謝罪MONSTER コメディ

謝罪大国日本!その日本で、一切の謝罪を禁止する法律「謝罪禁止法」が制定されようとしていた。日本政府は法律制定に向け、国民の中から無作為に被験者を選定することを表明した。 不倫をして謝罪会見を翌日に控えた人気落語家…人身事故を起こしてしまったセールスマンの青年…離婚寸前の夫婦。謝罪禁止法の被験者に選ばれてしまったのは、謝罪をしなければならない事情を抱えた人々であった!
古屋貴幸 504 7 0 04/13
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第一稿

【謝罪MONSTER】
2019年4月13日

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【謝罪MONSTER】
2019年4月13日

⚠️この作品はPC専用の画角になっております。
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「登場人物」
大和優人(28)謝罪禁止法被験者。普通のサラリーマン。
山田絢子(48) 謝罪禁止法被験者。謝るのが癖。
山田剛(50)謝子の旦那。
楽遊亭道楽(66) 謝罪禁止法被験者。人気落語家。
田中政治(55) 内閣総理大臣。謝罪禁止法を発案する。
中村毅(38) 会社員。
中村幸子(35) 毅の妻。
美幸(22) 清純派女優。 
大臣(58) 謝罪禁止法担当大臣。
社長(68) 優人の働く会社の社長。 
部長(50) 優人の働く会社の部長。
高橋亮(28)優人の同僚。エリート。

女子高生、デモ隊、記者、店長、客、リポーター、キャスター、女子アナ。



『謝罪MONSTER』

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○東京の街(朝)
   T「2027年」
   様々な場所で頭を下げている人々。
N「謝罪禁止法。一切の謝罪を禁止する法律。新政府与党は、この新たな法律制定に向け、国民の
 中から無作為に被験者を選定することを表明した」

○駅・駅前広場(朝)
   総理の演説を熱心に聞く人々の姿。
総理「謝罪大国日本!かつて、経済大国として栄えた、この国に貼られているレッテルです。我々
 は日々、謝罪を繰り返し生きています!!」

○スーパー・店内(朝)
総理N「今や我々のちょっとした日常会話は、謝罪の言葉で溢れかえっています!」
   レジに列ができている。
絢子「お待たせしてすみません。合計が604円になります」
客A「すみません。細かいのなくて…」
絢子「大丈夫ですよ。千円お預かり致します」
客A「あ、すみません。4円ありました」
絢子「(レジを打ちかけていたので)あ、すみません。千と4円お預かり致します」
客A「(打ち直す姿をみて)すみません」
絢子「(会釈で)すみません」
客B「おい早くしろよ。後ろ詰まってんだろ」
絢子「すみません」

○謝罪会見場
  美雪(22)が記者に囲まれている。
総理N「謝罪好きのこの国では、必死の謝罪が裏目に出る事さえあります。我々は謝罪をする人の
 姿を見て、優越感を味わいたいだけなのです。端から許す気なんてありません!」
美雪「この度は、関係者や多くの方々にご心配とご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ござい
 ませでした」
記者1「なぜ不倫なんかしたんですか?」
記者2「お相手の奥様に悪いと思わなかったんですか?」
   おびただしい数のフラッシュ。
   狼狽する美雪。

○カフェ(朝)
総理N「涙ながらの必死の謝罪すら、我々にとっては話のネタでしかありません!」
   女子高生達がスマホで「大臣、号泣謝罪会見」という題名の動画を見ている。
女子高生A「ねぇ、見てこの顔」
女子高生B「ヤッバ(笑う)」
女子高生C「(モノマネ)誠に申し訳ございませんでした」
   大笑いする女子高生たち。
総理N「謝罪をする事に慣れきってしまった我々にとって、謝罪はもはや挨拶のようなものなので
 す!!」
   店員が歩いてくる。
女子高生A「(手を挙げ)すみませーん!」
店員「すみません、少々お待ち下さい」
   他のテーブルに飲み物を運び、戻ってくる。
店員「すみません。お待たせ致しました」

○公園・ベンチ(朝)
総理N「さらに謝罪は、時には言葉の凶器にさえなりえるのです!!」
女「今までありがとう。ごめんね」
男「お前は何も悪くない。全て俺が悪いんだ」
女「ううん。私にも悪い所はあったよ」
男「いや、お前は何一つ悪くない。全て俺が悪いんだ!ごめん。本当にごめん」
女「…ずるいよ(泣き出す)」

○駅・駅前広場(朝)
総理「我々は日々の生活の中で、意味のない謝罪を繰り返し、生きています。海外では謝るという
 行為は命取りです。しかし、それはこの国にも言える事なのではないでしょうか!」
声「そうだ!」
総理「何かとすぐに謝るという行為!この行為こそが、言いたい事を口に出来ない現代人を形作っ
 ている根因なのではないでしょうか!謝罪をすれば立場は弱まる。謝罪をした時点で、対等でい
 られなくなるんです」
声「いいぞ!」
総理「日本は侍の国です。プライドの国なのです!自分を殺し、他人に合わせて生きる生き方はも
 うやめようじゃありませんか!皆さん!もう一度、もう一度。自分自身への誇りを取り戻しまし
 ょう!我々と共に、本音で暮らせる世の中を取り戻しましょう」
   拍手が沸き起こる。

○定食屋(朝)
   店内のTVにニュースが流れる。
TV「本日の午後、田中総理は、国民の中から無作為に、謝罪禁止法の被験者を選定することを表
 明しました。尚、本日から随時、被験者に選ばれた方々には、こちらの通知書類が届きます。こ
 の書類を受け取方々はーーー」
   楽遊亭道楽(66)TVを眺めている。
道楽「ほんまかいな…」
   テーブルの上には通知書類と同封された地図。
地図には「12月12日(日曜日)19時集合」と書かれている。

○会社・会議室(朝)
   ホワイトボードには「新商品企画会議」の文字。
   優人の同僚、高橋亮(28)が会議を仕切っている。
亮「それでは、全員一致ということで、本日の企画会議を終了致します」
優人「…あの」
部長「なんだ?」
優人「この企画…もう一度、最初から見直せないでしょうか?」
部長「は?今更、何を言ってるんだ」
優人「すみません」
部長「なぜもっと早く言わない。しかも最初からだと?」
優人「はい…」
部長「まあいい。そこまで言うからには、それなりの考えがあるんだろうな?ここにいる全員が納
 得するような考えが」
   冷ややかな目で優人を睨む社員たち。
優人「いや…全員が納得するかどうかは…」
部長「なら軽々しく発言するな!!」
優人「申し訳ありませんでした」
   企画書を握りしめる優人。
   その様子を遠巻きに見ている社長。

