W.W.ダブルワーク コメディ

営業マンの万助は今日も契約が取れず上司に叱られていた。 親からの結婚などへの期待なども相まって参ってしまっている。 「こんな世界ぶっ壊してくれないかな……」 そう思った矢先、怪獣ワクラが現れ街を破壊していくが防衛隊の攻撃により地中に帰る。 ワクラは地中の怪獣会社で万助のように上司に叱られていた。 実は怪獣とは恐怖エネルギーを人間より集め地中を繁栄させていたのだ。 仕事に疲れるワクラと万助。 その2人が出会う時、世界の運命は動き出す。
甲斐てつろう 22 0 0 10/16
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第一稿

【登場人物】
ワクラ:指定された街を壊す仕事をする怪獣
平 万助(30):万年平社員の営業マン
ワクラ上司:ワクラのパワハラ上司である怪獣
上司:万助のパワハラ上司
妻: ...続きを読む
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【登場人物】
ワクラ:指定された街を壊す仕事をする怪獣
平 万助(30):万年平社員の営業マン
ワクラ上司:ワクラのパワハラ上司である怪獣
上司:万助のパワハラ上司
妻:ワクラの妻である怪獣
娘:ワクラの娘である怪獣
ホームレス:街を壊され家を失くした男

その他


【本文】
○とある不動産屋
  平万助(30)、電卓で数字を打つ。
万助「ではこの金額でどうでしょうっ⁈」
  社長、首を横に振った。
社長「ダメダメ、この土地は売らないよ」
万助「そこを何とかっ!」
  万助、土下座をする。
社長「土下座したってダメなものはダメ! も
 う帰りなさい!」
万助「そ、そうですか……」
  万助、トボトボと出て行く。

○WP本社 オフィス (夕)
  上司、机に座り万助を叱責する。
  万助、立って俯いている。
上司「何だこの成績は? お前だけ契約ゼロじ
 ゃないか!」
  万助、頭を下げる。
万助「すみませんっ、頑張ってはいるんです
 が……」
上司「結果を見せろよ結果を! こっちはいつ
 でもクビに出来るんだぞ⁈」
万助「それだけはご勘弁をっ……」
上司「お前には積極性が足りない、拒否されて
 も押して行くんだよ! 何諦めて自分から帰
 って来てるんだ!」
万助「はい……」
上司「そんなんだから出世も出来ないし、結婚
 だってまだなんだろ? 今のままじゃいつま
 で経ってもダメなままだぞ!」
  同僚たち、嘲笑している。
  上司、大量の書類を出す。
上司「罰としてこの書類明日までに終わらせ
 ろ、皆んなちゃんと働いて疲れてんだから
 な」
万助「えぇ、明日までですかぁ……?」
上司「文句あるのか?」
万助「いえ!」
  万助、書類を抱えてデスクに戻る。
上司「皆んな、平は良い反面教師だ。これをバ
 ネにこれからも励むように。じゃあお疲れ
 様!」
同僚「お疲れ様でしたー」
  同僚たち、帰宅の準備を始める。
同僚1「飲みに行こうぜー」
同僚2「いいねぇ」
  同僚たち、笑顔で帰宅。
万助「はぁ……」
  万助、1人オフィスに残されPCと睨めっこ
  を始めた。

○WP本社 オフィス (日替わり早朝)
  万助、ようやく書類を片付けた。
万助「んーっ」
  万助、伸びをしてふと窓の外を見る。
  小鳥が電線の上に乗り外は明るくなり始め
  ていた。
  時計と壁に貼ってある出社時間を交互に見
  る。
  時計はAM06:35を指し出社時間は
  AM08:30と書いてある。
  万助、溜息を吐いた。
万助「朝ごはん……」
  万助、立ち上がりスマホを手に取る。
  スマホには母親からのメッセージが。
  以下、画面上で
  × × ×
母親「お仕事は順調? 大変だとは思うけど頑
 張ってね。それと彼女はいるの? 早く孫の
 顔が見たいなぁ」
  × × ×
  万助、SNSを開く。
  かつての同級生たちが結婚をして子供を抱
  いている姿が映されていた。
万助「はぁ……」
  万助、財布を取りオフィスを出た。

○街中 (早朝)
  万助、コンビニの袋を持ち歩いている。
  上司の言葉や母親のメッセージを思い出し
  ていた。
上司(回想)「今のままじゃいつまで経ってもダ 
 メなままだぞ!」
母親(回想)「早く孫の顔が見たいなぁ」
  万助、立ち止まり涙を流す。
  手はカタカタと震えていた。
万助「あぁ、こんな世界、誰かぶっ壊してくれ
 ないかなぁ……」
  巨大怪獣ワクラ、地面を突き破り万助の背
  後から隣町に現れる。
  隣町でも見える程の巨体だった。
  万助、振り返る。
万助「怪獣っ……⁈」

○隣町 街中 (早朝)
  ワクラ、雄叫びを上げながら暴れ街を破壊
  して行く。
  口から破壊光線まで放つ。
  人々、悲鳴を上げながら逃げ惑う。
  暫くして防衛隊の戦闘機がやって来る。
パイロット1「目標を捕捉、攻撃を開始する」
パイロット2「ラジャー」
  戦闘機、ミサイルを放つ。
  ワクラ、ミサイルが命中し悲鳴を上げる。
  破壊光線を放つが戦闘機に避けられる。
  戦闘機、更に追撃。
  ワクラ、地中に逃げ帰る。
  
○街中 (早朝)
  万助、ワクラが去った後の破壊された街並
  みを見つめている。

○隣町 街中 (早朝)
  パイロット1、無線で事後報告をする。
パイロット1「目標逃走、これより帰投します」
  戦闘機、去る。
  ワクラの足跡にクローズアップ。

