温かい食卓を 舞台

戯曲。 家族再生の物語
捨吉バルボア 24 0 0 03/06
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第一稿

登場人物

佐伯護(26)(さえき まもる)

佐伯結斗(22)(さえき ゆいと)

佐伯葉子(52)(さえき ようこ)

菊永茜(21)(きくなが あかね)

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登場人物

佐伯護(26)(さえき まもる)

佐伯結斗(22)(さえき ゆいと)

佐伯葉子(52)(さえき ようこ)

菊永茜(21)(きくなが あかね)

菊永皐月(17)(きくなが さつき)

菊永良江(72)(きくなが よしえ)

谷山友和(52)(たにやま ともかず)

加藤夏恋(26)(かとう かれん)

中村小太郎(22)(なかむら こたろう)

降谷駿(17)(ふるや しゅん)


○Sー1

アパートの一室

中央にテーブルが設置されており、

その上に弁当が一つ置かれている

佐伯葉子(52)、

仕事に行く準備をしている

佐伯結斗(22)、イヤホンを

しながら部屋でパソコンを

している

佐伯護(26)、ドアを開けて、

中に入る

護「ただいま」

葉子「おかえり。晩御飯それだから」

護「……弁当か」

葉子「何か文句でもあるの?」

護「別に」

葉子「お母さん、今から夜勤だから」

護「そう。結斗は?」

葉子「変化なし」

護「そっか」

葉子「それじゃ、母さん行くわね」

護「行ってらっしゃい」

葉子、出て行く

護、スーツをハンガーにかける

護「結斗、帰ってきたぞ」

結斗「…………」

護、ドアをノックする

護「おい、帰ってきたぞ」

結斗「…………」

護、ドアを開ける

護「返事ぐらいしろよ」

結斗、イヤホンを外す

結斗「なんだ。兄さんか」

護「なんだじゃないだろ」

結斗「うるさいな。別にいいだろ」

護「その態度はなんだよ。

それに自分の世界に閉じ篭るなって

言ってるだろ」

結斗「僕の勝手だろ。

早く部屋から出てくれよ」

護「……分かったよ」

護、部屋から出て行く

結斗、イヤホンを付け直す

護、苛立ちながら椅子に座る

護「なんだよ、あの態度は」

護、弁当を食べ始める

護「……冷てぇ」

護、弁当をゴミ箱に捨てる

中村小太郎(22)、現れる

中村、インターホンを鳴らす

護、ドアを開ける

護「はい」

中村「護さん!こんばんわっす」

護「小太郎か。元気か?」

中村「絶好調っすよ。結斗は?」

護「変わらずだよ」

中村「……そうすっか」

護「いつもありがとうな」

中村「親友すっから。当たり前っす」

護「嬉しいよ。上がっていくか?」

中村「いいんすっか?」

護「いいから言ってるんだろ。

コーヒーぐらい出すよ」

中村「あざっす。それじゃ、

お言葉に甘えて」

中村、家に上がる

護「おい、小太郎が来たぞ」

護、ドアをノックする

結斗「…………」

護「おい、結斗」

中村「いいっすよ。すぐに帰るんで」

護、強くドアをノックする

結斗「うるさいな。なんだよ」

護「小太郎が来てくれてるぞ」

結斗「あ、そう」

護「なんだ、その態度は?」

中村「護さん、俺は大丈夫っすよ」

護「お前、顔ぐらい見せるのが普通だろ」

結斗「僕は嫌なんだよ。それに

兄さんが勝手に家に上げたんだろ」

護「ふざけんなよ。お前何様だよ」

中村「護さん、気にしなくていいっすよ。

結斗のやつが調子良くなってからで」

結斗「何を言われても僕は会わない」

護、ドアを叩く

中村「俺、用事思い出したんで帰ります」

中村、出て行く

中村「お邪魔しました」

護、椅子に座る

中村、外で加藤夏恋(26)

