〇登場人物
・櫻庭宗介
・沢城千秋
・星七緒
・古川紘
・長谷川なつき
・聖川琉華
〇ネットカフェ・中・個室(朝)
寝違えて首を押さえている宗介が振り返ると七緒がしゃがんでい
る。
宗介「うわぁぁぁ!(首を押さえ)イッてぇ!」
七緒「だから、あのシェアハウスから出る事はお勧めしないとあんなに
言ったのに…」
宗介「…」
七緒「行きますよ」
宗介「行きます?どこに?」
〇シェアハウス近くの道(朝)
七緒と宗介が歩いている。
宗介「なぁ、何であそこに居たのが分かったんだ?」
七緒「私は占い師です。宗介さんの考えてる事位分かります…」
宗介「本当なのかよ…」
七緒「私を見くびらないで下さい」
宗介「別にそこまでは…」
七緒「あのままあそこに居て、どうするつもりだったのですか?」
宗介「どうって…取り合えずすぐ働ける仕事とかネットで探そうと思っ
てたんだけど」
七緒「ありました?いい仕事」
宗介「無かった…そしてあのままいつのまにか寝てた」
七緒「ほら、私の言った通り。今はあのシェアハウスから出て行くのは
無謀な相が出てるのです。今は変に動くべきではありません」
宗介「でも、家に戻っても…」
七緒「手を見せて下さい」
宗介「何だよ、突然…」
と、言いながら七緒に手を差し出す宗介。
七緒「奇麗ですね。手…」
宗介「ちょ…何だよ!」
手を引っ込める宗介。
宗介「なぁ…七緒もゲ、ゲイなのか?」
七緒「ストレートに聞きますね。そうですけど」
宗介「やっぱりそうか…」
七緒「それがどうかしましたか?」
宗介「いや、俺の周りにゲイって居なかったからさ…つい…」
七緒「琉華さんと喧嘩でもしましたか?」
宗介「知ってんのかよ…あぁ占いか…」
七緒「仲直りのヒントを差し上げましょう。宗介君の得意な事を最大限
使う。これで琉華さんと仲直りが出来るはずです」
宗介「得意な事?」
七緒「さぁ、戻りましょう」
〇シェアハウス・玄関・中
宗介と七緒が帰ってくる。
千秋「あ、宗ちゃん!お帰り」
そっぽ向いている宗介。
千秋「ほら、早く上がって」
七緒「私は、力を使い果たしたので少し休みます」
千秋「七緒。お疲れ様(七緒に耳打ち)電話ありがとう」
千秋にアイコンタクトして部屋に戻っていく七緒。
千秋「ほら、宗ちゃん」
宗介の手を握って、家に上げようとする千秋。
宗介「琉華…居るんだろ?」
千秋「居るけど…今は寝てるから。早く上がりな!」
紘が帰ってくる。
紘「ただいま。え?何二人で出迎えてくれたの?」
千秋「あ…そうそう、紘がもうすぐ帰ってくるんじゃないかなあって予
感がして」
二階から激しい物音立てながらなつきが下りてくる。
なつき「紘ー!お帰り。あら、宗ちゃんも帰って来たの?」
紘「あぁ、そうだ宗ちゃん。なんか琉華と…」
千秋「あぁそれはね、ちょっと…」
紘にアイコンタクトする千秋。
紘「あぁ、お土産買ってきたから皆で食おうぜ」
〇同・リビング
宗介、千秋、紘、なつきで紘のお土産のお菓子を食べている。
紘「そっ、俺達皆ゲイなの。ちーちゃんがちゃんと説明しないから、こ
んなややこしい事になるんだろ」
千秋「そうだね。ごめん…でも、あの時宗ちゃん酷く酔っぱらってたか
ら」
宗介「まぁ…」
千秋「琉華が言ってた事は気にしないで…本当に困ってたから何か助け
てあげられなかなって思ったのは本当だから」
宗介「…」
千秋「何か仕事見つかって、もう大丈夫って思ったら、もうここ出て行
っても構わないし…だからそれまでは…」
宗介「わ、分かったよ…千秋がそこまで言うなら。居てやってもいいぞ
仕事が見つかって生活が安定するまでだけどな」
なつき「宗ちゃんってもしかしてツンデレ?」
宗介「はぁ?なんで俺がツンデレなんかしなきゃいけないんだよ。し
かも男相手に」
なつき「あぁ、BLで何かネタに使えそう」
笑っている紘。
宗介「おい、紘。笑うなよ!」
千秋「ねぇ、これからもう出かけたりとかしないんでしょ?」
なつき「うん」
紘「俺も今日は出かけない。明日派遣の仕事入ってるからそれまでのん
びりする」
千秋「皆集まってるし、皆でご飯食べようよ」
紘「いいねぇ。宗ちゃんの歓迎会しよ」
なつき「いいねぇ!楽しそう」
千秋「じゃあ買い物行ってこようかな。宗ちゃん付き合ってもらえ
る?」
宗介「え?俺の歓迎会なのに、俺が買い物行くの?」
千秋「いいじゃん。つべこべ言わずに!」
〇スーパー・店内(夕)
買い物をしている宗介と千秋。
宗介「夕飯、何にするんだ?」
千秋「皆居るし、鍋でもどうかなって」
鍋用の野菜を買い物かごに入れていく千秋。
宗介「じゃあ、水炊きにするか?」
千秋「え?」
宗介「俺、水炊きに合う超クセになるタレ作ってやるよー」
千秋「タレ?水炊きってそのままか大体はポン酢とかじゃないの?」
宗介「違うんだなぁこれが」
千秋「ねぇ、宗ちゃんって料理作るの得意?」