○メインタイトル
【W.W. ダブルワーク】

○地中 怪獣会社 (早朝)
  ワクラ、地下を掘り会社に戻る。
ワクラ「はぁ、はぁ……助かったぁ」
  ワクラ、土を払い歩く。

○地中 怪獣会社 オフィス (早朝)
  ワクラ上司、ワクラを叱る。
ワクラ上司「何だこの体たらくは! せっかく
 中心街を破壊するチャンスだったと言うのに
 早々に撤退しては恐怖エネルギーが集まらな
 いじゃないか!」
ワクラ「すみませんっ、でも防衛隊が強くなっ
 てて……」
ワクラ上司「ヤツらも黙っている訳ではない、
 怪獣が人間に与える恐怖が我々の生活の源で
 ある事を忘れるな!」
ワクラ「はい……」
ワクラ上司「このままでは人間界との契約が破
 棄されるのも時間の問題だ、お前にはもう一
 度基礎を叩き込む必要があるみたいだな」
  ワクラ上司、机を強く叩く。
ワクラ上司「我々が対抗できないほどの存在だ
 から人間のお偉いさんが土地を献上し我々が
 それを破壊して何も知らない人々からの恐怖
 エネルギーを得る、人間は滅ぼされず我々も
 繁栄できるというWin-Winの関係が崩壊して
 しまう!」
ワクラ「それは分かってますよ……」
ワクラ上司「ならば励むんだな、お前が人間に
 恐怖なんか抱いてたら本末転倒だぞ?」

○地中 ワクラの自宅 (朝)
  ワクラ、帰宅。
ワクラ「ただいま……」
  妻、身支度をしている。
妻「あぁ今帰ったの? ご飯冷蔵庫にあるから
 勝手に温めて食べといて、あと洗い物よろし
 くねー」
  妻、あくびをしながら去る。
  ワクラ、冷蔵庫から簡易な料理を取り出し
  レンジで温める。
  娘、隣に現れる。
娘「うわ臭っ! ねぇお母さーん、お父さん凄
 い臭いんだけど!」
  娘、別室の妻に文句を言いに行く。
  別室から妻の声が聞こえる。
妻「やっぱ先にお風呂入っちゃって、こっちま
 で臭って来るー」
  ワクラ、レンジから一度料理を出す。

○地中 ワクラ自宅 脱衣所
  ワクラ、体を拭き自身の臭いを嗅ぎ溜息を
  吐く。

○地中 ワクラ自宅
  ワクラ、先ほどの料理を食べる。
  娘、身支度を整えた。
娘「今日授業参観あるけどお父さん来なくてい
 いから。負けてばっかの壊し屋なんて恥ずか
 しい!」
  娘、玄関から出て行く。
ワクラ「あぁ、行ってらっしゃい……」
  ワクラ、料理を食べ続けた。
  妻、ワクラに告げる。
妻「向いてないんじゃないの? もっとあの子
 も誇れるような仕事に転職したら?」
ワクラ「そんな簡単な話じゃないんだよ……」

○別の不動産屋
  万助、また別の不動産屋で頭を下げる。
万助「そこを何とか!」
社長「無理ですよ、この土地には様々な会社が
 オフィスを構えてるんですからっ」
万助「くぅ……」
  万助、上司の言葉を思い出す。
上司(回想)「お前には積極性が足りない」
  万助、唇を噛んだ。
万助「分かりました、すみません……」
  万助、不動産屋を後にする。

○街中 公園
  万助、ベンチに座り眠気覚ましのドリンク
  を飲む。
  うたた寝しそうになり慌てて起きた。
  万助、スマホを確認する。
  画面にはその後に伺う営業先がビッシリと
  書かれていた。
万助「はぁ……」
  万助、そのまま眠ってしまう。

○街中 公園 (夕)
  万助、目覚める。
  夕日が出てカラスが鳴いていた。
  スマホには上司からの着信が何件も。
万助「やばいっ!」
  万助、慌てて立ち上がり走り出す。

○WP本社 オフィス (夜)
  上司、万助を叱る。
  万助、頭を下げる。
上司「何サボってんだお前は!」
万助「すみませんっ!」
上司「お陰で他の皆んなで代わりに営業先回る
 事になったんだぞ!」
  同僚たち、万助を睨んでいる。
上司「怪獣の出現予定は来月までビッシリ決ま
 ってる、それまでに土地を買って献上しなき
 ゃいかんだろ! 人類の運命がかかってる仕
 事だって自覚が足りないんだよ!」
万助「はいっ……」
上司「お前のせいで人類が滅んだらどうする、
 責任取れんのか?」
万助「すみませんっ……」
上司「俺は今から防衛隊に買えた土地の報告し
 に行かなきゃならん、お前はもう帰れ」
  時計は就業時間を過ぎていた。
  万助、トボトボと席に戻り帰宅の準備を整
  える。
  万助、上司が先にオフィスを出るのを見て
  帰宅する。

○地中 怪獣会社 オフィス (夜)
  ワクラ、ワクラ上司から次の指示を受け
  る。
ワクラ上司「次の出動は明日だ、今度こそ逃げ
 るんじゃないぞ?」
ワクラ「はい……」
ワクラ上司「声が小さい!」
ワクラ「はいっ!」
ワクラ上司「歴史上、怪獣は人間に恐怖を与え
 続けて来た。そのエネルギーを絶やしてはな
 らない、徹底的にやれ」