に出会う

夏恋「小太郎君?」

中村「夏恋さん。護さんに会いに?」

夏恋「そうだけど」

中村「……そうすっか」

夏恋「何かあったの?」

中村「護さん、ちょっと機嫌悪くて」

夏恋「そうなんだ。結斗君の事で?」

中村「……そうっす」

夏恋「そう。まあ、どうにかするわ」

中村「……はい」

夏恋「落ち込まない!」

夏恋、中村の肩を叩く

中村「痛いっすよ」

夏恋「元気出しなさい。……そうだ、

彼女出来たの?」

中村「胸を抉るワード。まだっす」

夏恋「いい子なのにね」

中村「そのワード何年も前から

言われてますよ。他には、

優しいのにとか面白いにとか。

彼女ってどうしたら出来るんすっか」

夏恋「……頑張るしかないわね」

夏恋、中村の肩を優しく叩く

中村「答えになってないっすよ」

夏恋「大丈夫、大丈夫だから」

中村「酷いっす。俺帰りますね」

中村、走って帰る

夏恋「ファイト」

夏恋、インターホンを鳴らす

護「……はい」

護、ドアを開ける

夏恋「元気かい?」

護「お、おう」

夏恋「……ちょっと、外出れる?」

護「……おう」

護、外に出る

護と夏恋、下手側に設置されている

ベンチに座る

夏恋「……大丈夫?」

護「何が?」

夏恋「結斗君の事よ」

護「……無理かも。

もう、耐えれる気がしねぇ」

夏恋「進展はないの?」

護「ない。親父が死んだ4年前から」

夏恋「……そう」

護「俺、駄目だよな」

夏恋「何で?護頑張ってるでしょ」

護「最近、殺意が湧くことがあるんだ」

夏恋「疲れてるんだよ。きっと」

護「そうだったらいいんだけどさ」

夏恋「だって、毎日1時間かけて

東京まで仕事に行ってるんだし」

護「まあ、そうかもな」

夏恋「……こっちで仕事したら」

護「それは出来ない。賃金はいいし、

交通費も出るし」

夏恋「……けど」

護「一円でも多く稼がないと、

貯金出来ないだろ。結婚する為の」

夏恋「……それは」

護「暗い顔しないでくれよ。

……今度デート行こうぜ」

夏恋「いいけど」

護「よし、決まりだな。あのさ、

お願いがあるんだけどいいか?」

夏恋「なに?」

護「弁当作ってくれないか?」

夏恋「いいけど。どうして?」

護「最近さ、手作りのご飯食べてなくてさ。

久しぶりに食べたいなって思って」

夏恋「……分かった。おかず何がいい?」

護「卵焼きとたこさんウィンナーとか」

夏恋「(笑いながら)子供みたい」

護「うるせぇ」

暗転

○Sー2

アップテンポな曲が流れ始める

明転

ダンススタジオ

菊永皐月(17)、降谷駿(17)

