リンゴ売りの魔法使い(仮) ファンタジー

こちらは、劇場アニメを想定したシナリオになります。価値観が合いそうなプロデューサー、演出家の方を探しています。ご質問等がある方は、お気軽にご連絡ください(1クールのTVシリーズにも対応可です)。
松野 太助 5 0 0 04/28
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

〈登場人物〉

  日外友(あぐい・ゆう)
  今成数美(いまなり・かずみ)
  榎戸サン(えのきど・さん)
  福元鏡夜(ふくもと・きょうや)

  ケン
  瀬 ...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

〈登場人物〉

  日外友(あぐい・ゆう)
  今成数美(いまなり・かずみ)
  榎戸サン(えのきど・さん)
  福元鏡夜(ふくもと・きょうや)

  ケン
  瀬戸秀吾(せと・しゅうご)
  スタナコ
  魔法使いA
  魔法使いB
  不破アイ(ふわ・あい)
  不破ルイス(ふわ・るいす)
  園田大勢(そのだ・たいせい)
  その他

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

〈あらすじ〉

 〝この世界に人間は存在しない〟。
 そこは、すべての人間が駆逐され、悪魔が支配するとされる世界。
 まだ幼さが残る少年・日外友は、その世界に住む学生である。
 家と学校を往復するだけの日々を送っていた友は、同級生の少年・福元鏡夜と放課後に、〝秘密の遊び〟をする。それは、退屈な世界に違和感を覚える少年たちが始めた、ささやかな抵抗を示す行為であった。
 しかし、抵抗するだけでは、悪魔の支配から逃れられるわけではない。根本的な解決にはならないのだ。なぜなら、悪魔たちは、彼らのように抵抗する気概がある者たちこそを、自分たちの仲間にしようとしていたのだから。
 ある日、鏡夜が〝ハンター〟と呼ばれる悪魔に懐柔されてしまう。その光景に、立ち尽くすしかない友。そして、ついにその手が友のもとにもやって来たとき、彼は、ある一人の少女と出会う。
 榎戸サン。この世界の〝外〟からやって来た彼女こそ、悪魔による支配構造から逃れているとされる者、〝魔法使い〟であったーー。

※登場人物はみな「悪魔」という設定ですが、見た目は人間とほとんど変わらない感じを想定しています。が、特にストーリー上の問題もないので、ツノとかを生やして悪魔っぽくしてもらっても大丈夫です。

Aパート[文字数:9214、二百字詰め換算:65枚04行]
Bパート[文字数:9093、二百字詰め換算:61枚09行]
Cパート[文字数:9040、二百字詰め換算:63枚09行]
Dパート[文字数:9013、二百字詰め換算:66枚01行]

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

【Aパート】

〇朝、とあるビルの屋上
  冷たい冬の風を受ける、メガネをかけた少女(今成数美)が、物悲しい表情で街を見つめている。(街については、現代と遜色ない感じを想定しています)
数美の声「この世界に人間は存在しない」

〇同時刻、公道
  スクールバスが走っている。

〇バスの中
  制服姿の男子生徒たちが、一言も話さずじっと座っている。(学校は男子校)
  行儀よく座る生徒たちは、みなどこか元気がない。
  前方の席に、窓外を見ている少年(日外友)の姿がある。
数美の声「私たちの祖先である悪魔が、すべての人間を駆逐したからだ」
  さらによく見れば、バスの中には、時刻を示すパネルが大量に付けられている。
  異様な雰囲気である。
数美の声「人間はかしこかった」

〇とあるビルの屋上
  数美の背後には、巨大な扉(中央に大きな鍵穴の形が描かれている)が出現している。
  そして、巨大な扉がひとりでに開き始め――
数美の声「だから彼らは、抵抗を示さなかった」
  数美は振り返ると、暗闇が広がる扉の奥へと歩いていく。

〇灰鳥栖学園・全景?
  生徒を降ろしたバスが校門を出ていく。

〇バスの中
  パネルの記号が、すべて「06:66」になっている。
数美の声「彼らは最初から、悪魔の到来を望んでいたのだ」

〇灰鳥栖(はいとす)学園・下駄箱
  靴を脱ぎ、膝を曲げる友。
  その暗い表情。
数美の声「彼らは最初から、負けることを望んでいたのだ」

〇扉の中の不思議空間
  コツ、コツ、コツと階段を降りていく数美。いつのまにか、手にはキャンドルランプを持っている。
  さらによく見れば、階段はらせん状をしており、まわりの壁には、いくつもの扉が、まるで浮いているように並んでいる。
数美の声「誰もが、悪魔の支配する幸せな世界に歓喜するはずだった」
  ×      ×      ×
  ある空間(部屋)にたどり着き、足を止める数美。
  そこには、一台のコタツがあるようだが、薄暗くてよく見えない。
数美の声「だけど、この世界には奴らがいた」
  ランプの明かりが消える。

〇灰鳥栖学園・教室
  窓側の席から、退屈そうに外を見ている友の表情。
数美の声「魔法使いだ」

  (オープニング・クレジット?)
☆映像案(紙芝居調?)
〇とある学校・教室
  中央の席、うつむいた少女(学生時代の榎戸サン)がいる。
  その周りを、悪魔や鬼のような形をした影たちが取り囲んでいる。
  影たちは、なんだか楽しそうである。
〇同校・屋上
  サン、飛び降り自殺を図っている。
  サン、目を瞑り、飛び降りる。
〇同校・校庭
  サンが目を開けると、そこには、学ランを着た少年に〝お姫様抱っこ〟されたサンの姿がある。
  少年とサンの周りに、無数の影たちが集まってくる。
  少年はサンを降ろして右手を影たちの前に突き出すと、なんと何もない空間から銃のような武器を出現させる。
  少年が銃から一筋の光を放つと、その光を受けた影が消失する。
  影たちは一瞬驚くが、すぐに少年に襲いかかる。
  少年は瞬く間に無数の影たちによって全身を覆われ、姿が見えなくなってしまう。
  たじろぎながら、その光景を見つめるサン。
  すると、次第に影たちがその場から離れていき――
  最後にその場に残ったのは、少年が着ていた学ランだけである。
  サンはその場に駆け寄ると、学ランを手にして涙を流す。
  影たちは、なんだか楽しそうである。
  ×      ×      ×
  いつのまにか学ランを身に着けているサン、自分で自分を抱きしめる。
  すると、サンの身体(胸のあたり?)が輝き始め――
  驚く影たち。
  サンが立ち上がると、空に〝裂け目〟が出現する。
  裂け目の中には、何人かの人影(魔法使い)が見える。
  輝くサン、決意の表情。
  (オープニング・クレジット終了)

〇タイトル表示?
サンの声「ゾウさんが出たぞう!」

〇朝、公園(実在の場所?)
  そこには、巨大なゾウの人形がある(滑り台っぽい感じ)。
青年の声「おはようございます、ゾウさん」
  見れば、ゾウに近づくイケメンの青年(ケン)がいる。
ケン「大きいね」
ゾウ「……」
ケン「昔何かの本で、〝人生とは、いないいないばあである〟と書いていた人間がいたけれど……それはその通りかもしれないね」
ゾウ「……」
ケン「(唐突に)ばあ!」
  と言って、ケンがゾウに向かって右手を突き出すと、なんとゾウの体内に腕が貫通して入っていく。
ゾウ「(!)」
ケン「これほどまでに巨大なものを顕現させるなんて……(ふふっ)あの子も、立派な魔法使いに成長したんだね」
  ケンがゾウの体内から腕を引き抜くと、その手には、禍々しいオーラを放つ赤いリンゴが握られている。
ケン「たしか将来の夢は、ノーベル賞を取ることだったかな……なるほど、今も頑張っているんだね」
  不敵な笑みを浮かべるケン。
ゾウ「(涙目)」

〇扉の中の不思議空間
  いくつもの扉が並んでいる暗く長い廊下。
  そこを、コートを羽織った怪しげな男性(魔法使い・スタナコ)が、歌いながら歩いている。
スタナコ「幸せなら戸をたたこう♪」
  歩くスタナコ、コンコン♪と近くの扉を優しくノックする。見れば、その拳は光っている。(光=強い魔法(魔力)みたいなイメージです。以下、この空間内でスタナコが何かに触れる時は、つねに拳を光らせてください)
スタナコ「幸せなら戸をたたこう♪」
  歩くスタナコ、コンコン♪と近くの扉を優しくノックする。
スタナコ「幸せなら態度でしめそうよ♪ ほらみんなで戸をたたこう♪」
  立ち止まるスタナコ、ドン、ドン!と近くの扉をぶっ叩くと、派手に扉が壊される。

〇不思議空間・広間
  そこは、四方をフラクタル的な図形模様で満たした、かなり広い不思議な空間(通称「異層空間」)。
  その空間に、壊された扉から入って来るスタナコ。彼の行く先には、スーツ姿の男性(瀬戸秀吾)が佇んでいる。
スタナコ「アハハハハハ! ぜんざい、ぜんざい。あんたがブルバキの瀬戸秀吾だな」
  秀吾、自身のネクタイを締め直し、
秀吾「魔法協会のスタナコさんですね。お噂はかねがね」
  対峙する二人。
女教師(アイ)の声「ハッケヨイ!」

〇昼、灰鳥栖学園・校庭・一画
  体操服姿の男子生徒二人が、仕切り線の内側で、ソンキョの姿勢で見合っている。
  その二人の間には、ミニスカ・黒タイツ姿の女教師(不破アイ)が佇んでいる。
アイ「ノコッタ!」
  なぜかまったく動じない二人の生徒。
  少し離れた場所から、それを見守る体育座りの男子生徒たち。
  その中には、友と、その隣に座るイケメンの少年(福元鏡夜)の顔もある。(友は若干丸くなってるイメージ、鏡夜は開放的で楽にしてるイメージ)
  ソンキョの姿勢で見合う男子生徒。
  その男子生徒を、値踏みするような目で見るアイ。
  ×      ×      ×
  校庭の片隅に植えられた二本の木々が、寄り添うように立っている。(時間経過)
鏡夜の声「(小声で)なあ、友、友!」
  ×      ×      ×
友「(鏡夜の方を向く)」
鏡夜「今日の放課後、あれやってこうぜ」
友「(少し驚き)えっ、今日?」
アイ「そこまで!」
  二人の生徒が立ち上がり、礼をする。
アイ「実にワンダフルな試合だったわ。ワンダフルなあなたたちには、100点満点あげる」
  アイは微笑むと、友のいる生徒たちの方に顔を向ける。
  拍手をしている生徒たち。
鏡夜「(覗き込むように)なあ、いいだろ?」
友「(少し嬉しそうに)うん、いいよ」
アイ「じゃあ次、園田大勢くんと福元鏡夜くん!」
大勢「はい」
鏡夜「……はーい」
  鏡夜は立ち上がると、お尻の砂を手で払う。
  友、それを一瞥して、
友(M)「鏡夜くんとの〝秘密の遊び〟……何日ぶりだろう」
  不敵な笑みを浮かべるアイ。
アイ(M)「あれが今晩の〝ポンチ〟ね」

〇扉の中の不思議空間・ケンの部屋
  コンビニ商品「ワンダフルフルーツポンチゼリー」のアップ。
ケンの声「知ってるかい? この世で最も美しいのは、美少年に相撲をとらすことなんだ」
  そこには、コタツに入りながら小さな男の子(不破ルイス)に、「ワンダフルフルーツポンチゼリー」を食べさせているケンの姿がある。
ケン「本当だよ。昔の偉い哲学者がそう言ってるんだ」
  笑顔でゼリーを食べるルイス。
ケン「(観客に語るように)そうだ。ひとつおもしろい話をしよう。僕はその昔、人間と悪魔から生まれた子供を見たことがあるんだ。その子供はとっても興味深かったよ。だってね、その子供の体は、文字だけでできていたんだ。そう、とっても多くの文字からだ」
ルイス「ママ、これ美味しいです」
ケン「それはよかった。(再び観客に語るように)考えてみれば、文字とは不思議なものだよね。僕らは生まれた時から、文字に囲まれて生きている。文字によって、生き方が規定されていると言ってもいい」
  ゼリーを食べるルイス。
ケン「(カメラの方を向き)文字だけでできたその子供はね、結局すぐに死んでしまったんだ。ゆっくり崩れていき、最後には、大量の文字の山だけを残してね」
  するとケンは、コタツの中からアルファベットの「a」の形をしたアクセサリー?を取り出し、それをカメラに向けながら、
ケン「もしかしたら魔法使いとは、新しい人間のことなのかもしれないね」