○地中 怪獣会社 エネルギー貯蔵庫 (夜)
  ワクラ、自身の集めた恐怖エネルギーを確
  認する。
  機械のデータを見た。
ワクラ「確かに少ないな……」
  データには先日の中心街から数少ないエネ
  ルギーが送られた事が記されている。
ワクラ「やっぱり向いてないのかなぁ」
  ワクラ上司、背後から現れる。
ワクラ上司「この量か、このままだとどうなる
 か想像できるか?」
  ワクラ、黙り込んでしまう。
ワクラ上司「我々への恐怖より防衛隊への希望
 が勝ってしまえば人類は勝てると見込んで総
 攻撃を仕掛けて来るだろう、そうなれば全面
 戦争は避けられん」
ワクラ「はい……」
ワクラ上司「元より危うい取引により成り立っ
 ている関係性だからな、向こうは我々が消え
 るに越した事はないだろう。しかし我々は人
 間の恐怖が無ければ生きられん」
ワクラ「あの、人間から我々への想いなら恐怖
 に限らず何でもエネルギーになるんですよ
 ね? 何で恐怖に拘るんですか……?」
ワクラ上司「何が言いたい?」
ワクラ「もっと希望とか良い思いをさせられれ
 ば良いのかなって……」
ワクラ上司「何を言う、怪獣は人間に恐怖しか
 与えられない存在だ。ヤツらにとっての希望
 は身内間で事足りているしな」
ワクラ「そう、ですよね……」

○地中 ワクラ自宅 外観 (夜)
  ワクラ、玄関の扉に手を掛ける。
  しかし家に入る事なく振り返り歩いた。

○住宅街 公園 (夜)
  ワクラ、地上の公園に等身大となりやって
  来る。
  ワクラ、夜空を見上げる。
ワクラ「今度はここを壊すのか……」
  ワクラ、ブランコに座り項垂れる。
  これまで言われた事を思い出す。
ワクラ上司(回想)「何だこの体たらくは!」
妻(回想)「向いてないんじゃないの?」
娘(回想)「負けてばっかの壊し屋なんて恥ずか
 しい!」
  ワクラ、思い切り溜め息を吐く。
ワクラ「みんな俺をバカにする、もう地中にも
 戻りたくない……」
  ワクラ、ふと視線を前に向ける。
  万助、肩を落としながら公園に入って来
  る。
  万助、ワクラに気付いた。
ワクラ「あ」
万助「え?」
  しばらく沈黙が訪れる。
  万助、我に返り叫んだ。
万助「うわぁぁぁ怪獣っ⁈」
ワクラ「あ、えっと……違うんですっ!」
  万助、腰を抜かし倒れる。
ワクラ「だ、大丈夫ですか……⁈」
万助「く、来るなぁっ」
ワクラ「やばいどうしよう……」
  ワクラも震えてしまう。
  ワクラ、ワクラ上司の言葉を思い出す。
ワクラ上司(回想)「お前が人間に恐怖なんか抱 
 いてたら本末転倒だぞ?」
  ワクラ、拳を握り万助に迫る。
ワクラ「うがぁぁっ!」
  ワクラ、両腕を広げ万助に迫る。
  万助、涙を流す。
万助「ひぃっ、食べないでぇ……」
  ワクラ、我に返り両腕を下げる。
  万助に手を差し伸べた。
ワクラ「……食べないよ」
  万助、泣き止みワクラを見る。
  しばらく呆然としてからワクラの手を取っ
  た。

○住宅街 アパート 万助の部屋 (夜)
  万助、ワクラを連れて帰宅。
万助「ただいまーって誰も居ないけど」
ワクラ「俺土足だけどいいの?」
万助「いいよ、どうせ散らかってるし」
  万助、散乱したものを退かす。
万助「はいここ」
ワクラ「どうも」
  ワクラ、座る。
  万助、冷蔵庫を漁る。
  ワクラ、部屋を見渡す。
  棚に飾ってある写真を見つけた。
ワクラ「あれは家族?」
万助「うん、良い大学に受かったから入学式に
 親が来てさ。喜んでくれたのに今はこんなに
 なっちゃって」
  万助、笑いながら話す。
ワクラ「俺も同じだ、怪獣大学で良い成績残し
 たからこの仕事やってるけどいざ現場に出る
 と難しくてさ」
万助「学生の勉強と社会は全然違うんだね」
  万助、ワクラに問う。
万助「お酒とか飲む? あ、怪獣ってそーゆー
 の大丈夫なのかな?」
ワクラ「基本的には大丈夫、でもそんな強くな
 いよ」
万助「俺も同じだから、ビールでいい?」
ワクラ「うん、ありがとう」
  万助、2人分のビールを用意し座る。
  2人、乾杯した。
万助「んじゃこの出会いに乾杯!」
  2人、ビールを飲む。
万助「かぁー美味い、この時間は辛い事も忘れ
 られるね」
ワクラ「なんか久々だなぁ、今は同級生とも疎
 遠だし」
万助「何かあったの?」
ワクラ「俺が代表として壊し屋になったのに全
 然活躍できないからさ、皆んなバカにして来
 るんだ。いつの間にか友達も居なくなって
 た」
万助「ちょっと分かるなぁ、俺も同級生たちは
 皆んな出世して結婚もしてるし自分が惨めで
 距離置いちゃってる」
  万助、一本目を飲み干す。
万助「親も結婚結婚うるさいし、そんなに良い
 ものなのかね?」
ワクラ「いや、実際そんな良いものじゃない
 よ」
万助「あ、結婚してるんだ」
ワクラ「奥さんも娘も見下して来るのがよく分
 かるしね、結局自分が立派じゃないと上手く
 行かないよ。壊し屋になる機会に結婚したけ
 ど上手く行かないと露骨に態度悪くなった
 し」
万助「上司にも言われたなぁ、ダメだから結婚
 も出来ないって」
  ワクラも一本目を飲み干した。
万助「まだ飲む? 買いだめしてあるよ」
ワクラ「じゃあ頂こうかな?」
 × × ×
  2人、酒が進み仕事の愚痴を言い始める。
  机には空いた缶がいくつもあった。
ワクラ「ウチの上司がさ、怪獣は恐怖しか与え
 られないからちゃんとやれって言うけどさ。
 その顔がまぁ怖いんだ、お前がやれよって思
 ったね」
万助「俺の話も聞いてよ、今日なんか俺の代わ
 りに他の皆んなで全部仕事こなしちゃって、
 俺もういらねーじゃん」
ワクラ「てかさ実際そっちの世界はどうなの? 
 俺に街壊されて悪影響とか出てる?」
万助「うーん、職や家を失ったって人はいるか
 な。そこの支援とかもやってるけどさ、極秘
 の会社だから色々話せなくて文句とか言われ
 る」
ワクラ「と言うと?」
万助「資金は主に土地を買うのに使ってるん
 だ、だから支援金はあんまり出せなくて。た
 だ世間には支援会社って風に言ってるから何
 でこんな少ない額なんだって言われるかな」
ワクラ「何か、申し訳ない……」
万助「ワクラが謝る事じゃないよ。でも俺だっ
 て最初は支援会社だと思って入社したから
 さ、誇りとか持てるのかなと思ったけど実際
 は破壊して良い土地を買う仕事。これから壊
 される事も知らない地主を騙してる気がして
 さ、憂鬱だよね」
ワクラ「そっか……」
万助「支援してると思ってた人から奪ったのは
 自分なんだよね」
  2人の間に沈黙が訪れる。
万助「な、何か暗い感じになっちゃったね! 
 もっと飲もうか!」
  万助、冷蔵庫を見るが酒は残っていない。
万助「……買い出し行く?」
ワクラ「行こうか」

