第1話「我が名は”ケイン・エイダム・シュプリンガー!!!”」
田中真ニ、24歳。フリーター。ごくごく普通のフリーター。昔から特撮、アニメ、漫画が好きで気づいたら自らでストーリーを考えていた。高校生くらいから自分の作品を世に出したいと思い始める。とは、言うものの、それを形にできるのは限られた人間だけ。面白くても人気じゃない作品はたくさんあるし、実力だけでなく、運も持ち合わせていないとできない事なのだ。
真二「はぁ~。やっと7時か。かーえろっと。」
社員「田中さん、お疲れさま~。明日もよろしくね~。」
「お疲れ様でした~。」
アルバイトを続けて2年になる。大学卒業後、就職もせず知り合いの紹介で入った。最初は全然慣れないが今ではベテラン。バイトリーダーにもなり時給は入った時より全然良い。社員にもならず好きな時に休める今の環境がベストだとしみじみ思っている。が、ほんとにこれでいいのかと風呂に浸かっている時に感じる節もある。定職についたら安泰というが、果たして何を持ってして安泰というのか、世間の偏見と自分の考えが擦り合わない。
真二「(ん。そうだアイス買おっと。)」
アイスは好きだ。週5で食べてる。
店員「ありがとうございました~。」
コンビニで買うよりスーパーの買う方が安い。
スーパーの帰り、珍しくアイスを公園で食べることにした。梅雨が明け、夜も暑くなりかけてきたのでアイスが美味しく食べられると感じた。マンションから溢れ出る光、公園の周りにある電灯と無邪気にはしゃいでいたあの頃を思い出させるブランコに座りながら食べるアイスは格別だ。
真二「うわ~。むっちゃ綺麗だ。」
夏の夜空、星空が輝く。銀河の一部。その惑星から見る銀河も絶景である。これが美しいと感じられる事に喜びを感じる。
懐かしい、ブランコ。無邪気だったあの頃は“好き“に夢中だった。かっこいいものが好き。特撮、アニメ、漫画。全少年が通るであろう道を愚直に進み続けていたのだと思い出に浸っていた。
真二「…。」
昔は昔。胸の高鳴りがなくなってしまった今、一体何に全力を出せるのかもわからなくなっていることに気づく。
真二「そろそろ帰るか。」
感傷に浸り、帰路に経つ。ブランコから降りた瞬間、気づいたら夜空を見上げていた。
真二「ほんと、見飽き無いくらい綺麗だ……。」
星空に見惚れている最中、気づいたら1番光を放つ星を探す遊びをしていた。
真二「う~ん…。あれが1番大きいかな~。」
大きな光一点を見る。
真二「ん?なんか段々大きくなってきてね?」
その光は星の光ではなく、隕石の落下に伴い出た光だった。
真二「え、、えええええ!!!!ヤババババやばいイイイイイ~~!!!
ちょちょちょちょちょちょど~すんのこれ!死ぬの!?俺死ぬの!?やーーーーーーーーーだーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
紫色の光が真二に迫る。
真二「た、すけ…」
あたり一面が光に包まれた。隕石による被害はなく、そこにはただ1人の真二だけが立っていた。
真二「え…?」
不思議そうにあたりを見回す。
真二「今、隕石にぶつかt…気のせい?…いや。いやいやいや気のせいなんかじゃない!だって今完全にぶつかって!」
真二は現状を把握しきれなかった。そのまま帰路に立ち、自分の中で解決できないまま一夜を過ごした。
ー朝ー
真二「結局寝れなかった…。ちっくしょ~今日のバイト終わった~。今何時だ…てもうこんな時間かよ!早く支度しないと!…あれ、急に眠く…なって…。」
ー2日後ー
真二「んぅ~。…ヤッベ寝ちまった!店長に怒られるっ!!」
真二「ッ!!!!ヤッベ~!!!案の定店長からめちゃ電話来てる~!ああああああああああわわわわわどどどどどうどうしよう!……ん?7月21?今日って確か19日じゃ。…え、うそだろ。寝落ちしてから2日経ってんのか…。」
真二「え…。待って。なんで窓誰か侵入したみたいに割られてるの。うん?でもガラス補破片は外に出てるぞ。そうなると内側から破られた事になる。いや待て人まず店長に連絡だ~!」
事件後、警察に連絡。これといった目撃情報もなく未解決のまま終わった。
ー翌日朝ー
真二「よっし。今日は余裕持って起きれたぞ。店長も許してくれたし、長く続けててよかった~。にしてもガラスがなんで内側から壊されてたんだ?」
???「バロンのせいだ。」
真二「…え?」
???「だからバロンのせいだ。」
真二「耳かゆ。耳かきどこだっけ。」
???「おい無視するな!!」
真二「誰だ!!家の中にいるのか!?」
???「いない。真二。お前の中にいる。」
真二「は!?わけわかんねぇし!!」
???「ケインだ。」
真二「ケイン?…!」
ケイン「なんだ。覚えてないのか。」
真二「…。フルネームは…。」
ケイン「ケイン・エイダム・シュプリンガー」
真二「与えられた称号は…。」
ケイン「アースドラゴンナイト。」
真二「倒すべき相手の名は…」
ケイン&真二「アバロン・デルーロ」