  骨を砕くような音が聞こえる。
〇夕方、灰鳥栖学園・屋上
  屋上一帯は、怪しい霧?に覆われている。その霧の中では、人面怪鳥(その正体は、不破アイが変身した姿である)が、なぜか屋上にある小さなリンゴの木(その正体は、ひとりの生徒である)にかぶりついている。
  木を嚙み砕き、リンゴを呑み込む怪鳥。
  すると、校庭に二人の人影が見える。

〇同校・校庭・体育倉庫
  あたりを気にする鏡夜(周りには誰もいない)。
鏡夜「なあ、進学先どうした?」
  その前を歩く友が、倉庫の扉を開けながら答える。
友「全然。そもそも進学できるかもわかんないし」
鏡夜「ああ……。(微笑みながら)そういえばお前、バカだったな」
  扉が閉まる音。

〇体育倉庫内
  小さな窓から入ってくる夕陽を浴びながら、友と鏡夜が通学用鞄?をマット上に置く。
鏡夜「なあ知ってたか友? 昔の相撲は、人間同士がほぼ全裸の状態でやってたらしいぜ」
友「なにそれ、人権侵害じゃん」
  友のそっけない返答。
  すると鏡夜は、自身の上着を脱ぎ飛ばしながら、
鏡夜「俺たちもやってみようぜ」
  と言って、ソンキョの姿勢をとる。
友「……」
鏡夜「今日の〝秘密の遊び〟は、相撲だ」
  間。
友「わかった。やってみよう」
  と言って、友も服を脱いでいくと――
スタナコの声「おいらのともだちゃ、ぽんぽこぽんのぽんよ!」

〇不思議空間・広間
  見れば、秀吾の手から氷でできた剣?が伸びており、その剣が、タヌキの人形(置物風?)に突き刺さっている。
スタナコ「これぞ俺の身代わり魔法だ!」
  剣が刺さった部分を中心に、みるみる凍っていくタヌキ。
  どうやらスタナコは、秀吾の攻撃を、そのタヌキの人形によって防いだところのようである。
秀吾「(剣を引き抜きながら)魔法使いは、変わり者ばかりで嫌になります」
スタナコ「俺は頭ではなく、(腹をポンッと叩きながら)腹で考える国の出身なんでね」
  と言って、スタナコが変わった構えをとる(印を結ぶ?)と――
スタナコ「みーんな出て、来い、来い、来い!」
  という声(歌声?)と同時に、床や壁から大量のタヌキの人形がニョキニョキと生えてくる。
  タヌキたちは、なんだか楽しそうである。
スタナコ「おいらのともだちゃ、ぽんぽこぽんのぽんよ!」
  身構える秀吾。
友の声「今日も、秀吾先生に叱られたよ」

〇体育倉庫内
  (鏡夜が持つ)二本のスティックキャンディのアップ。
  そのうちの一本を、友の手が受け取る(指を絡める?)。
鏡夜の声「教師の言うことなんて、適当に流してればいいんだよ」
  ×      ×      ×
鏡夜「(キャンディを舐めながら)それにしても、相撲って、変なルールだよな。一定時間あんなカッコしてるだけで、どっちにも点数が貰えるなんて」
友「(キャンディを舐めながら)そんなこと、考えても仕方ないよ。そういうふうに決められたルールなんだから。僕たちには、どうしようもないことだよ」
  ×      ×      ×
  体育倉庫の傍らでは、アイが聞き耳を立てながら、体を飛行機に似せた〝エアプレーン〟のポーズを取っている。
  ×      ×      ×
  鏡夜が、両手の指で四角のフレームをつくり、片目を閉じて友を見ている。
鏡夜「やっぱり、俺はへたくそな友との遊びが一番好きだな」
(フレーム越しの)友「それ、褒めてる?」
鏡夜「あ、今の保存」
友「……」
鏡夜「で、友は誰とやるのが一番好きだ?」
友「僕は、鏡夜くん以外と遊んだことないから」
鏡夜「なんだ、そうだったのか」
友「うん……」
  陽が沈んでいるせいか、画面全体が暗くなっていく。
鏡夜「なあ、そういえば友のクラス、また減ってたよな?」
友「!」
  ×      ×      ×
  教室の、ポツンと空いた空席。(Bパート参照)
鏡夜の声「実はあいつとは友達で、この〝秘密の遊び〟をしたこともあったんだぜ」
  ×      ×      ×
鏡夜「(少し真剣に)なあ、お前は急に消えたり、しないよな?」
  間。
友「(明るい感じで)なんだよそれ。消えるって、どこに消えるんだよ? だいたい僕たちには、何も決められないじゃないか。僕たちは、どこにも行けやしないだろ」
鏡夜「……そうだよな。悪い、今のは忘れてくれ」
友「……」
鏡夜「そろそろ帰らないとな」
  鏡夜、友に小指を差し出して、
鏡夜「今日の遊びも、俺たちだけの秘密だ」
  友も小指を出し、二人は指切りをする。
  ×      ×      ×
  アイ、軽くダンスをしながら、歩いて体育倉庫から離れていく(駐車場に向かっている)。
アイ「(歩きながら)ワンダフルフルフルフルフルフル」
アイ&CMの声「フルーツポンチ」
CMの声「ゼリー!」

〇CM映像
  そこには、アイドル衣装を着て、「ワンダフルフルーツポンチゼリー」を笑顔で食べる数美(メガネなし)の姿がある。
数美「ワンダフルフルーツポンチゼリーを食べて、みんなもワンダフルな日々を送ろう!」
CMの声「ワンダフルフルーツポンチゼリー、絶賛発売中!」

〇夕刻、市街地
  巨大な街頭モニターでは、「ワンダフルフルーツポンチゼリー」のCMが流れている。
  街頭モニター前の道路を、一台のゴミ収集車が通過する。
少女(サン)の声「ワンダフルフルーツポンチゼリーねぇ……」

〇ゴミ収集車・車内
運転席に座る女性作業員(魔法使いA)「最近ここらでハヤってる企業の商品ね。なんかすごい人気らしいわよ」
助手席に座るサン「……」
  サンは帽子を目深に被っており、顔がはっきりとは見えない。
魔法使いA「ほら、あなたが今飲んでいるラムネも、〝むらむらラムネ〟と言って、同じ企業の商品よ」
  サン、手に持つラムネのラベルに目をやる。
サン「どうりでおいしくないわけだ」
  確かにラベルには、「むらむらラムネ」と書かれている。
サン「何がウケるか、わからないものですね」
魔法使いA「(冗談を言うように)これからのあなたの活躍で、〝魔法使い〟がハヤったりすればいいのだけどね」
サン「あははははは。そうなったら素敵ですね。でもまぁ、ハヤるかどうかは、やっぱり運だと思うんですよ」
魔法使いA「運?」
サン「うん、運」
魔法使いA「……」
  窓外を見つめるサン。
サン「だからボクらにできるのは、奇跡のような幸運が訪れる機会を、地道に何度も作ること……それしかないと思うんです」
魔法使いA「それはつまり、奇跡のようなチャンスに賭けるしかないってこと?」
サン「そうです。師匠もよく言ってるじゃないですか。〝人生には、たったひとつの魅力しかない。それは、賭博の魅力だ〟って」
魔法使いA「スタナコ先輩らしい言葉ね」
サン「なんとかして、欲望の流れを変えられたらいいんですけどね」
魔法使いA「そうねぇ……」
  スピードを上げるゴミ収集車。

〇道路
  友を乗せたバス(車体に「ワンダフルフルーツポンチゼリー」の広告がペイントされている)が走っている。

〇バスの中
  窓外を眺めている友がいる。
  友、ふと口元に指をやり、
友(M)「のど渇いたな」

  ゴクッと飲み物を飲み込む音。
〇景色のいいどこか(高台?実在の場所?)
  車の傍に佇むアイが、景色を眺めながら「むらむらラムネ」を飲んでいる。
スタナコの歌声「大きくなったらなんになる♪ 大きくなったらなんになる♪」

  スタナコの手のひらのアップ。
〇不思議空間・広間
スタナコ「5のゆびでなんになる♪」
  秀吾に向けているスタナコの手のひら(両手)が輝きを増していく。
スタナコ「(張り手のポーズをしながら)どすこいどすこいおすもうさん♪」
秀吾「!」
  見れば、秀吾の足元に〝土俵〟が出現している。
  そして次の瞬間、ものすごい勢いで四方から次々に飛んでくるタヌキたちが、秀吾に向かって激しい突っ張り(頭突き?)を繰り出す(攻撃の瞬間、タヌキは巨大化する?)。
  攻撃を受け、後ろに退く秀吾。
  しかし、土俵から出ることはできない。
秀吾「(クッ……!)」
  突っ張りのポーズを続けるスタナコ。
スタナコ「どすこいどすこいおすもうさん♪」
  攻撃を受け続ける秀吾。
  やがて、事切れる。
秀吾「(バタン)」
  タヌキたちは、踊って喜んでいる。
スタナコ「(ハァハァ)やったか……!?」
  魔法を解くスタナコ(光やタヌキが消えていく)。
  そして、タヌキたちが完全に消えたところで――
スタナコ「(ハッとする)」
  何かを察し、後ろを振り向くスタナコ。
  見れば、スタナコの背後には、銃のようなものをスタナコに突きつけた秀吾の姿がある。
スタナコ「!?」
  死んだ方の秀吾を見るスタナコ。
  確かにそこには、秀吾の死体がある。
ケンの声「知らなかったのかい? 秀吾くんはいっぱいいるんだよ」
  見れば、いつのまにか秀吾の横には、ケンが並んで立っている。
ケン「君が倒したのは、秀吾くんの一部分でしかない。今までご苦労だったね、スタナコ」
スタナコ「どうしてお前がここにいる!?」
ケン「さて、どうしてだろうねぇ」
スタナコ「茶化すな!」
ケン「……拳銃だけに?」
  秀吾の持つ銃のアップ。
スタナコ「(ケンに)協会を裏切ったのか? なぜだ」
  微笑むケンの表情。
スタナコ「答えろ、リーダー!」
ケン「秀吾くん、やっちゃってよ」
秀吾「……ええ」
  引き金を引く秀吾。
  銃声と共に倒れるスタナコ。
ケン「(スタナコに)可能性なんてものはない、すべては必然だ。それが君の持論だったね」
スタナコ(M)「……榎戸サン、すまねぇ。俺はこれで、ひゅーどろとするぜ」

友の母の声「おかえりなさい」
〇友の家(マンション7階?)
友の母「遅かったわね」
  友が帰宅して玄関を開けると、待ち構えていたかのように、友の目の前には、友の母が立っている。
友「た、ただいま……」
友の母「道草は、悪い子がすることよ」

〇夜、同家・リビング
  カチ、カチ、カチと時計の秒針音が聞こえている。
  見れば、浴衣姿の友が、コンビニ弁当を食べている。
  さらによく見れば、友の両親と思われる人物もいる。しかし三人は、同じ部屋にいながらそれぞれ離れた場所で、別々に弁当を食べている。
  黙々と食べ続ける三人。異様な雰囲気である。
  すると、父親と思われる人物が立ち上がり、食べ終わった弁当をゴミ箱(ゴミ袋?)へ持って行きながら、
父「やっぱり、家族みんなで食べるメシはおいしいなあ!」
  静まり返るリビング。
母「(機械的に)ええ、そうですね」
父「これからは、こういう幸せな時間をできるだけつくろうと思うよ!」
  と言って、父は、ばつが悪そうな顔をしながら部屋を出て行く。
  ×      ×      ×
友「(ボソッと)一緒に食べるよう、上司から言われたの?」
母「……そうみたいね。直接お父さんに聞いちゃだめよ。お父さんのおかげで、こうやって食べていけてるんだから」
  リビングに置かれたモニターに映る、友の顔。
母の声「あなたが生きていけるのは、お父さんのおかげなんだから」
友「……うん」
母「もう、あんなマネはしないでちょうだいよ。一体いくらあなたに費やしてきたと思ってるの」
友「……ごめんなさい」
  静まり返るリビング。
  ×      ×      ×
  カチ、カチ、カチと時計の秒針音が聞こえている。
  ゴミ箱に捨てられた弁当の山。(時間経過)
  ×      ×      ×
  どうやら母も部屋を出て行ったようで、リビングには友だけが残されている。
  ダラっとしている友(浴衣から肩が見えている。鎖骨を強調?)。
友(M)「生きることは生かされること。きっとそれは、この世界の真実なのだろう……」
  悲しげな友の表情。
友(M)「何でこの世界に生まれたのかな」