○住宅街 コンビニ (深夜)
  2人、深夜の路地を歩きコンビニに行く。
万助「あ、流石にワクラが入るのはマズいよね」
ワクラ「外で待ってるよ」
  万助、カゴ一杯の酒を購入する。
  ワクラ、外で大人しく待つ。
  通りかかった住民、ワクラに驚く。
  万助、出て来る。
万助「お待たせー」
ワクラ「じゃあ戻ろうか」

○住宅街 アパート 万助の部屋 (深夜)
  2人、飲んでいる。
  顔は真っ赤だった。
万助「あ、何かつまみ欲しいな」
ワクラ「またコンビニ行く?」

○住宅街 コンビニ (深夜)
  万助、つまみを購入する。
  ワクラ、外で待っていた。

○住宅街 アパート 万助の部屋 (深夜)
  万助、顔を真っ赤にする。
万助「ちょっと気持ち悪いかも……」
ワクラ「大丈夫? 何か薬ある?」
  ワクラ、立ち上がり棚を調べる。
  万助、口を抑えながら指を差す。
万助「多分そこ……」
  ワクラ、薬の瓶を見つけた。
  しかし空だった。
ワクラ「……またコンビニかな」
  
○住宅街 コンビニ (深夜)
  2人、コンビニに入る。
  ワクラ、酔った万助を支えて一緒に入っ
  た。
店員「いらっしゃいませ……えぇっ⁈」
  店員、万助を支えながらやって来たワクラ
  に驚く。
ワクラ「しっかりして、多分俺じゃ買えないか
 ら……」
万助「うん……」
  ワクラ、薬の瓶とペットボトルの水を手に
  取り万助を支えながらレジに置く。
  店員、恐れている。
店員「あ、あ……」
  ワクラ、万助に言う。
ワクラ「ほら財布出して、払える?」
万助「大丈夫……」
  万助、お金を払い薬と水を購入。
  店員、震えながら対応した。
店員「ありがとうございましたぁ……」
  2人、コンビニを出る。

○住宅街 公園 (深夜)
  ワクラ、万助をベンチに座らせる。
  そのまま購入した薬を飲ませる。
ワクラ「大丈夫?」
万助「ちょっと落ち着いた、ありがとう……」
  ワクラ、万助の隣に座り一息つく。
  周囲を見渡すとホームレスが数名いた。
  こちらを見て驚いている。
ワクラ「ねぇあの人たち、もしかして……」
  万助、ホームレス達に気付く。
万助「あぁ、多分家も職を失くした人達だ」
  ホームレスの1人、空になった酒瓶を覗い
  ている。
  ワクラ、立ち上がる。
ワクラ「ちょっと待ってて!」
 × × ×
  ワクラ、レジ袋にホームレスの人数分の酒
  を入れて戻って来る。
  そのままホームレス達に近付いた。
ホームレス1「何だお前……?」
  ワクラ、頭を下げる。
ワクラ「ごめんなさいっ、俺のせいで……」
  ワクラ、酒の入った袋を差し出す。
  ホームレス、受け取った。
ホームレス1「酒か?」
ワクラ「人数分あるのでっ、今はこれくらいし
 か出来ないけど皆さんで飲んで下さいっ」
  ワクラ、離れようと振り返る。
  ホームレス、呼び止めた。
ホームレス1「待ちな、あんたモノホンの怪獣だ
 ろ?」
ワクラ「は、はい……」
  ワクラ、緊張の面持ちで振り向く。
ホームレス1「俺ん家壊したのもあんたか……」
  ワクラ、息を呑む。
  ホームレス、酒を指して言う。
ホームレス1「これ詫びだろ? 何かそっちにも
 事情あるみたいだな。俺で良ければ話してく
 れねぇか? 自分のモヤモヤにもケリ着けた
 いしな」
ワクラ「え……」
 × × ×
  ワクラと万助、ホームレス達と語り合う。
ホームレス1「怪獣の世界にもクソ上司って居る
 のかよぉ」
ホームレス2「大体こっちと一緒だな!」
ホームレス3「何だ、お前を恨んで損したぜ」
  ワクラ、唖然とする。
  万助、ワクラを見た。
ワクラ「でも実際壊したのは俺ですよ……?」
ホームレス1「上からの指示だろ? 俺たちも働
 いてた頃は罪悪感に震えたもんさ」
ホームレス2「俺なんか大家で家賃払えない母
 子家庭の奴に頭下げられたけど追い出すしか
 なかったぜ? あの時は辛かったなぁ」
ホームレス3「直接金のやり取りする仕事とか
 特にそうだよな、俺もどうしようもない時が
 あったよ」
  ワクラ、肩を撫で下ろす。
  万助、ワクラの肩を叩いた。
万助「俺もさ、騙して人の土地壊させて。ワク
 ラの気持ち凄く分かる」
ワクラ「万助……」
万助「辛いけど、仕事ってそういうものなのか
 もね」
ワクラ「でも……せっかく理解してもらったの
 に、俺の仕事はここの皆んなを傷付けるもの
 だ……いくら割り切ってもそこは変えられな
 いんだよ」
ホームレス1「何でだ?」
ワクラ「怪獣は人に恐怖しか与えられないか
 ら、俺たちが生き延びるにはその手しかない
 んだ……」
  ホームレス、立ち上がりワクラの肩を叩
  く。
ホームレス1「何言ってんだ、恐怖しか与えられ
 ないなんて誰が決めた?」
ワクラ「そ、それは歴史が……」
ホームレス1「今お前は何してる? 俺たちと楽
 しく飲んでるだろ」
ワクラ「はい……」
ホームレス1「なら恐怖しか与えられないなんて
 嘘っぱちだ、現にまずコイツの心を救った
 ろ」
  ホームレス、万助を指差して言った。
  ワクラ、万助を見る。
  万助、ワクラを見て微笑んだ。
  ワクラ、涙が溢れる。
ホームレス1「お前の上司が言った事は面倒から
 目を背けた言葉だ、元々仕事ってのは皆んな
 が豊かに暮らせるためにあるんだからな」
  ワクラ、未開封の酒を指差す。
ワクラ「それ、貰っていいですか?」
ホームレス1「元々お前が買ったもんだろ?」
  ホームレス、ワクラに酒を渡した。

