ゲイの子 ドラマ

下宣彦はゲイの父を持つ。そんなことは関係ないといつも通りの日常を送ろうとする宣彦であったが、宣彦は学校で自分の父がゲイであると話してしまう。それから、クラスメイトから父に関しての興味本位の質問、からかいが増えた。宣彦はその苦悩の果てに、、
水野モト 23 0 0 08/13
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第一稿

登場人物
下 亘彦(14)学生
鳥羽 ナツメ(14)学生
下 勲(39)フリーランス
学生1
学生2
学生3
学生4
学生5
学生6
女学生
祖母


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登場人物
下 亘彦(14)学生
鳥羽 ナツメ(14)学生
下 勲(39)フリーランス
学生1
学生2
学生3
学生4
学生5
学生6
女学生
祖母








〇教室(昼)
   下 宣彦(14)、本を読んでいる。宣彦の後方で3人ほどの男子学生が楽しそうに戯れ     
   ている。
男子学生1「うわー! ホモかよ、お前」  
   宣彦、ゆっくりと後ろを振り返る。
男子学生2「金玉ばっか狙いやがって。おら」
男子学生3「お前だって金玉ばっかだろ。お前もホモだ、ホモ」
   宣彦、席を立ち教室を出ようとする。
男子学生1「あ、おい鳥羽。こいつらホモだぜ。お互いの玉触りあってやんの」
   鳥羽 ナツメ(14)、宣彦と反対の教室の扉を開け教室に入ったようだが、扉に手を掛   
   けたまま固まっている。
男子学生2「おい、俺は」
ナツメ「だから?」
   ナツメ、男子学生1を黙って見つめる。
男子学生1「い、いや。その」
   ナツメ、ため息をついて
ナツメ「そこ、どいて」
   ナツメ、男子学生達をよけるようにして教室に入っていく。
男子学生1「なんだよ、ノリ悪いな」
   宣彦、茫然とナツメの姿を目で追いかける。
   宣彦、教室の扉に触れていた左手を強く握る。

〇回想・リビング(夜)
   宣彦と下 勲(39)が向かい合って座っている。勲は強く握りしめた拳をテーブルの上        
   に置き、宣彦から視線を外して右斜め下を見つめている。宣彦、写真を左手で持ちじっと       
   見つめている。
宣彦「これは……」
勲「それが、俺の恋人だった人だ。お前を引き取ってすぐに、死んでしまったから覚えていないだろうが」
宣彦「でも、父さん」
勲「ああ」
   写真には、一人の男性が写っている。
勲「父さんは、ゲイなんだ」

〇テニスコート(夕)
   宣彦、学生4、学生5がコート端のベンチに座っている。
学生4「なあ宣彦。お前の父ちゃん、ホモってマジ?」
学生5「なんだ、その噂」
   宣彦、水筒で水を飲む。
学生4「おい、どうなんだよ」
   学生4ニヤニヤと笑いながら宣彦の肩を揺さぶる。
   学生5、宣彦をじっと見つめる。
   宣彦、水筒を地面に置く。
   宣彦、地面を見つめながら、口を少し開けて固まった後、
宣彦「……あ……そ、そうだよ」
学生5「マジかよ!」
   学生4が詰め寄ってくる。
学生4「話、聞かせてくれよ! お前の母ちゃんはどっちなんだよ」
   学生5が詰め寄ってくる。
学生5「口調はやっぱオネエっぽいのか?」
   学生6が詰め寄ってくる
学生4「恰好は!?」
   学生7が詰め寄ってくる。
学生5「ホモビとかあんのか!?」
   宣彦、視界がぐにゃりとゆがみ、学生4と学生5が気味の悪い笑みを浮かべながら訳の分  
   からない言葉を吐いて攻めってくるように見える。

〇回想・教室
   宣彦、座って本を読んでいる。
   学生3、笑いながら宣彦の後ろから手を伸ばし股間を握る。
   宣彦、驚いた顔で学生3を見上げる。
宣彦「なにすんだよ!」
学生3「なんだよ、嬉しくねえのか?」