  カラカラカラと、回し車を走るハムスターのアップ。
〇数美の家・一室
  部屋の壁一面には、様々な鳥や卵の形をした時計が、びっしり飾られている。
  部屋の中央で、回し車を走り続けるハムスター。
  よく見れば、そのハムスターは、機械のようである。
  すると突然、そのハムスターが、警報のような鳴き声をあげ、全身から赤い光を四方に放つ。
  加速するハムスター。
  赤い光を受ける壁の時計。
サンの声「昔、親の目を盗んで、真夜中の公園に行ったことがある」

〇数年前、深夜、公園
  そこには、ブランコで立ちこぎをする少女(当時の榎戸サン?)の姿がある。
サンの声「その時のことを言葉にするのは難しいけれど……」

〇夜、とあるビルの屋上
  学ランを身にまとった榎戸サンが、街を見渡しながら、片手で赤いリンゴをボールのように弄んでいる。
サン「生きることが〝生き延びること〟を意味するようになった時代では、あの頃のような体験ができるとは思えないね」
  サンの傍らには、実物と同じくらい巨大な、白い馬のぬいぐるみがある。
サン「おうまくんも、そう思うだろ?」
  無言でサンを見つめる馬のぬいぐるみ。
  どうやらサンは、そのぬいぐるみに話しかけているようだ。
サン「あれからいっそう、イヤな氷の世界になってしまったようだ」

〇友の家・友の部屋
友(M)「……この世界は、なんだか気持ち悪いな」
  ×      ×      ×
  教室にて。
  一斉に、友以外の全生徒の手が挙がる。(Bパート参照)
  ×      ×      ×
友(M)「いや、気持ち悪いのは僕の方か」
  部屋の天井には、明かりの消えた円形のシーリングライトがある。
友(M)「最近僕はよく、同じ夢を見る。僕に似たたくさんの子供が、僕に向かって泣き叫ぶ夢を」
  ×      ×      ×
  インサート、友の夢のイメージ映像。
  泣き叫ぶ子供たちの中には、鏡夜に似た子供もいる。
友の声「僕は一瞬、みんなの声に耳を傾けようとするのだけど、毎回すぐに怖くなって、耐えられなくなって、その場に屈み込んでしまうんだ」
  インサート終了。
  ×      ×      ×
  円形のシーリングライト。
友の声「そういえばあの日も……同じ夢を見たような気がする」
  ×      ×      ×
  インサート、数日前、深夜、友の家のベランダ。
  友、手すりに手を置き、空を見上げている。
友「……」
  友、手すりに体重をかけたところで――
謎の女性の声「待って……」
友「!?」
謎の女性の声「私はあなたを、待ってるよ」
友「誰……!?」
  友、振り向くと――
  インサート終了。
  ×      ×      ×
  友はすでに眠りに落ちている。

〇夜の空
  眩い星空がいちめんに広がっている。
ルイスの歌声「シャボン玉消えた♪  飛ばずに消えた♪」

〇扉の中の不思議空間・寝室
ルイス「生まれてすぐに♪ 壊れて消えた♪」
ケン「上手に歌えたね、ルイス」
ルイス「ありがとう、ママ」
ケン「(観客に語るように)生きたい奴が生きて、死にたい奴が死ぬ。人間よりもはるかに優しい悪魔たちは、そんな社会を築いていったんだ」


【Aパート END】
[文字数:9214、二百字詰め換算:65枚04行](OPクレジット除く)

【Bパート】

〇夜、とあるビルの屋上
  サン、街を見渡して、
サン「ごらんよ。みんな、羊の目をして、砂糖水に群れるアリのように動いてる。きっと、与えられた時計の中で、音楽にでも泣きついているんだろうな」
  無言でサンを見つめる馬のぬいぐるみ。
サン「前に師匠が言ってたように、心から〝美味しい〟と思える食べ物を見つけられないせいで、いつまでも不幸な状態のままでいる者が多すぎるんだ」
  無言でサンを見つめる馬のぬいぐるみ。
  サン、空を見上げて、
サン「星はなんでも知っている」
  サン、目を瞑って、
サン「ほら、星々が、やさしくささやきささめいている」(以下、目を開けるまでの間、サンにミュージカル風の動きをさせる?)
  無言でサンを見つめる馬のぬいぐるみ。
  頭上には、先程までサンが持っていたリンゴがある。
サン「そうさ、世界は常にボクらに問いかけている」
  無言でサンを見つめる馬のぬいぐるみ。
サン「あ、また見つかった……。何がだって? 永遠だよ。いたるところが永遠なんだ」
  優しい風が、サンの髪を揺らして、
サン「ほら、風も悲しんでいる……。でもいいんだ。だってボクは、その傷を受肉するために生まれてきたんだから」
  無言でサンを見つめる馬のぬいぐるみ。
  頭上には、リンゴがなくなっている。
  サン、目を開けて、
サン「(馬に)あぁ、ごめんごめん。ちょっと、今を感じていたい気分だったのさ……っておうまくん! ボクのリンゴ食ったなぁ!?」
  無言でサンを見つめる馬のぬいぐるみ。
サン「ったく……それにしても、せっかく正式に協会所属の魔法使いとなってこの街に帰ってきたってのに、〝ハンター〟の出迎えがないのは妙だよなぁ」
  無言でサンを見つめる馬のぬいぐるみ。
サン「(真剣に)もしかして、こっちの動きをうかがってるのか?」
  サン、手袋(乗馬用グローブ?)を取り出すと、
サン「仕方ない。ボクらの方から仕掛けるとするか(咥え手袋の姿?)」
  サン、サッと馬にまたがると、なんとそのまま飛び去っていく。
サンの声「さぁ、本当の仕事の時間だ」

〇扉の中の不思議空間・寝室
  そこには、上半身裸のケンが、ルイスを寝かしつけている。
ケン「(観客に語るように)知ってるかい? この世界には、〝魔法〟と〝魔術〟という二つの強力な〝魔の力〟が存在しているんだ。そして、その両方を扱えるのは、僕だけなんだ。結構凄いことなんだよ」
  傍らでは、ルイスが静かに眠ってる。
ケン「ああ、そうそう。それで僕はこの子から、〝魔魔〟って呼ばれているんだよ。二つの魔で、ママね。別にこの子の親とかってわけじゃないんで、くれぐれもそこんとこ、よろしく頼むよ」
  薄く微笑むケン。

〇路地裏
  一台の車が停車している。
  見れば、車の中には、飛び去るサンを見送る二人の影がある。
  その影とは、運転席に座るアイと、助手席に座る数美である。

〇車内
  アイ、「ワンダフルフルーツポンチゼリー」を食べている。
  数美(メガネなし)、「むらむらラムネ」を飲みながら、だらしなくダッシュボード上に脚を組んでのせている。
  数美の太もものアップ。
アイ「やーね、次から次へと仕事が舞い込んできて。誰があの外道の相手をするわけ?」
数美「……さぁ?」
アイ「そっけないわねー。あんた、それでもアイドル?」
数美「(ムッとしながら)何でこんなところで元気出さなきゃいけないのよ」
  さくらんぼを食べるアイ。
アイ「(鏡夜をまねて)〝なあ知ってたか、アイドルの今成数美さん? 昔の相撲は、人間同士がほぼ全裸の状態でやってたらしいぜ〟」
ラムネを飲む数美「?」
アイ「(後部シートを示しながら)この子がさっき言ってたのよ」
  見れば、後部シートでは、鏡夜が眠っている。
  鏡夜の寝顔。
数美「へぇ、裸かぁ……。それは、エンターテインメントをよくわかってるわね。やっぱりお客さんからお金を貰う以上、ファンサービスはしないとね」
  再び数美の太もものアップ。
アイ「あら、でも最初から見えているのは、逆につまんなくない? 私は隠れている方が、ゾクゾクして好きだけどなあ」
  アイの黒タイツで隠れた太もものアップ。
アイ「そうだ! 今晩の治療は、服を着せてしましょうよ!」
数美「(ひいてる感じで)はぁ? 本気?」
アイ「あなたの魔術の練習にもなるだろうし、前々から、すぐに脱がすのはどうかと思ってたのよねえ」
  鏡夜の寝顔。
アイの声「体操服とかどうかしら?」
アイ「たまには、そういう〝遊び〟もいいと思わない?」
数美「じゃあ今晩は、あなただけで楽しみなさいよ。私はパス」
  すると突然、アイが数美に抱きついて、
アイ「えー、いいのー!? ありがとうカズちゃん! 実はこの子のこと、ちょっと気になってたのよねー!」
数美「(独り言のように)カズちゃんって言うな」
アイ「あ、でも私は、カズちゃんと遊ぶのも大好きだよー!」
  数美、抱きつくアイを自分から引き離しながら、
数美「ま、なんにしても、私たちが言われたのはこの子だけ。お賃金を貰えないお仕事は、知ったこっちゃないでしょ」
  再びラムネを飲む数美。
アイ「うんうん。私たちは、言われたことをするだけよね」
  ハンドルに手をかけるアイ。
アイ「さぁて、本当の仕事の時間よ」
  退屈そうな数美の表情。

  チャイムの音?
〇数日後の朝、灰鳥栖学園・屋上
  人面怪鳥(アイ)が羽を広げて、飛び去っていく。
  すると、一枚の羽根が、屋上から落ちる。
秀吾の声「――生きることは選択の連続です」

〇同校・教室
秀吾「しかし、みなさんが生まれてきたのは、みなさんのご両親が選択したからであって、そこにみなさんの意志は100パーセントありません。つまりみなさんは最初から、選択などしていないのです」
  友、顔を前に向ける。
秀吾「だけど安心してください。先生たちには、みなさんが何者であるのか、何を欲してるのか、すべてわかっています」
  教師の方をきちんと見ている生徒たち。(生徒人数未定、生徒間の距離は広めで、教室内に隙間があるようなイメージ)
秀吾「ですから、これから先も、先生たちが用意した進路通りに進んでいくことが肝要なのです」
  校庭?には、屋上から落ちた怪鳥の羽根がある。
秀吾の声「みなさんは、『青い鳥』という童話をご存知ですか?」
  生徒の中には、お尻と椅子の間に手を挟み、何かに耐えるような表情を浮かべる男子生徒(園田大勢)の姿もある。
秀吾「その童話によりますと、幸せというのは、最も身近なところにあるのだそうです」
  教室には、ポツンと空いた空席がひとつある(友の席の斜め前?)。(Aパートのものと同じ構図で)
秀吾「つまり幸せとは、すでに用意されているものなのです。ですから、みなさんのようないい子がとるべき行動というのは、すでに用意されたその道を、自主的に選択することなのです」
  友、空席に目をとめる。
  空席のアップ。
秀吾「いいですか? では、先生の話が〝わかった〟という方は、自主的に手を挙げてください。手を挙げた方には、10点差し上げますよ」
  すると一斉に、友以外の全生徒の手が挙がる。(Aパートのものと同じ構図で)
友「(ドン引き)」
ケンの声「……彼らは最初から、悪魔の到来を望んでいたのだ」

〇同校・校庭?
  怪鳥の羽根のアップ。
ケンの声「彼らは最初から、負けることを望んでいたのだ」
  見れば、そこをケンが通り過ぎていく(体育館に向かっている)。
ケン「そして誰もが、悪魔の支配する幸せな世界に歓喜するはずだった、か(笑)」

