じゅん
父
おばあちゃん
アオト
さえこ
ーーーーーーーーーー
さえこ どうもどうもー
じゅん どうもー
さえこ さえこです
じゅん じゅんです
さえこ 二人合わせて~~
じゅん …なくない?
さえこ 特にないね、コンビ名とかは
じゅん てか、ここどこ?
さえこ てか、今日は、私の親友じゅんの話をしたいと思います
じゅん わー恥ずかしい
さえこ まずは、どこから話そっか?
じゅん うーん…これってさ、私が最終的にアフリカに移住することになるまでの話をするんだよね?
さえこ うん。てかオチ言っちゃったね。大丈夫?
じゅん じゃあ、大学入学からでいいんじゃない?
さえこ いや、小学校からいこう
じゅん へ?
さえこ 小学生のじゅん、可愛いから
じゅん 私たち出会ったの大学だよね?私の小学生時代しらないよn
さえこ それでは!今から16年前に時をさかのぼります!
じゅん まじで?
さえこ いいから始めるよ!せーのっ
二人 とぅるるるるるる~
父 じゅん、写真撮るよ!ほら、こっち向いて!はい、入学おめでとう~!
おばあ じゅんちゃんも小学生か、立派だねえ
じゅん 私ね、おともだちいっぱいつくるの!
おばあ そうね、じゅんちゃんいい子だから、きっとたくさんお友達ができるわ
父 勉強も、ちゃんとやらなきゃだめだからな。学校で習うことは大事なことばっかりだ
じゅん やだ~
父 ははは、あ、電話、お母さんからだ。もしもし、ゆりこ、入学式、終わったよ。ああ、今から帰るよ。大丈夫、たくさん写真撮ったから!
じゅん おかあさん?
父 うん、もうすぐ仕事から帰ってくるって。…子供の入学式の日も、仕事か…
じゅん 小学校に入ったばかりの頃の私は、どちらかというとうるさい子供だった。思ったことをすぐ口にしちゃって、先生にもよく叱られてた。お父さんとお母さんは、私が小学校2年生の時に離婚した。授業参観の日、お母さんが教室で仕事の電話をしたことにお父さんが怒って、クラスのみんなの前で大喧嘩。それから私は、学校では何となく避けられるようになった。そんなわけで、私の面倒は、いつもお父さんとおばあちゃんが見てくれてた。まあ、もともとお母さんは家にいることが少なかったから、私の感覚としては大きく変わったことはなかった
じゅん ただいま
おばあ あら、おかえり
じゅん お父さんまだ?
おばあ まだ帰ってないわね。学校、どうだった?
じゅん …おばあちゃん、私ね
おばあ どうしたの?
じゅん 学校の皆に、嫌われちゃったの
おばあ じゅんちゃんが嫌われるはずないわ、とってもいい子だもの
じゅん 違うの。私、絶対嫌われてる。皆が私のこと無視して…それで、困ってる私のこと見てクスクス笑うの
おばあ それはひどいわね
じゅん 私、おともだちが一人もいないの(泣き出す)
おばあ あのね、本当にお友達が一人もいないってことはないのよ。じゅんちゃんの味方になってくれる人が、一人や二人はいるはずよ
じゅん そうかな
おばあ そうよ。でもね、つらくなったらいつでも泣いていいのよ
じゅん うん
おばあ よしよし。あ、そうだ、ご飯にしようかね
じゅん うん
おばあ お腹空いてる?
じゅん うん!
おばあ じゃあ一緒に食べようか。今日はカレーよ!
じゅん 知ってる、においでわかるもん
おばあ お父さんのぶんは冷蔵庫に入れとこうかしらね。さ、手を洗っておいで
じゅん やったー!私、おばあちゃんのカレーが世界で一番好き!
さえこ 続いては中学校。じゅんは、同じクラスの関口くんに一目惚れしました!そして彼女はバレンタインデーに、手作りチョコとラブレターを渡すことにしました
父 で、どうするんだ?
じゅん で、それをレンジでチン!
父 レンジでチンか。よし、と。何分?