○事故現場(夜)
   電信柱に花が添えられている。

○中村家・居間(夜)
   中村毅(38)と中村幸子(35)が、仏壇に手を合わせている。
   SE「インターホンの音」
毅「またあいつじゃないか?」

○同・玄関(夜)
   花束を持ち、頭を下げている優人。
幸子「またですか?毎月、毎月、迷惑です」
優人「すみません」
幸子「何度も言ってるじゃない。あなたがどれだけ謝っても息子は帰ってこないの」
優人「すみません(さらに頭を下げる優人)」
毅「(まだ何か言いたそうな幸子を制し)君がどんなに謝罪の言葉を並べ立てようと、私たちは君を許すつもりはない」
優人「また日を改めてお伺い…」
毅「何度来ても同じだ」
幸子「帰って」
優人「(頭を下げ)…失礼いたします」

○事故現場・歩道(夜)
   花束を置く優人。
優人「……ごめんなさい…ごめんなさい…」

○(回想)同・歩道(朝)
   優人が運転をしている。
   と、突然子供が飛び出してくる。
   優人、子供を跳ねてしまう。

○(回想終わり)同・歩道(夜)
   手を合わせ立ち去る優人。

○優人のマンション(夜)
   郵便物の束を手に帰宅する優人。
   冷蔵庫からビールを取り出し、TVをつけ、郵便物の束を机に放る。
TV「ーー謝罪禁止法の被験者に選ばれた方々にはこちらの通知書類が届きます。このーー」
   優人、ふと机の上の郵便物を見る。
   その中にTVの物と同じ書類があることに気づく。
優人「え?!嘘だろ、嘘だろ」
優人、大慌てで封筒を開ける。
優人「(書類を読み上げる)謝罪禁止法の被験者に選ばれました……。なんでこのタイミングなん
 だよ…」

○山田家・外観(夜)
   ごく普通の民家。

○同・リビング(夜)
   山田絢子(48)洗濯物を畳んでいる。
   机の上には飲みかけのコーヒー。
   山田剛(50)、帰宅する。
   絢子、剛が見慣れないブレスレットをつけていることに気づく。
   剛、酔っ払っている。
剛「ただいまー」
絢子「…」
剛「(絢子の耳元で)ただいまー」
絢子「うるっさい!聞こえてるわ!」
剛「なら返事くらいしろよな」
   剛、ソファーに座り新聞を広げる。
絢子「(畳みながら)それどうしたの」
剛「ああこれか?これは何でもないんだ」
絢子「あなた普段そんなのつけないじゃない。誰に貰ったの?」
剛「それは言えない」
絢子「どうして?」
剛「法律で禁止されている」
   絢子、ブレスレットを奪おうとする。
絢子「なに訳わかんないこと言ってんのよ」
剛「(必死に)おい!!やめろ!!!」
絢子「何で誰に貰ったか言えないの」
剛「言えないものは言えないんだ」
絢子「何かやましい事があるからじゃないの」
剛「なに下らないこと言ってんだ」
絢子「(怒る)下らない?何が下らないよ。私の気持ちも考えてよ!」
剛「いい加減にしろよ。勝手な妄想で話を進めるな」
絢子「何がいい加減にしろよ。こっちは朝からパートして、その上、家事までやってるの!それな
 のにあなたは何?こんな時間までお酒飲んで、酔っ払って帰ってきたと思ったら、こんなものま
 で貰ってきて。ふざけないで!」
剛「だから誤解だって」
絢子「どこの女に貰ったのよ」
   絢子、ブレスレットを奪おうとする。
剛「(必死に)おい、やめろ、やめてくれ」
絢子「どこの女って聞いてるの!!」   
   ブレスレットを奪い合う二人。
   剛、取られまいと力を込めた拍子に転び、テーブルの上のコーヒーを絢子が畳んでいた衣服
   に溢してしまう。
   剛・絢子「あ!!」
   剛、落ち込む絢子の肩に触れようとする。
絢子「触らないで!………謝って」
剛「え…」
絢子「謝って!」
剛「……謝れない…」
絢子「もういい!!(部屋を出て行く)」

○同・絢子の部屋(夜)
   パジャマ姿の絢子、自分の欄が記入済みの離婚届を見つめている。
絢子「はぁ…」

○フジテレビ・楽屋
道楽「頼む!頼むから謝罪会見の日、明日にずらしてくれ」
マネージャー「予定を組んでしまっている以上、無理なものは無理ですよ」
道楽「そこを何とか。この通り(土下座)」
マネージャー「…どうしてそこまで明日に拘るんですか?」 
   道楽、美雪の謝罪会見の記事が載っている新聞を取り出し、
道楽「これや!彼女あない真剣に謝っとったのに、最近全くTVでみーひんやろ」
マネージャー「それとどう関係が?」
道楽「必死に謝ったって許して貰われへんねん。もしわてが一言も謝らなかったらどないなると思
 う?んなもん絶対あかんやろ」
マネージャー「なら謝ったらいいじゃないですか。そのための謝罪会見ですよ」
道楽「わて、明日から謝れへんねん!」
マネージャー「何をわけの分からないことを」
声「間も無く本番でーす」
マネージャー「はーい。とにかく会見日はずらせません。この日程でやって頂かないと」

○街中(朝)
   謝罪禁止法反対のデモが起きている。
隊長「謝罪禁止法反対!」
デモ隊「反対!」
隊長「田中政治は謝罪しろ!」
デモ隊「謝罪しろ!」
   隊長が音頭を取る。
隊長「謝罪しろ、謝罪しろ------」
デモ隊「謝罪しろ、謝罪しろ、謝罪しろ----」
   その横を一台の車が横切る。