〇昼、同校・廊下・校長室前
数美の声「まーた悪い子が現れたの?」

〇校長室
  窓際の椅子に座っている校長と思われる男が、机を間に挟んで、向かいに佇む数美にタブレットを差し出している。
校長「ああ、この子なんだが……」
  数美、あくびのポーズをしながらタブレットを受け取る。
数美「私の代わりなんて、いくらでもいるでしょ? 何でまた私が相手をするわけ?」
校長「そういった話を私にされても……。ただ、君が先日の子の相手を実際にはしていないという報告なら受けているが」
  不機嫌な顔になる数美。
校長「(オホン)その子は、何度も正解をわかっていながら、マニュアル通りの答えをしないそうだ。じゅうぶんに素質があると判断され、早いうちに手を打つようにとの指示があった。両親もすでに了承済みだ」
  数美、渡されたタブレットに目をやりながら、
数美「ふーん……。もう面倒だから、昔の人間みたいに、脳をいじっちゃえばいいのにね」
校長「そんな野蛮なことできるか!」
数美「(ビクッとしながら)なによ急に……ただの冗談じゃない」
校長「ああ、すまない。(自身を落ち着かせながら)しかし君には、ケン君から授かった魔術があるじゃないか。それを使えば簡単な仕事だろう」
  校長はおもむろに立ち上がると、窓から見える校庭に目をやる。
校長「いまや多くの精神病(せいしんやまい)は、発達上の問題とされている。早期の発見と予防が欠かせないのは言うまでもない」
  校庭では、テニスウェア姿の男子生徒たちが、一定の距離を保ったまま、規則正しくラケットを振っている。
校長「(生徒を見ながら)子供の成長には、成功体験が必要不可欠だ。なぜ約束された成功を自ら放棄し、わざわざ間違った道を選ぶのか……。まったく、理解に苦しむよ」
  1、2、1、2と掛け声をかけている生徒たち(画面上では、生徒たちの脚が並んでいる?)。
校長「〝先天的手帳持ち〟をあらかじめ排除できるようになっても、こうも悪い子の出現が減らないとはな……。まったく、この街にやってきた魔法使いの動向も気になるというのに」
  数美、渡されたタブレットに目をやりながら、
数美「あら、このあいだの子と仲がいいのね」
  ×      ×      ×
  インサート、数日前の夜、ホテル・一室。
  そこでは、体操服姿にネコ耳のカチューシャを付けた鏡夜が、「長靴をはいた猫 台本」と書かれた本を持ったアイから、〝演技指導〟を受けている。
数美の声「類は友を呼ぶ、ってことかしらね」
  インサート終了。
  ×      ×      ×
校長「秀吾君がよく言っておられるように、障害や病気は、無い方がいいに決まっている」
  秀吾という言葉に反応する数美。
校長「同様に、特異な能力や天才的な創造性も、すべて無い方がいいに決まっているのだ」
数美「(校長に)健常悪魔たちの、ユートピア世界ってやつ? 秀吾さんの」
  校長、数美の方に振り向き、
校長「あぁ。それ以上の世界はないだろう。その子のような潜在的異端者を治療し、〝いい子〟へ導くことこそ、選ばれた我々の役割だ」
  数美の持つタブレットには、友の顔が映っている(経歴等が書かれているようだ)。

  友の顔のアップ。
〇夕方、バスの中
  前方の席で、窓外を眺めている友がいる。
  その友を、後方の席から見ている少女(数美、メガネなし)の影がある。
  少し虚ろな友の表情。
友の声「秘密の遊びはもうしない……!?」
  ×      ×      ×
  インサート、数時間前、灰鳥栖学園・渡り廊下。
鏡夜「(スッキリしたような表情で)ああ」
友「どうしてだよ、鏡夜くん!?」
  見れば、鏡夜は新品のように綺麗な制服を着ている。
鏡夜「うるさいなあ。俺は生まれ変わったんだ」
友「……」
鏡夜「だいたい、何が〝秘密の遊び〟だよ。何もかも用意されたこの世界に、秘密なんてないだろ? 俺たちが思いつくような行動なんて、所詮大人たちの想定の範囲内でしかなかったんだ」
友「それって……」
  ×      ×      ×
  数日前、夕方、体育倉庫内。
  マット上で鏡夜の足首をつかむ友。
  じゃれるような反応を見せる鏡夜。
友の声「あの、〝秘密の遊び〟がバレてたってこと?」
  ×      ×      ×
鏡夜「バレるも何も、最初からたぶん、全部決まっていたことなんだろうぜ。ほら、お前だって言ってたじゃないか。最初からルールは決められていて、俺たちには、どうすることもできないんだって」
友「……」
鏡夜「俺たちのささやかな反抗なんて、何の意味もないことだったんだよ。気づいた時ニャ(猫のポーズ)、大人たちの手の上さ」
  と、そのとき、鏡夜の視界にアイの姿が入る。
鏡夜「あ、不破先生!」
  アイの方を見る友。
  アイ、鏡夜に気付いて小さく手をふる。
鏡夜「(友に)普通になろうぜ。あれは子供の遊びだったんだ。ま、お前にもわかるときがくるニャ」
  と言って、鏡夜はアイの方へ駆けていく。
友(M)「ニャ?」
  楽しそうに並んで歩く鏡夜とアイ。
アイ「こら、廊下を走っちゃダメでしょ」
鏡夜「(えへへ)ごめんニャさい」
アイ「まぁいいわ。ちょうど猫の手を借りたいところだったの」
  などといったやりとりを聞きながら、まるで周囲の風景が闇につつまれていくように、鏡夜の姿が友のもとから遠ざかっていく。
  ひとり立ち尽くす友。
  インサート終了。
  ×      ×      ×
  友、小指を見つめながら、
友(M)「子供の遊び、か……」
  友、視線を再び窓外に移すと、そこにはカラオケ店が見える。

〇カラオケ店・一室
鏡夜「(手に持つマイク越しに)これが、〝大人の遊び〟なんですねえ」
  見れば、鏡夜がアイに膝枕をしてもらっている。(なぜか鏡夜には尻尾があり、アイがその尻尾をいじってる?)
アイ「あらあら、大人の遊びは深夜になってからよ」
鏡夜「え、でもそうすると、明日の学校が」
アイ「ジョブジョブ大丈夫。どうせ明日の学校は、休みになるんだから」
鏡夜「?」
アイ「(ふふ)実は今日これから、魔法使いがこの街で暴れることになってるのよ。で、その影響で明日の学校は休みってわけ」
鏡夜「魔法使いが暴れる?」
アイ「あら、そういえばあなたのクラスは、〝保健の授業〟がまだだったわね。いい? あなたも知ってるとおり魔法使いっていうのは、この世にある呪いだとか悪霊だとかを追い払うことを目的にしている、頭のいかれた連中のことなんだけど……いや、詳しくは後でじっくり教えてあげるわ」
鏡夜「……」
アイ「それより、マイクちょうだい」
  マイクを手渡す鏡夜。
アイ「(マイク越しに)これを歌ったら移動するわよ。(ささやくように)大人の遊びは、そこでしましょう」
  微笑む鏡夜。

〇カラオケ店・全景?
鏡夜の声「先生、マイク入ってますよ」

〇体育館
  ダン、ダン、ダン、とドリブルの音。
  青年(ケン)が、バスケットボールを持ってジャンプすると――
  シュートを決める。
ルイス「(拍手をしながら)ママすごーい!」
ケン「今日はきれいに入ったね」
ルイス「あ、秀吾お兄ちゃんだ!」
  見れば、慌ただしく秀吾が走って来る。
ケン「やぁ、秀吾くん。久しぶりに今晩どうだい?」
秀吾「(ハァハァ)ケン君、ルイス君。ここは危険です。早く逃げ――」
  と言いかけたところで、突然、室外が稲妻のような閃光に包まれる。
秀吾とルイス「!?」
ケン「(おやおや)どうやら外の方でも、楽しそうなゲームが始まったようだね」

〇街
  空を覆っていた光が収まると、次の瞬間、空から超巨大な動物の形をした複数の人形(重そうな機械的な人形もあれば、大きさはあるが軽そうなぬいぐるみまで含めて様々な動物の人形)が、街に降りそそぐ。

〇バスの中
  ドンッ!という激しい音と共に停車するバス。
  見れば、友の目の前には、超巨大なクマのぬいぐるみの顔がある。
  驚く友の表情。
数美の声「おっきい……」
  不気味なクマの表情。
サンの声「ライチョウが来庁!」

〇市役所前(実在の場所?)
  役所の前では、超巨大なライチョウの人形を出現させたサンが、学ランを身にまとい、デッキブラシを携えながら決めポーズをとっている。
サン「掃除とは、心に溜まったゴミを払うこと!」

〇体育館
  いつのまにか半壊している体育館。
ルイス「(ゴホゴホ)」
ケン「こんにちは、うさちゃん」
  見れば、超巨大なウサギの人形がケンたちの目の前にあり、どうやらそれが上空から落ちてきたようである。
ルイス「あ、哺乳類だ! ママ、ぼく、哺乳類好き!」
ケン「(ふふ)哺乳類は感情豊かで、遊びがいがあるよね」
秀吾「ケン君、どうやらここへの攻撃は、急遽決まったようです。ケン君の裏切りが、奴らにバレたのでしようか?」
ケン「それはないんじゃいかな。たぶん、今回担当の魔法使いが学校嫌いだったとか、そんな理由だと思うよ」
  秀吾、自身のネクタイを締め直し、
秀吾「そんな曖昧な情報では困ります」
ケン「秀吾君って、いっつもかたいよね」
ルイス「かたーい!」
ケン「(秀吾に)君はもっと、手を抜くことを覚えた方がいいよ」
秀吾「ケン君は抜きすぎです」
ルイス「ぬきすぎー!」
ケン「(観客に語るように)ゲームはいつだってすでに始められている。僕たちがこのゲームから降りることは、不可能だよ」

〇バスの中
  クマを見る少数の客たちは意外と冷静で、「魔法使いか?」とか「早くマニュアル通り逃げないと」といった声が聞こえる。
友(M)「魔法使い……?」
サンの声「ヤァァァ!」

〇バスから少し離れた市街地
  サンが、大量の〝敵〟に向かって、光るブラシを振り回している。(敵の造形案:鬼や悪魔の形をした真っ黒な塊ないしは影、あるいは、CGで作った無機物(ウイルス的なもの?)のようなイメージ)

〇カラオケ店
  「スポンサー曲」を歌い始める(あるいはすでに歌っている)アイ。
  (以下、戦闘シーンのバックで曲が流れている?)

〇街
  街中に鳴り響くサイレン。
  避難所へ逃げていく人々(その中には、園田大勢の姿もある)。
  超巨大な人形たちによって、一部壊された建物。
  落ちてきた人形たちの、どこか不気味な表情。

〇バスから少し離れた市街地
  夥しいほど大量の敵が、サンに向かっている。
  すると――
サン「吠えるホエール!」
  見れば、サンの足元から超巨大なクジラのぬいぐるみが叫びながら出現し、大量の敵を飲み込んでいく。(サンが戦闘中に出現させた人形らについては、一定時間経過したら自然に消えるという設定です)
  さらに、四方から飛んでくる敵を、輝くブラシで倒し続けていくサン。
サン「あははははは! 微分! 積分! いい気分!」
  見事な太刀さばきである。
  しかしサンは、時折攻撃を受けてもいるようで、学ランに傷がついていく。
サン「クッ!」
  サン、敵から間合いをとると――
サン「土管がドッカーン!」
  見れば、地面から複数の土管のぬいぐるみ(「八万円」と書かれている)が、ニョキニョキと生えてくる。
  そして、敵を感知した土管が、一斉に爆発する。
  微笑むサンの表情。
  しかし、大量の敵が、サンの背後からも迫っていた。
  サンは素早く振り向くと、サンのブラシが輝きを増し始め――
サン「(必殺技を叫ぶように)トイレニ・イットイレー!」
  サンが渾身の力でブラシを振ると、ブラシから眩い光が放たれる。
サン「イッケーーーー!」
  見れば、その光を浴びた大量の敵が、公衆トイレに飛ばされていく。
  そして、トイレの流れる音――

〇バス付近
  友、バスから外へ出て、戦っている最中のサンの方へ足を動かす。
友「(険しい表情)」
数美「(友に)君は、逃げなくていいわけ?」
  見れば、友の傍らには、数美が佇んでいる(他の客は避難したようだ)。
  数美の声が聞こえないのか、サンに釘付けの友。
数美「(ムッとする)」
友(M)「……すごい」
  ×      ×      ×
サン「体がなければ、心は始まらない! ボクらはもっと真剣に考えるべきなのだ! ウンチをすることの幸福さについて!」
  ×      ×      ×
友(M)「あれが、魔法使い……!」