じゅん 1分!あ、500ワットね!
父 え、まって、どうすればいいんだ?止まんないんだけど…
じゅん あーもうお父さん!オート機能じゃダメだって!
父 それにしても、何でわざわざ板チョコを溶かして、それを型に入れてまた固めるんだよ
じゅん だって手作りチョコだもん。友だちと交換するの
父 やべ、今日中に送らなきゃいけないメールがあるの忘れてた!ちょっと、これ、ここ置いとくからな
じゅん え、お父さん?
おばあ けっきょく、関口くんには「他に好きな人がいる」と言われて振られ、お父さんは、じゅんちゃんの学校行事にコミットしすぎて会社をクビに。それがちょうどじゅんの高校受験の時期と重なって、まあ、借金まみれで大変だったわ。私のヘソクリと年金があってやっと生活できてたくらいよ。さて、次は高校生のじゅんちゃんです
父 ただいまー
じゅん お父さんおかえり。ご飯作っといたよ!
父 ああ、会社の人と食べてきたからいいや
じゅん また?
父 またって何だよ、付き合いがあるから仕方ないの
じゅん たまには私も外食したいなあ
父 何これ?
じゅん あ、それ私の
父 また服買ったのか?
じゅん いや、最近買ってなかったよ
父 これ、似たようなの持ってるだろ
じゅん ちょっと、勝手に開けないでよ!何を買おうと私の勝手でしょ
父 こんなに無駄遣いするなら、小遣い減らすぞ?
じゅん 無理、ただでさえ少ないのに
父 少なくないだろ
じゅん 少ないよ!皆で遊びに行くって誘われても、私だけ行けないの
父 まあ、自分が稼ぐようになったら好きなだけ遊びな
じゅん そんなに言うならお父さんだって節約してよ!
父 じゅんが高校に入って、私はようやく会社で昇進しました。何せ、義務教育とは学費が違いますから、それなりの収入が得られるのはありがたいことでしたが、仕事は忙しくなる一方で、休みも取れず、終電で帰宅する毎日でした。そんなある日。
父 ただいま
じゅん おかえり。お父さん、あのさ
父 うわ、ビールないじゃん。クソかよ…
じゅん ねえお父さん、私ね、東京の大学に行きたいの
父 ダメだよお金ないんだから
じゅん お願い。…お金は、将来稼いで返すから
父 ダメだって。ていうか、無理。俺もう寝るから
じゅん …ご飯は?
父 いらない
じゅん 私、ご飯作ったんだけど。…ねえ待ってよ
父 うるさいな
じゅん なんで何も聞いてくれないの
父 聞いてるよ。東京の大学に行きたいなら、自分でお金貯めればいいだろ
じゅん だって、私の高校はバイト禁止だし
父 すればいいじゃん
じゅん 無理だよ
父 じゃあその話も無理だよ。明日もあるから寝かせてくれよ
じゅん でも私、東京の大学でちゃんと勉強したいことがあって
父 うるさいな
じゅん 勝手すぎるでしょ!
父 …勝手なのはどっちだよ。誰のために俺が毎日働いてると思ってんの
じゅん 自分のためでしょ
父 お前のためだよ!お前の高校の学費のために、やりたくもない仕事してんだよ!
じゅん 仕事してたら偉いの?私のことなんてどうでもいいくせに!私の誕生日だって忘れるくせに!
父 ……いいからもう寝るよ
じゅん お父さんなんか嫌い。こんなんだからお母さんも出てったんだよ
さえこ まあ、お父さんはこんなこと言ってたけど、結局お金を工面してくれて、じゅんは念願かなって東京の大学に進学。一人暮らしを始めて、私と同じ演劇サークルに入ったの!静かだったから、最初のうちは気難しい人なのかもって思ってたけど、話してみたらめっちゃいい子ですぐ仲良くなった。で、このアオトってやつはサークルの同期で、私とは学科も同じ
アオト おつかれ
さえこ じゅん~!
じゅん あ、さえこ、アオトくんも
さえこ じゅんも取ってたんだね、この授業
じゅん うん
さえこ 全然気づかなかった、ちゃんと毎回来てる?