真二「やっぱりだ!!お前は俺が小3の時に作った物語『アースドラゴンナイト』の主人公、ケイン・エイダム・シュプリンガーだ!」
ケイン「だからそう言ってるだろう。」
真二「てか、なんで喋れてるんだ!?おかしくないか自分の作ったキャラと話してるなんて!ありえない、、絶対ありえないぞ!!!」
ケイン「なぜ喋れているかなど知るか。ただ、喋れそうだったから話しかけた。それだけだ。」
真二「んなめちゃくちゃな~。(当時の俺はかっこいい男に憧れてたお陰でちょっとめんどくさい性格にしちまった~クッッソ~。)」
ケイン「おい真二。今めんどくさいと言ったか。」
真二「(ギクっ!!!)なんでわかるんだよ!!!」
ケイン「お前の中にいるからな。」
真二「あ、そうだった。てっ!今までの流れめちゃくちゃなんですけど~!まじ、これほんとに夢じゃないよな…。」
ケイン「フンっ。そんな事知るか。」
真二「…。あ、それよりさっき言ってたことほんとか?」
ケイン「何がだ。」
真二「窓ガラス。」
ケイン「窓ガラス?あぁ戸の事か。本当だ。」
ケイン「私はお前の中からずっと見ていた。お前の中からバロンが出るところも。バロンが戸を破壊しこの家から脱走するところも。」
真二「脱走?俺の中から?」
ケイン「そうだ。」
真二「じゃあケインも出れるの?」
ケイン「出れる。」
真二「え!」
ケイン「驚きすぎだ。」
真二「なんで追いかけないんだよ!」
ケイン「愚問だな。」
ケイン「私を作ったのは誰だ。」
真二「俺だ。」
ケイン「私の戦士たる称号は?」
真二「アースドラゴンナイト」
ケイン「そう!私は誇り高きアースドラゴンナイト!!!竜の力を身に纏い偉母なる大地を護らんとする者!!ケイン・エイダム・シュプリンガー!!!」
真二「・・・。」
ケイン「…なんだ。」
真二「いや、なんでもない。」
真二「んで、何が言いたいんだよ。」
ケイン「私を作ったのは真二、貴様だ。私を作り出してくれたこと誠に感謝する。腑抜けの部分はあるが我が主(あるじ)。主人を置き去りにする事など私には出来ない。以上だ。」
真二「おおおこれは慕われてるのか貶されてるのかわからないけどまあいいや!(興奮)」
真二「ケイン。」
ケイン「なんだ。」
真二「とりあえず俺の中から出てさ、朝飯でも食べようぜ?」
ケイン「いいだろう。」
ケインが真二の中から出現。
真二「お~!」
ケイン「なんだ真二。」
真二「でっけぇ~!」
ケイン「何を言っている。私を作り出したのは貴様だ。キャラ設定したのは忘れたのか?」
真二「にしても自分が作ったキャラを1/1スケールで見られることなんてそうそうねぇ~よ!よろしくな、ケイン!」
ケイン「フン。所々厚かましいやつだ。」
ー朝食ー
真二「いただきます!」
ケイン「ちょっと待て。」
真二「どうした?」
ケイン「なんだこの白いのは。」
真二「これは米だ!日本人の元気の源!!」
ケイン「米?に、ほんじん?…なんだそれは。」
真二「あああもうとりあえず食え!」
ケイン「わかった。」
ケイン「あ~ん。…ッ!!!」
ケイン「なんだこれは!モチモチとした食感と弾力。真二の世界ではこれが主流なのか!?わからない、意味がわからない!!口に運べば運ぶほど食欲が増し、噛めば噛むほど美味になる!!!これは…是非執事に教えたいものだ!!
ううううう、美味い。うますぎる!!!!!」
真二「リアクションは100点満点だな。」
ケイン「おい真二。もっと食わせろ。」
真二「大好きかよ!!」
テレビ「続いてのニュースです。昨夜、東京都釜戸市で軽自動車が切り刻まれる事件が発生しました。目撃情報はなく、車自体が切り刻まれる事件は今回が初です。」
真二「なんだこれ凄いな。しかも、釜戸市って、、、うちの近くじゃないか。窓ガラスといい、物騒過ぎやしないか…。」
ケイン「バロンだ。」
真二「え?」
ケイン「傷跡を見れば分かる。バロンの攻撃の後だ。にしても傷が大きいな。こっちの世界に来て何かしたのか?何を考えているかわからんバロンなら、しでかし兼ん。このおかしな箱の中に入っている女が言う通りならな。」
真二「これはテレビって言っていろんな情報を発信してくれる便利なもんなんだ!」
ケイン「やはり真二の生きている世界は少し変わっているな。この中に人が入れるのか?不思議だ。」
真二「それは電波って言って…あ~もう今話したいのはそんなんじゃない!」
ケイン「…おかしなやつだ。」
真二「お互い様だろうが!」
真二「とりあえず、これが本当にバロンの仕業なら、あいつをどうにかするしかないな。くっそ~なんでこうなっちまったんだ~。」
ケイン「1つ聞くが真二。」
真二「なんだ?」
ケイン「『アースドラゴンナイト』の結末はどうなるんだ?」
真二「…。」
ケイン「どうした。」
真二「…覚えてない。」
ケイン「なんだと。」
真二「いや…思い出したくない…。」
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