○車内(朝)
秘書「総理、やはりこの法案は見送るべきでは?」
総理「謝罪禁止法が正式に制定されれば、この国は再び輝きを取り戻す!私はそう確信している」

○住宅街(夕)   
   閑静な住宅街。 

○同・民家(夕)
   優人、何度もインターホンを押すが、反応しない。
優人「すみませーん、ごめんくださーい」
   玄関のドアが開く。
主婦「ごめんなさいねー。今、インターホン壊れてて。なんの御用ですか?」
優人「お忙しい所、申し訳ございません。私、斎藤商事の大和優人と申します。只今、幣社の新商
 品のーー」
主婦「(遮り)すみませんねぇ。宣伝でしたらウチはお断りさせて頂きます」
  主婦、ドアを閉めようとする。
優人「あの、今ならお得なキャンペーンをやっていて、新規でご契約いただくとーー」
主婦「ごめんなさい。今、晩御飯の支度中で、お話聞いていられないの」
優人「そうでしたか…お忙しい所、申し訳ございませんでした」
   主婦「すみません」と言いながらドアを閉める。
優人「失礼いたします」
   うなだれる優人。
優人「ただでさえ売れないのに…謝罪せずにセールスをするなんて…」

○山田家・玄関(夜)
   帰宅した絢子。郵便受けを開けると、
   郵便物がドサッと落ちる。
絢子「(片付けながら)あーもう!少しは家のことも気遣って欲しいわ。自分が読む新聞は取るく
 せに。ついでに取ってきてくれたっていいじゃない!(通知書類を見つける)…えっ…コレっ
 て」
   絢子、封筒を開け読み上げる。
絢子「謝罪禁止法の被験者に選ばれました…招集に応じて頂けなかった場合、法的処罰の対象とな
 る為、ご注意下さい…え?しかも日付今日じゃない!(腕時計を見る)大変!!(走り出す)」

○商店・外観(夜)
   街中にあるごく普通の商店。
   店先には「CLOSE」の札と、スーツ姿の政府役員。
優人「(地図を見て)この辺のはず…」
   二人組の若いサラリーマンとすれ違う。
サラリーマンA「くそ、なんでちょっとミスったくらいで、いちいち菓子折り持って謝りに行かな
 きゃなんねーんだよ」
サラリーマンB「ホントだよ。くそ面倒クセェ。いちいち騒ぎすぎだっつーの」
優人M「いいなぁ…」
役員「通知書をお見せください」
優人「あ、はい」   
   役員、通知書にあるバーコードを確認し、
役員「確認が取れました。このままお進み下さい」

○同・店内(夜)
   【第2回 謝罪禁止法説明会】と書かれた看板がある。
   店内は壁際に立ち並ぶ政府役人と、被験者たちでひしめき合っている。
   役員の一人が時間を確認し、ドアを閉めようとする。
絢子声「すみませーん、すみませーん」
   絢子、息を切らし走ってくる。
絢子「すみません。遅れてすみません」
   絢子、通知書を見せ、中へ入る。
   絢子、人混みをかき分けるたびに何度も「前すみません」と、すみませんを繰り返し、やっ
   と空席に座る。
   謝罪禁止法担当大臣(58)、デザインの違う様々なアクセサリーが入ったケースを手にや
   ってくる。
大臣「これから皆様にお話しする話は、第一級国家機密の話です。くれぐれも他言しないように。
 それではこれより“第2回”謝罪禁止法説明会を開催致します。謝罪禁止法とは、その名の通り全
 ての“謝罪の言葉”を禁止する法律です」 
   大臣、ケースの中からペンダントを取り出す。
大臣「ここにある全てのアクセサリーには、人口知能が埋め込まれており、ありとあらゆる謝罪の
 言葉がインプットされています。身につけた被験者の声にのみ反応し、謝罪の言葉を言いそうに
 なると警告振動で知らせてくれます。…まぁ口で説明していても分かりにくいと思うので、一度
 実践してみせます」
   大臣、ペンダントを首に掛ける。
大臣「我々が日常会話で多用する、すみませんを例に説明します。私は今、ファミレスに来てい
 て、店員を呼ぼうとしています。すみませー(ペンダントが振動する)これはセーフです。しか
 し、ついうっかり最後まで言ってしまうと…すみませーん(激しくブザーが鳴る)こうなるわけ
 です。このペンダントから、警察にGPS電波が飛び、即座に現行犯逮捕となります。2年は檻
 の中で暮らすことになるでしょう。なお、自分が被験者だと他言した場合も、同等の罪に問われ
 ます」
   ざわつく被験者たち。
大臣「静粛に!(静寂)…いいですか、一度このアクセサリーを身につけると、1年後の被験者満
 了期間日まで、取り外す事ができません。もし勝手に取り外した場合は、謝罪をした時と同等の
 罪に問われますのでご注意下さい」
   息を飲む被験者たち。
大臣「要は今日から一年間、謝罪をしなければいいのです。謝罪をしない。他言をしない。アクセ
 サリーを外さない。この三つさえ守っていれば罪に問われる事はありません。では!これより皆
 様には、お好きなアクセサリーを一つずつ選んで頂き、身につけて貰います」
   整列させられる被験者たち。

○商店・外観(夜)
   アクセサリーを身につけた被験者たちが出てくる。
   その中に、指輪をつけた優人、ピアスをつけた絢子、ネックレスをつけた道楽の姿。
   優人、被験者Aとぶつかる。
被験者A「あ、悪りぃ」
優人「いえ、こちらこそ」
   被験者Aのピアスから激しいブザー音。
   警官達が駆けつけ、暴れる被験者Aを連行する。   
被験者A「え、いや、ちょっと待ってくれよ。今のはないだろぉぉぉ」   
   どよめく被験者たち「え、今のもダメなの?」
絢子M「嘘でしょ…私はこれからどうやって生きていったらいいの…」
道楽M「あかん…明日どないしよ…」
優人「僕は謝りたいのに…謝らなきゃいけないのに…」

○街中(朝)
   T「翌日」 
   謝罪禁止法反対のデモが起きている。
デモ隊員A「私の旦那を返して!謝っただけで逮捕なんておかしいわ!」
デモ隊員B「そうだ、そうだ、謝罪させろ」
デモ隊全員「謝罪させろー」
   隊長が音頭を取る。
隊長「謝罪させろ、謝罪させろ(繰り返す)」
デモ隊全員「謝罪させろ、謝罪させろ(繰り返す)」
   その横を一台の車が横切る。

○車内(朝)
秘書「彼等、ついこの間まで謝罪しろって叫んでましたよね。今度は謝罪させろって…」
総理「世論はその時々で変わるものだ。気にせず、我々は我々の成すべきことを成そう」

