誘いたくありません」
さとみ「な、なんか悲しいけど、それなら助かる……え、じゃあ今日は
なんで?」
鈴木「今日は、さとみさんとご飯行きたいんです」
さとみ「……え、あぁ、私?いいけど、どうしたの急に」
鈴木「私、さとみさんが好きなんです」
さとみ「え?」
鈴木「……さとみさんが好きだから、ご飯一緒に行ってもらえませんか?」
恥ずかしそうにうつむきながら。
さとみ「……え」
鈴木「私なんて選ばないですよね……」
さとみ「……」
鈴木「す、すいません帰りますっ」
さとみ「ちょっ……」
その場を去ろうとする鈴木に。
さとみが鈴木腕をつかむ。
さとみ「あのさ……!」
振り返る鈴木、掴んだ腕をゆるめるさとみ。
鈴木「……」
さとみ「なんで……私が好きなの?」
鈴木「なんでって……会社のさとみさんしかまだ知らないですけど……
なんでって……色々……好きなんです。なんか、さとみさんに男性を紹介した時も、なんか気 持ちが複雑になっていて……」
さとみ「……知ってたの?」
鈴木「え、何をですか?」
さとみふぅと息を吐いて、優しい顔。
さとみ「私でよければ、ご飯行こう」
さとみ、鈴木を優しく抱きしめる。
鈴木「よろしく、お願いします」
さとみ「こちらこそよろしく」
二人顔を合わせて微笑む。
手を繋いで会社を出る。
続
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