〇バスから少し離れた市街地
サン「(ブラシを振りながら)この蟹は、うまいかに!?」
  見れば、突如出現した大量のズワイガニの人形が、とことこ敵に向かっていく(が、すぐに倒される!)。
サン「イルカは居るか!?」
イルカ(機械音)「いるよ♪」
  見れば、サンの背後に巨大なイルカのぬいぐるみが出現しており、どうやらサンはそれによって敵からの攻撃を防いだようである。
  傷つくイルカ。
イルカ(機械音)「いたい♪」
サン「イカはいかが!」
  サンが振り返って素早くブラシを振ると、大量のイカの人形がブラシから出現する。
  そのイカがサンの背後にいた敵にぶつかると、なぜかその敵は消失したようである。そして、傷ついたイルカは、
イルカ(機械音)「元の場所に戻るフィン♪」
  と言うと、姿を消してしまう。
サン「こうなったら……」

〇公園(実在の場所?)
  そこには、巨大なゾウの人形がある。
  すると――
  ×      ×      ×
サン「(叫ぶように)ゾウさんを増産!」
  ×      ×      ×
  という声に反応するように、なんとゾウの人形が増殖して、パオーンと鳴きながら一様にどこかに向かって走り出す。

〇バスから少し離れた市街地
  サンに襲いかかる大量の敵。
サン「どうしよう♪ どうしよう♪」
  突如逃げながら歌い出すサン。
サン「オパキャマラドパキャマラド♪ パオパオパンパンパン♪ オパキャマラドパキャマラド♪ パオパオパ♪」
  見れば、大量のゾウがやって来て、サンの周りにいた敵を踏みつぶしていく。
  一面が煙に覆われ、やがて――
サン「(残った敵を見ながら)どうやらキミたちが最後みたいだね」
  残された敵。
サン「ハァァァァァ!」
  サンのブラシが〝布団たたき〟に変形し、輝き始める。
  ×      ×      ×
  サンを見て、驚く友の表情。
  ×      ×      ×
  眩い布団たたき。
サン「(必殺技を叫ぶように)フトンガ・フットンダー!」
  まるで剛速球をフルスイングするかのように、サンが布団たたきを振ると、眩い光が放たれる。
サン「フットベーーーー!」
  サンの美しいバッティングフォーム。
  光を浴びた敵は、吹っ飛びながら消えていく。
  ×      ×      ×
  どうやら敵はバスのある方向に吹っ飛んだようで、その風圧を受ける友と数美。
友「うっ」
数美「きゃっ」
  狂気の混じったサンの表情。
友(M)「すごい……!」
  爆風になびく友の衣服(このとき、臍が見える)。


【Bパート END】
[文字数:9093、二百字詰め換算:61枚09行]

【Cパート】

〇夕方、バス付近
サン「やったか……!?」

〇街
  どこかへ飛んでいく布団。
  街を壊した人形たちは半透明になり、やがて消えていく。
  街は、静寂を取り戻す。

〇バス付近
サン「ふぅ……」
  変身を解いて、私服姿になるサン(布団たたきは消える)。
サン「(くんくん)ん? この匂いは……」
  友を見て微笑むサン。
サン「見つけた」
友「?」
サン「愛想ない子に会いそうな予感してたんだよね。(友に近づきつつ)もしかして、キミ」
  すかさず数美、何か言おうとするサンに対して、
数美「出ていけ、魔法使い!」
友「(サンを見て)魔法、使い……」
サン「(友に)生で見るのは初めてかな? どうだい、カッコよかっただろ?」
数美「さんざん街をめちゃくちゃにしておいて、どこがカッコいいのよ! あんたらなんか、社会をむしばむ細菌同然じゃない!」
  超巨大な人形たちによって、一部壊された建物の跡。
サン「魔法使いは、細菌さんほど強くはないよ。それに、ボクだってできるなら壊したくはなかったさ」
  ×      ×      ×
  街に降りそそぐ超巨大な人形。(回想)
  人形たちの、どこか不気味な表情。(回想)
  ×      ×      ×
サン「(唐突に)ボクには、子供の頃からお気に入りのぬいぐるみがあってね。ある年の誕生日プレゼントに、その子の友達を買ってほしいと母にせがんだことがあるんだ」
友「……」
サン「今になって思うと、たぶんあの頃のボクが本当にほしかったのは、ボク自身の友達だったんだろうなと、そう思うんだよ」
数美「……いや、何の話よ!」
サン「要するに、あの子たちと一緒じゃないと、力が出ないってことさ」
数美「その野蛮な力に、みんな迷惑してるのよ!?」
サン「あははははは。野蛮な力か。まぁ、魔法使いとは、いうなれば〝歌そのもの〟であって、歌を歌う者ではないからね。暴力的な部分があるのはその通りさ。でもそのおかげで」
  友を見るサン。
友「?」
サン「キミと会うことができた」
  見つめ合う友とサン。
数美「(呆れながら)どうやら言葉が通じないようね」
サン「(友に)キミの心は、この街に満足していないんじゃないかい? 家と学校を往復するだけの日々に退屈していたんじゃないかい?」
友「それは……」
サン「これはボクの持論なんだけど、自分自身の人生を楽しむ以外に、悪魔から逃れる方法なんてないと思った方がいいよ」
数美「いい加減なこと言わないで!」
サン「(友に)大人たちは、キミが何を欲してるのか、知ってると言うだろう。けどそんなのは嘘っぱちだ。キミが本当に欲してることは、キミにしかわからない。キミが自分で見つけなければならない。さぁ」
  サンが友の方に手を伸ばそうとしたところで、
数美「離れて! あぶないわ!」
  数美は咄嗟に友の腕を掴み、乱暴に自分の方へ引き寄せる。
  体勢を崩す友。
友「(おっとっと)」
サン「(友に)キミはやりたいことやってる? 欲が無いのは、よくないことだよ」
数美「(サンに)欲を持ったって、意味ないでしょ! 最終的に決めるのは、大人たちなんだから!」
友(M)「たしかに……」
数美「それに、もうすぐハンターが来るわ!」
友「ハンター?」
数美「ええ。こいつらみたいな魔法使いを狩ることを専門にした特殊部隊よ」
友「そんな部隊があったんだ」
サン「(友に)どうやらキミの心にはまだ、霧がかかっているようだね」
  サンを見る友。
サン「鴨カモーン!」
  すると、どこからともなく超巨大な鴨のぬいぐるみが飛んできて、
サン「ボクの名前は榎戸サン。趣味は、ぬいぐるみの綿を入れ替えることだ。(鴨に乗りながら)じゃ、ハンターが来るらしいから、また後でね」
  と言って、サンは飛び去っていく。
サンの声「ばいばいばいきーん」
数美「(独り言のように)私服でも飛ぶんかい」
  ×      ×      ×
数美「ホント、非常識な存在よね」
  友、つかまれた腕を示しつつ、
友「あの、あなたは一体……?」
数美「ああ、私はね」
  と言うと、数美は、友の額に手をやる。
友「?」
数美「(ふんっ!)」
友「うっ……」
  意識を失う友。
数美「魔術を扱うハンターよ」
  どうやら数美は、〝魔術〟を使ったようである。
数美「あの魔法使いは、〝やりたいことやってる?〟とかぬかしてたけど……男の子がやりたいことなんて、決まってるわよね」
  数美の腕の中でぐったりしている友。

〇夕焼け空

〇とある高層ビル・全景
男Aの声「また派手に暴れたようで」

〇同ビル・応接室(高層階フロア)
  見晴らしがいい室内には、スーツ姿の男Aが、魔法使いA、魔法使いBと向かい合ってソファに座っている。
  彼らの間にあるテーブル上には、紙袋が置かれている。
男A「あなた方はいつも街を傷つけ、我々を驚かせる。おかげで我々は毎回、新しく地図を書き直す羽目になるわけだ」
魔法使いB「今回担当した魔法使いは、まだ若いですからね。力の制御がうまくできないんですよ」
魔法使いA「他者を育てる、他者を動かすというのは、どこの世界でも難しいことですよね。(真剣に)とはいえ……」
  (ここでカメラは、彼らの足元(床)を映す?)
魔法使いAの声「ちゃんと、指定したエリアにしか、攻撃はしていませんがね」
  (カメラは床を突き抜けて、地下へと進んでいく?)

〇同ビル・地下
  四方を石壁に覆われた薄暗い部屋に、大きなバスタブがある(水は入っていない)。
  見れば、バスタブの中には、セーラー服(水兵)姿の鏡夜が、胎児のように膝を抱えて丸くなっている。
アイの声「強大な力を持つ魔法使いといえど、それぞれの能力には限界がある」
  「むらむらラムネ」を持ったアイが、バスタブの方へ歩いてくる。
アイ「だから彼らは、それぞれの能力を補い合うための組織を作ったの」
鏡夜の声「それが、魔法協会」
  見れば、鏡夜が微笑みながら上半身を起こしている。

〇同ビル・応接室
男A「もちろん魔法協会のみなさんのことは信頼しています。あなた方が我々を裏切るなどとは思っておりません」

〇同ビル・地下
アイ「なぜなら、この世界で魔法協会が活動を続けていくには、この世界を支配する私たち、悪魔の作ったルールに従わなければならないから」
鏡夜「……魔法使いも所詮、限定された存在ということだね」
  薄く微笑むアイ。
鏡夜「コネを作ることができなかった落ちこぼれが集まって、俺たちを僻んでるわけだ」

〇同ビル・応接室
魔法使いA「……」
魔法使いB「……」
男Aの声「あなた方が街に穴をあけ、我々がその穴を埋める。この永遠に続く労働こそ、我々の平和にほかならない。これからも良きビジネスパートナーとして、良き関係を続けていきましょう」

〇同ビル・地下
  いつのまにかアイもバスタブ内におり、アイは鏡夜の膝の上に座るようにしている。
  さらによく見れば、鏡夜は片手をバスタブの外に置いており、その手には、アイが持っていたラムネを持っている。
アイの声「(ふふっ)あなたは本当にお利口さんね。えらい、えらい、ザッツライよ。彼らの理想は、悪魔からの援助を受けている以上、永遠に達成されることがない」

〇同ビル・応接室
  男Aから紙袋を受け取る魔法使いB。
アイの声「私たちからの援助がなければ、魔法使いは、まともな生活を送れないでしょうね」
  紙袋の中身は、札束である。

〇同ビル・地下
  アイ、鏡夜の体(腕とか脚)を指先で撫でながら、
アイ「協会に所属していない魔法使いもいるみたいだけど、たいていはすぐに始末されるらしいわ」
  アイに身を任せる鏡夜。
アイ「どれだけ才能があっても、個人の力はたかが知れている。才能だけで、世の中は動かない」
鏡夜「まったく合理的じゃない。タチが悪い馬鹿な連中だね」
アイ「そうなのよ。放っておいて暴れられても困るし、まったく自分勝手で困った連中なのよ。……それにしても、きれいな腕ね」
  少し、うっとりした表情を見せるアイ。
  その表情を見逃さない鏡夜。
アイ「あなたの友達も、あなたのようにかしこければいいのだけど」
  鏡夜、アイに顔を近づけて、
鏡夜「(真剣な口調で)それはどうだろう」
  少し頬を赤くするアイ。
  鏡夜、持っていたラムネを逆さにして、ラムネをボタボタと流していく。
鏡夜「(ささやくように)あいつは悪い子だからニャ」

〇扉の中の不思議空間・広間
  そこは、四方をフラクタル的な図形模様で満たした「異層空間」。
  そこを素早く歩く少女(サン)の後ろ姿がある。
  そして、サンが足を止めると――
  サンの先には、警察官の格好をした秀吾が佇んでいる。
  サン、秀吾に近づきながら、
サン「迷子の迷子のお巡りさん♪ あなたのおうちはどこですか♪」
秀吾「おうちですか? おうちを聞かれてもわかりません」
サン「じゃあ名前は?」
秀吾「名前は瀬戸秀吾です。お忘れですか? 榎戸サンさん」
  微笑むサンの表情。
サン「あははははは。(真剣に)スタナコ師匠をやったのは、シュウちゃん先生で間違いないですね?」
秀吾「……」
  秀吾、自身のネクタイを締め直し、
秀吾「困りましたね。スタナコさんの次はあなたですか」
サン「わんわんわんわーん♪ わんわんわんわん♪」