○復帰会見場
   美雪、姿を表すと深々と一礼する。
美雪「皆様に多くのご心配とご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした」 
   一斉にたかれるフラッシュ。
記者「本日から活動を再開されるとのことですが、復帰を待ち望んでいたファンの方々に、何か伝
 えたいことはありますか?」
美雪「ご心配をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。またゼロからスタートするという気
 持ちで頑張っていきますので、これからも応援して頂けると嬉しいです」
記者「不倫について今はどうお考えですか?」
美雪「自分の考えが甘かったと、深く反省しております…」
   美雪のマネージャーがやってくる。
マネージャー「はい、すみません!すみません!この後、収録がありますので、ここで会見の方を
 終了させて頂きます。ありがとうございました」
美雪「本当に、申し訳ございませんでした」

○フジテレビ・楽屋
   TVから復帰会見の様子が流れている。
道楽「この子痩せたな…ほんま一生懸命謝っとるで…もうええやろ」
マネージャー「仕方ないですよ」
道楽「でも何でこない関係のない奴等に謝り続けなきゃならんのやろ。一番謝って欲しいのは相手
 の奥さんやで」
マネージャー「確かにそうですけど、でもこの業界は世間のイメージも大切ですから」
道楽「けっ!世間が勝手に持ったイメージなんか知るか!ん?待てよ…そうか、それや」
マネージャー「なんですか急に」
道楽「わての世間のイメージはなんや?」 
マネージャー「え?道楽さんのイメージですか?」
道楽「(上機嫌で)遅い!笑いやろ!わてと言ったら笑いやろ」
マネージャー「それが何か?」
道楽「まぁ、今晩の謝罪会見よう見ときや」
マネージャー「ちゃんと謝って下さいよ」
道楽「大丈夫や、任しとき(豪快に笑う)」
マネージャー「…大丈夫かな」

○会社・会議室(朝)
   ホワイトボードには「新商品企画会議」の文字。
亮「ーー最後になりますが、いよいよ明日から商品化に向けて動いていくことなります。皆んなで
 協力し、必ずいい商品を作りましょう!」
   優人以外の全員、拍手をする。
社長「君、何か言いたいことがあるのか?」
   社員たち、優人を睨む。
優人「えっ、あ、いや…」
社長「どうしたんだ?構わないから話してみなさい」
優人「(意を決し)…とても申し上げにくいのですが…やはりこの企画、最初から見直せないでし
 ょうか?」
   社長の顔が曇る。
部長「大和!いい加減にしろ!お前一人の考えで会社は動いてるわけじゃないんだぞ!周りを見て
 みろ」
  会議室の全員が優人を睨んでいる。
優人「す、すみま」
    ×    ×    ×
     (インサート)
     振動する指輪。
    ×    ×    ×
優人M「そうだ、謝れないんだった…もう逃げられない。どうしよう…どうしよう…。(周囲を見
 渡し心を決める)あーくそ。首にしたきゃすればいい!」
優人「やはりこの企画は最初から見直すべきだと思います!!」
部長「大和!お前はどうしてそう自分勝--」
社長「(手で制し)大和くん…だっけか?」
優人「はい」 
優人M「終わった…」
社長「そこまで言うからには、何か他にいい考えでもあるのか?」
優人「え…は、はい!あります!私は普段、外回りの仕事をしております。その際にお客様の要望
 を聞いて周りました」
   優人、社長に書類を渡す。
社長「(目を通し)なるほど」
優人「そしてこれが企画書になります」
   優人、社長に企画書を渡す。。
社長「……これは君が作ったのか?」
優人「はい」
亮「社長!お言葉ですが、この企画は彼を含め、全員一致で決まった企画なんです。しかも明日か
 ら商品化に向けて動いていこうという時に…。今更、最初から見直すなんて考えられません」
社長「君、周りの人達の顔を見てみなさい」
   優人を睨む社員達の姿。
亮「おそらく、ここにいる全員が私と同じ考えだと思います」
社長「その通り。だからかだ」
亮「……?」
社長「彼はここにいる全員を敵に回してでも自分の意見を述べた。私すらも敵に回してね。それは
 彼が君たちと同じように、この企画の事を真剣に考えているからこそ、できた事なんじゃない
 か?」
亮「でも…だからと言って…」
部長「そうです。彼らは必死にこの企画を進めてきました」
社長「ならこうしよう。試作品を10個だけ作ってみて、もしそれが3日以内に完売したら、この
 企画を見直すというのは?」
亮「一つ売るのだって大変なんだ。例え、一週間あったとしても無理ですよ」
社長「なら賛成ということでいいか?」
亮「はい。その代わり、もし売れなかった場合は、従来の企画一本で進めさせて下さい」
社長「分かった。そうしよう」
優人「ありがとうございます」
優人M「……上手くいった…」

○スーパー・外観(朝)

○同・店内
   混雑している店内。 
絢子「ありがとうございました。お次のお客様どうぞ」
中年男「かもめ野菜生活!」
絢子「え?」
中年男「かもめ野菜生活!!」
絢子「あの…」
中年男「(カウンターを叩き)かもめ野菜生活が無くなってるって言ってんだよ!!」
絢子「あ、す、すみま、
    ×    ×    ×
     (インサート)
      振動するピアス。
    ×    ×    ×
 あっ!しょ、少々お待ち下さい」
   絢子、駆けていく。
   少しして商品を手に駆け戻ってくる。
絢子「お待たせ致しました。ただいま在庫の方を切らしてるみたいで…こちらの二日分の野菜なら
 ご用意できるのですが…」
中年男「おい、俺は二日分の野菜なんて言ったか?言ってないよな!」
絢子「え?あ、も、もうしわ」
    ×    ×    ×
     (インサート)
      振動するピアス。
    ×    ×    ×
絢子M「どうしよう…私、謝れないんだ…なんとか謝らずに乗り切るしかない」
中年男「まあいい。あとコレな」
中年男、充電器を取り出す。
中年男「これ!ここで買ったんだけどよ、1回使っただけで壊れたんだ。どうしてくれんだよ」
絢子「中に保証書が入っていたと思うので、そちらにある電話番号に---」
中年男「んなもんいちいちとっておかねぇよ」
絢子「保証書がないとご対応できかねます」
中年男「ああ、思い出した。ここのゴミ箱に捨てた。探せよ。どうせ暇なんだろ」
絢子「…」
中年男「見つけられなかったら返金しろ」
絢子「それはできません」
中年男「お客様に対してなんだその態度は」
絢子「他のお客様もいらっしゃるので、あとにして頂けますか」
   中年男を睨む客たち。
中年男「な、なら、土下座しろ。それでチャラにしてやる」
道楽「兄ちゃん、ええ加減にせえや」
中年男「おっさんはすっこんでろ!!」
絢子「やめて下さい!警察呼びますよ!」
中年男「お前、俺を犯罪者扱いすんのか?お客様は神様だろ」
絢子「いいえ、お客様は神様ではありません!人間です!」
中年男「店長だせ。とことん抗議してやる」
絢子「店長は今、留守にしおります」
   絢子、警察に電話を掛けようとする。
中年男「お前が態度を改めないなら、二度とこんな店こねぇからな」
絢子「ありがとうございます。お帰り下さい」
中年男「後で店に電話して、お前のことを首にして貰う。お客様は神様!よく覚えとけ」
絢子「分かりました。ありがとうございます」
中年男、店を出て行く。
絢子「(深々と頭を下げ)お待たせ致しました。お次のお客様」
   拍手が巻き起こる。
道楽「はーい!次の神様降臨やで〜」
   笑いに包まれる店内。