他の生徒同様踊っている

先生「よし、終わり。今日はここまでに

しよう。お疲れ様」

生徒一同「お疲れ様です」

皐月と駿以外出て行く

駿、自習練をしている

皐月「降谷君残るの?」

降谷「うん。残るよ」

皐月「そうなんだ。それじゃあ、

私も残ろうかな」

降谷「なんだよ、それ」

皐月「今、ドキッてしたでしょ」

降谷「してないよ」

皐月「本当に?」

降谷「本当だよ。

邪魔するなら帰ってくれよ」

皐月「冗談よ、冗談。

私も自主練したいの」

降谷「あ、そう」

皐月「塩対応だね」

降谷「いつもこんな感じだよ」

皐月「友達少ないでしょ?」

降谷「うるさい。別に関係ないだろ」

皐月「図星だ」

降谷「ダンスに関係ないだろ。

もう、練習していいかな」

皐月「ごめん、ごめん。

あと、一つだけいいかな?」

降谷「なんだよ。早くしてくれないかな」

皐月、降谷が首に付けている

ネックレスを触る

皐月「これって本物の鍵だよね」

降谷「触るな」

降谷、皐月の手を払う

皐月「……ごめん」

降谷「いや、こちらこそごめん」

皐月「……大事な物なの?」

降谷「大事な物って言うか、

大事な人から預かった物なんだ」

皐月「預かった物?」

降谷「……誰にも言わないって

約束してくれるなら話すよ」

皐月「……うん。私こう見えて

口は堅いから」

降谷「……本当?」

皐月「マジだよ。マジ。

神様、仏様に誓ってもいい」

降谷「そこまで言うなら話すよ。

4年前に起こった通り魔事件って

覚えている?」

皐月「覚えてるよ。けど、その事件と

何か関係でもあるの?」

降谷「これを僕に預けた人は、

僕を庇って死んだんだ」

皐月「……それって本当なの?」

降谷「本当だよ。僕は血だらけの彼から

これを受け取ったんだ。

俺はもう長くないから、代わりに

君が子供達に渡してくれって」

皐月「まだ、降谷君のもとにあるって

ことは」

降谷「……まだ、会えてないんだ」

皐月「……そうなんだ」

降谷「ごめんね、暗い話して」

皐月「いいよ、気にしないで。

私が聞いたんだし」

降谷「だから、こうやってネックレスにして

身に付けてるんだ。

絶対に失くさないようにね」

皐月「……そっか。見つかるといいね

子供さん」

菊永茜(21)、現れる

茜「……皐月ちゃん」

皐月「……お姉ちゃん。どうしたの?」

茜「近くに来たから寄ったの。

一緒に帰ろう」

皐月「……え?」

降谷「帰ってあげなよ」

皐月「……う、うん」

皐月、帰り支度をする

皐月「それじゃ」

降谷「お疲れ」

皐月「今度、自主練に付き合ってよね」

降谷「いいけど」

皐月「バイバイ、また今度」

皐月・茜、去って行く

降谷「また今度か……」

降谷、ダンスを始める

やがて、暗転

○Sー3

明転

オープンカフェ

護・夏恋、テーブルの前にある

椅子に腰掛けている

護「ありがとうな」

夏恋「やめてよ。仰々しい」

護「いや、本当に嬉しいから

言ってるんだぜ。

これで時間が経ってもおいしい弁当が

食べられる」

護、弁当ケースを持って喜ぶ

夏恋「今時弁当ケースでこれだけ喜ぶ大人

いないわよ」

護「いいんじゃんか。夏恋の上手い飯が

楽しみだー」

夏恋「ちょっとハードル上げるのやめてよ」

護「悪い悪い」

夏恋「……この間よりはだいぶ落ちついた

みたいね」

護「おかげさまでな」

夏恋「よかった」

護「迷惑かけてごめんな」

夏恋「いいのよ。昔に比べたらマシだから」

護「なんだよ、その言い方。腹立つな」

夏恋「それはどうも。褒めていただき

嬉しいでございます」

護「褒めてないし。

夏恋は昔に比べて憎たらしくなったな」

夏恋「その言い方酷くない。

彼女に言う言葉じゃないよ」

護「うるさい」

夏恋「何よ。……あ、弁当にピーマンと

茄子と椎茸入れてあげるね」

護「……それだけは、それだけはやめて

ください」

夏恋「違うでしょ。言うことが」

護「……すみませんでした。夏恋さん」

夏恋「よろしい」

葉子、谷山友和(52)、

手を組みながら現れる

夏恋「……ちょっと、あれって」

護「……なんだよ……母さん?」

護、立ち上がり葉子に駆け寄る

護「母さん」

葉子「護。夏恋ちゃんも一緒なの。

……もしかして、デート?」

護「……誰だよ」

葉子「え?」

護「誰だって言ってるんだよ。

そのおっさんは」

葉子「……この人は」

護「もしかして、

彼氏とかって言うじゃないだろな」

葉子「…………」

護「答えられないってことは

そう言うことかよ」

葉子「大きな声出さないで。

周りの人に見られるでしょ」

護「周りなんて関係ねぇよ。家族の問題だ」

谷山「護君、お母さんの話をちゃんと

聞いてあげなさい」

護「うるせぇよ、ジジイ。

他人が口出しすんな」

谷山「……ジジイ?」

夏恋「護!」

護「答えろよ。結斗の気持ちは

どうするんだよ。

このことをアイツが知ったら傷つくとは

思わないのか?