じゅん 来てるよ!私、後ろのほう座ってたから
さえこ 私正直さ、授業の内容ほとんど理解してないんだよね。来週小テストとか無理なんだけど~
アオト 俺たち、これから学食に行くけど、一緒に行く?
じゅん いいの?あ、でも私お弁当持ってきてるんだよね
アオト お弁当?自分で作ったの?
じゅん あ、うん。そうだよ
さえこ アオト知らないの?じゅんめっちゃ料理上手いんだよ?
アオト え、そうなの?
じゅん いやいや全然、ただの節約だよ
さえこ 学食でお弁当食べれば良いんじゃない?
じゅん いいのかな、それ?
アオト 良いと思うよ。
じゅん 本当に?
アオト でも確かに、この大学だとなかなか見ないよな、お弁当持ってきてる人
さえこ ね、今度またじゅんの家行っていい?
じゅん いいよ、ご飯作ってあげるね
さえこ やった!じゅんの作るカレーまじで旨いんだよ~
アオト へえ、気になる
さえこ てかさ、本当にテストやばいんだけど。アオト一緒に勉強しようよ~
アオト いいよ
じゅん 一年生のときは本当に忙しくて、新しいことが多すぎて、もうてんやわんやって感じだったなあ。お父さんにはたまに連絡してたけど、返信はいつも短かった。
じゅん 今日は友達とディズ…某遊園地に行ったよ!めっちゃ混んでてびっくりした~!写真送るね。あと、今度帰った時におみやげ渡すね!
父 了解、ありがとう。体調には気を付けて
じゅん お父さんは最近どう?
父 仕事しかしてない
じゅん そっか。スタンプ、と
じゅん もともとそうだけど、文面で見ると余計にドライな感じがする。まあ、仕事もあるし、おばあちゃんも腰を悪くして大変だったらしいから無理ないけど。で、二年生の夏休みに久しぶりに帰省した
じゅん ただいま
おばあ おかえり~じゅんちゃん、大きくなったねえ
じゅん 身長は変わってないよ
おばあ そう?でも、大人っぽくなったわよ、さすが大学生
じゅん おばあちゃんは元気にしてた?
おばあ まあ、元気よ。ほら、荷物お部屋に置いといで
じゅん うん
おばあ それで、どうなの?東京の大学は
じゅん うん、楽しいよ
おばあ 友達はできた?
じゅん うん。何人か
おばあ それはよかった
じゅん でも、勉強が難しくて大変。課題も多いし
おばあ 大丈夫よ、じゅんちゃんはできる子だから
じゅん そんなことないって。お父さんは?
おばあ もうすぐ帰ってくると思うわ
じゅん そっか
おばあ 新しい会社、すごく忙しいみたいよ、しかも上司は年下だって
じゅん それ前にも聞いたよ
おばあ あら、言ったかしら
じゅん 言ってたよ、電話で
おばあ ああ、電話ね、そうだったわね
じゅん お父さん、今度はブラック企業じゃないといいけど
おばあ そうね、でも、すごく忙しいみたいよ
じゅん …じゃあ、ご飯作っとこうかな
おばあ あら、いいの?
じゅん うん。おばあちゃんに教わったカレー、作るね
おばあ まあ楽しみ。じゅんちゃんは手先が器用よねえ、お父さんとは大違い
じゅん たしかに。お父さん電子レンジも使えないからね
おばあ いいお嫁さんになるわ
じゅん 別に、お嫁に行くために料理してるわけじゃないよ。料理が好きなの
おばあ 素敵ねえ、こんなお嫁さんがいたら
じゅん だから違うって
おばあ ゆりこさんに似たのかねえ
じゅん わかんない
おばあ あの人も、料理が上手な方だったわ。どうして離婚しちゃったのかしらねえ
じゅん 知らないよ。私、お母さんのことはよく覚えてないや
おばあ そうだ、じゅんちゃんにプレゼントがあるのよ
じゅん え、何?
おばあ これよ、靴下
じゅん こんな派手な柄、私もう大学生だよ?
