トウキョウタワー ドラマ

一番以外に価値はないと思っている中学生利根沢到は学業でもスポーツでも一番を取り続けていた。そんな折、到よりも学業もスポーツのできる高藤俊が転校してきて……
れいき 30 0 0 09/04
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第一稿

登場人物
利根沢 到(13)中学2年生 
高藤 俊(14)中学2年生
利根沢 遥(7)小学2年生 
野沢 健人(13)中学2年生
沼田 貴人(13)中学2年生 
矢上  ...続きを読む
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登場人物
利根沢 到(13)中学2年生 
高藤 俊(14)中学2年生
利根沢 遥(7)小学2年生 
野沢 健人(13)中学2年生
沼田 貴人(13)中学2年生 
矢上 帆香(13)中学2年生  
利根沢 隆(37) 到、遥の父
利根沢 琴音(33) 到、遥の母、物語の始まる前に死んでいる
担任
看護師

○土井台中学校・2年1組教室(夕)
   一つの机に群がる中村健人(13)、沼田貴人(13)、矢上帆香(13)。机の上には東京タワーの写真が載っている雑誌が置いてある
貴人「来週さ、東京タワーいかね?」
帆香「行きたい行きたい」
健人「いいね」
   教室のドアが開き、利根沢到(13)が入ってくる
到「お前ら、何やってんの?」
貴人「来週どこ行こうかの話」
到「決まったの?」
健人「東京タワーに行く案が濃厚」
到「東京タワー?」
貴人「行ってみたくね?」
到「行くならスカイツリーだろ」
帆香「ええ、なんでよ?」
到「だって、1番高いんのはスカイツリーだろ、1番高くなくなった東京タワーなんて用済みじゃん」
貴人「到は1番じゃなきゃなんでもだめなのかよ」
到「……1番以外にどこに意味があるんだよ」

○同・同(朝)
   担任が教壇の上に立っている
   教室には9人の生徒が座っている
担任「出席とるぞ、利根沢到!」
到「はい!!」
担任「沼田貴人」
貴人「(笑いながら)はい」
担任「何を笑っとる?」
貴人「(笑いながら)改めて思うんですけど「と」で出席番号1番ってめちゃくちゃ面白くないですか?」
  笑いが起きる
到「俺は何をやらせても1番だからな」
健人「いや9人しかいないからだろ」
   再びクラスに笑いが起きる

○同・校庭
   50メートル走のレーンを走っている到と貴人
   到、貴人を大きく引き離している
   到が貴人より先にゴールする
   穂香、到にタオルを差し出し
帆香「おつかれ」
到「帆香―、おまえはいいやつだな」
帆香「いいお嫁さんになりそう?」
到「なり……」
   汗をかき、息をきらした貴人、到と帆香の間に割り込む
   
貴人「いいおよめさんになるよ!!俺のな」
帆香「貴人君は口を閉じなさい」
貴人「はあ」
   戯れる貴人と穂香
   そこに入ってくる健人
   健人、到と貴人に飲み物を差し出し
健人「おつかれ」
貴人「健人―!サンキュー」
到「ありがと」
健人「やっぱり運動やらせれば到が1番だな」
到「俺が1番だからな」
健人「勉強ではどうだかな」

○同・廊下(夕)
   掲示板の前に立っている到、健人、貴人、帆香
   掲示板には5月中間テスト順位とかかれた紙が貼られている。1位の欄には利根沢到、2位には野沢健人、9位には沼田健人の名前がある
貴人「なんで、順位張り出すかな」
帆香「9位って一桁じゃん、すごいね貴人君」
貴人「それけなしてるよな」
帆香「そんなわけないって」
健人「到、やっぱおまえには勝てねえな」
到「言ったろ」
貴人「何やっても1番だもんな」
到「俺が1番なんだよ!俺が1番」
  穂香、不思議そうな表情を浮かべる
貴人「今日、遊び行かね」
帆香「いいね」
健人「どこいくんだよ」
貴人「ゲーセンとか……到今日は来れる?」
   到、申し訳なさそうに
到「ごめん、 今日もちょっと」
貴人「そっか」
   そういって、到、廊下から去る
穂香「到君って、なんであんなに1番にこだわってるんだろうね」
貴人「いや、そりゃ1番にはなりたいじゃん俺だって、いつか」
帆香「貴人はまず一桁キープしなきゃ」
貴人「9人のクラスで一桁キープできないとか地殻変動でも起きない限りありえないだろ」