ショックで部屋からも出なくなるかも

しられねぇんだぞ。それでも親かよ」

葉子「これには深い訳があって」

護「深い訳?そんな聞きたくもね。

夏恋行くぞ」

夏恋「護」

葉子「ちょっと待ちなさい」

護、去る

夏恋「失礼します」

夏恋、護の後を追う

葉子「護!」

谷山「……話してなかったのか?」

葉子「時期になったら話そうと思ってたの」

谷山「そうか」

葉子「ごめんなさい」

谷山「君は謝らなくいい。悪いのは私だ」

葉子「そんなことないわ。私が悪いの」

谷山「自分だけを責めるな。

一緒にどうしたらいいか考えよう」

葉子「……ありがとう」

谷山「きっと、彼は私達の行動に腹を立て

たんだ。私の顔をちゃんと認識して

いなかった」

葉子「……え?」

谷山「だって、彼とは4年前に会ってる

だよ。修二の葬式の時に」

暗転

○Sー4

明転

上手側にパソコンを操作している

結斗が椅子に腰掛けている

下手側にベンチに座って携帯を

操作している茜

茜「……解決さん、聞いてほしいことが

あります」

結斗「聞いてほしいこと?なんですか?」

茜「実は私昔虐められていた経験が

あるんです。その経験が大人になった

今でも私を縛って前に進めさせてくれ

ないんです。

どうすれば前に進めるように

なるんでしょうか?よければ解決策を

教えてください」

結斗「……過去の経験か。

……僕も違うことですが苦しい経験

をしています。そして、まだ解決

できていません。

けど、生きてはいます。

貴方を縛る経験がいつ消えるかは

僕にも分かりません。

でも、和らぐ方法はなんとなくですが

教えてあげれると思います」

茜「……それはなんですか?」

結斗「こうやって他人に話すことだと

思います」

茜「……話すこと。なんだか、気持ちが

少しですが楽になったと思います。

ありがとうございます。これで、

今日一日仕事頑張れそうです」

茜、立ち上がり去って行く

結斗「……俺、こんなにアドバイスする

ほど立派に生きてないよな。

……最低だ」

割り幕が閉まる

護・夏恋、割り幕前に現れる

夏恋「はい、これ」

護「……ありがとう」

夏恋「あれ以降、どんな感じ?」

護「……話してない」

夏恋「……そう」

護「気にすんなよ。大丈夫だから」

護、夏恋の頭に手を置く

護「それじゃ、行ってくるわ」

護、走って去る

夏恋「いってらっしゃい」

夏恋、去る

割り幕が開く

会社の入り口前

茜、歩いている

護、走って現れる

護、茜にぶつかってしまう

護「ごめん。大丈夫?」

茜「大丈夫です」

護「立てる?手貸すよ」

護、茜に手を差し伸べる

茜「ありがとうございます」

茜、立ち上がる

護「君、ここの会社の社員?」

茜「はい。そうです」

護「それじゃ、一緒だ。俺もここの社員

なんだ」

茜「そうですか」

護、腕時計を見る

護「ヤバイ、遅刻だ」

護、走り出し、その後立ち止まる

護「君、名前は?」

茜「……菊永茜です」

護「菊永さんね。今度、コーヒーでも

奢るよ。ぶつかったお詫びとして」

護、走って去る

茜「……はい」

暗転

○Sー5

明転

菊永家

舞台中央にちゃぶ台が置かれている

菊永良江(72)、夕食を作っている

皐月、ダンスを踊っている

良江「皐月。茜はいつ帰ってくるんだい」

皐月「知らないよ。もうすぐしたら

帰って来るんじゃない」

良江「なんだい、その適当な答えは」

皐月「何よ。

それだったら連絡すればいいんじゃん」

良江「今、料理中なんじゃ」

皐月「もう、分かったわよ。

私が連絡すればいいんですね。

おばあちゃん」

良江「その通り。早くしなさい」

茜、家の前に現れる

茜、インターホンを鳴らす

皐月「もしかして」

皐月、ドアを開ける

茜「……ただいま」

皐月「おかえり。おばあちゃん、

お姉ちゃん帰って来たよ」

良江「そうかい。もう、ご飯が出来るから

手を洗ってきなさい」

茜「……うん」

茜、手を洗いに行き、その後戻る

良江、ちゃぶ台にご飯を並べる

茜・皐月・良江、ちゃぶ台を