おばあ きっと似合うわ、可愛いから
SE:電車の音。
さえこ ♪あ~テトラポットのぼって~
じゅん テトラポットって何?
さえこ 知らない。何かのポットじゃない?
じゅん 違うと思うけど…あと、あんまり駅のホームで歌うの良くないと思うよ
さえこ あ、ごめん
じゅん どうしたの急に
さえこ いやさ、姉貴が家でずっと歌ってるからうつっちゃった
じゅん お姉さんいたんだ
さえこ うん。来月ルワンダに行くんだって
じゅん ルワンダ?何で?
さえこ わかんない。何か、ボランティアみたいなやつで行くって
じゅん へえ…
さえこ 変わってるよね、突然アフリカに行くなんてさ
じゅん ねえ、さえこってさ
さえこ うん
じゅん アオトのこと好きだったりする?
さえこ どうした急に
じゅん あ、いや
さえこ ないない、あいつ、面白いけど、真面目すぎるし、恋愛対象ではないかな
じゅん そっか
さえこ 友達としては好きだよ
じゅん 仲いいもんね
さえこ どうしてそんなこと聞くの?
じゅん この前さ、アオトと二人で帰ってて
さえこ うん
じゅん 趣味の話とか、たわいもない話してて、私たち好きなもの似てるね~みたいになって
さえこ うんうん
じゅん いろいろあって、今度一緒に映画行くことになったんだけど
さえこ まじ!
じゅん いや、別に付き合ってるわけじゃないし、友達として行くんだけど、もしさえこが好きだったりしたら嫌かな~と思って
さえこ 嫌じゃないよ、むしろ、最高に面白い
じゅん 面白いって何よ
さえこ お似合いだと思うよ?
じゅん だから、そういうことじゃないって
さえこ 実は私も、最近、彼氏ができました
じゅん え、ほんとに?
さえこ うん
じゅん 例の、アプリで知り合った人?
さえこ そうそう。よっこいしょの
じゅん よっこいしょ?
さえこ あ、アプリの名前
じゅん アプリの名前なんだ
さえこ で、さっそく今度の休みに初対面してきます!
じゅん え、まだあったことないの?
さえこ リアルではね、チャットはしてるよ?
じゅん そういう時代なのか…?
さえこ ま、お互い頑張ろうよ、ね!
じゅん そう、だね
さえこ これが、私たちが三年生になった時の話。でも、その映画デートの日は何もなくて、本当に映画を観るだけだったらしい。これ、文字通り、だからね。まじで、ご飯とかもなし。映画が始まる時間に待ち合わせて、終わる時間に解散したみたいなもん。なんだけど、その後もちょくちょく二人で出かけてたらしく、初デートから約3か月後、ついにアオトはじゅんの家に足を踏み入れます
アオト 靴下、可愛いね
じゅん ん?あ、これね。おばあちゃんからもらったの
アオト すっごい派手だね。なんか、小学生みたい
じゅん それディスってない?
アオト ディスってないよ
じゅん でもわかる。おばあちゃん、いつまでも私のこと子供だと思ってるんだよなあ
アオト ああ、あるよね。俺のばあちゃんもそうだな。未だに飴とかめっちゃくれる
じゅん あ、どうぞ、冷めないうちに
アオト うん。いただきます
じゅん …どう?
アオト 美味い
じゅん おお、よかった
アオト え、めっちゃ美味い。まじで、店開けるよ
じゅん 褒めすぎじゃない?何も出ないよ?
アオト やっと食べれた、じゅんのカレー。想像以上だよ。今度何か奢るよ。何でも
じゅん え、いいの?
アオト だって、こんなに美味いもん。お返ししないと
じゅん …じゃあさ、奢らなくていいから、質問していい?
アオト 質問?いいよ。変なのはやめてよ?
じゅん うん
アオト …何でしょう
じゅん 私たち、付き合ってるの?
