地下カジノ。
常連らしい男に、新顔が声をかける。
常連 「うん? なんだ?」
新顔 「あのさ、ここってポーカーとルーレットどっちが勝率高い? あんたの肌感覚からいって」
常連 「なんだお前、見ない顔だな。ひょっとして素人か? ここは玄人むけの違法カジノだぜ」
新顔 「知ってるよ。レートが天井知らずのヤバいとこなんでしょ? でも、だからこそ足を運んだんだ」
常連 「うん? なんかワケアリなのか」
新顔 「借金だよ借金。いやね、ちょっと友達から50マンほど借りたやつを、ほかの友達からまた50マン借りて返してたのね」
常連 「自転車操業ってやつか。そんなのいつまでも続かねーだろ」
新顔 「まさに。それを繰り返してらいい加減くたびれちゃってね」
常連 「まあそうだろうな」
新顔 「だからその二人の友達に、今後はオレを抜いて、お前たち二人だけで返しあってくれって提案したんだ」
常連 「何様なんだよお前は!」
新顔 「そしたらステレオで怒鳴りまくられさ~」
常連 「あたりめーじゃねーか! お前、軽くサイコパス入ってねーか?」
新顔 「それで、そいつら二人ぶん合計100マン今日じゅうに返さないと出るとこ出るってつめられちゃったんだよ」
常連 「ここまで同情できねえ借金話も珍しいな……」
新顔 「とにかく今日中に金を作らないと、って途方に暮れてたら、どこかで小耳にはさんだ地下カジノの話をふっと思い出したのね」
常連 「なるほどな。それで一発逆転ホームラン狙ってここへ来た、と」
新顔 「うん、もう後がないからね。窮鼠猫を嚙むの気合でいくよ!」
常連 「その諺で合ってるのかな…。それはそうと、まあやめとけよ。昔からいうだろ、博打で蔵はたたねーと」
新顔 「じゃ、あんたはなんでやってんのさ」
常連 「俺はただの道楽だよ。小遣いの範囲内で遊んでるだけで、生活かけてるわけじゃない」
新顔 「つまりあんたは本気でやってない半端ものなんでしょ? そんな半端ものの意見を聞く必要はないね」
常連 「可愛げのねー口をきくなあ! いいか、博打なんてものは今日勝っても明日は負けるし、明後日勝っても明々後日は負ける世界なんだ。甘くねーぞ」
新顔 「そういうシステムなの!? じゃあ隔日でやるよ!」
常連 「バカタレ! そんな話してるわけじゃねーっつーの!」
新顔 「あんたはここ毎日くるの?」
常連 「まあ、昨日もきたよ」
新顔 「どうだった? ここ、新参者でも勝てそう?」
常連 「昨日は……俺はまあまあツイてたな」
新顔 「へえ、どのくらい?」
常連 「カジノから帰ろうと思って外へでたら、千円札ひろっちゃってさ、おかげで一時間も歩いて帰らなくてすんだんだ」
新顔 「すってんてんにされてんじゃねーか!」
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