囲むように座る

茜・皐月・良江「いただきます」

茜・皐月・良江、ご飯を食べる

良江「最近、仕事はどうかい?」

茜「……特に変わらないよ」

良江「本当かい。心配だわ」

茜「大丈夫だよ」

良江「アンタには都会はあってらんと

思うんじゃよ。

こっちで仕事探した方がいいと思う

だけどな」

茜「……考えとく」

良江「絶対そっちの方がいいと思う」

皐月「おばあちゃん。お姉ちゃんの好きな

ようにさしてあげなよ」

良江「だけどな」

皐月「それにね、お姉ちゃんあんまり

地元が好きじゃないのよ。

だから、今の環境の方がお姉ちゃん

にはいいと思うの」

良江「……そうか?」

皐月「きっとそうだよ。ね、お姉ちゃん」

茜「うん」

皐月「ほらね。よし、ご飯食べよ。

温かいうちに食べよ」

茜・皐月・良江、食事を再開する

茜「ごちそうさま」

茜、食器を運ぶ

皐月「ごちそうさま」

良江「ごちそうさま」

皐月「おばあちゃん、食器運ぼうか?」

良江「頼むわ」

皐月、食器を運ぶ

茜、戻って来て携帯を操作し始める

良江「何してるんじゃ」

茜「チャット」

良江「チャット?」

茜「ネットで会話してるの」

良江「誰とじゃ?」

茜「ネットの知り合いと」

良江「知り合いだったら、電話か会って

話したらいいじゃろ」

茜「年齢も本名も知らないの。ネットだけで

の関係なの」

良江「意味がわからん。知り合いってのは

面識があるものじゃろ」

茜「時代は変化してるの。知り合いの意義も

変化してるの」

良江「まったく理解できん。

……もしかして、出会い系ってやつな

のか」

茜「違うよ。そんなのとは違う」

良江「絶対そうじゃ。卑猥じゃ」

茜「……全部は否定できないけど、

私がしてるのは違う」

良江「茜が駄目になってしまう。

茜、携帯を貸しなさい。

今すぐ、解約しに行くぞ」

茜「大丈夫だから。大丈夫」

良江「信じられん」

茜「皐月ちゃん、助けて」

皐月、戻って来る

皐月「どうしたの?」

良江「茜が毒されておる。

チャットと言う野蛮なものに」

皐月「チャット?それなら大丈夫だよ」

良江「皐月、アンタも毒されておるのか」

皐月「違うよ。私はチャットしてないし」

良江「大丈夫って言ってる時点で同罪じゃ」

皐月「え、罪なの?」

良江「そうじゃ」

皐月「どうするの?」

茜「分かんない」

暗転

○Sー6

ダンススタジオ

降谷、ダンスの自主練をしている

皐月、溜息を吐きながら現れる

皐月「おはよう」

降谷「おはよう。顔色悪いけど、大丈夫?」

皐月「大丈夫、大丈夫」

降谷「それなら、いいけど」

皐月「ごめんね。いきなり、呼び出して」

降谷「いいよ、別に。家に居ても暇だし」

皐月「ありがとう」

降谷「うん」

皐月、柔軟を始める

皐月「あのさ、彼女とかいるの?」

降谷「な、なんだよ。いきなり」

皐月「気になったから」

降谷「君はいきなりが多すぎるよ」

皐月「別にいいじゃん。で、どうなの?」

降谷「……いないよ」

皐月「へー、そうなんだ」

降谷「悪いかよ」

皐月「別にー」

降谷「そう言う君はどうなんだよ」

皐月「私?」

降谷「君だよ、君」

皐月「私はいないよ」

降谷「そうなんだ。てっきり、いると

思ってた」

皐月「いるように見える?」

降谷「見える」

皐月「私、そういうふうに見られてるんだ」

降谷「何か気に障ったならごめん」

皐月「謝らないでよ。私が悪いみたいじゃん」

降谷「……ごめん」

皐月「また、謝った」

降谷「…………」

皐月「黙らないでよ。ちょっと、からかって

みたかっただけだから」

降谷「なんだよ、それ」

皐月「怒った?」

降谷「怒ってない」

皐月「絶対怒ってる」

降谷「うるさい。早く練習しょう」

皐月「話逸らしたー」

降谷「帰るよ」

皐月「ごめん、ごめん」

降谷「それじゃ、始めるよ」

皐月「はーい」

降谷、音楽をかける

降谷・皐月、ダンスを踊り始める

数回踊る

降谷「ちょっと休憩する?」

皐月「うん。ちょっと水買って来る」

降谷「わかった」

皐月「何か欲しいものある?

