<登場人物>
エアコンジャー ヒーロー
渥美 鈴 (28)住人
ホーネッツ 悪の怪人
ムシ虫 悪の戦闘員
サーキュレーター 二足歩行型アシストロボ
N 声のみ
<本編>
○メインタイトル『空調機戦士エアコンジャー』
○マンション・鈴の部屋・中
ソファーに寝転がる厚木鈴(30)。
その周囲に悪の戦闘員・ムシ虫の集団。尚、この先登場するヒーローや悪役全て、鈴には見えていない。
ムシ虫「ムシムシ、ムシムシ」
鈴「何か蒸してんな……」
エアコンの電源を付け、除湿モードに設定する鈴。すると、覆面ヒーロー・エアコンジャーが姿を現す。
エアコンジャー「室内の温度は私が守る。空調機戦士、エアコンジャー!」
ムシ虫達と対峙するエアコンジャー。
エアコンジャー「出たな、ムシ虫。とうっ!」
戦い始めるエアコンジャーとムシ虫達。我関せずといった様子の鈴。
エアコンジャー「くらえ、ドライハリケーン!」
腕から光線を放つエアコンジャー。光線を受けたムシ虫達は水分を奪われ、干からびるように消えていく。
N「説明しよう。ドライハリケーンとは、室内の空気から水分を集め……」
○同・同・ベランダ
ホースからしたたり落ちる水滴。
N「室外に放出する事で、室内の湿度を下げる事が出来るのだ!」
ムシ虫の声「ムシムシ~!」
○同・同・中
ムシ虫がいなくなり、エアコンジャーと鈴だけがいる室内。
エアコンジャー「今日も快適な温度が保たれたぞ。ハッハッハ……」
ホーネッツの声「果たしてそうかな?」
エアコンジャー「その声は!?」
不意に姿を現す放熱怪人・ホーネッツ。
エアコンジャー「放熱怪人ホーネッツ!」
ホーネッツ「今日こそお前を倒してやるぞ」
口から炎を発するホーネッツ(この炎も鈴には見えていない)。
エアコンジャー「ぐっ」
鈴「暑いな……」
エアコンを冷房モードに設定する鈴。
エアコンジャー「行くぞ、冷房モード!」
ホーネッツと戦うエアコンジャー。互角。
ホーネッツ「やるな、エアコンジャー。ならば、これでどうだ?」
炎攻撃を繰り出すホーネッツ。それを避けるエアコンジャー。
エアコンジャー「この程度の攻撃、何て事……」
ホーネッツ「ふはは、俺の狙いはコッチだ!」
鈴に向け炎を吐くホーネッツ。
エアコンジャー「しまった!」
鈴「まだ暑いな……」
リモコンを手に取る鈴。表示された設定温度は二八度。温度を下げようとする鈴。
エアコンジャー「そうはさせない!」
鈴の前に立ち、代わりに炎攻撃を受けるエアコンジャー。
エアコンジャー「ダメだ、温度を下げては!」
N「説明しよう。設定温度を一度上げると、CO2の排出量が増え、地球温暖化に影響を与えてしまうのだ」
エアコンジャー「ぐあああ!」
ホーネッツ「ふはは、いつまでもつかな?」
鈴「このままでいっか(と言いリモコンを置く)」
ホーネッツ「ちっ。あと少しだったものを」
エアコンジャー「見たか、コレが人類の強さだ。貴様の思い通りになどならない。次は私の番だ。くらえ、クールサイクロン!」
風を巻き起こすエアコンジャー。巻き込まれた炎はエアコンに吸い込まれる。
N「説明しよう。クールサイクロンとは、室内の熱を奪い」
○同・同・ベランダ
室外機から放出される炎。
N「室外機から放出する事で、室内の温度を下げる事が出来るのだ!」
○同・同・中
対峙するエアコンジャーとホーネッツ、我関せずといった様子の鈴。エアコンジャーの技で室内の炎は全て消えつつあり、ホーネッツも風に吹きとばされまいと必死に踏ん張っている。
ホーネッツ「ぐおお」
エアコンジャー「さぁ、貴様の悪事もこれま でだ……」
鈴「何か、喉乾いたな」
立ち上がり、隣の部屋へ移動する鈴。ドアを開けると、風は逃げる上、隣の部屋にいたムシ虫達も大量に入ってくる。
ムシ虫「ムシムシ、ムシムシ」
エアコンジャー「しまった!」
ホーネッツ「ふはは、やれムシ虫ども!」