○車・車内(夜)
道楽「ほんまあの姉ちゃんかっこ良かったな」
マネージャー「今時、ああいう客にちゃんと意見できる店員もいるんですね」
道楽「ほんまやで、しかもあんな状況で」  
マネージャー「相当勇気のいる行為ですよね」
道楽「せやな。時には謝らない勇気も必要ってことやな」
マネージャー「……」

○謝罪会見場
   記者達の囲み取材を受けている道楽。
道楽「えー今日ここに、サタデイの記者さんは来ていますか?」
   サタデイ記者が手を挙げる。
道楽「あ、おったおった。あん時はおおきにな。いやね、彼に写真撮られた日めちゃめちゃ寒かっ
 たんですよ。どうせ写真も撮られてもーてるし、とりあえず寒いから車乗せてくれ言うたんで 
 す。そしたらあの記者が暖かいコーヒーを出してくれて……まっずいコーヒーでございました」
   記者達がクスリと笑う。
道楽「だけど心地よく道を聞いてくれて、私を自宅まで送ってくれたんです。まあ…帰り道での会
 話は全て録音されてましたが」
   記者たちが笑う。
道楽「(周囲の反応を見て)しかも私が車を降りる時、タクシーで帰る事を考えたらホテル代浮き
 ましたね。って言いよったんですよ!その浮いた金でまたワテをホテルに行かせて写真撮るつも
 りやからね。アイツ」
   記者、笑いながら手を左右に振る。
   その光景を見て笑う周囲の記者たち。
記者A「(強い口調で)ファンの皆様に、何か言うべき言葉があるんじゃないですか?」
道楽「あれ、久しぶり」
記者A「(笑いを堪え)お、お久しぶりです」
道楽「昔、一緒にロケやったんですよ。な!」
   笑う記者達。
道楽「(しんみりと)えーファンの皆様と言いますか、ここにいる全ての方に伝えておきたい事が
 ございます…私の仕事は人を笑わす事です。そしてこんなに沢山の大人達に囲まれて…こう見え
 ても困惑している次第でございます。なので…もし私
 の口から不適切な発言が飛び出してしまった場合は、芸人のさがだと思い、どうかご容赦下さ
 い」
    記者達、笑う。
記者A「(柔らかく)ファンの皆様に、何かお伝えしたい言葉はありますか?」
道楽「(泣きの演技)…もし不快な思いをさせてしまったのなら…私は、プロの芸人として、高座
 に来てくれたお客さんを、全力で笑わす事で、お返ししていきたいと思います。それが私にでき
 る最大のつぐな」
    ×    ×    ×
     (インサート)
   激しく振動するネックレス   
    ×    ×    ×
道楽M「あかん!危なかったぁ。ついうっかり謝ってまうとこやった」
記者A「道楽さん?道楽さん?」
道楽「え?あ、はい」
記者A「どうしたんですか?急に黙られて」
道楽「あ、いや(神妙な面持ちで)…こない沢山の方々に迷惑をかけとったんやなぁと…だから簡
 単に頭を下げて楽な道に逃げてはいけない…そう思いまして…」
記者A「じゃあ、反省はしているんですね?」
道楽「それはね、私が落語家になった頃はモテる芸人が偉いと言われた時代でしたから…時代錯誤
 であったと認識しております」
記者A「じゃあ、今の気持ちを、お得意な謎かけでお願いします」
道楽「ええ?無茶振りやな〜。じゃあ…発売中の週刊誌と掛けまして、写真を撮られた道楽と解
 く」
記者A「その心は?」
道楽「ただ今、プライベートを大後悔(大公開)しております」
   記者たち「おお〜(拍手)」
   笑顔に包まれる会場。
記者A「とうとう拍手が起きちゃいましたね」
道楽M「上手くいった。厄介な法律やとおもっとったけど、こりゃ大間違いや」

○山田家・リビング(夜)
   絢子が洗濯物を畳んでいる。
   剛、寝転がり新聞を読んでいる。
   表紙には「道楽、爆笑謝罪会見」「謝罪会見を客寄せの場に」の文字。
   ため息を数回吐く絢子。
剛「(耐えかねて)ため息やめてくれよ」
絢子「ため息くらいいいでしょ」
剛「気になるんだよ」
絢子「今日は仕事が大変だったから疲れてるの…そう言うなら少しは手伝ってよ」
剛「今帰ってきたばかりなんだ。少しはゆっくりさせてくれよ」
絢子「結局、家の事は私任せなのね」
剛「俺だって残業で疲れてるんだよ」
絢子「でも家の事は何もしてないじゃない」
剛「その分、お前より遅くまで働いてるだろ」
絢子「…あーもう嫌!!(洗濯物を投げる)」
剛「な、なんだよ」
絢子「もういい!もう知らない」
   絢子、部屋を出て行く。
   剛、無言で髪を掻き毟る。