ついでに買って来るけど」

降谷「特にないや」

皐月「そう。じゃあ、何か買って来てあげる」

降谷「え?いらないよ」

皐月「遠慮しない。買って来てあげる」

降谷「遠慮してないよ」

皐月「いいから、いいから。

それじゃ、行って来るね」

降谷「……う、うん」

皐月、去って行く

降谷「面白い子だな」

降谷、音楽をかけて踊り始める

降谷、踊りを止めて、床に座って

ネックレスを眺めている

降谷「……来週の土曜か」

皐月、戻って来る

皐月「ただいま」

降谷「おかえり」

皐月「はい、これ」

皐月、ジュースを降谷に渡す

降谷「……何これ」

皐月「ジュースよ、ジュース」

降谷「そんなことは知ってるよ」

皐月「早く飲んでみて」

降谷「え?」

皐月「早く!」

降谷「……分かったよ」

降谷、ジュースを飲む

降谷「まっず」

皐月「ハハハ、ナイスリアクション」

降谷「知ってて飲ませたな」

皐月「うん。当たり前じゃん」

降谷「当たり前だと」

皐月「ツイッターで拡散されてたから。

面白いと思って」

降谷「笑ってもらえて光栄です」

皐月「怒ってる」

降谷「怒ってない」

皐月「いや、その返しが怒ってんじゃん」

降谷「うるさい。それじゃ、君も飲みなよ」

皐月「え、嫌よ」

降谷「駄目だ。飲め」

皐月「嫌って言ったら嫌よ」

降谷「自分だけ飲まないなんて許さない

からな」

降谷、皐月にジュースを飲ませる

皐月「まずい、まずすぎ」

降谷「これで分かったろ、僕が苦しんでいた

理由が」

皐月「……はい」

降谷「分かればいいよ」

皐月「ハハハ」

降谷「何がおかしいんだよ」

皐月「いや、だってこんなに必死な

降谷君見るの初めてで。

面白いなって」

降谷「面白いって」

皐月「ごめん、ごめん」

降谷「謝る気ないだろ」

皐月「マジよ、マジ」

降谷「別にいいけど。君と居たら疲れるよ」

降谷、座る

皐月「ごめんってば」

皐月、座る

降谷「君っていつもそんな感じなの?」

皐月「違うよ。気遣いまくり」

降谷「嘘だ」

皐月「本当だよ。おばあちゃんとお姉ちゃん

の板挟み」

降谷「君が?」

皐月「そう。家ね、両親が出張が多くて、

おばあちゃんと一緒に暮らしてるの。

お姉ちゃんは昔虐められてたことが

あって人付き合いとか苦手で、

ネットばっかりしてるんだ。

おばあちゃんは、そんなお姉ちゃん

を見て、色々言うだけど、それが

また逆効果で。

ジェネレーションギャップって

言ったらいいのかな。お互いの主張

が合わないんだ。

だから、私が二人の間を取り持って

るんだ」

降谷「……大変なんだね」

皐月「そうなの。だから、家に居るよりも

ここに来てダンス踊ったりする方が

楽なんだ」

降谷「……そっか」

皐月「ごめんね。変な話して」

降谷「いいよ。……もし、僕でよかったら

何でも付き合うよ」

皐月「え、本当に?」

降谷「……うん」

皐月「それって何でもお願い聞いてくれる

ってことだよね」

降谷「え?」

皐月「そう言うことだよね」

降谷「……ちょっと違う気が」

皐月「だよね」

降谷「は、はい」

皐月「じゃあ、一つお願いがあるんだ」

降谷「なんだよ」

皐月「今度デートしよう」

降谷「デート?」

皐月「うん。デート」

降谷「マジ?」

皐月「マジ」

降谷「…………」

皐月「嘘つくの?」

降谷「いや、それは」

皐月「どうなの?」

降谷「……えっと」

皐月「はっきりしなさい」

降谷「はい、行きます。

行かせていただきます」

皐月「よろしい」

降谷「でも、どこに行くんだよ」

皐月「決めて」

降谷「日時は」

皐月「来週の土曜日がいい」

降谷「来週の土曜日?」

皐月「何かご不満でもおあり?」

降谷「ないけど、一つ僕のお願いも

聞いてもらえないかな?」

皐月「いいよ。言って」

降谷「絶対に行かないといけない場所が

あるんだ。そこに行ってもいいかな」

皐月「うん、行こう」

降谷「ありがとう」

皐月「それじゃ、決まりってことね」

降谷「……う、うん」

皐月「楽しみだな。期待してるから」

降谷「ま、まかせて」

皐月「きっと面白くなるんだろうな」

降谷「もう、これ以上ハードルを上げない

でくれない」

皐月「いいじゃん」

降谷「よくない」

暗転

○Sー7

明転

街の公園

舞台中央にベンチが置かれている

葉子・谷山、ベンチに座る

谷山「護君とはちゃんと話が出来たかい」

葉子「あの日以降、全く会話してないし、

顔も合わせてくれないの」

谷山「そうか。それは困ったな」

葉子「どうしたいいか分からない」

谷山「私が話そうか?」

葉子「駄目よ。火に油を注ぐのと同じよ」

谷山「それじゃ、どうするんだ」

葉子「……それは」

葉子、俯く

谷山「すまない。君を責めるつもりで

言ったんじゃないんだ。

それだけは信じてくれ」

葉子「……えぇ」

谷山「きっと、大丈夫さ。

君と修二の子供なんだから」

葉子「……そうね」

谷山「でも、どうすれば話を聞いて

くれるか。それが一番の問題だ。

私の事を覚えてないみたいだし」

葉子「仕方ないわ。あの時は護も結斗も

現実を受け止められなかった。

あの人が死んだってことだけで

精一杯だったから」

