あなたの幸せ、わたしの幸せ ドラマ

女はかつての恋人の結婚式で、幸せを渇望する式場スタッフと出会う。
山岸遼 19 0 0 04/04
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第一稿

   人物
矢作恋歌(29) ブライダルスタッフ
八代萌(27)  保の元恋人

萩原玲(27)  新婦
萩原保(27)  新郎
正木清志(57) 玲の父


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   人物
矢作恋歌(29) ブライダルスタッフ
八代萌(27)  保の元恋人

萩原玲(27)  新婦
萩原保(27)  新郎
正木清志(57) 玲の父


〇結婚式場・外観

〇同・チャペル・外
   矢作恋歌(29)、扉を開く。
   萩原玲(27)、正木清志(57)の腕に手をかける。中に足を踏み入れる。

〇同・同・中
   大勢の参列者に見守られながら、玲と清志はバージンロードを歩いていく。
   バージンロードの先では、萩原保(27)が口を真一文字に結んで玲と清志を見つめている。
   恋歌は満面の笑みを浮かべて玲を見ている。
   中ほどの席いる八代萌(27)、玲を見つめている。その視線を保に移す。
萌「……」
   萌、ふっと笑みをこぼす。

〇同・喫煙所(夕)
   窓の外、雨が降っている。
   恋歌、入る。窓の外を見て、ため息をつく。乱雑にポケットからタバコとライターを出す。
恋歌「……」
   恋歌、座る。タバコに火を点けて、ふかす。シャツの第一ボタンを外す。
   窓の外、雨が打ち付ける。
   萌、入る。
萌「幸せに、なりたいですか?」
   恋歌、驚いて、咄嗟に火を消す。取り繕った笑顔を見せて、
恋歌「……大変失礼いたしました!」
   萌、苦笑して、
萌「気にしないで」
   と、タバコを一本取り出して、恋歌に渡す。
恋歌「?」
萌「お詫び」
   と、灰皿のタバコを見る。
   少ししか吸われていない長い吸殻。
萌「吸い始め、だったでしょ」
恋歌「……ああ、すいません」
   と、タバコを受け取る。咥える。
   萌、恋歌のタバコに火を点ける。
恋歌「ありがとうございます」
   萌、タバコを取り出し、火を点ける。一度大きく息を吐き出すと、座る。
萌「我慢できなかった?」
恋歌「え?」
萌「だって、ここの人でしょ。さっき扉開けてたし」
恋歌「ああ、はい」
萌「従業員休憩室に喫煙所はあるだろうし、でもここで吸ってるってことは、相当吸いたかったのかなと思って」
恋歌「……」
   恋歌、ぎこちなく笑う。
恋歌「すいません」
萌「いいのいいの、私だってかなりのヘビーだから」
   と、タバコの箱を揺らす。
   窓に打ち付ける雨。
恋歌「……あの、私、不幸に見えますか?」
萌「あ、ごめんなさい。そうじゃなくて、さっきとギャップすごくて」
恋歌「さっき?」
萌「保、あ、いや、萩原さんの挙式」
恋歌「ああ……」
萌「ずっと笑顔だったから。よくあんなにも他人の幸せを祝えるものだなと思って」
恋歌「私を見ないでくだいよ」
萌「ごめんなさい。でも今のあなたはさっきのあなたと全然違う」
恋歌「……」
   恋歌、笑みをこぼす。
恋歌「だって、仕事ですから」
   と、息を炊き出す。タバコの煙が宙に舞う。

〇同・宴会場・外(夕)
   「萩原保・玲」「披露宴」を示す立て看板。

〇同・同・中(夕)
   プロジェクターを通して、保と玲の結婚を祝う動画が流れている。
   玲は涙交じりに見ている。
   保は笑顔で見ている。

〇同・喫煙所(夕)
   灰皿には、吸殻が数本捨てられている。
   缶のブラックコーヒーで乾杯をする恋歌と萌。
萌「何の乾杯かわからないけど」
恋歌「私たちの不幸に?」
萌「私も不幸に見えてんだ」
恋歌「違いますか?」
萌「ノーコメントで」
   恋歌、タバコを一本取り出し、萌に渡す。
恋歌「お返しです」
   萌、受け取って、
萌「ありがとう」
   恋歌、萌のタバコに火を点けて、自身のタバコにも火を点ける。
萌「仕事はいいの?」
恋歌「勤務時間はとっくに終わってます」
萌「そうなの?」
恋歌「でも、ここで吸ってるのバレたら怒られる」
萌「だろうね」
恋歌「……披露宴はいいんですか」
   萌、苦虫を噛み潰したように息を吐き出す。
萌「それ訊く?」
恋歌「私も、あなたのことは挙式のときから少し気になっていました」
萌「どうして?」
恋歌「一人だけ、取り繕った祝福を送っているような気がしたんです」
萌「何それ?」
恋歌「他にもいるかもしれませんが、あなたからそういうオーラを感じ取った。いるんです、中には心からの祝福を送れない人」
萌「わかるもの?」
恋歌「この仕事長いので、割と敏感かも」
   萌、苦笑して、
萌「その通りよ」
恋歌「やっぱり」
萌「元カレなの。新郎」
恋歌「……ああ」
萌「一応名誉のために言っとくと、浮気とかじゃない。新婦と付き合う前にね、一年くらいかな」
恋歌「……今も?」
萌「ないない。だから、ドラマとかでよくあるような、『ちょっと待った!』的なやつじゃない。そういうのじゃない。ただね――」
   萌、コーヒーを飲む。

〇同・披露宴会場・中(夕)
   玲、保の耳元に顔を近づけて、
玲「ねえ、萌どこ行ったの?」
保「え?」
    と、当たりをキョロキョロして、
玲「さっきからずっといないんだよね」
保「え、そうなの?」
玲「うん、なんかあったのかな?」
保「まあ、大丈夫じゃない?」
   玲、不安そうに頷く。

〇同・喫煙所(夕)
   窓の外、大雨。
   恋歌、コーヒーを飲む。
   萌、タバコを灰皿に押し当てて、
萌「元カレの結婚式に行ったことある?」
恋歌「……ない」
萌「行く人って、いる?」
恋歌「統計取ったことないからわかんないけど、少数かな」
萌「だよね」
恋歌「どうして来たの?」
萌「玲、あ、新婦が親友なの」
恋歌「ああ……」
萌「というか、新郎新婦と私、小中高と一緒で、サンコイチだった」
恋歌「恋愛に発展するんだね」
   萌、タバコを取り出す。が、箱に戻して、
萌「付き合って、振られて、振られたと思ったら、親友と結婚した」
恋歌「付き合ってたのはいつ?」
萌「2,3年前?」
恋歌「そっか」
萌「もっと複雑なのが、私と付き合ってたことを新婦が知らないってこと」
恋歌「ああ……」
萌「新婦は、私が一番祝福してるって思ってる。してないわけじゃないけどね、わかる?」
恋歌「わかる」
萌「幸せになりたいけど、私はなれない」
   恋歌、徐に窓の外を眺める。
恋歌「……ねえ、逃げ出さない?」
萌「え?」
恋歌「この世界、この建前だらけの世界から」
萌「……正気? 初対面、今偶然会っただけだよ」
恋歌「だね。だけどそういう気分になったから」
   と、タバコを灰皿に押し付ける。
恋歌「私、矢作恋歌」
萌「急な自己紹介」
   と、苦笑して、
萌「……私は八代萌」
恋歌「出席番号前後じゃん」
萌「確かに」
   恋歌と萌、顔を見合わせて笑い合う。

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