〇夕刻、街
  不気味に揺れ動く風見鶏。

〇体育館
  バスケットボールのゴールが崩れ落ちる。
  すると――
ケンの声「アリアドネは首を吊ってしまった」

〇街
  踏切前で佇むケン。
ケン「(観客に語るように)知ってるかい? 人生とは、費用がかかるわりに、割に合わない〝事業〟なのさ」
  カンカンカンカンと踏切音が聞こえ、遮断機が下りる。
ケン「さぁ、夜がはじまるよ」

〇数美の家・リビング
  広い部屋にはなぜか薄く霧がかかっている。
  さらに、プレイマットの上で寝ている友の姿がある(タオルケットがかけられている?)。
  その傍らに、友が着ていた制服に、アイロンをかけている数美がいる。
  シワを伸ばすアイロンのアップ。
数美「……」
友「んっ……」
  どうやら友が目を覚ますようである。
  友、目を開けると、霧のせいか目覚めたばかりのせいか、目の前がぼやけている。
友「(んっ)霧……?」
  ×      ×      ×
サン(回想)「どうやらキミの心にはまだ、霧がかかっているようだね」
  ×      ×      ×
  次第にぼやけた視界の中に、明かりの消えた円形のシーリングライトが見えてくる。
  その周りには、星形のシールがびっしり貼られており、その星のいくつか(8割程度)には、×印が付けられている。
  異様な光景である。
数美の声「やっと起きたみたいね」
  アイロンを置く数美。
数美の声「プレイマットの上は気持ちよかったでしょ? さぁ、立って」
  ザッと音がすると、数美の着ていた衣服(とメガネ)が、すべて床に落ちる。
数美「汚れちゃったし、体を洗いに行きましょ」
  よく見れば、友も裸の状態だったようだ。
  再び天井を見る友。
  明かりの消えたシーリングライトと、その周りの星々。

  ちゃぽんと水の音。
  明かりの点いたシーリングライト。
〇同家・浴室
  室内には、霧のような湯気が立っている。
  バスチェアに座る友。
  傍らに、友の背中を洗う数美がいる。
数美「寒くない? 日外友くんよね。お姉ちゃんは、今成数美っていうの。ちょこちょこテレビとかにも出てるんだけど、知ってるかな? よろしくね」
  まるで催眠術にかかっているような友の表情(虚ろな目をしている?)。数美は、魔術を使っているらしい。
数美「いきなりなんだけど、ご両親のことは嫌い? お姉ちゃんに教えて」
  なぜか友に質問する数美。
  そして、なぜか体を洗われながら、質問に答える友。
友「……わかんない。大事にされてるとは思う。だけど、だけど、なんていうか……」
  数美は背後から抱きつくように、友の顔に顔を近づける。
数美「なんていうか?」
友「なんていうか、本当の愛じゃないっていうか……」
数美「本当の愛って?」
友「……わかんない」
  ×      ×      ×
  ちゃぽんと水の音。
  浴槽に張られた水に映るライトが揺れている。
  浴槽に浮かぶ、アヒルの人形。
数美の声「いっちゃおうよ」
  ×      ×      ×
友「……僕には、あの二人が本当に愛し合っているようには思えないんだ」
  画面には、友の体を洗い続ける数美の姿。
友の声「どうして僕をつくったのか。どうしてこんな世界の中で僕をつくったのか。あの二人が本当は何を望んでいるのか。僕には全然わからないんだ。二人は僕に、他のみんなと同じように、ただ普通に生きてほしいだけみたいなんだ。でも僕には、みんなが普通にやってることの意味がわからないんだ。こんな普通はおかしいって思うんだ。僕は……僕は、病気なんですか!?」
数美「……」
友「どうしてこんな世界を肯定して生きていけるのか……僕には全然わからないんだ」
  手をとめる数美。
数美「それで、自殺しようとしたの?」
  ビクッとする友。
  ニヤつく数美。
数美「どうしたの? 自殺くらい、いまどき誰でも考えることでしょ」
  ×      ×      ×
  インサート、イメージ映像、深夜、友の家のベランダ。
  手すりの上に立つ友。
  冷たい夜の風。
  友が目を閉じたところで――
数美の声「どうしてやめちゃったの?」
  インサート終了。
  ×      ×      ×
友「星が、星がきれいだったから……」
  つい上を見上げる友。
  明かりの点いたシーリングライト。
友「僕は、いくじなしなんだ」
  数美、友の体を流し始める。
数美「いいじゃない、いくじなしで。最近消えた友くんのクラスメート、あの子、自殺したのよ」
友「……」
  ポツンと空いた空席。(回想)
数美「でも、誰も気にしていないし、私だってどうせすぐに忘れてしまう。私たちはみんな、その程度の存在なのよ。私みたいに多少の知名度があっても、それは大して変わらないでしょう」
友「……」
数美「だから、わざわざ自己主張するみたいに、自分から死ぬなんて馬鹿な真似する必要ないの。黙って決められたことをしてればいいのよ。友くんなら、きっとできると思うよ」
  友の体から流れていく泡。
数美「自分から苦しむ必要なんてないのよ。ずっと永遠に、気持ちのいいことを繰り返そうよ」
友「ずっと……永遠に?」
  数美、背後から友の耳にそっと口を近づけ、ささやく。
数美「ええ。ずっと、永遠に。だから、かたい話はおしまいね」
友「お姉……ちゃん?」
  振り向く友。
  ブラックアウト。
  ×      ×      ×
  水の流れる音。
  湯船の栓を抜く、数美の手のカット?

〇扉の中の不思議空間
  スタナコによって壊された扉。
サンの声「3マイル先にはサンマいる!」

〇不思議空間・広間
  見れば、サンから3マイルほど離れた先に、大量のサンマの人形が出現している(浮いている)。
秀吾「……」
  次の瞬間、一斉にサンマたちが秀吾に向かって飛んでいく。
秀吾「(ふんっ!)」
  サンマの攻撃?を、機敏な動きでかわしていく秀吾。
  そこに、光るブラシを出現させたサンが参戦する。
サン「イカはいかが!」
  サンが素早くブラシを振ると、大量のイカの人形がブラシから出現する。
  サンマとイカとサンの攻撃を、紙一重でかわしていく秀吾。
  さらによく見れば、秀吾はサンマやイカに触れている。
  すると、秀吾に触れられた人形たちは、次々と凍らされて床に落ちていく。
  サン、秀吾の手をかろうじてかわしながら、
サン「……魔術か」
秀吾「動かないでいてもらいましょう」
  身構えるサン。
秀吾「世界には、すべてが完備されています」
  サンに襲いかかる秀吾。
  サン、ブラシを使って秀吾との距離をたもちながら、
サン「土管がドッカーン!」
  見れば、秀吾の足下から複数の土管のぬいぐるみ(「八万円」と書かれている)が、ニョキニョキと生えてくる。
サン「安定したものは、見せかけに過ぎない!」
  一斉に爆発する土管。
秀吾「!」
  サンは爆発から逃れるように、後方に思いっきり飛び退くと、
サン「8マイル飛ぶと蜂参る!」
  と言って、大量の蜂の人形を出現させる。
  煙に覆われる秀吾。
サン「ぶんぶんぶん♪ 蜂は飛ぶ♪」
  サンの歌声にあわせて、蜂の群れが一斉に煙の中へ向かっていく。
サン(M)「近づくのは得策じゃなさそうだな。仕方ない、この技はめでたい時にしか使いたくなかったが……」
秀吾の声「8マイルも飛んでいないでしょ」
  見れば、ボロボロの姿となった秀吾が佇んでいる。
  秀吾、自身のネクタイを締め直し、
秀吾「まったく、あいかわらずいい加減な方ですね」
サン「対角線には鯛隠せん!」
  見れば、秀吾の対角線上に、豪華な鯛の人形が出現している(浮いている)。
  そして次の瞬間、猛スピードでその鯛が秀吾を目掛けて飛んでいく。
秀吾「!」
サン「まだまだぁ! 8万円に蜂蔓延!」
  サンの言葉と同時に、秀吾の足下に散らばった(八万円と書かれた)土管の破片?の周りに、大量の蜂の人形が、どこからともなく集まってくる。
サン「ぶんぶんぶん♪ 蜂は飛ぶ♪」
  秀吾、鯛を両手で捕らえて凍らせることに成功するが、勢いを殺し切れず、かなりのダメージを負ったようである。
秀吾「(クッ!)」
サン「(そんな秀吾を見て)チャーンス!」
  サン、ブラシを放棄して両手を地面に当てると、その手が輝き始める。
秀吾(M)「あの構えは……!?」
サン「ボクが師匠から教わったのは、微分だけじゃありませんよ!」
秀吾「まさか……」
サン「先生、ボクらは変わらないために変わる必要があるんです」
秀吾「コンパクト化する気ですか!?」
  秀吾、動こうとするが、蜂が邪魔して動けない。
秀吾「(クッ!)」
サン「ボクらの内部に存在する外部の存在。ボクたちからすれば、先生たちの方が、よっぽど細菌みたいな存在だと思いますよ」
秀吾「スタナコの弟子め」
サン「ハァァァァァ!」
  煌めくサンの身体。
  すると、四方の図形模様が変形し、〝空間自体〟が歪んでいく。
秀吾「!?」
サン「ぶんぶんぶん♪ 蜂は飛ぶ♪」
  見れば、蜂たちが、二つの円を描きながら飛んでいる(∞のように見える)。
サン「シュウちゃん先生、あなたはもっと、ラフになったほうがいい」
  不敵に微笑むサン。

〇とある高層ビル・地下
ケン「(紙飛行機を飛ばしながら)知ってるかい? 何万年もの進化の果てに、僕たちの社会は、〝喪失〟から解放されたんだ」
鏡夜「……彼が?」
アイ「ええ。ケン君よ」
  紙飛行機が、バスタブの上を飛んでいく。
  いつのまにかバスタブにはお湯が張っており、浴槽にはアヒルの人形が浮いている。
ケン「こんばんは、福元鏡夜くん。僕が君を選んだんだ」
  床に落ちる紙飛行機。
  傍らでは、ルイスが大きなサイコロを投げている(双六ゲームをしている)。
ケン「君は、猫を被るのが上手だからね。きっと良い商品になるよ」
鏡夜「商品?」
アイ「ええ、そう。(鏡夜の肩に手を置き)あなたは、選ばれた商品」
鏡夜「(アイの方を向く)」
ケン「もう君は、僕らの目の保養のためだけに存在しているんじゃないってことさ」
アイ「あなたは夢を与えられたの。私たちとつながって勝ち組になったあなたには、充実した生産的な人生が、これから待ってるわ」
鏡夜「(少し微笑む)」
アイ「そして選ばれたあなたは、選ばれなかった者たちの、心の穴を埋めなければならないの」

〇数美の家・一室
  部屋の中央で、回し車を走り続けるハムスター。
アイの声「自らを〝被害者〟と規定する者たちのために、回り続けなければならないの」
  エンジン音。

  走るバスのタイヤのアップ。(オーバーラップ)
  次第に大きくなるエンジン音。
〇深夜、公道
  スクールバスが走っている。

〇とある高層ビル・地下
ケン「(芝居口調で)おお! 愛だ! 愛で世界は回っているのだ!」
  緊張する鏡夜の表情。
  ルイスが投げたサイコロの、6の目のアップ。