谷山「……そうだね」

葉子「ごめんなさい。話が逸れて」

谷山「いいんだ」

葉子「でも、どうすれば話を聞いてくれる

のか。貴方を受け入れてくれるか。

その糸口が分からないわ」

谷山「……たぶん、私の事は受け入れられ

ないだろう。彼らにとって、

父親は修二しかいない。

私の娘達も同じだよ。

娘達には亡くなった妻しか

母親はいないんだ。その悲しみに

向き合うのは並大抵のことじゃない。

それに僕らがどう足掻いても、

修二の亡くなった妻の代わりには

なれないんだよ。悲しいけどね」

葉子「…………」

谷山「大丈夫さ。きっと、時間が解決して

くれるはずさ」

葉子「そうかしら」

谷山「あぁ、そうだよ」

葉子「……頑張ってみるわ」

谷山「それじゃ、少し歩かないか。

その方が気持ちも楽になるだろう」

葉子「そうね」

葉子・谷山、去って行く

中村、現れてベンチに座る

中村「(溜息を吐く)どうしたらいいん

だよ」

夏恋、現れる

夏恋「待った?」

中村「いえ、全然。待ってないっす」

夏恋「そう、それはよかった」

中村「どうぞ、こちらに」

夏恋「何それ、硬いわよ」

中村「そんなことないっすよ」

夏恋「本当に?」

中村「嘘つく必要あるすっか」

夏恋「ないね。ごめん、ごめん」

夏恋、ベンチに座る

夏恋「で、相談ってなに?」

中村「……それはすっね」

夏恋「もしかして、好きな子でも

出来たの?」

中村「出来てません」

夏恋「それじゃ、私の友達紹介してほしい

とか?」

中村「紹介はしてほしいっすけど、

それも違うっす」

夏恋「じゃあ、なに?」

中村「護さんと結斗の事っす」

夏恋「……それか」

中村「もう、護さんの姿を見るの辛くて」

夏恋「そうね」

中村「結斗の気持ちも分かるっすけど、

さすがにあのままじゃ、

護さんが壊れてしまうと思うんっす」

夏恋「それは私も思う」

中村「だから、どうにかしたいんっす」

夏恋「…………」

中村「夏恋さんはどう思うんっすか?」

夏恋「たぶんね、私達がどうにかできる

問題じゃないと思うの」

中村「どう意味すっか?」

夏恋「これだけは佐伯家の問題なのよ。

いくら親しい私達でも、踏み込んだ

らいけない所なの」

中村「でも、それじゃ、護さんが壊れて

しまうじゃないすっか。

夏恋さんは、それでもいいってこと

すっか」

夏恋「それは違う」

中村「じゃあ、どうすれば!」

夏恋「……解決するのは私達には

どうすることもできない。

けど、解決するきっかけなら作る

ことはできると思うの」

中村「……きっかけすっか」

夏恋「そう、きっかけ」

中村「ありがとうございます。

なんか、いい事を思いついたっす」

夏恋「…………」

中村「夏恋さんのおかげです。それじゃ」

中村、去って行く

夏恋「……護」

暗転

○Sー8

下手奥、上手前、それぞれに

ピンスポットがあたる

結斗、下手奥でパソコンを操作

している

茜、上手前で携帯を操作している

茜「解決さん、お久しぶりです」

結斗「お久しぶりです。みかんさん。

何かありましたか?」

茜「相談したいことがありまして」

結斗「どうぞ。僕でよければ」

茜「最近、祖母とちゃんと

コミュニケーションが取れません。

どうしたらいいでしょうか?」

結斗「……コミュニケーション」

結斗、パソコンを操作する

結斗「アドバイスではないんですが、

実は自分もコミュニケーションを

取るのが苦手です」

茜「そうなんですか。意外です」

結斗「……たぶん、今すぐにはみかんさん

とおばあさんの仲が良くなることは

ないと思います。

だから、少しずつ、少しずつ二人の

間を埋めていくしかないと思います」

茜「……間を埋めていく」

茜、携帯を操作する

茜「アドバイスありがとうございます。

頑張って、間を埋めていきます」

茜、去って行く

結斗「……間を埋めるか」

全明転

佐伯宅

テーブルには古びた箱が置いてある

葉子、椅子に腰掛けている

護、帰ってくる

護「……ただいま」

葉子「おかえり」

護、服をハンガーにかける

葉子「……護、話があるの。座って」

護「嫌ですね。話すことなんてないです」

葉子「護!」

護「うるせえな。じゃあ、あの男の事

ちゃんと説明してくれんのかよ」

葉子「……説明するわよ。だから、お願い。

話を聞いて」

護、苛立ちながら椅子に腰掛ける

葉子「……あの人は、谷山友和さん。

お父さんの親友であり私の同級生」

護「……親友?」

葉子「そうよ。お父さんの親友。

お父さんのお葬式に参列していたわ。

貴方は覚えてないかもしれないけど」

護「でも、その親友が親友の嫁に手を出し

たって事には変わりないじゃねぇか」

葉子「最後まで聞きなさい」

護「……分かったよ」

葉子「友和さんは私と境遇が似ているの。

いや、私達って言った方がいい

かしら」

護「……どういうことだよ」

葉子「奥さんを交通事故で亡くしてるの」

護「……え?」

葉子「それにね、友和さんには二人の娘

さんがいるの」

護「…………」

葉子「お父さんを亡くして、

どうしたらいいか分からなくなって

相談に乗ってもらっていたの。

残された家族はどうしたらいいかと