○同・教室(朝)
担任「転校生を紹介しまーす」
貴人「ありえるんかい!!」
   貴人、机にうつぶせになる
   その光景を横目に参考書を解いている到
担任「入ってきてくれ」
   ドアが開き、高藤俊(14)が入って くる
高藤「(教壇に立ち、周りを見渡し)高藤俊です、よろしくお願いします」
貴人「た、高藤ってことは到より出席番号早いじゃねえか」
健人「注目するとこ絶対そこじゃねえだろ」
   笑いが起きる  
到、高藤をにらむ
高藤「(到に近づき)よろしく(といい手を差し出す」
   到、無言で高藤と握手する
   高藤、到の後ろの席に座る
   到、参考書を解き続ける

○同・校庭
   到、貴人、帆香、健人、校庭に座っている
貴人「どうよ、万年1番を奪われた気分は?」
到「……出席番号でまけたからってガタガタ言うほど、俺は器小さくねえんだよ」
帆香「かっこいいじゃん」
健人「……」
   そこに高藤近づいてくる
高藤「到君ってのは(4人を見渡す)」
到「……(高藤をにらむ」
高藤「(到に気づき)君、なんかすごいらしいね」
貴人「こいつはまじですげえぞ」
高藤「勝負しようよ……まだ友達いないし暇なんだよね」
到「……」
帆香「高藤君から来てくれたんだしやってあ
げなよ、」
貴人「見せつけてやれよ」
   到、無言で立ち上がる
高藤「よし、じゃあ50メートル走にしようか」
   50メートル走のレーンに立つ高藤と到
貴人「位置についてよーいドゥン」
   二人、走り始める
   最初は到が優勢だったが、途中で高藤到を追い抜き、そのままゴールする
貴人、健人、帆香「……」
   到、ゴールし、先にゴールしてた俊の  方を見る
高藤「僕、この前の学校で何やっても1位だったんだよね、張り合いがなくてさ……到君は僕のライバルになってくれる?」
貴人「おおおおお、すげえじゃん、到も俺たちじゃ張り合うこともできずにさ、退屈そうだったからさ、これでさっ」
帆香「ほんとだよ、これで到君にもいい刺激に……」
到「(遮り)……るせえ、うるせえよ、俺が、俺が1番なんだよ!!」
  到、そういって、校庭を去る
  沈黙が生じる
貴人「どうしたんだ、あいつ」
帆香「ごめんね、到君いつもはいいやつな
んだけど」
高藤「(笑って)あのくらいじゃないとね」
健人「……」

○同・屋上
   屋上に立っている到
   屋上のドアが開き、健人が入ってくる
健人「到」
   到、ゆっくり健人に振り向き
到「どうした?」
健人「あの態度はないだろ?せっかくの転校生なんだぞ」
到「……その話か」
健人「到、ちょっと頭冷やせよ」
   到、健人の方に歩みを進めながら
到「転校生だろうがなんだろうが俺は1番じゃなきゃいけないんだよ」
   到、語気を強めて
到「俺が!!一番なんだよ」
   そういって、到、健人の脇を抜けドアから屋内へ入ろうとする
健人「今日も行くのか?」
到「……当たり前だろ」
   到、その場を去る
   健人、到が去っていくのを見つめる

○同・教室(朝)
   到、教室に入ってくる
   高藤の机の前に貴人、帆香いる
   貴人、到に気づき
貴人「到!おっは」
帆香「到君おはよ」
高藤「到君、おはよう」
   到、高藤をにらみつけるようにして、3人のあいさつに反応することなく、自分の机に座り、参考書を開き始める
貴人「なんだよ、到、無視はねえだろ」
帆香「到君!!」
   到、イヤホンを取り出し、イヤホンを耳につけ、参考書を解き始める
高藤「負けず嫌いなのかな、彼は」
貴人「井の中の蛙なだけだろ、ただただかっこ悪いだけじゃねえか」
帆香「貴人、そんなことわざ知ってたんだ」
貴人「俺だって、一人だけ二ケタにならないよう頑張ってるからな」
帆香「やるじゃん」
   高藤を到を見つめる