宗介「まぁなぁ。得意って言うか、料理するのを仕事にしたいなとは
思ってるんだ。前も小さな弁当屋だけど働いてたし」
千秋「そっかぁ…じゃあ今日の水炊き宗ちゃんに全部任せる」
宗介「え…」
千秋「宗ちゃんの、腕の見せ所じゃない?楽しみにしてる」
宗介「お。おぅ…でもそう言われると緊張するなぁ」
千秋「楽しみにしてまぁす」
笑う千秋に宗介もつられて笑う。
〇シェアハウス・リビング(夕)
なつきが紘のスーツを着たコスプレを見ながらデッサンをしてい
る。
なつき「ねぇ」
紘「ん?」
なつき「かっこいい…」
紘が吹く。
なつき「ちょっとぉ。そのまま」
紘「わりぃ」
ポーズを取り直す紘。
なつき「ねぇ」
紘「ん?」
なつき「ちーちゃん。宗ちゃんの事好きだと思う?」
紘「あぁ…無い事は無いだろうなぁ…」
なつき「でも、宗ちゃんノンケだよね…」
紘「ちーちゃん、好きになる奴いっつもノンケだもんな…」
なつき「かと思えば、結婚してる人を好きになったり」
紘「あれ、まだ続いてんのかなあ…」
七緒の声「続いてます」
なつき「(驚いて)ヒィッ!」
紘を描いていたデッサンが乱れる。
なつき「あーもぅ、七ちゃん!後ちょっとで完成だったのにぃ」
七緒「それは…すみません」
紘「また最初からか…」
七緒「残念ながらまだ、あの二人は続いています。と、言っても
ちーちゃんはもう会うつもりはなさそうですが…たまに連絡が
入ってくるみたいです」
なつき「そうなんだ…。でも相手の男もどういうつもりなんだろう
ね。結婚してるのにさ、わざわざちーちゃんと繋がるような事」
七緒「そこはまだ…分かりません」
なつき「え?分からないの?そこは占いで分からないの?」
七緒「…」
なつき「あっ、それには答えてくれないんだ …」
千秋の声「ただいまー」
紘「あっ、帰ってきた」
七緒「今話した事。内緒ですよ」
なつき「当たり前でしょう。言える訳ないよぉ…」
紘「口にチャックだ」
三人合わせて頷く。
千秋と宗介が来る。
千秋「ただいま」
紘「お帰り」
なつき「お帰りなさい」
千秋「あぁ、七ちゃんも起きてたんだ」
七緒「さっき目が覚めて、体力も温存できました」
千秋「それは、良かった。今日の晩御飯は鍋にします!」
紘「いいねぇ。皆で鍋つつくの」
なつき「何鍋にするの?」
宗介「水炊きにした」
なつき「あぁ。僕水炊き大好き!鶏肉沢山買ってくれた?」
千秋「もちろん!」
鶏肉の入った袋を上げて見せる千秋。
なつき「わぁい楽しみー!」
千秋「それで、水炊きと言えばタレはポン酢なんだけど、宗ちゃんがオ
リジナルのタレを作ってくれるとの事なので楽しみにしてて!」
なつき「何々?気になるぅ」
宗介「口に合うかどうかは分かんねぇけど…じゃあ俺作ってくる」
千秋「俺も手伝うよ」
キッチンへ行く宗介と千秋。
七緒「恋人同士みたいですね…」
紘「これは…あるかもなぁ…」
なつき「紘ー、宗ちゃんはノンケだってば」
〇同・キッチン(夕)
千秋が野菜を刻み、宗介はタレの準備をしている。
宗介「千秋も料理するのか?」
千秋「まぁねぇ。一応カフェのオーナーだし、色々料理とか考えてお店
に出してみたりとかしてるよ」
宗介「そうなんだ」
手際よく進めていく宗介。
千秋「宗ちゃん、ほんと手際いいねえ」
宗介「何だよ。俺の言う事嘘だと思ってたのか?」
千秋「そんな訳じゃないけど…」
宗介と千秋が鍋の準備をしている後姿を見る七緒、紘、なつき。
七緒「やはり、恋人同士のようですね」
紘「やっぱり、これはひょっとすると…」
なつき「あぁ、目に焼き付けてBLコミックに使いたいー」
〇同・リビング(夜)
宗介が鍋を持ってきてカセットコンロの上に置き火を点ける。
千秋「出来上がりだよー」
鍋の蓋を取る千秋。
紘「うわぁ、美味そ!」
七緒「これは間違いなく百パーセント美味しいです」
宗介「このタレつけて食べてくれ」
タレを入れて皆の前に差し出す宗介。
千秋「これね、宗ちゃん自慢のタレなんだって。これ付けて食べたら
超美味いんだって」
紘「へぇ、どんな味するんだろ」
なつき「見た目ポン酢みたいだけど…」
七緒「とりあえず、食べてみましょう」
千秋「じゃあ、頂こうか」
琉華の声「何やってんだよ」
一斉に声の方を見ると寝起きの琉華が立っている。
千秋「琉華…」
琉華「んで、何でこいつがここに居るんだ?出て行ったんじゃねぇの
かよ」
千秋「訳あって、またここに居る事にしたんだ」
琉華「はぁ?」
千秋「ねぇ、琉華も食べようよ鍋」
琉華「いらねぇよ」
千秋「はい。そんな事言わないで」
立ち上がり琉華を無理やり宗介の隣に座らせる千秋。
琉華「何で、こいつの隣なんだよ」
そっぽ向く琉華。
宗介「…」
続。
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