〇バスの中
  パネルの記号は、すべて常に「06:66」を示している。
  一番後ろの席に、数美と、新品のように綺麗な制服を着ている友がいる(数美はメガネなし、乗客は二人だけ)。(自動運転?)
  スッキリしたような友の表情。
友「(明るめに)結局さ、みんなが死ねばいいんじゃないかな?」
  少し驚く数美の表情。
数美「できるならそれもいいかもね。でも、できないでしょ? だから、平和に管理されるのが一番なのよ」
友「うーん、そっかぁ……。うん、そうかもね。管理されるのは悪いことばかりじゃないもんね。きっと、こんな世界に生まれてきた時点で、みんな負け組なんだろうね」
数美「(ふふっ)これからもいい子でいてくれたら、また、してあげてもいいわよ」
友「(思わず)ホント!?」
数美「管理されるのは、悪いことばかりじゃないでしょ」
  少し頬を赤くする友。
数美「(独り言のように)残念だけど、もう、子供が生まれてくるのが素晴らしいことだって、無条件で信じられるような社会じゃないからね」
友「それは悲しいことだね」
  すると突然、バスが減速を始める。
  何だろうという顔を浮かべ、窓外を覗きに行く友。
  外では雨が降り始めたようだ。
  次第にこわばる数美の表情。
  少し先に見える屋根付きの停留所には、巨大な白い馬のぬいぐるみの姿が見える。
  さらによく見ると、その傍らには、学ランを着たサンが、ビニール袋を持って佇み、その奥には、巨大なネギを携えた鴨のぬいぐるみもいる。
  ×      ×      ×
  停車するバス。
  扉が開くと、サンが馬のぬいぐるみと共にバスの中に入ってくる。
  ×      ×      ×
  扉が閉まり、再び走り出すバス。
  それを見送る鴨。

〇とある高層ビル・地下
  ネコ耳のカチューシャを付けた鏡夜を、スポットライトが照らす。
鏡夜「(芝居口調で)気を落とすことはございませんよ、ご主人様。僕に袋をひとつください。それから藪の中を歩いて行けるような長靴を一足作って下されば、それでいいんです。そうすりゃ、ご主人様の分け前も、思ったほど悪くないってことが、お分かりになりますニャ」


【Cパート END】
[文字数:9040、二百字詰め換算:63枚09行]

【Dパート】

〇深夜、バスの中
  一番後ろの席に、数美、友、サン、馬が(この並びで)座っている。
  数美は窓外を見ている。
サン「ここは暖かくていいね。外は寒くて大変さ」
  (エアコンの)吹き出し口のアップ。
サン「(芝居口調で)ああ、適度に暖かい! なんと素晴らしいことだろう!」
数美「大袈裟な」
  少し驚いている友。
サン「雨も降ってきたからね。もう、ピッチピッチチャップチャップランランランって感じさ」
数美「どういう感じよ……。てか、どうしてここがわかったわけ?」
  サン、数美を一瞥して、
サン「匂いだよ」
  サン、ビニール袋から食べ物Aを取り出す。
サン「おいしそうな匂いに、誘われたのさ」
  サン、食べ物Aを一口食べる。
数美「(辛辣に)くっさ」

〇公道
  雨の中を猛スピードで走るバス。
サンの声「あげる」

  サンの歯形が残る食べ物Aのアップ。
〇バスの中
  どうやら友は、サンから食べ物Aをわたされたようである。
友「……」
サン「さぁ食べて。それはとてもおいしいよ」
数美「食べかけをわたすとか、どんだけ非常識なのよ。(友に)だいたい、さっきまで美味しいおまんま頂いてたんだから、そんなのいらないわよね?」
サン「それはボクのお気に入りなんだ。ボクたちは似た者同士だから、きっとキミも気に入ると思うよ」
数美「どうしてあんたに、そんなことわかるのよ?」
サン「風格を見ればわかるさ」
数美「(辛辣に)風格て」
  見つめ合う友とサン。
  間。
  友、サンの視線に負けるように、つい食べ始める。
友「あっ、ホントだ。おいしい」
サン「(微笑みながら)だろ?」
  不機嫌になる数美の表情。
サン「もし気に入ってくれたなら、今度は、いつかキミが誰かに、それを紹介してあげてほしいな。なにせ、良いものは良いと実際に口に出して広めていかないと、すぐに忘れられてしまう世の中だからね」
友「(むしゃむしゃ)」

〇扉の中の不思議空間・調理場
  ケン、エプロンをつけながら、
ケン「さて、もう一匹のネコちゃん、というよりワンちゃんは、ちゃんと僕のもとに届くのかな?」

〇公道
  夜の町の風景。
  雨の中を走るバス。
サンの声「キミたちは、どういった過程で、その食べ物が店頭に並んでいるのか想像できるかい?」

〇バスの中
友「そういえばいつからか、そういったことを考えなくなっていたような……」
数美「いいのよ、そんなこと考えなくて。実際私たちは、それで困ってないでしょ」
  食べ物Aに視線を落とす友。
サン「ボクらの社会が歩んでいる道は、どこか間違っているとは思わないかい?」
数美「だから思わないわよ」
サン「そうかな? 少なくともボクは、毎年何百という子供たちが自ら命を絶っているような社会は、まともな社会とは思えないよ」
数美「いつの時代にも、世間と調和できない者はいるものよ」
友「……」
  サンの奥から、馬がこちら(数美)を見ている。
数美「てか、(馬を示して)そいつはなんなのよ?」
サン「ん?」
数美「その馬よ」
サン「あぁ、かわいいだろ? (馬を撫でながら)このおうまくんはボクにとって大切な友人であり、頼れる相棒であり、神聖な精霊であり、すべてを知る神様であり」
数美「なんじゃそりゃ」
サン「あるいは単なるぬいぐるみ、オモチャであり、でもって本当のところは、そのいずれでもなく、いずれでなくもないのかもしれない」
数美「またイミフ(意味不明の略)なことを……。(馬をじっくり見るように)ま、でもたしかに、楽しめそうなオモチャではありそうね。意外とかわいいし」
サン「(嬉しそうに)そうだろう、かわいいだろう! うんうん、ボクたちは、意外と馬が合うのかもしれないね。そうだ! よかったら、この子はキミにあげよう!」
数美「は?」
サン「なぁに心配はいらない。ボクにはこの子もいるからね」
  と言って、サンはその場に、巨大な牛のぬいぐるみを出現させる。
友「(唖然)」
数美「白馬の代わりがそれでいいわけ?」
サン「馬も千里、牛も千里さ。この牛は、虹だって渡れるんだぜ」

〇不思議空間・調理場
  そこではケンが、貝とキノコのスープ(ホワイトシチュー?)を作っている。
ケン「(観客に語るように)知ってるかい? いくら世界を信じてみても、世界が君に応えてくれることはないんだ。なぜかって? なぜなら世界とは、僕のことだからさ」
  ケン、鍋を混ぜながら、
ケン「(ふふっ)だいたい、何者でもない君のことを、一体誰が見つけるというんだい? 君だって、本当はうすうす気づいてるんじゃないかい? 自分は誰からも選ばれることはない、誰からも認められることはないってことに」
  ケン、スープの味見をして、
ケン「僕たちは、共に話すことはできない。けれど、共に祈ることならできる。さぁ、共に祈ろう」

〇深夜、道路
  バスは、長いトンネルに入っていく。
サンの声「ボクは普段、アルバイトをしながら色々な街を行ったり来たりしてるんだ」

〇バスの中
  一番後ろの席に、馬、数美、友、サン、牛が(この並びで)座っている。(無理そうなら牛は前の席へ移動か?)
  数美、流れる街灯の光から目をそらしながら、
数美「バッカみたい。今時放浪なんかハヤらないわよ!」
  サン、数美を一瞥して、
サン「何かになれるのは、バカだけだよ。それから、人生において大切なのは、タイミングだ」
友「タイミング?」
サン「ああ。運と言い換えてもいい」
友「運?」
サン「うん、運」
  間。
友「ところで、どうして魔法が使えるのにバイトを?」
サン「あははははは。強い魔法を起こすには、〝よおし、戦うぞお〟って気にならないといけなかったりね、色々制約があるんだよ」
数美「ふーん」
サン「あとまぁ、ボクみたいに、協会に所属しているような魔法使いは、なんだかんだ言って良心があるからね。変なことに魔法を使わないのさ」
友「ふーん」
  数美、馬に触れながら、
数美「(サンの方を見ずに)てかあんたさ、こんなとこにいていいわけ? あんたが夕方戦ってたやつら、他にもまだいっぱい外にいるんでしょ?」
サン「(少し驚いたように)それなりに興味深い質問だね。キミはそのポジションにいながら、ボクのような魔法使いに興味があるのかい?」
数美「(チッ)うっさいわねぇ」
サン「実を言うと、いま外にいるやつらを倒すのは、ボクの役目じゃないんだ。というか、ボクの当面の目的は、そいつらを倒すことですらないんだよ」
  サン、友を見る。
サン「日外友くん、先日、福元鏡夜くんは、この街に残ることを選択した」
友「えっ」
  ×      ×      ×
  インサート、とある高層ビル・地下。
  そこでは、アイが鏡夜に、様々な衣装を着させて遊んでいる。
友の声「鏡夜くんが、この街に……?」
サンの声「キミは、どうする?」
数美の声「(ふふっ)あんたも一足来るのが遅かったわね。この子はこの街での生活に満足してるのよ」
  インサート終了。
  ×      ×      ×
数美「(友に同意を求めるように)ね?」
サン「ボクのようなやからが、魔法使いの実態なんだ。魔法使いなんて、案外簡単になれるとは思わないかい?」
数美「何が魔法使いよ、バカらしい」
サン「キミは命を絶とうとしたとき、声を聴いたんじゃないかい?」
友「どうしてそれを!?」
数美(M)「何それ」
サン「わかるとも。ボクもあの懐かしさを感じるような声を聴いた仲間だからね」
友「!?」
  ×      ×      ×
  インサート、数日前、深夜、友の家のベランダ。
  友、手すりに体重をかけたところで――
謎の女性の声「待って」
友「!?」
謎の女性の声「私はあなたを、待ってるよ」
友「誰……!?」
  友、振り向くと――
  誰もいない。
謎の女性の声「こっちだよ」
  友、咄嗟に空を見上げると――
  驚く友の表情。
  そこには、眩い星空がいちめんに広がっている。
サンの声「もし、若々しい言い方が許してもらえるなら、キミはその当時、宇宙を知っていたんだよ」
  インサート終了。
  ×      ×      ×
  友の目から涙が流れる。
友「あれ? どうして……」
サン「ボクたちは、呪われて生まれて来たわけじゃない。ただ、誰もがいつでも、呪われるうるだけだ。そして同じように、誰もがいつでも、魔法使いにだってなれるんだ。ボクたちが使う魔法の本質とはね、魔法使いとの出会いそのもののことなんだ。ボクたちが出会ったこの宇宙を、どうか信じてほしい」
友「……」
サンの声「キミは、そのままのキミに成る必要がある!」
  友の目のアップ。
  ×      ×      ×
  ガタガタガタと強風で窓が鳴る音。
  インサート、友の心の中?、とある一軒家。
  窓の外では雪がふぶいている。
  そのリビングにて。
鏡夜の声「アハハっ!」
  見れば、コタツに入った鏡夜が、TVを見ながら笑っている。
  さらによく見れば、コタツに入っているのは、寝ているアイと、同じくTVを見ている数美と、外を見ている友を含めた四人である。そして、コタツの上には、「アルミ缶」と書かれたアルミ缶の上にみかんが置かれたものが四人分置いてある。
  じっと外を見つめている友。友の小指には赤い糸が結ばれており、どうやらその糸は、コタツの中へと続いているらしい。
  すると――
  ピンポーンとインターフォンが鳴る。
数美「ん? 誰かしら、こんな吹雪の日に」
  エプロン姿?の数美が立ち上がり、リビングに付けられたモニターを確認すると、そこには、リンゴが入ったカゴを持ったサンの姿がある。
  サンは、マッチ売りの少女風の装いをしている。
数美「はい?」
モニターに映るサン「こんにちは、リンゴ売りです」
数美「リンゴ売り?」
サン「ええ。リンゴ、いかがですか?」
  真っ赤なリンゴのアップ。
サンの声「隣国のリンゴです。あははははは!」
  数美、コタツの方を見ると、ちょうど鏡夜が、みかんの皮をむいて食べようとしているところである。
  みかんのアップ。
数美「いえ、うちは結構です」
サン「……そうですか」
  窓の外を見つめる友。
  サン、家を後にしながら、
サン「毎日♪ 吹雪♪ 吹雪♪ 吹雪♪ 吹雪♪ 吹雪~♪」
  ×      ×      ×
数美「あー寒い寒い」
  と言って、数美がコタツに入ると、突然、友が立ち上がる。
数美「どうしたの?」
友「雪がやんだみたい」
数美「……何言ってるの?」
  窓の外では雪がふぶいている。
数美「ほら、寒いからコタツ入ってなさい。今、みかんむいてあげるから」
  と言って、数美がみかんを手に取る。
  すると、ザッと音がして、友の着ていた衣服が、すべて床に落ちる(赤い糸も一緒に落ちる)。
  見れば、友は、まわし一丁の格好である。
数美「(焦りながら)ちょっと、何やってるの!?」
アイの声「ハッケヨイ!」
  よく見れば、彼らがいた部屋は、実はスタジオ内のセットだったようで、吹雪も作り物だったことが判明する。
鏡夜「俺は行かないぞ」
  みかんを食べ続ける鏡夜。
友「うん」
アイの声「ノコッタ!」
  アイの言葉と同時に、友をスポットライトが照らす。
  セットの外へと歩き始める友。
  友のお尻のアップ。
  真っ赤なリンゴのアップ。
  友は、いつのまにかリンゴを手に持っている。
友「行ってきます」
  数美の悲しげな表情。
  鏡夜の悲しげな表情。
  いつのまにか起き上がっているアイが鏡夜に、
アイ「ないない、心配ナッシングよ。あなたはそのままでいいの」
鏡夜「……」
アイ「猫はコタツで丸くなってましょうね」
  バタンと倒れるアイと鏡夜。
  ×      ×      ×
  マット上で鏡夜の足首をつかむ友。(回想)
  じゃれるような反応を見せる鏡夜。(回想)
  ポツンと空いた空席。(回想)
  ×      ×      ×
  友、ガチャッとドアを開け、スタジオから出ていこうとする。
  ドアの向こうには、光が広がっている。
  友、決意の表情。
  インサート終了。
  ×      ×      ×
  友の決意の表情。
  すると、友の身体(胸のあたり?)が輝き始め――
数美「そんな、バカな……!」

