藤崎華(21)有名モデル。感情が表に出にくい。はるのことが大好き。
神田はる(19)華のマネージャー。感情が表に出やすく、素直。華に憧れている。
西野 (26) 男性のメイクスタッフ。華にとって頼れる姉貴分。
男性カメラマン(30)
スタッフ(22)
○スタジオ
華の撮影が行われている。
華N「煌びやかな世界、誰もが羨むような素敵な洋服や靴、アクセサリー達。全てが私を輝かせてくれる。色んな人に見てもらえる。けど、私はただ、あの子の目に止まりたい。本当は沢山の人じゃなくて良い、あの子だけで良いんだ。」
(Nと被せ)カメラマン「はい、オッケー。」
(Nと被せ)スタッフ「藤崎さん、以上で撮影終了になります!お疲れ様でした!じゃあ、衣装さんに着いていっていただいて」
(Nと被せ)華「お疲れ様でした、ありがとうございました」
各方面に挨拶をしながら楽屋に戻っていく華。
その後を挨拶しながらついていくはる。
華、西野と共に部屋に行く。
○楽屋
華が楽屋に戻ってくるなり、興奮気味に話しかけるはる。
はる「お疲れ様でした!華さん今日もほんっとにお綺麗でした!」
華「ありがとう」
はる「特にさっきのあのアンニュイな表情!儚くて、綺麗で」
華「もういいから…」
椅子に座る華。
はる「あ、すいません。いつもいつも喋りすぎなんですよね、私」
乾いた笑いを零すはる。
華「いや、そんなことは…」
俯いて話す華。
華「私は…そういう風に褒めてもらえるの……嬉しいし…」
ノック音がする。
西野「失礼します〜」
部屋に入ってくる西野。
西野を見る2人。
西野「あら、ごめんなさいおしゃべり中だったかしら」
はる「いえ!全然!どうされました?」
西野「華さん、衣装脱いで行く時に指輪だけ外していくの忘れてったでしょ」
華「あ…」
西野「ごめんなさいね、借り物だから返しに行かないといけないの」
華「あ、ごめんなさい…」
指輪を外して西野に渡す華。
西野「良いの、気にしないで!」
微笑む西野。
はる「そういえば西野さん…さっきから思ってたんですけど…」
西野をじーっと見つめるはる。
はる「髪色変えたんですね!ネイルもかわいい〜!」
爪を見せながら喋る西野。
西野「ありがとう〜!秋っぽくしたくって」
はる「素敵です〜!」
西野「ありがとう〜はるちゃんはいつも褒めてくれるから好き〜!」
はる「え!私も好きです〜!」
一部始終を見た後、はぁ…とため息をつく華。
華N「この気持ちは表に出しちゃいけない。はるが優しいのも、褒めてくれるのも私だけじゃないし、第一、はるは男が好きで……」
ハッとする華。
華N「待って、はるに彼氏っていたっけ…?もし、少しでも、ほんの少しでも女の子を好きになる可能性があるのだとしたら、賭けてみたい…だとしたら…!」
○楽屋
華「はるは、この中だったらどの俳優さんがかっこいいと思う?」
雑誌を見せる。
はる「ん〜」
少し悩むはる。
はる「右側の髭が生えている人ですかね?」
華「…そう…」
肩を落とす華。
華N「いや、ワイルド!!」
男が好きの方にメーターが振り切れる。
○マンション下
華「おはよう」
はる「おはようございます!」
華「今日の格好、どうかしら?」
はる「いつも着ているようなテイストとは違いますけど…」
華の全体を見るはる。
固唾を呑んで言葉を待つ華。
はる「とっても似合ってます」
笑顔で告げるはる。
そっぽを向いて答える華。
華「ありがとう…」
メーターが迷っている。
華「ボーイッシュな格好が好きってことは…男…?…でもかわいい!100点!」
○メイク室
たくさんのアクセサリーが並んでいる。
華「はるは、どんなアクセサリーが好き?」
はる「私は…」
辺りを見回すはる。
はる「これとか好きです!」
華「この…ぐにゃぐにゃの…?」
はる「はい!なんか面白くないですか?」
華「あぁ…」