○同・剛の部屋(夜)
剛「あーくそ!!!」
   剛、枕を投げる。投げた枕が棚に当たり荷物が散乱する。  
   片付けていると、埃まみれの1枚のDVDが出てくる。
剛「なんだこれ?」
   DVDを再生すると、結婚式の時の馴れ初めムービーが流れる。
    ×    ×    × 
    (馴れ初めムービー)
    写真の中の若い二人。
    どの写真も幸せいっぱいである。
    1997年。バイト先で出会いました。
    初デートは遊園地。
    たくさん笑った。
    たくさん遊びにいきました。
    旅行もたくさん行きました。
    たくさん笑った。
    2人でいると何をしていても楽しくて、
    いっつも笑顔。
    (剛、耐えかねてTVを消す)
    ×    ×    × 
剛「俺があいつの笑顔を奪ったんだ…」
   剛、ブレスレットを外し、床に叩きつける。
剛「くそ、こんな物!!」

○同・絢子の部屋(夜)
   絢子が離婚届を眺めている。
   SE「ドアをノックする音」
   慌てて離婚届をしまう。
絢子「なに?」
   ドアを開けると剛が泣いている。
絢子「え?なに?」
   剛、絢子を抱きしめる。
剛「絢子、今までごめん。本当にごめん…」
絢子「…」
剛「酔っ払って帰ってきてごめん。コーヒーこぼしてごめん。家事もまかせっきりでごめん…」
絢子「なによ…今更…」
剛「…ほんと…今更だよな」

○同・リビング(朝)
   絢子が起きてくると朝食が並んでいる。
   剛の手にブレスレットはない。
   それを見て少し安心する絢子。
   不器用な見た目の料理と荒れたキッチン。
   剛、目玉焼きを焼いている。
剛「ごめん、後でちゃんと片付けるから」
絢子「(小声で)慣れないことして…」
剛「ん?何か言った?」
絢子「なにも」
   SE「インターホンの音」
絢子「あれ?誰だろう。こんな時間に」
剛「……」

○同・玄関(朝)
   絢子が玄関を開けると、2人の警官が立っている。
警官「山田剛さんのお宅ですね?」
絢子「え、ええ。そうですけど」
警官「謝罪禁止法違反の容疑で、山田剛さんを逮捕します」
絢子「え?!ど、どういうことですか?」
警官「旦那さんは、謝罪禁止法の被験者なんです」
     ×    ×    ×    
     *フラッシュ(回想として)
     剛「法律で禁止されている」
     剛「謝れない…」
     ×    ×    ×
絢子「あれはそういうことだったの…」
   剛、やってくる。
警官「山田剛さんですか?」
剛「はい。そうです」
警官「謝罪禁止法違反の罪であなたを逮捕します」
剛「絢子、ごめんな」
   剛、手錠をされ連行される。

○住宅地(朝)
 
○民家・玄関(朝)
   優人、インターホンを押すが鳴らない。
優人「すみま、あっ、こ、こんにちはー」
主婦声「はーい。すみませんねぇ。今、インターホン壊れてて(ドアを開け)あら?」
優人「先日はお忙しい時にしつれ」
    ×    ×    ×
     (インサート)
     振動する指輪。
    ×    ×    ×
優人「お忙しい中、時間をさいて頂きありがとうございました」
主婦「(微笑み)あら、ご丁寧にありがとう。でも宣伝ならお断りって伝えましたよね?」
優人「すみ…」
大和M「ああ…謝れない……仕方ない。正直に話そう」
優人「本日は宣伝に来ました!どうしても見て頂きたい商品がありまして」
主婦「え、宣伝なの?」
優人「はい、宣伝です!」
主婦「(笑って)正直なのね」
優人「お客様の声を取り入れて作った自信作なんです。だからどうしてもお見せしたくて。お話を聞いて頂けるだけで構いません。どうか、どうかお願いします(お辞儀)」
主婦「(必死な姿に心打たれ)分かった。でも見るだけよ」
優人「え?は、はい!ありがとうございます」

○同・玄関(朝)
   家から出てくる優人。
優人「お忙しい中、ありがとうございました。
ではしつ、本当にありがとうございました」
   主婦、深々と頭を下げる優人を見て。
主婦「ねぇ、それ一つ買ってもいい?」
優人「え…。ほ、本当ですか!!」
主婦「お兄さん丁寧で一生懸命だったから」
優人「うわぁぁ。ありがとうございます。ありがとうございます」
主婦「さっきから、何回ありがとうって言う
のよ(笑う)」
優人「すみ…あっ!ありがとうございます」
   笑い合う2人。

○スーパー・事務室
店長「話は聞いてるよ。昨日のお客様はうちの店にはもう来ないそうだ」
絢子M「どうしよう…謝らなきゃ…」
店長「よく頑張ってくれたね」
絢子「え…」
    ×    ×    ×
    (フラッシュ)
    笑顔で電話対応をしている店長。
    店長「ありがとうございます」
    ×    ×    ×
店長「昨日は凄く混雑していたみたいだね。電話をくれたお客様が口々に、山田さんにお礼をと言
 っていたよ」
絢子「そ、そんな」
店長「ありがとう。山田さん」

○会社・社長室(朝)
   T【3日後】
   ドアをノックする部長の手。
部長「失礼します」
優人「しつれ」
    ×    ×    ×
     (インサート)
      振動する指輪
    ×    ×    ×
優人「あっ。お、お邪魔いたします」
部長「おい、なんだその挨拶は」
優人「緊張してしまって」
部長「(必死に頭を下げ)私の部下が大変申し訳ございませんでした」
社長「ははは。私も若い頃は緊張したものだよ」
部長、まだ頭を下げている。
社長「君はいい上司だな」
部長「そんな、滅相もございません」
社長「いや、いい上司さ。私が思うに部下のために謝罪のできる上司はいい上司だ」
部長「ありがとうございます(嬉しい)」
社長「さて、本題といこう。売り上げの方は順調かな?」
部長「それが…全て完売致しました」
社長「…本当か?」
優人「はい」
部長「追加予約も殺到しています」
    ×    ×    ×
      (フラッシュ)
    鳴り止まないオフィスの電話。
    ×    ×    × 
社長「まさか…たった3日でここまで売り上げるとは…。もはや非の打ち所がないな。明日からこ
 の企画で行くぞ」
   部長・優人「はい!!」