アオト …ああ、なるほど
じゅん なるほどって何よ。なんかさ、曖昧じゃない?私たちの関係
アオト そうかもね
じゅん だから、アオトはどう思ってるのかなって思って
アオト …付き合っては、ない
じゅん …そうなんだ
アオト でも、もしよかったら、付き合ってほしい
じゅん …へ?
アオト 僕とじゅんは、お互い大学3年生の夏に付き合い始めました。さえこも、例のマッチングアプリ「よっこいしょ」で出会った彼氏と付き合うことになったらしいんだけど、聞く限りでは、あまり良い関係性ではなかったみたい。さて、僕たちが4年生を目前にした春、さえこは頻繁にじゅんの家に来ていたようです
さえこ おいしい!やっぱじゅんの作るカレーが一番おいしい~
じゅん はは、ありがと。さえこは相変わらずオーバーリアクションだよね
さえこ 自分の感情に正直なだけ。私さ、自分に嘘つけないんだよね
じゅん あー、わかる
さえこ だからバイト先で友達作れないのかも
じゅん 顔に出やすいもんね。あと声にも
さえこ よくわかってるね~。あ、ごめんね急に会いたいとか言って、今更だけど
じゅん いいよ、どうせ暇だし。部屋散らかってるから、さえこじゃなきゃ呼べない
さえこ いやいや、これのどこが散らかってんのよ。めっちゃきれいじゃん、モデルルームかよ
じゅん やっぱりオーバーリアクションじゃない?
さえこ 正直なだけよ
じゅん あー就活、やんなきゃな…
さえこ 私、インターンとか行ってないし、絶対やばい
じゅん ね。てか、もう大学4年生って早くない?
さえこ ね、実感わかない。あと一年で卒業か~てか単位取らなきゃ~
じゅん さえこはどうするの?女優になるのが夢だって言ってたじゃん
さえこ まあね、小さいころからずーーっと女優になりたいって言い続けて、実際まだ何もやってない。就活、早く始めたほうがいいかもな…もう遅すぎる気もするんだよね、22歳から女優を目指すって
じゅん そんなことないよ。「何かを始めるのに、遅すぎるということはない」って言うじゃん
さえこ お、それ誰の言葉?
じゅん わすれた
さえこ なんだよ~
じゅん で、どうしたのよ話って
さえこ あ、そうそう、それよ
じゅん 彼氏関連?
さえこ うん
じゅん やっぱり、そうかなって思ってた
さえこ さすが、鋭いね
じゅん 今回は何されたの?
さえこ 何されたのって、聞き方やばくない?いや別に、殴られたとか浮気されたとかじゃないんだけどさ。ほら、前から彼、言葉がきついところあるって言ってたじゃん?
じゅん 言ってたね
さえこ それで、この前また私の進路の話になって、やっぱり女優の道を追いかけたいっていう話になるじゃん。前にも話したし、その時は納得して、応援してくれるって言ってたんだけど
じゅん うん
さえこ この前急に、それは考えが甘いとか、お前には無理だとか言われて、おまけに、お前は頭が悪いとか、私生活がだらしないとかさんざん言われたの
じゅん さえこ、それもうDVだよ
さえこ 精神的暴力ってやつでしょ、でもね、そこまでじゃないの。声を荒げたりするわけじゃないし、優しいことも言ってくれるし
じゅん いやいや、それで許しちゃダメだよ。「私は大丈夫」って自分に言い聞かせてる時点で無理してるんだから
さえこ やっぱ、そうかな…ごめん、涙出てきた…
じゅん …つらいよね
さえこ 私ね、彼のこと尊敬してるの。真面目で、ストイックで、優しくて。付き合いたての頃は、私にもすごく優しかったの
じゅん そっか
さえこ 私、別れたほうがいいのかな?
じゅん …
さえこ (泣き止む)ごめん、急に号泣して
じゅん いいよ、好きなだけ泣いてよ
さえこ じゅんの彼氏はいいよね、暴言とかないでしょ
じゅん んー、それはないね
さえこ だよね~じゅんとアオトめっちゃお似合いだもん。優しい×優しいだもんね
じゅん そう?でも普通に喧嘩とかするよ
さえこ で、いつもアオトのほうから謝ってくれるんでしょ?