○地中 怪獣会社 エネルギー貯蔵庫 (日替わり)
  ワクラ、エネルギーを確認する。
  それを見て驚いた。
ワクラ「え、何これ⁈」
  エネルギー、昨日より遥かに増えていた。
  ワクラ、すぐさまエネルギー発生地点を調
  べた。
  データには昨日の公園が映し出されてい
  た。
ワクラ「まさか本当に希望エネルギーが……?」
  ワクラ、急いで駆け出す。
ワクラ「報告しなきゃ!」

○WP本社 廊下
  万助、自販機で缶コーヒーを買う。
  すると隣の会議室から会話が聞こえた。
上司「では、本当にやるんですね?」
  万助、会議室を覗き込む。
  上司、大きなモニターに向かいリモート会
  議をしている。
  モニターには防衛隊の隊服を来た人物。
防衛隊「あぁ。怪獣による恐怖エネルギーは弱
 まっている、これに比例するように我々も強
 化されて来た。攻めるなら今しかない」
上司「でもそれでは我々が失業してしまいます」
防衛隊「そこは安心しろ。貯蓄している資金が
 あるだろう? それを自分たちの支援に使
 え。更に再就職できるまでこちらも徹底的に
 サポートしよう、功労者としてな」
  万助、慌てて背を向けてしまう。
  上司、その際の物音に気付いた。
  上司、万助の前に現れる。
上司「聞いてしまったか、まぁそういう事だ」
万助「え……?」
上司「この仕事は終わりだ、再就職まで支援は
 受けられるとよ。でもお前がここ以外でやっ
 てけるビジョンは見えないけどな」
  上司、万助の肩に手を置いて去る。
万助「マズいぞワクラ……!」

○地中 怪獣会社 オフィス
  ワクラ、嬉しそうにワクラ上司に報告。
  ワクラ上司、背を向けていた。
ワクラ「希望エネルギーが溜まってたんです、
 これなら街を壊さなくても……!」
  ワクラ上司、ゆっくりと振り返る。
ワクラ上司「最悪だ、やってくれたな」
ワクラ「え……?」
ワクラ上司「人間はたった今我々に宣戦布告を
 行った、お前の弱さを舐めての事だろうな」
  モニターにはニュース映像。
  防衛隊員が直々に語っている。
  以下、画面上
 × × ×
防衛隊「これより我々は地中の怪獣界へ向けて
 宣戦布告を行います! 地上の皆さんご安心
 ください、必ず平和は取り戻します!」
 × × ×
  ワクラ、愕然としている。
  ワクラ上司、叱責する。
ワクラ上司「お前のせいで全面戦争が始まる!
 どう責任取ってくれるんだ!」
ワクラ「え、えっと……」
  ワクラ上司、溜息を吐く。
ワクラ上司「まぁ1つ対策というか心許ない事
 だがお前の恐怖を再度知らしめられたら交渉
 に応じてくれる事もあるかも知れん」
  ワクラ上司、エネルギーのデータを出す。
  ワクラ、それを見て驚愕した。
ワクラ上司「昨日お前は地上に出て人間と交流
 したな? その際に希望のエネルギーが集ま
 ってしまった」
ワクラ「あ……」
ワクラ上司「この際勝手に地上に出た事は許そ
 う、だがしっかり後始末はしてもらう」
ワクラ「何をするんです……?」
ワクラ上司「希望を全て恐怖に変換するんだ、
 そうすれば莫大な恐怖が生まれ人間もお前の
 残酷さに攻撃を中止するかも知れない」
ワクラ「まさか……」
ワクラ上司「交流した人間を殺せ、簡単な事だ
 ろう?」
  ワクラ、呆然と立ち尽くす。
ワクラ上司「ホラさっさと行け、善は急げだ」
  ワクラ、急かされ地上に向かった。