○路上(夕)
   絢子、歩いている。
   反対側から花束を持った優人、やってくる。
   優人の表情は暗い。
   すれ違う二人。

○留置所・面会室
   仕切り越しに会話をしている剛と絢子。
剛「犯罪者になってしまった…」
絢子「…」
剛「…ごめんな」
絢子「…嬉しかったよ」
剛「え?」
絢子「私の為に逮捕される覚悟で誤ってくれたんでしょ?」
剛「うん」
   微笑む絢子。
剛「なぁ。俺と別れたいと思っていただろ…」
絢子「…」
剛「謝ることを禁止されて分かったんだ。感謝の気持ちを忘れていたことに。俺の中で何もかもが
 当たり前になっていた」
絢子「…」
剛「もっと言葉で伝えてやれば良かった。ありがとうも、ごめんねも、美味しいも…楽しいも…昔
 は自然に言えたのになぁ」
絢子「バカね」
剛「…もう一度俺とやり直してくれないか?」
絢子「やり直すも何も私たちは夫婦でしょ」
剛「あ、それもそうか」
絢子「やっぱりバカね」
   笑い合う2人。
   その姿が若い頃の2人と重なり合う。

○事故現場・歩道(夜)
   街灯の下に花束が置いてある。
   スーツ姿の優人、やってくる。
   持ってきた花束と置いてあった花束を取り替えると、手を合わせる。
   暗がりからその様子を見る二つの人影。
優人「今日でちょうど1年か…」

○(回想)同・歩道(夜)
   コートを羽織った優人、やってくる。
   花束を取り替えると手を合わせる。
   ×××
   真っ赤になった手に息を吹きかけ再び手を合わせる優人。

○(回想)同・歩道(朝)
   スーツ姿の優人、やってくる。
   花束を取り替えると手を合わせる。
   ×××
   優人の肩に桜の花びらが乗っている。

○(回想)同・歩道(朝)
   ギラギラ光る太陽と蝉の鳴き声。
   スーツを小脇に抱え、腕まくりをした優人、やってくる。
   花束を取り替えると手を合わせる。
   ×××
   優人の頬を汗が滴る。

○(回想)同・歩道(夜)
   月が雲に隠れている。
   マフラーを巻いた優人、やってくる。
   花束を取り替えると手を合わせる。
   ×××
   雲がなくなり綺麗な月が見える。

○(戻って)同・歩道
   手を合わせている優人。
   二つの人影が近づいてくる。
毅「寒くないか?」
優人「あっ」
毅「そんなにビクつくなよ」
優人「すみ、あ、あの、ずっとお伺いできず…その…」
毅「いい、いい。謝るな」
幸子「私たちは一生あなたの事を許さない」
優人「…」
幸子「……でも…あなたの気持ちは理解してあげたい…」
優人「…」
毅「ずっとここに来てただろう」
優人「…え…どうしてそれを…」
毅「あそこから見てた」
幸子「あなたがうちに来なくなった頃から、毎晩ここに現れる人がいるって近所で噂になったの。
 それで来てみたらあなたがいた」
毅「どうせ二、三日もすれば来なくなるだろうと思って、たまにあそこから観察していたんだ」
幸子「でもあなたは一年経った今も、こうしてここに来てくれている。息子の死を…忘れないでい
 てくれてる…」
毅「苦しんでいたのは俺たちだけじゃなかったんだな」
幸子「許すつもりはないけど…でも……あなたはもう充分反省したと思う」   
   涙を堪える優人。
   毅、優人の肩に手をかけ、
毅「君もそろそろ自分の人生を歩んでもいいんじゃないか」
   優人、堪えていた涙が一気に溢れ出し、地面に額をこすりつけ泣きじゃくる。
   その姿を見て少しだけ微笑む毅と幸子。
毅「寒いだろ。茶くらいなら出すぞ」

○中村家・居間(夜)
   TVがついている。
   仏壇に手を合わせる優人。
毅「おい、すごい事になってるぞ」
   毅、TVの音量をあげる。

○フジテレビ・スタジオ(夜)
   キャスターと女子アナがいる。  
   T「抗議デモ 30万人に拡大」  
キャスター「今日の午後、謝罪禁止法の廃止を求める大規模な抗議デモが発生し、都心は現在も大
 混乱となっています。現場から中継です」

○街中(夜)
   10人くらいの人々に囲まれ、間に挟まって身動きがとれなくなっているリポーター。
   デモ隊が「謝罪させろ」と叫んでいる。
リポーター「(大声で)今、謝罪させろ、謝罪させろと叫んでいます。身動きが全く取れない程
 の、すごい数の人です。謝罪をしたい人々が暴徒と化し…きゃっ」
   デモ隊と衝突し映像が途絶える。

○フジテレビ・スタジオ(夜)
キャスター「只今、映像が途絶えてしまったようです。失礼いたしました」
女子アナ「失礼いたしました」
キャスター「いやー。これ本当に日本?って思ってしまいますね」
女子アナ「それだけ私たち日本人にとって、謝罪は重要なものなのかもしれません」
キャスター「我々は常日頃、何かに対して謝っていますからね。現にこの短時間の間に、我々も一
 度謝罪をしていますから」
女子アナ「あ、確かに。そうですね!」
キャスター「そう考えると謝罪を禁止されるというのは恐ろしい事ですね。そういった不満が今回
 のデモに繋がったのかもしれません。では続いてのニュ(消える)」

○総理の部屋(夜)
   TVを消す総理。
総理「…本当に…謝罪が好きな国だ」

○山田家・玄関(夜)
   優人、毅と幸子に見送られ玄関から出てくる。
   優人、深々と頭を下げ、帰って行く。
   毅と幸子、顔を見合わせ少しだけ微笑む。
優人N「程なくして、謝罪禁止法は廃止になった」

○様々な場所(朝)
優人N「謝罪禁止法が廃止になった日、全国各地は謝罪をする人々で溢れかえった」
   頭を下げる人々。
   その表情は明るい。

○謝罪会見場
優人N「TVには連日、謝罪をする人々の映像が流れた」  
   アイドルが謝罪会見をしている。
   生き生きと取材をする記者達。

○カフェ(朝)
優人N「でも僕の目にはその光景が、謝罪禁止法が生まれる前と、なんら変わりのないように映 
 た」
   女子高生たちがスマホで『人気アイドル。涙ながらの謝罪』という題名の動画を見ている。
   笑う女子高生たち。