じゅん まあ、そのパターンが多いかな
さえこ ほんと、理想のカップルって感じ
じゅん ちょっと、冷やかすのもそれくらいにしてよねっ
さえこ 桜が散り始めた頃、夜のカフェ
じゅん すごい、きれい
アオト きれいだよね、ここから見える東京タワー
じゅん 私、テレビでしか見たことなかったから感動してる
アオト そっか、今度のぼってみる?
じゅん 行きたい!あ、でも私高いところ苦手なんだよね
アオト そんなに高くはないとおもうけど
じゅん いや、高いでしょ。150メートルとかでしょ?展望台
アオト まあね
じゅん でもやっぱ、行きたい
アオト まあ、意外と大したことないけどね、上は
じゅん のぼったことあるんだ?
アオト うん、何回か
じゅん 前の彼女とも?
アオト …うん、そうだけど?
じゅん そっか。あ、ごめん、変なこと聞いちゃった
アオト 別にいいけど。そんなこと気にしてどうすんの?
じゅん どうするってわけじゃないけど…気になるじゃん
アオト そうか
じゅん ごめん
アオト 謝んなくていいよ
じゅん うん
アオト 些細なことだった。夜、今日はこういうことをして楽しかった、こんなことがあって大変だった、っていうラインが来ること。俺が飲み会なんかに行くと、女の子はいるかとか、何時に終わるのかとか、細かく聞いてくること。
じゅん 些細なこと。写真を撮りたがらないこと。髪型とかネイルを変えても気づいてくれないこと。ラインの返信がそっけないこと
アオト いつも写真を撮りたがること。夜、電話してる最中に寝落ちすること
じゅん 就活が忙しいからって、私とは会ってくれないのにバイト先の人と飲みに行くこと
アオト 俺が面接で大失敗したって話をしたときに大笑いしたこと
じゅん 機嫌が悪くなると物に当たること
面接官 それでは、志望理由を教えてください
じゅん はい、私は、幼いころから料理をするのが好きで…
面接官 厳正なる選考の結果、誠に残念ながら
じゅん 学生時代に力を入れたことは…
面接官 誠に残念ながら、ご希望に添いかねる結果となりました
じゅん 学業とサークルを両立し…
面接官 今後のご活躍をお祈り申し上げます
じゅん まじ?こんなに落ちるもの?
おばあ もしもし、じゅんちゃんかい?
じゅん うん。どうしたの、おばあちゃん?
おばあ じゅんちゃんはいるかい?
じゅん 私がじゅんだよ
おばあ あら、いつもと声が違うねえ
じゅん もともとこういう声だよ。どうしたの?
おばあ 何だか、腰が痛くてねえ。湿布が欲しいんだけど
じゅん 私に言われても、近くにいるわけじゃないんだから
おばあ あら、そうかい
じゅん お父さんに言ってみたら?
おばあ お父さんは忙しいからねえ
じゅん ごめんねおばあちゃん、私も今忙しいの。大学もあるし、就活だって
おばあ あら、もう大学生になったのかい?
じゅん おばあちゃん…
おばあ 立派だねえ、友達はできたかい?
じゅん …また今度連絡するから
おばあ あら、そう。つれないねえ
じゅん じゃあね
じゅん 心が下向きがちになってた。内定が出ないことの焦りや不安、アオトに会えないことのもどかしさ。お互い忙しいのはわかってるけど
アオト もしもし
じゅん もしもし
アオト この間のディナー、行けなくなっちゃってごめんね
じゅん …うん
アオト 急用が入って
じゅん うん。バイト先の先輩だっけ
アオト 大切な用事だったんだ
じゅん うん、いいよ
アオト レストラン、キャンセルできた?キャンセル料とかあるなら、払うよ?
じゅん ううん、できた。お金はかかってないよ
アオト よかった
じゅん どうする?
アオト どうするって?
じゅん 記念日のディナー
アオト とりあえず延期かな、今は忙しいし
じゅん だよね
アオト だよねって何?