○同・同(夕)
   チャイムが鳴る
貴人「遊びに行こうぜ!!」
帆香「どこいく?」
貴人「やっぱゲーセン」
健人「ゲーセン以外の選択肢は?」
貴人「ない!!俊もくる?」
高藤「うん、行きたいね」
貴人「……到は?」
   到、無言で教室を去る
貴人「まじでなんなんだよ、あいつ、たかが50メートル走負けただけだろ、別にオリンピックの出場がかかってたわけじゃあるまいし」
帆香「確かに……ちょっとひどいね」
高藤「まあまあ」
貴人「いや、ほんと俊には申し訳ないよ」
高藤「僕は大丈夫だから」
健人「あいつもあいつなりにいろいろあるんだろ」
貴人「あるのはプライドだけじゃねえか」
帆香「……ゲーセン行こうよ」
高藤「行こう、行こう」
   4人、教室を出ていく

○藤川病院(夜)
   到、病院の入口へと走る

○同・廊下(夜)
   到、廊下を走っている
   到が走る先には看護師がいる
看護師「病院では静かにしてくだ……」
   到、看護師の隣をそのまま走っていく

○同・遥病室(夜)
   到、ドアを開ける
   部屋のベッドには、ニット帽をかぶっ
   た利根沢遥(7)がねている
   ベッドの横の机には雑誌が置いてある
   到、息をきらして
到「まにあった……」
遥「面会時間、もう終わりだよ、お兄ちゃん」
到「悪い、遥、あと10分あるから」
遥「10分で何話すの」
到「何がいい?」
   遥、満面の笑みで
遥「お兄ちゃんが1番の話」
到「……」
遥「どうしたの?」
到「なんでもない」
遥「お兄ちゃんは何やっても1番だもんね」
到「……そうだ、俺が1番だからな」
遥「話して話して」
   到、遥に語り始める
 
○土井台小学校・教室(朝)
   高藤の机の周りで話をしている貴人、帆香
   机の前に到がくる
貴人「(到に気づき)……到」
帆香「到君!みんなで遊ぶ話してたんだけど、到君もく……」
   到、帆香の話を遮り
到「高藤……」
高藤「俊でいいよ」
到「……高藤、今度の期末テストで俺と勝負しろ」
高藤「(笑って)もちろん」
   二人を見つめる貴人、帆香
   そこに健人が来る
健人「お、めずらしいじゃん、到と俊がはなしてるなん……」
   到、高藤をにらにみ、高藤、到に微笑んでいる

○同・屋上
   到、立っている
   健人がくる
健人「おまえ、ここ好きだよな?」
到「……お前も大概だろ」
健人「……なんか、決闘申し込んだんだって」
到「そんな大それたもんじゃねえよ」
健人「お前はそんな感じだけどな」
到「……」
健人「負けたらどうすんの?」
到「……俺は負けない……1番なんだから、
 俺は、俺は、1番じゃなきゃダメなんだよ」
健人「……」

○同・教室
   教室で貴人と帆香が話している
貴人「到はホントどうしちゃったんだよ」
帆香「最近、ほんとね」
貴人「負けたらどうすんだよお」
帆香「今の到君は……知らないかな」
貴人「到……」

○利根沢家・居間(夜)
   時計は12時を指している
   到、ちゃぶ台の上で勉強をしている
   利根沢隆(37)居間に入ってくる
隆「ただいま」
到「父さん?お帰り」
隆「まだ起きてんのか?」
到「まあね」
隆「遥はどうだ?」
到「なんとも」
   父、居間の奥にある仏壇の前に行く
   仏壇には利根沢琴音(33)の遺影がある
   仏壇で手を合わせる
隆「到……母さんもはる……」
到「父さん!!俺は医者になるんだ、そして助ける、誰ももう死なないよ」
隆「悪いな、お前ばっかりに……」
   到、勉強を続ける