○住宅街 路地
  ワクラ、等身大で万助を探して走る。
  一方で万助もワクラを探して走る。
ワクラ「はっ、はっ……」
万助「マズい、ワクラ……!」
  2人、曲がり角で衝突。
  転んでしまう。
ワクラ「うわっ……」
万助「あ、ワクラ……⁈」
  2人、同時に同じ事を言う。
ワクラ・万助「ヤバい事になった!」
  2人、シンクロした事を驚く。
万助「え、あ……防衛隊が怪獣に攻撃を!」
ワクラ「昨日の皆んなを殺せって!」
万助「えぇ……⁈」
ワクラ「宣戦布告はこっちも聞いた、それで上
 司が希望を恐怖に変換するために皆んなを殺
 せって……!」
万助「そんな、じゃあホームレス達も俺も?」
ワクラ「うん……」
万助「ヤバいな、今すぐ伝えに行かなきゃ!」
  万助、1人で走り出す。
  ワクラ、その背中を目で追うが立ち上がれ
  ない。

○住宅街 公園
  万助、ホームレス達に告げる。
ホームレス1「そんな、マジかよ……!」
ホームレス2「俺たち殺されちまうのか?」
万助「ワクラはそんな事しない、そう信じて
 ます……!」
  ワクラ、そこにやって来る。
ワクラ「はぁっ、皆んな……」
  ホームレス達、ワクラに駆け寄る。
ホームレス3「俺たちのこと殺さないよな⁈」
ワクラ「勿論です、そんな事したくない!」
ホームレス2「でもそしたら戦争が……」
ワクラ「どうしたもんか、でも希望エネルギー
 が溜まり始めた。昨日の貴方たちからです。
 それを上手く説明できれば何とか……」
万助「え、それ本当?」
ワクラ「うん、恐怖よりももっと大きかった。 
 でもこの状況でどうやって伝えれば……」
  ワクラ上司、無線でワクラに告げる。
ワクラ上司「聞こえてるぞ。丁度いい、皆んな
 集まっているようだな」
ワクラ「あっ……」
ワクラ上司「巨大化しろ、そして彼らを殺しお
 前の恐怖を存分に示せ」
ワクラ「くっ……」
  万助、ワクラの様子に気付く。
万助「ワクラ……?」
  ワクラ上司、ワクラを急かす。
ワクラ上司「早くしろ、ヤツらの攻撃準備が整
 う前にな」
  ワクラ、しばらく考える。
  そのままトボトボと公園を去ろうとする。
  万助、駆け出しワクラの手を掴んだ。
万助「どうするつもりだよ⁈ まさか本当
 に……」
ワクラ「戦争が起こるんだ。それに言ったよ
 ね、仕事ってこういうものだって」
  ワクラ、そのまま離れて行く。
  公園から出て行った。
  そしてしばらくして巨大化、公園を見下ろ
  した。
ワクラ「ぐぉぉぉっ!」
  万助とホームレス、ワクラの雄叫びに耳を
  押さえる。
ワクラ上司「いいぞ、では殺れ」
  ワクラ、口にエネルギーを溜める。
  その際に昨日の事を思い出した。
万助(回想)「んじゃこの出会いに乾杯!」
ホームレス1(回想)「なら恐怖しか与えられない
 なんて嘘っぱちだ、現にまずコイツの心を救
 ったろ」
  ワクラ、震えながらエネルギーを止める。
  そのまま地面に両手をついた。
ワクラ上司「どうした?」
ワクラ「出来ませんっ! 彼らは友達です、初
 めて心から分かり合えたんです!」
  万助、瞳が潤む。
  ワクラ、涙を流した。
ワクラ上司「……分かった」
  ワクラ上司、無線を切る。

○地中 怪獣会社 オフィス
  ワクラ上司、深呼吸する。
ワクラ上司「ならば私がやろう」

○街中
  地面が大きく揺れる。
  ワクラ、驚く。
  ワクラ上司、地面を突き破り現れた。
ワクラ上司「グガァァァッ!」
  ワクラ上司、ワクラ以上の雄叫びを上げ
  る。
  ワクラ、耳を塞ぐ。
ワクラ上司「もうお前はクビだ、私が引き継ぐ」
  ワクラ上司、公園に向けて進む。
ワクラ「え……」
  ワクラ、ワクラ上司と公園を交互に見る。
  万助たち、恐れていた。
  ワクラ上司、ワクラを突き飛ばし公園の前
  に立つ。
ワクラ上司「見てろ、これが怪獣の恐怖だ」
  ワクラ上司、口にエネルギーを溜める。
  ワクラ、目が泳ぐ。
  ホームレスの言葉を思い出す。
ホームレス1(回想)「元々仕事ってのは皆んなが
 豊かに暮らせるためにあるんだからな」
  ワクラ、立ち上がり動き出す。
  ワクラ上司、口から破壊光線を放つ。
ワクラ「うわぁぁぁっ!」
  ワクラ、ワクラ上司を突き飛ばす。
  破壊光線は空へ飛んで行った。
ワクラ上司「お前、何をしている⁈」
ワクラ「ダメだ、誰かを傷付ける仕事なんてダ
 メだ!」
  ワクラ上司、ワクラを睨む。
ワクラ上司「恐怖を与えるのが我々の仕事だ」
  ワクラ上司、拳を握る。
  ワクラに突撃した。
  ワクラ、吹き飛ぶ。
ワクラ「ぐはっ……」
  ワクラ上司、再度公園を狙い拳を振り下ろ
  す。
  ワクラ、立ち上がり間に入って防ぐ。
  ワクラ、ワクラ上司の拳を押さえる。
ワクラ上司「くっ……」
ワクラ「万助、皆んなを連れて逃げろ!」
  万助、ホームレス達を先導して公園から離
  れる。
ワクラ上司「裏切り者め……」
  ワクラ上司、力を増してワクラを地面に叩
  きつける。
ワクラ「ぐふっ……」
  ワクラ、踏ん張って起き上がりワクラ上司
  の顔面を殴った。
ワクラ上司「ほう……」
  ワクラとワクラ上司、お互い睨み合う。
ワクラ上司「まずはお前からだな、怪獣をも倒
 す怪獣となれば恐怖は更に増すだろう」
  ワクラとワクラ上司、お互いに走りぶつか
  り合う。