○公園・ベンチ(朝)
   *P4の公園のシーン。
   別れ話をするカップルの姿。
優人N「被験者に選ばれてよく分かった。謝罪の言葉が時には人を傷つけ」
女「…ずるいよ(涙ぐむ)」   

○謝罪会見場
   *P2の謝罪会見のシーン。
   おびただしいフラッシュの中、頭を下げている美雪。
優人N「時には自分を傷つけ」

○会社・会議室(朝)
   *P7の企画会議のシーン。
   頭を下げ、企画書を握りしめる優人。
優人「時には自分の立場を弱める原因になっていたということを」

○街中(朝)
   デモ隊が叫んでいる。
優人N「そしていつの日からか…僕たちは謝罪という行為に依存し、謝罪をしなければ生きていけ
 ない人間になってしまっていたという事を…」

○会社・オフィス(朝)
   電話片手に頭を下げている社員の姿。
   上司に頭を下げている社員の姿。
優人N「被験者に選ばれてよく分かった。日常生活はこんなにも謝罪の言葉で溢れていたという事
 を…でも、謝罪禁止法が与えた影響は悪いものばかりではなかったと思う」
   新入社員が頭を下げている。
   “係長”と書かれた机に座っている優人。
優人「どうして君はいつも謝るの?」
新入社員「え?」
優人「(企画書を手に)立派な企画書だよ」
新入社員「ありがとうございます……」
優人「社会では良い人過ぎると損をするよ。もっと自分の意思を大切にね(微笑む)」
新入社員「ありがとうございます…実は…僕はこの企画に反対です!」
   優人、うっすら笑みを浮かべる。

○スーパー・店内(朝)
客「ねぇ!なんでこんなに値上がりしてるの」
店員「申し訳ありません」
客「いや申し訳ないとかじゃなくて、少し安くするとか、何かしらの対応はないわけ?」
   “副店長”と書かれた名札をつけた絢子、やってくる。
絢子「代わるわ。向こうお願い」
店員「すみません」
絢子「どうなさいましたか」

○観光地(朝)
リポーター「道楽さん遅いですね」
スタッフ「迷ってるんですかね…あ、来た」
道楽「すまん、すまん、お待たせ」
リポーター「遅いですよ」
道楽「ほんますまん。ホテル行ってたら遅なってもーてん」
   笑う一同。
リポーター「(笑って)行きますよ」
   少し歩くと「あれ?道楽さんじゃない?」と言って人が集まってくる。
リポーター「すごい人気ですね」
スタッフ「すみません!ロケ中です」
群衆「謎かけしてくださーい」
スタッフ「すみません!押さないで!」
   群衆、口々に「謎かけー」と叫ぶ。
道楽「あーあー分かった、分かった。1回だけやで。二つに割れるお菓子と掛けまして、この状況で行ったロケと解きます」
群衆「その心はー??」
道楽「きっとカットでしょう」
   笑う群衆。
道楽「さ、もう分かったやろ。ゆっくりロケさせてくれ」
   そう言いながらも嬉しそうな道楽。

○留置所(外)
   剛が留置所から出てくる。
絢子「おかえり」
剛「ただいま」
   沈黙。
剛「あのさ」
絢子「わたし」
剛・絢子「あっ」
剛「先どうぞ(笑う)」
絢子「あなたからどうぞ(笑う)」
剛「…今度、遊園地行かないか?」
絢子「なんで遊園地?」
剛「初デートの場所だろっ(照れる)」
絢子「ああ〜(照れる)」
剛「お、おまえは何て言おうとしたんだ?」
絢子「え?私?あ、実はね。私も謝罪禁止法の被験者だったの」
剛「えっ?!」
絢子「私もごめん!浮気を疑ったり、ため息ばかりついたり、ごめん!」
剛「ぶーぶーぶー」
絢子「謝罪禁止法違反の容疑で逮捕しまーす」
   昔のように仲良く笑い合う二人。

○駅・駅前広場(朝)
   総理が囲み取材に応じている。
総理「謝罪禁止法をめぐる一連の騒動に関しまして、国民の皆様の混乱を招いた事に対しまして、
 率直にお詫び申しあげます。(語気を強め)しかし、自尊心を取り戻す。自信を取り戻す。そう
 いった面から見て、謝罪禁止法は間違いではなかったと、私は今でも硬く信じております」
デモ隊A「いい加減にしろ。それじゃ謝罪になってないだろ」
デモ隊B「そうだ。そうだ。謝罪しろ」
デモ隊「謝罪しろ!」
   隊長が音頭を取る。
隊長「謝罪しろ、謝罪しろ------」
デモ隊「謝罪しろ、謝罪しろ、謝罪しろ----」
総理「…私、田中政治は今回の騒動の責任を取り、今季いっぱいで辞任する決断を致しました…日
 本国民の皆様、謝罪禁止法による度重なる混乱、誠に申し訳ございませんでした」
   総理が謝罪するとデモはさらに激しくなる。
   暴れるデモ隊。暴言が飛び交う。
   
    ×    ×    × 
   そのずっと後ろで、深々と頭を下げている一団がいる。
   それぞれが様々な種類のアクセサリーをつけている。
   その中に、大和、道楽、絢子、剛の姿。
大和M「僕は知る事ができた…本音で話す大切さを。謝罪は言葉じゃないという事を。そして謝罪
 を辞めると、なぜか感謝の言葉が増えるという事を…」
   微笑む優人、深々と頭を下げる。
道楽M「ワテは救われた。そして儲けさせてもろた。ぎょうさん儲けさせてもろたで〜」
   微笑む道楽、深々と頭を下げる。
道楽M「おおきにな」
絢子M「私は勇気を貰った。自分の意思を突き通す強さを貰った」
   微笑む絢子。真っ直ぐな目をしている。
   深々と頭を下げる。
剛M「俺は教わった。大切な人を傷つけてしまった時は、プライドも何もかも捨てて、誠意を込め
 て謝らなきゃいけないって事を」
   絢子の横顔を見て、優しく微笑む剛。
   深々と頭を下げる一団。 
一団M「ありがとう」   

その一方で、デモ隊の抗議活動は激しさを増してゆく。

総理「本当に、本当に…申し訳ございませんでした!」
   深々と頭を下げる総理。




                     「了」

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