じゅん いや、別に
アオト 不満があるなら、言ってよ
じゅん …何それ
アオト あんまりさ、不毛な会話したくないんだよね
じゅん 私との会話、不毛なの?
アオト そうは言ってないじゃん
じゅん …ごめん
アオト 謝るのやめてよ。余計に腹立つ
じゅん …
アオト …あのさ
じゅん なに?
アオト 俺たち、一回距離置かない?
じゅん …え…なんで
アオト なんか、好きかわからなくなった
じゅん …なにそれ、よくわからないんだけど
アオト 俺も、自分でもよくわかってないんだ。だから、すぐに別れようとは言わない。でも、しばらくの間、会ったり連絡とったりしないようにしたい
じゅん …
アオト 勝手でごめんね
じゅん …それ、別れるのと何が違うの?
アオト しばらく頭冷やして、まだお互い好きだって思ったら、やり直そう
じゃあ、さようなら
じゅん 何それ、めっちゃ勝手じゃん
さえこ 夏の終わり、じゅんの誕生日
さえこ お誕生日おめでとう!
じゅん わ、ありがとう
さえこ これ、プレゼントね
じゅん わ、何これ?ネックレス?
さえこ うん。幸運を呼ぶお守りみたいな
じゅん へえ
さえこ 知り合いの霊媒師さんから買ったやつだから、絶対効果あるよ。自分用にも買ったんだ、色違い
じゅん あ、なんか、すごいね
さえこ 女優になる夢、叶えられますようにって願いを込めて
じゅん おお、いいじゃん
さえこ それで私ね、ウェスに入ることにしたの
じゅん うぇす?何それ?
さえこ ワタベ・エンターテイメント・スタジオの略なんだけどね、何か俳優を目指す人の学校みたいなところ
じゅん へえ
さえこ お母さん説得するの大変だった~授業料が一年間で150万円もするの
じゅん そんなにするの?
さえこ そう、それに別途で入学金とか教材費?っていうのがかかるらしくて
じゅん それ、怪しいところなんじゃないの?
さえこ ううん、全然。すごく良いところだよ。有名な俳優さんをたくさん輩出してるところだって言ってたし
じゅん そうなんだ。私はよく知らないから、わからないけど
さえこ 私さ、彼氏と別れてから人間不信になっちゃってさ。これからどうしていけばいいかとか、わかんなくなっちゃって。でも、思ったの。落ち込んでても仕方ない。失敗するかもだけど、若いうちに挑戦してみようって。迷ってないで前に進もうってね
じゅん そっか
さえこ だから私、頑張って女優の夢叶えるからね
じゅん うん
さえこ じゅんは、就活どう?
じゅん うーん、けっこう苦戦してる。私、自分をアピールするの苦手かも
さえこ そっか。そういえば、アオトとはあれからどうなった?
じゅん …結局、連絡とってないや
さえこ そっか
じゅん もう、別れるつもりなのかな
さえこ ラインしてみればいいじゃん。それか電話
じゅん 嫌だよ、連絡はしてこないでねっていわれてるんだから
さえこ とか言って、本当はずっと待ってるのかもよ?
じゅん だとしても嫌。じゃあ連絡ちょうだいよって話だし、それに…
さえこ …それに?
じゅん …無視されるのは、嫌だから
さえこ そっか。まあほら、男なんていっぱいいるんだからさ、じゅんみたいな美人は、さっさと次行っちゃえばいいのよ
じゅん わっ電話来た
さえこ アオトから?
じゅん いや、お父さんから。もしもし?…えっ?…………噓でしょ?
さえこ どうしたの?
SE:木魚の音。
父 じゅんは初めてか、こういうの
じゅん うん
父 じいちゃんの時は、まだ赤ちゃんだったもんな
じゅん 私が何歳の時?
父 2歳かな、いや3歳か
じゅん 赤ちゃんじゃなくない?
父 赤ちゃんは言い過ぎたな……ゆりこに会った?