○街中 路地
  万助とホームレス、走る。
  背後ではワクラとワクラ上司が激闘を繰り
  広げている。
  万助のスマホから警報が鳴った。
万助「警報っ⁈」
  万助、立ち止まりスマホを確認する。
  以下、画面上
 × × ×
警報「防衛隊による怪獣への攻撃が決定しまし
 た。近隣の皆様は速やかに避難して下さい」
 × × ×
  万助、ワクラを見上げる。
  歯を食いしばった。
  万助、上司に電話する。
  上司、応答。
上司「どうしたこんな時に⁈」
万助「あのっ、攻撃ってどっちの怪獣にもする
 んですか⁈」
上司「どういう意味だ? 当然だろ、2体現れ
 るなんて想定してなかったが集まってるなら
 いっぺんに叩くとの事だ!」
万助「そんなっ……」
上司「何だ、何が言いたい?」
万助「あのっ、防衛隊と連絡してるんです
 か……?」
上司「さっきまでな、これから定期的に買った
 土地の件で連絡は取り合う予定だが」
万助「えっと、なら……!」
上司「何だ、言ってみろ……」
  万助、冷や汗を流す。
  息を呑み発言した。
万助「どうしても攻撃って止められませんか?」
上司「ふざけた事言うなら切るぞ、こっちも忙
 しいんだ」
  上司、電話を切る。
万助「あっ……」
  万助、ワクラを見上げる。
  上司の言葉を思い出した。
上司(回想)「お前には積極性が足りない、拒否
 されても押して行くんだよ!」
万助「くっそぉ……」
  上空に防衛隊の戦闘機が。
  ワクラ達に攻撃を始める。
万助「あぁっ、ワクラ……!」
  万助、その場にへたり込んでしまう。
ホームレス1「おい大丈夫か⁈」
万助「ダメだ、結局俺ダメだ……」
  万助、涙を流す。
  背後でワクラとワクラ上司は防衛隊により
  攻撃を受け続ける。
万助「友達が傷付いてるのに自分の怖い気持ち
 が勝っちゃってる……!」
  ホームレス、万助を立ち上がらせ逃げる。
ホームレス1「今は逃げるぞ!」
  万助、ホームレスの肩を借りながら嘆く。
  すると上空から複数のミサイルが飛んで来
  てワクラとワクラ上司に命中する。
  大爆発が起こり爆風が万助たちにも届く。
万助「うわぁっ⁈」
  万助たち、吹き飛ぶ。
  起き上がれない。
万助「クソッ、どうしようもないのか……誰か
 ワクラを助けてっ」
  ホームレス、万助を起き上がらせる。
ホームレス1「誰も助けてくれないぞ、助けたい
 なら自分で交渉しに行ったらどうだ⁈」
万助「え、でも……」
ホームレス1「大事な事は自分でやんなきゃいけ
 ないんだよ、俺だって支援は受けてるけど足
 りない分は自分で生きてる!」
万助「くぅっ……」
ホームレス1「誰かじゃない、お前が助けるん
 だ! 友達なんだろ?」
  万助、過去の自分の発言を思い出す。
万助(回想)「誰かワクラを助けてっ」
万助(回想)「俺もういらねーじゃん」
万助(回想)「あぁ、こんな世界、誰かぶっ壊し
 てくれないかなぁ……」
  万助、歯を食いしばる。
万助「そうだ、俺ずっと他力本願だった……」
  万助、ワクラの姿を思い出す。
万助「ワクラは文句言いながらも自分で頑張っ
 てるのに……!」
  万助、目を見開く。
万助「すみません、ここから自力で逃げれます
 か?」
ホームレス1「あぁ、足腰は弱ってねぇ」
万助「じゃあ後で会いましょう!」
  万助、走り出す。
  ホームレス達、優しく見送った。

○河川敷 土手
  万助、ワクラとワクラ上司の戦いをバック
  に息を切らして走る。
万助「はぁっ、はぁ……」
  ワクラ上司の攻撃により破壊されたビルの
  破片が飛んで来る。
  万助、頭を下げて避ける。
万助「くっ、会社だ……!」
  視線の先にはWP本社。
  万助、再度走り出す。
  背後でワクラとワクラ上司の破壊光線がぶ
  つかり合い衝撃波が万助まで届く。
万助「うわぁぁっ!」
  万助、土手から転がり落ちてしまった。

○WP本社 会議室
  上司、防衛隊とリモートで繋がっている。
上司「マズいです、もう避難しますよ!」
防衛隊「本社を失う事は痛手だが、こうなった
 ら一気に蹴りを付ける他あるまい」
上司「まさかWPミサイルを⁈」
防衛隊「あぁ、周囲の街は吹き飛ぶだろうがも
 う他に2体纏めて倒す方法はあるまい」
上司「では避難の完了していない住民は見殺し
 という事で……?」
防衛隊「気の毒だが……」
上司「じゃあ俺も……?」
  上司、冷や汗を流す。
上司「マズい、今すぐ車を……!」
  上司、会議室を出ようとする。
  万助、そこへボロボロの姿で入って来た。
万助「はぁっ、間に合った……」
上司「お前っ、何でここに⁈」
  万助、上司と防衛隊の男を見て話を持ちか
  けた。
万助「話は聞かせてもらいました、その上で言
 います。今すぐ攻撃をやめて下さい!」
上司「何言って……」
防衛隊「ほう、意見を聞かせてもらおうか」
上司「ちょっと!」
防衛隊「その目、真剣さが伺える。話してみよ」
  上司、万助の目を見て驚いた。
万助「はい、ワクラは……あの怪獣の片方は悪
 い奴じゃありません! もう片方から人間を
 守ろうとしてくれてます!」
  万助、ワクラの行動を振り返る。
万助「現に彼は公園の人々を殺せなかった、だ
 からもう片方が現れて代わりにやろうとした
 んです。それであの2体は争ってるんです」
防衛隊「しかしそれだけでは状況を変える事は
 出来んぞ」
万助「分かってます。もう一つ、昨日彼と関わ
 った事で怪獣の世界に恐怖に変わるエネルギ
 ーが溜まったんです! それは恐怖よりもも
 っと大きい!」
防衛隊「本当か……それは何だ?」
万助「希望です」
  万助、真剣な目で訴える。
万助「俺が彼と友達になったから、希望を感じ
 たから。怪獣は人間に希望だって与えられる
 んです!」
  上司、圧倒されている。
万助「そのミサイルの発射、今すぐやめて下さ
 い!」
  防衛隊の男、悩んで答える。
防衛隊「申し訳ない、既に発射されてしまった」
万助「え……?」
防衛隊「あと10分でそちらに着弾する」
万助「そんな……」
  万助、項垂れてしまう。
防衛隊「しかし君の言う事が本当なら示してみ
 せろ」
万助「どういう意味です?」
防衛隊「今から現場の戦闘機のスピーカーにそ
 ちらの音声を繋ぐ。あの怪獣に現状を伝える
 んだ、そしてミサイルを破壊してもらえ」
万助「……はい!」