○同・廊下(夕)
   到、高藤、帆香、健人、貴人、掲示板へと歩いていく
貴人「どうなってるだろうな?」
帆香「二人とも、そんな気をはらなくても」
高藤「僕は気張ってないよ」
到「……(小声で)俺が1番、俺が1番」
健人「……」
   5人、掲示板の前に行く
   貴人、掲示板の前に立つ
貴人「お、俺9、9位だ……二ケタじゃない!!」
帆香「(掲示板の方へ身を乗り出して)やったじゃん」
   到、順位を確認する
   1位の欄には高藤俊の名が書かれている。2位には利根沢到の名があり、1位と2位の差は1点である
高藤「おお、あっぶない、ぎりぎりだ」
貴人「やっぱ、到だもんな、今回は勝てても次はどうだかな」
高藤「ほんとだね」
   到、掲示板を見つめ続けている
到「(小声で)俺が1番、俺が1番……」
健人「到!!」
   到、はっと気づいたように周りを見渡し、その場を走り去っていく
   到をおいかけようとする穂香を制止する貴人
貴人「到ならほっといても大丈夫だろ」
   掲示板の前に立つ4人

○同・屋上(夕)
   周りを見渡す到
   そこに入ってくる健人
健人「なんかデジャブだな」
   到、健人に振り向く
健人「どうすんの、こっから?」
到「俺は1番なんだ、俺は、俺は」
健人「到!!」
到「俺は!!」
   到の携帯が鳴る
健人「電話なってるぞ」
到「(携帯を取り出し)もしもし」
   青ざめる到の顔
健人「どうした?」
   到、すぐに携帯をしまい、健人に反応することなく屋上を去っていく
健人「到!!」

○藤川病院・病室(夜)
   到、息を切らして、病室の中に入ってくる
   遥のベッドの横には隆が座っている
遥「(元気そうに)お兄ちゃん!!」
到「遥……」
隆「ちょっと父さん、話があるから」
   隆、病室を去る
   到、遥の隣の椅子に座る
遥「お兄ちゃん、またいつもの話して」
到「いつもの?」
遥「お兄ちゃんが1番の話!!」
到「……お兄ちゃんはな、なにやっても1番なんだよ」
遥「お兄ちゃんすごーい」
到「お兄ちゃんはな、お兄ちゃんはな」
   到、うなだれる
遥「お兄ちゃんどうしたの?」
到「遥……スカイツリー行こうか……日本で1番高い高い、1番のタワーなんだ」
   遥、机の上の雑誌を到に見せて
遥「私、東京タワー行きたい!!」
到「東京タワー?あそこは日本で二番目なん
だよ、1番じゃないんだよ」
遥「1番たかくなくてもいいの!!」
到「え?」
遥「東京タワーの夜のライトアップすごいきれいなんだって」
到「スカイツリーにも……」
遥「ライトヴェールっていってね、すごいきれいなんだって、ほら」
   遥、雑誌を到に見せる
到「けど1番じゃないんだぞ?」
遥「1番じゃなくてもきれいなものはきれいだよ」
   到の目から涙がこぼれる
遥「お兄ちゃん?」
到「たとえ、俺が1番じゃなくても俺はいいのか?」
遥「当たり前だよ!!」
   到の目から大量の涙が流れる
   ドアが開き、隆が入ってくる
隆「到?」
遥「お兄ちゃんが泣いちゃったの」
   泣き崩れ、うなだれている到

T五年後

○利根沢家・居間
   仏壇の前で手を合わせる到(19)
   仏壇には琴音と遥の遺影がある
到「俺、絶対医者になるからな」
   到、立ち上がる
高藤声「到―、行こうぜ」
到「俊、ちょっと待ってろ」

○同・玄関
   到、玄関につくと、ドアが少しあいていて、高藤(19)が待ち構えていて、外には人影が見える
高藤「遅いっての」
到「わりーわりー」
貴人声「声今日どこ遊び行く?」
帆香声「久しぶりにスカイツリーとか」
健人声「いいじゃん」
到「東京タワーに決まってんだろ」
貴人声「毎月じゃねえか、おまえは東京タワーの年間フリーパスでも作って来いよ」
   到、靴を履く
到「とにかく行くぞ」
貴人声「まじかよ」
帆香声「まあまあ」
   到、靴を履き終える
   高藤、玄関の外に出る
   到、玄関をでようとして、下駄箱の上の写真を落とす
到「やっべ」
   到、写真を拾い上げ、じっと見つめて、笑顔になり、下駄箱の上に置きなおす
到「わりーわりー」
   到、そう言いドアを開け、外へ出ていく
   下駄箱の上に置かれた写真にはライトアップされた東京タワーを背景にして車いすに座って、ニット帽をかぶった遥とその横に立っている到が写っている
 
                       

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