メーターが迷う。
華N「よく分からない!次!」
○楽屋
ギターを弾いている。
チラチラとはるの様子を伺っている。
華「はる、どっちの音の方が好き?」
高い音を弾く。
低い音を弾く。
はる「ん〜高い音…ですかね…?」
華N「高い音ってことは女性らしさに魅力を感じてる!?」
メーター、女が好きに振り切れる。
○楽屋
走ってきて食い気味に聞く華。
華「犬派!?猫派!?」
××
華「バレーと野球どっちが好き!?」
××
華「朝はご飯派!?パン派!?」
はる「コンフレーク派です!」
メーターが真ん中で振れる。
○メイク室
西野が華にメイクをしている。
華N「色々やったけど結局…はるが男が好きなのか女が好きなのか…よく分からない……」
小さくためいきをつく華。
西野「どうしたの?ため息なんかついて」
華「…」
西野「顔もなんだか疲れているし」
華の顔を覗き込む西野。
目の前にあるメイク道具を見る華。
華「…西野さんは…なんでメイクの道に進もうと思ったの?」
西野「唐突ね」
笑う西野。
華「好きなものを仕事にするのは怖くなかった…?一番好きなものでも嫌いなる可能性があるでしょ」
少し考える西野。
西野「ん〜アタシ、もともとあんまり器用じゃなくて」
後ろを向いてアイシャドウを取る西野。
西野「メイクの道に行くかは悩んだんだけど…途中で気づいたの」
振り返る西野。
西野「続ける理由はアタシが好きだからっていうだけで良いんだって。それに、好きなものはどうなっても好きなままですよ、どんどん好きになっていってるし」
微笑む西野。
廊下から声がする。
スタッフ「西野さん〜」
西野「はい!ちょっとごめんね」
メイク室を出ていく西野。
華、前を向くと鏡の中の自分と目が合う。
鏡に触れる。
華「私、私は…もし、はるが男を好きだったら…」
徐々に俯く華。
華「嫌いになるの…?」
顔を上げる華。
○公園(夜)
はる、携帯を見ている。
背後から華がフードを被り、黒マスクにサングラスという格好で現れる。
華「お待たせ」
はる「うわぁぁ!びっくりした…華さんですか…不審者かと思いましたよ」
華「ほら、私有名モデルだから」
はる「わかってますけど…流石に全部つけてるのは逆に怪しいですよ、どれか外しましょう?」
不服そうにマスクを外す華。
華、ベンチに座る。
はる「それで、今日お話というのは…?事務所とかでは出来ないような話ですか?」
華「うん…実は私、好きな人がいるの」
はる「えぇ!だ、どこの事務所の方ですか!」
華に体を向き直すはる。
俯きながら話す華。
華「…芸能人じゃないの…他にも言えない理由があって今まで言ってなかったの」
はる「それは、誰なんです…?」
はるに向き直る華。
華「…その人は、可愛くて、しっかりしてて、でもちょっと抜けてるところもあって…」
はる「え、もしかして…!」
華N「気づいた…!?」
はる「西野さんですか!?」
華、思わず立ち上がる。
華「違うわよ!!可愛くないし!!!…もういい!!」
走り去る華。
はる「え〜……」
○はるの部屋・同
上着を椅子の背もたれにかける華。
はる「結局、誰だったんだろう…?」
スマホに電話がかかってくる。
はる「え!?華さん!?」
スマホを耳に当て、急いで電話に出る。
華・電「大事なこと、言い忘れてたから」
はる「え?」
華・電「私の好きな人は、5月30日生まれの双子座で血液型はA型、住所は池袋5―4−3−203。可愛いけど、すごく鈍感なの。じゃあ」
電話が一方的に切られる。
スマホを静かに下ろすはる。
はる「…5月30日生まれの双子座で…A型…池袋5―4−3−203って…まさか…」
頭を抱えて赤面するはる。
はる「え〜〜〜〜!」
FIN
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