ムシ虫達に応戦するエアコンジャー。
エアコンジャー「何の、また返り討ちにすればいいだけの話だ!」
エアコンジャーが戦う横で、ソファーに戻ってくる鈴。
エアコンジャー「もう一度だ。クール……」
膝から崩れ落ちるエアコンジャー。
エアコンジャー「何故だ、力が……まさか!?」
顔を上げるエアコンジャー。部屋のドアが閉まりきっていない。
エアコンジャー「なっ、扉が!?」
N「説明しよう。エアコン稼働時に部屋のドアが開いていると、冷房効率が悪くなるのだ」
エアコンジャー「(鈴に)閉めて、早く。冷たい空気が逃げちゃうから」
その間、無防備になっているエアコンジャーを一方的に嬲るムシ虫達。
ムシ虫「ムシムシ、ムシムシ」
エアコンジャー「ぐっ、お願い、気づいて……」
ホーネッツ「ふはは、いい気味だな、エアコンジャー。それっ!」
エアコンジャーへ炎を吐くホーネッツ。
エアコンジャー「ぐあああ!」
倒れるエアコンジャー。
ホーネッツ「ふははははは!」
尚も炎を吐き続けるホーネッツ。炎は部屋中に蔓延し、鈴の周囲にも漂う。
鈴「やっぱり暑いな……」
再びリモコンに手を伸ばす鈴。
エアコンジャー「ダメだ、考え直すんだ」
ホーネッツ「良いではないか。消費電力が上がれば、お前は俺を倒す事ができる」
エアコンジャー「だが、この国がヒートアイランドと化すれば、貴様は何度でも復活する」
ホーネッツ「省エネで俺に勝とうなんて、甘いんだよ。どちらかを選べ。この部屋の人間か、地球の環境か……」
エアコンジャー「断る!」
立ち上がるエアコンジャー。
エアコンジャー「私は両方守る。人も、環境も」
リモコンを手に取る鈴。
エアコンジャー「私はどちらも諦めない!」
鈴を止めようと手を伸ばすエアコンジャー。
ホーネッツ「させるか!」
エアコンジャーを止めようと手を伸ばすホーネッツ。
インターホンの音。
鈴「あ、やっと届いた」
リモコンを置き、部屋から出ていく鈴。鈴が戻ってくるまでの間、何故か全員何もせずに待っている。
鈴の声「ご苦労さまです」
戻ってくる鈴(ちなみにこの時、ドアは完全に閉める)。鈴の手にはアシストサーキュレーターの箱があるが、この時点では何かわからない。
鈴「そんじゃ、早速使ってみようかな」
ホーネッツ「まさか」
エアコンジャー「それは!」
× × ×
アシストサーキュレーターが設置された室内。
ソファーに寝転がる鈴、対峙するエアコンジャーとホーネッツ、ムシ虫達。
エアコンジャー「サーキュレーター!」
N「説明しよう。サーキュレーターとは室内の空気を循環させ、冷房効率を飛躍的に向上させるのだ!」
サーキュレーターの電源を入れる鈴。二足歩行型のアシストロボ・サーキュレーターが姿を現す。
サーキュレーター「サー」
エアコンジャー「サーキュレーター、力を合わせて敵を倒すんだ。クールサイクロン!」
風を巻き起こすエアコンジャー。その風がサーキュレーターに当たる。
サーキュレーター「イエス、サー!」
その風が部屋中に反射し、四方八方からの強風になすすべもなく、エアコンに吸い込まれていくホーネッツやムシ虫達。
ホーネッツ「そ、そんなバカな……」
○同・同・ベランダ
室外機から放出されるホーネッツ。
ホーネッツ「覚えておけ、エアコンジャー!」
爆発四散するホーネッツ。
N「こうして、放熱怪人ホーネッツを倒したエアコンジャー」
○同・同・中(夕)
夕陽が差し込む室内。
N「しかし、彼らの戦いは終わらない」
ソファーに寝転がる鈴と、夕陽を見つめるエアコンジャーとサーキュレーター。
N「人類が快適な生活を求める限り、彼らは部屋の温度と地球の環境を守り続けるだろう。頑張れ、エアコンジャー。戦え、空調機戦士エアコンジャー」
(完)
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