〇回想・道路
   宣彦、学生6と並んで夕日がさす道を歩いている。
学生6「俺はお前の父ちゃんがどうとか、気にしないから」

〇回想・職員室
   先生、書類が山積みの机の前の椅子に座っている。宣彦、先生の前に立っている。
先生「お前、なにか嫌なことされてないか?」

〇回想・教室
   先生、教壇に立っている。
先生「最近、下の父親をゲイだとからかうやつが――」

〇廊下
   女学生3人が宣彦を囲っている。
女学生「さっきの話って――」

〇テニスコート
   学生4と学生5、頭を抱えている宣彦を見つめている。
   宣彦、ゆっくりと顔を上げる。
   宣彦、笑っている。
宣彦「父さんは――」

〇暗闇
宣彦(M)「僕は父さんを、笑った」   

〇学校・正門前(夜)
   正門の前に、ナツメが立っている。
   宣彦、ナツメと目を合わせないようにしながら学校を出ようとする。
ナツメ「下君」
   宣彦、足を止め、
宣彦「何?」
ナツメ「もう、やめたら」
宣彦「なんのことだよ」
ナツメ「見ていてウザイのよ」
   宣彦、声を荒げて、
宣彦「だから何が!」
   宣彦、拳を固く握る。
   ナツメ、驚いた顔で宣彦をじっと見つめる。
ナツメ「……ゴメン」
   ナツメ、宣彦から離れる。
   宣彦、涙をためた目を地面に向けながら
宣彦「どうしようもないだろ……!」
   
〇下家・リビング(夜)
   勲と宣彦が向き合って座りながらカレーを食べている。
   宣彦、軽く俯いて、黙々と食事をしている。
   勲、宣彦をじっと見つめる。
   静かで、スプーンと食器がすれる音が部屋に響いている。
勲「なあ、ノブ」
   宣彦、少し顔を上げる。
勲「学校で何かあったのか?」
宣彦「別に」
勲「そうか?」
   また、食器の音だけが響く。
勲「本当にそうか? お前――」
   勲、困ったように宣彦を見つめる。
   勲、無理やり作ったような笑顔で、
勲「好きな子に振られでもしたか? それだったら、放っておいてほしいよな」
  宣彦、黙って食事を勧める。
勲「ノブ――」
宣彦「父さんには関係ないよ」
勲「……そう、か。でも、何かあったらすぐに言うんだぞ。父さん、なんでも相談に乗るから――」
   宣彦、左手で顔を抑え、
宣彦「僕の悩みなんて――父さんには言えないよ」
勲「ノブ……それはどうして……」
宣彦「父さんが――」

〇暗闇
宣彦「――ゲイなのがいけないんだ」

〇リビング(夜)
   部屋中に時計の音が鳴り響く。
   机の上に食べかけのカレーが二つ置かれている。
   宣彦、ソファーに膝を抱えながら座っている。
宣彦「仕方がないじゃないか……ちくしょう」
   宣彦、鼻をすする。
   時計が鳴っている。
宣彦「……謝らなきゃ」
   宣彦、ゆっくりと立ちあがり、周りを見渡す。

〇下家・玄関
   靴は一つしか置かれていない。
宣彦「どこに、行ったんだ?」
   外から救急車の音が聞こえる。
   宣彦、じっと家の扉を見つめる。
   ザーッ、と雨の音が徐々に大きくなっていく。

〇斎場(昼)
   雨が強く降っている。
   宣彦、制服を着て、斎場の出入り口で茫然と空を見上げている。
   宣彦に祖母が近づいてくる。
祖母「下、宣彦君?」
宣彦「…‥はい」
祖母「私は、勲の母です」
   宣彦、祖母を見つめる。
祖母「いうべきか迷ったのだけど、勲と、貴方とは、血が――」
   宣彦、叫ぶかのように力強く、
宣彦「知っています!」
   祖母、宣彦を見つめる。
   宣彦、涙を流し、顔をゆがめながら、
宣彦「それでも――それでも、僕の父さんです」
   雨の音が強く響き渡る。

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