〇道路
  バスがトンネルを抜けると、雨がやんでいる。
  おりしも夜明けの時刻で、陽が差してくる。
  すると突然、バスで爆発が起こり、なかから煙と共に〝何か〟が頭上に舞い上がる(このとき、友が着ていた制服がどこかへ飛ばされる)。
  見れば、キュートな魔法少女風の衣装?を着た友が、空中で浮いている(その手には、ステッキのような武器を携えている?)。

〇バスの中
  数美は立ち上がり、バスの中から空を見上げている(バスは止まっている)。
  唖然とした数美の表情。
  サンは全く動じていなかったようで、座席に座ったままだ。
サン「キミなら、きっと飛べると信じていたよ、友!」
  よく見れば、バスの中にあるパネルの記号が、すべて「66:66」になっている。

〇空中
  友の周りに、夥しいほど大量の〝敵〟が集まっている。
  緊張する友の表情。
友「(力が入る)」
  友、向かってくる敵に対して、武器で応戦する。
友「ハァッ!」

〇バスの中
数美「なによ、あの格好……女になりたかったの!?」
サン「いや、そういうことじゃないと思う。友のイメージする、友の好きなヒーローが、ああいう格好をしていたんじゃないかな」
  穴の開いた屋根から見える空。
  バスの中へ零れる水滴。
サン「ま、ボクの解釈でしかないけどね」
数美「(少し笑いながら)ホント、非常識な存在ね」
サン「何だか嬉しそうじゃないか」
数美「呆れてるのよ」

〇空中
  敵と戦い続ける友。
  すると突然、空に〝裂け目〟が出現する。
友「!?」
  裂け目の中には、何人かの人影が見える(魔法使いAとBや、神父の格好をした老人魔法使い(コメダ)、幼い少女の姿をした魔法使い(イリヤ)など、数名の魔法使いの姿がある)。
魔法使いA「加勢するわ、新人魔法使いさん!」

〇バスの中
数美「(チッ)」
  数美、ポケット(あるいは別のどこか)からメガネを取り出し、それをかける。
  画面では、友と魔法使いたちが大量の敵と戦っている様子が流れている。(武器は友も含め、掃除用具あるいはスポンサーと関係あるもので統一させる?)
数美の声「あんたさ、魔法協会をどう思ってるわけ? あの宗教くさい協会が、実は裏で私たちと繋がって猿芝居を打ってること、全部知ってるんでしょ?」
サンの声「完璧な魔法使いが存在しないように、完璧な組織だって存在しないだろうさ。現に、魔法協会だって一枚岩じゃない。ただ、協会は貴重な場所だと思うよ。何かを志したとき、似たような目的を持った者同士が、ある程度気軽に集まれる。そんな場所があるということは、とても大事なことなんじゃないかな」
数美の声「でも、結局最後は悪魔に吸収されるだけでしょ!?」
  ×      ×      ×
サン「キミたちの立場から〝そう見える〟ってことは理解しているつもりだし、実際ボクだって、ある意味では、消費されるだけの商品みたいなもんさ。キミたちとやってることは、そんなに変わらないと思う」
数美「……」
サン「ただボクらは、キミたちとは宇宙の見え方が、少し違うのさ」

〇扉の中の不思議空間・一室
ケン「やれやれ、どうして奴らは、文字だけでできた存在に憧れないのかな……。準備はいいかい? ルイス」
ルイスの声「いつでもどうぞ!」

〇バス付近の林の中?
  そこには、ルイスが佇んでいる。
  すると、ルイスの身体が霧に包まれ、辺り一帯も怪しい霧(闇?)に覆われていく。

〇空中
  魔法使いBの攻撃(ミサイル?)が敵に着弾して、爆発が起こっている。
魔法使いB「灰色の労働を燃やせ!」
  すると――
  地面が揺れ出し、辺りを気にする魔法使いたち。
魔法使いA「何!?」

〇林の中
  突如、霧の中から現れたのは、超巨大な蛇(龍?)である(ルイスが変身した姿)。
  その蛇の目のアップ。

〇空中
  蛇に驚く魔法使いたち。
  すると――
友「あいつはオレが倒します!」
  と言って、蛇に向かって急スピードで飛んでいく友(疾走!)。
  それぞれ再び戦い始める魔法使いたち。
魔法使いA「ちょっとサン、あんたも手伝いなさいよ!」
魔法使いB「教えるってのは、説明することじゃなくて、一緒に訓練することだろ!」

〇バスの中
数美「(心配そうな表情)」
サン「そろそろフィナーレだね」

〇とある高層ビル・応接室
  「スポンサー曲」を歌い始める鏡夜。
  (以下、戦闘シーンのバックで曲が流れている?)

〇空中
  蛇は最初から友を狙っているようで、向かってくる友に対して、炎のようなものを連続で口撃してくる。

〇扉の中の不思議空間・一室
ケン「また大きくなったね、ルイス」

〇空中
  友、まるで未来が見えているかのような動きで、見事に口撃をかわしていく。
  その他の魔法使いたちも、それぞれの戦いを続けている。
  ×      ×      ×
ケン「逃がさないよ!」
  ×      ×      ×
  友、蛇と向かい合うと、
友「ハァァァァァ!」
  ×      ×      ×
ケン「呑み込め!」
  ×      ×      ×
  友を呑み込もうとする蛇。
  友の身体が再び輝き始め――
  見れば、友は王子系ロリィタの姿(あるいはウェディングドレス姿、下は半ズボン?)に変身している。
  そして――
友「(必殺技を叫ぶように)エラン・ダムール!」
  と叫ぶと、武器から眩い光が放たれる。
  それを受け、あっさり消失していく蛇。
  間。
友「やったか……!?」
  ×      ×      ×
  苦しそうなケン、全身の〝外皮〟をぼろぼろ落としながら、
ケン「強いね、日外友くん。でも、すべての価値は、すでに創られているんだよ」
  見れば、ケンの顔が、園田大勢になっている。
  そして傍らには、元の姿に戻ったルイスの姿が顕現する。
ルイス「ママ、ごめんなさい。負けちゃった」
  ×      ×      ×
  朝日に照らされ、神々しく輝く友。
  その満足そうな表情。
  先程まで蛇がいた空間には、虹がかかっている。
友「やったよ、鏡夜くん……」
  ×      ×      ×
  友を見守る魔法使いたち。
鏡夜の声「俺にも見せたことない顔しやがって……」

〇とある高層ビル・応接室
  見れば、鏡夜が両手の指で四角のフレームを作り、片目を閉じて虹を見つめている。
鏡夜「お前には、制服が似合ってたよ……。ま、でも一応保存っと」

〇バスの中
数美「あの子は、ダジャレを叫ばないのね」
  サン、立ち上がる。
サン「ボクらの仲間は、向こうの世界で待っている。(カメラ目線で)キミも、ボクらの仲間にならないかい?」
数美「なるわけないでしょ」
サン「それは残念。あ、そういえばキミ、メガネかけてる方がかわいいね」
数美「なっ……!」
  サン、牛のぬいぐるみにまたがると、虹の上を渡りながら、裂け目に向かって飛んでいく(モーモー)。

〇空中・裂け目付近
友「(飛んでくるサンに)榎戸サン、ありがとう! 僕はもう、大丈夫です!」
  微笑むサンの表情。
数美「(バスの外から大声で)そんな格好で出て行っても、笑われるだけよ! 戻ってきなさい! 鏡夜くんの前から消えることになるのよ!」
友「ありがとう、お姉ちゃん! でもいいんだ! それでも……それでも僕は、榎戸さんたちと戦うよ! 未来の自分のために!」(大声が不自然すぎるようなら、二人にメガホンでも持たせる?)
サン「本当にいいのかい?」
友「なんとなく、鏡夜くんと同じ学校に進学したいと思ってました。でも、これでいいんだ。僕は、鏡夜くんに誘われて、救われていたんだ。だから今度は僕が……(数美に)いつか必ず迎えに来るから! じゃあね、お姉ちゃん!」
  裂け目に入っていく友と魔法使いたち。
  すると、巨大なカーテンが裂け目にかけられていき、空はたちまち通常の空へと戻っていく。
  ×      ×      ×
  静寂を取り戻す街。
数美「次戻ってきたら、今度こそ、あなたの心に鍵をかけてみせるわ」
  不敵な笑みを浮かべる数美。
  ブラックアウト。

  放課後のチャイムが鳴る。
〇夕方、灰鳥栖学園・校庭
  校庭の片隅に植えられた二本の木のうちの一本が切られている。
サンの声「この世界に人間は存在しない」

〇同校・校長室
  机に座っている校長と思われる男が、立ち上がりながらタブレットを数美に差し出す。
  数美、あくびのポーズをしながらタブレットを受け取る。
サンの声「ボクたちの祖先である悪魔が、すべての人間を駆逐したからだ」
  タブレットには、少年の顔が映っている。
  不敵な笑みを浮かべる数美。
サンの声「人間はかしこかった」

〇同時刻、市街地
  巨大な街頭モニターでは、「ワンダフルフルーツポンチゼリー」のCMが流れている。
サンの声「だから彼らは、抵抗を示さなかった」
  CM映像には、なんとアイドル衣装を着た鏡夜の姿がある。
サンの声「彼らは最初から、悪魔の到来を望んでいたのだ」

〇同時刻、友の家のベランダ
  人面怪鳥(アイ)が、ベランダにいた友の母親にかぶりつく。
サンの声「彼らは最初から、負けることを望んでいたのだ」
アイ「そう、みんな堕天使ね♪」

〇同時刻、扉の中の不思議空間・一室
  そこには、ゾウの人形(サンが顕現させたものとそっくり)がある。
  見れば、そのゾウの人形で、ルイスとサラリーマンの格好をした秀吾が遊んでいる。楽しそうな二人の姿(秀吾は、まるで人が変わったように明るく見える)。
サンの声「誰もが、悪魔の支配する幸せな世界に歓喜するはずだった」
  そこに、魔法使い風の格好をしたケンが現れる。
  ケンに気付いて、手を振るルイスと、ネクタイを緩める秀吾。
ケン「(薄く微笑む)」
サンの声「だけど、この世界にはボクらがいる」

〇同時刻、数美の家
  カーテンの隙間から、陽の光が入り込んでいる。
  部屋には、友が着ていた制服が掛けられ、机の上には、食べ物Aが置かれている。
  そして、広い部屋の中には、白い馬のぬいぐるみがある。
  その馬のアップ。
サンの声「魔法使いだ」


【Dパート END】
[文字数:9013、二百字詰め換算:66枚01行]

この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。