○街中 路上
  人々、警報でミサイル発射を知る。
避難民1「ミサイルが来るって!」
避難民2「ここら一帯吹き飛ばす威力なんだ
 ろ?」
避難民3「私たちもヤバいじゃん!」
  人々、パニックになる。

○街中
  ワクラ、ワクラ上司と戦闘機の攻撃で疲弊
  している。
  ワクラ上司も同様だった。
ワクラ「はぁ、はぁ……」
ワクラ上司「お前、それだけやれるなら最初か
 らやれよな……」
  その時、戦闘機から万助の声が聞こえる。
万助「ワクラ! 聞こえる⁈」
  ワクラ、驚く。
万助「そっちにここら一帯を吹き飛ばすヤバい
 ミサイルが来てる! ワクラの破壊光線で着
 弾する前に壊して欲しいんだ!」
ワクラ「万助……!」
  ワクラ、上司へ振り返る。
  ワクラ上司、すぐさまワクラへ攻撃した。
ワクラ「ぐあっ……!」
ワクラ上司「ならばその前に私が全て破壊す
 る、恐怖は私が頂く……!」
  ワクラ、立ち上がる。
ワクラ「あぁ、これだけは終わらせないとな」
  ワクラ、拳を握り上司と殴り合う。
  以下、カウントダウンの演出。
ワクラ「おぉっ!」
ワクラ上司「うがぁっ!」
  ワクラとワクラ上司の戦い。
  ミサイルは迫っている。
  人々、万助の声を聞き上を見上げる。
ワクラ「貴方は目を背けてるっ、怪獣でも希望
 を与えられるって現実から!」
ワクラ上司「リスクが伴うからだ! それで舐
 められ滅ぼされたらどうするっ⁈」
ワクラ「だったら俺が示します! 怪獣の強さ
 を、そして優しさを!」
  ワクラ、ワクラ上司の顔面に思い切り拳を
  叩き込む。
  ワクラ上司、気絶して倒れる。
  ミサイル、既に上空まで迫っていた。
  人々、悲鳴を上げる。
万助「ワクラぁぁーっ!」
  ワクラ、口にエネルギーを溜める。
  降下してくるミサイルを見つめていた。
  ワクラ、口から破壊光線を上空に向けて放
  つ。
  ミサイル、街の上空で大爆発を起こす。
  凄まじい爆風が街へ。
  人々、互いに身を寄せ合う。
 × × ×
  人々、爆風が収まり顔を上げる。
  視線の先にはワクラが堂々と立っていた。
人々「おぉぉぉやったぁぁ!」
  人々、歓喜する。

○WP本社 会議室
  万助、ホッと胸を撫で下ろす。
  上司、腰を抜かして倒れる。

○街中
  ワクラ、街の人々を見つめた。

○地中 怪獣会社 エネルギー貯蔵庫
  希望のエネルギーが凄まじい量、溢れてい
  た。

○住宅街 公園 (数日後)
  等身大のワクラと万助、ベンチに座る。
万助「あれからそっちはどう?」
ワクラ「希望エネルギーが凄い量溜まったん
 だ、これでしばらくは暮らせるけど尽きた時
 のために今後の事を模索中だよ」
万助「あの上司は?」
ワクラ「俺が大出世しちゃったから今は部下に
 なってるね、コキ使ってやろうと思う」
万助「はは、冗談キツいなぁ」
  ワクラと万助、公園から周囲を見る。
万助「街も復興して行ってるし結果オーライだ
 ね」
ワクラ「うん、いい経験だったよ。大変だった
 けどお陰で家族にも認められてさ、今度ディ
 ナーに行くんだ」
万助「おぉ、よかったじゃん!」
ワクラ「それで万助は何してるの?」
万助「俺は変わらず今の会社にいるよ、余った
 お金で被害者たちに支援してる。本来やるは
 ずだった事がようやく出来てるよ」
  万助、立ち上がる。
  ワクラを見た。
万助「全部ワクラのお陰さ」
  ワクラも立ち上がる。
ワクラ「俺だけじゃない、君だって頑張った
 ろ?」
万助「うん、でもこれからまだまだ頑張らなき
 ゃ」
  子供たち、公園にやって来る。
  ワクラを見つけた。
子供1「あ、ワクラだ!」
子供2「握手してー!」
  子供たち、ワクラに群がる。
ワクラ「わーっとっと、1人ずつね!」
  万助、ワクラと子供たちを見て微笑む。
万助「これだ、これこそ怪獣が与える希望だよ」
  万助、空を見上げる。
万助「まさにやり甲斐のある仕事だよね!」

○ 地中 怪獣会社 エネルギー貯蔵庫
  また希望エネルギーが溜まり始めた。


 (了)

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