じゅん うん。ちょっと。何話していいかわかんなかった
父 まあ、そうだよな
じゅん おばあちゃん、エジプト行ったことあったんだね
父 ああ、昔旅行でね
じゅん 写真見て初めて知った、想像つかない
父 アクティブな人だったよ。ま、景気も良かったしね
じゅん 私さ、おばあちゃんといると自分のことばっか話してたからさ。もっと、いろいろ話聞きたかったな
父 …そろそろ寝るぞ。明日東京帰るんだろ
じゅん うん
アオト 久しぶり
じゅん 久しぶり。髪伸びたね
アオト ああ、うん。じゅんは、変わらないね
じゅん 変わったよ
アオト え、どこが?
じゅん 親知らず、抜きました
アオト いやわかるかい
じゅん ふふ
アオト 俺、あれからけっこう考えたんだけどさ
じゅん うん
アオト やっぱ、俺じゅんと別れたほうがいいと思う。最近俺バタバタしててさ、ストレス溜まってたのもあるけど、今の俺は、じゅんを幸せにできない
じゅん うん
アオト ごめんね、別に、じゅんが悪いってわけじゃ…
じゅん いいよ
アオト …
じゅん わかってた。私も、そろそろかなって思ってたし
アオト じゃあ、円満に別れられるね
じゅん やめてよ、その言い方
アオト なんだよ
じゅん 気持ち悪い
アオト それは失敬
じゅん じゃあ、元気でね
アオト うん。じゅんもね
じゅん …初めてだった。何もかも。ずるいよね、アオトは。私が初めての彼女じゃないもんね
アオト やっぱ、そこが気になるわけ?
じゅん ばいばい、楽しかったよ、ありがとう
アオト …じゅん、俺、やっぱり…
じゅん やっぱりじゃない。もう、大丈夫だから
じゅん …ばか、泣きたくなんかないのに…
おばあ じゅんちゃん、おかえり
じゅん おばあちゃん、来てたんだ
おばあ しばらくだねえ、元気にしてたかい?
じゅん おばあちゃん、私ダメ
おばあ そんなことないわ、じゅんちゃんはよくできる子だから、大丈夫よ
じゅん 私、全然よくできる子じゃないの。おばあちゃんは知らないだろうけど、勉強だってできないし、人間関係も、恋愛だって、失敗してばっかりなんだよ
おばあ そうかい?
じゅん 私、大人になれる自信ないよ
おばあ 大丈夫よ、どんなことも、必ず上手くいくわ
じゅん 何も大丈夫じゃないよ!
おばあ 大丈夫。おばあちゃんは知ってるの、じゅんちゃんは本当によくできる子だから。昔からそうよ。きっと、お父さんに似たのね。少しばかり、頑張りすぎちゃうところもね
父 おお、けっこう狭いな
じゅん あれ、お父さん初めてだっけ、私の家来るの
父 そうだな
じゅん ギリギリだね、卒業したら引っ越すからさ
父 そうだな…じゅん
じゅん 何?
父 ごめんな、いつも、仕事ばっかりでな
じゅん 何、急に?私、お父さんのおかげで大学行けたんだよ?
父 ああ、それもそうだな
じゅん そうだよ、グラッツェミッレだよ
父 何て?
じゅん 何でもない
父 卒業式の袴は、どこにあるんだ?
じゅん ここにはないよ。明日大学で着付けてもらうの
父 ああ、そうか
じゅん ちょっとボケてきた?
父 ボケてねえよ
じゅん じゃあ、一緒にご飯食べようか
父 おう
じゅん 私、作るね。何がいい?
父 そうだな。やっぱカレーかな
じゅん だよね!おばあちゃん直伝のレシピだからね
父 …もう一年か
じゅん ま、このあといろいろあって、私はアフリカに移住しますと。長くなるから今日はここまでね
さえこ いろいろの話はいいの?
じゅん だって、ややこしいじゃん
さえこ でもなんか、ぶん投げすぎじゃない?
じゅん いいんだよ。さえこだって、大物俳優Sと交際0日婚した話すると長くなるでしょ?
さえこ それもそうか
じゅん じゃあ私、アフリカに帰るね
さえこ うん。私も帰る
二人 以上おわり!(ポーズ)
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