かね」

護「……知らなかった」

葉子「いつ言えばいいか分からなかったの」

護「でも、手を組んでいたのはなんだよ。

相談しているだけの間柄だったら、

あんなことしないぞ。普通」

葉子「……付き合ってるの」

護「はぁ?」

葉子「結婚しようと思ってる」

護「ちょっと待ってくれよ。それはおかしい

だろ。息子は結婚するの我慢してるんだ

ぞ」

葉子「……分かってる」

護「分かってねぇよ。頭おかしいだろ。

それに結斗はどうするんだよ」

葉子「あの子の為よ。環境を変えたら、

あの子にも何かしら変化が生まれる

はずよ」

護「そりゃ、変化はあるさ。でもな、その

変化を受け入れるかは別だ。

あいつの心は、4年前のあの日から

氷ついてるんだよ」

葉子「…………」

護「それにな、周りの俺達がどれだけ動いて

も無駄なんだよ。

あいつ自身が変化することを受けいれな

いと意味がないんだよ。

……それに母さんが起こそうとしている

変化はあいつが一番受け入れられない

変化なんだよ。……忘れたのかよ。

……あいつは親父の事が世界一好き

だったんだぞ」

葉子「……そうだったわね」

護「だから、頼むよ。あいつが歩み出すまで

は、結婚するとかは言わないでくれ」

葉子「……ごめん」

護「友和さんが母さんの支えになってくれて

いるのは分かった。けど、結婚は認める

ことは出来ない」

葉子「……ごめんなさい。軽はずみな事を

言って」

葉子、護に頭を下げる

護「母さん、顔を上げてくれよ」

葉子、頭を上げる

護「……俺は、何も話さず黙っていた母さん

に腹を立てていたんだ。

今は混乱はしてるけど、心のモヤモヤが

少しだけ晴れた気がするよ」

葉子「護……」

護「それに、これ以上母さんを責めたら

父さんに怒られると思うんだ」

葉子「……ごめんなさい」

護「もう、謝るなよ。

……ありがとう、話してくれて」

護、葉子の肩に手を置く

護「懐かしいよな、これ」

護、古びた箱を持つ

葉子「……そうね」

護「なに入ってるんだろうな」

葉子「分からないわ。お父さん、何も話して

くれなかったから」

護「……そっか」

葉子「鍵は見つかってないしね」

護「父さん、鍵をどこに置いたんだろ」

暗転

○Sー9

明転

割り幕前

都市の街

人々が歩いている

護、現れる

護「夏恋のやつ、人使い荒いんだよ。

どこにあるんだよ。アニメショップは」

茜、アニメグッズの入った袋を持って

現れる

護「うーん、あれか。……菊永さん?」

護、恐る恐る茜に近づく

護「やっぱり、菊永さんじゃん。

ここで何してるの?」

茜「……佐伯さん」

茜、走って逃げる

護「え、逃げた?」

護、追いかける

護「おーい、菊永さん!ちょっと待って」

割り幕が開く

公園

舞台中央にベンチが置かれている

茜・護、走って現れる

護「菊永さん」

護、茜の腕を掴む

護「何で逃げるの?」

茜「…………」

護「答えてくれないかな?」

茜「バレされちゃう」

護「……え?」

茜、泣き始める

茜「バレされちゃう」

護「何を?ちょっと落ち着こう」

護・茜、ベンチに座る

護「……バレされちゃうって、

どう言うこと?教えてくれないかな」

茜「…………」

護「誰にも言わないから。約束する」

茜「……本当ですか?」

護「本当だよ。何にだって誓える」

茜「……私、オタクなんです」

護「そっか」

茜「え?」

護「え?もしかして、それだけ?」

茜「……馬鹿にしたりとか、軽蔑したりとか

しないんですか?」

護「何でそんなことしないといけないの?」

茜「何も思わないんですか?」

護「全然。だって、俺の彼女もオタクだよ。

好きなものがたまたま、漫画とかアニメ

とかなだけじゃん」

茜「……それって本心ですか?」

護「おう。そうだよ」

茜「……佐伯さんみたいな人、初めてです」

護「それはどうも」

茜「私、昔オタクが原因で虐められたことが

あるんです」

護「……そうなんだ」

茜「だから、ずっと隠してたんです。

私の趣味は人に受け入れてもらえない

ものなんだって」

護「そんなことないよ。少なくても、俺は

いいと思うよ。

それにさ、受け入れられない奴に限って

何も知らないんだよ。知ろうともしない。

知ってる人に嫉妬して、

傷つけようとする。簡単に言えば、ガキ

なんだよ。菊永さんを虐めた奴らは。

だからさ、隠さなくていいんだよ。

誇っちゃえばいいんだよ。

でも、あれだよ。TPOはわきまえない

と駄目だからな」

茜、泣き始める

護「俺、何か悪いこと言った?」

茜「……いいえ」

護「じゃあ、何で泣くんだよ」

茜「嬉しいんです」

護「……そっか、それならいいんだけどさ」

茜「……はい」

護「ちょっと、飲み物買って来るわ。

何か飲んだら、ちょっとは楽になると

思うし」

茜「ありがとうございます」

護、立ち上がる

護「逃げないでね」

茜「……はい」

護、飲み物を買いに行く

茜、深呼吸をする

護、飲み物を持って現れる

護「はい、これ」

茜「お金は?」

護「いいよ。奢り」

茜「ありがとうございます」

護「おう。早く飲みな」

茜「はい」

茜、飲み物を飲む

護「ちょっとは落ち着いたか」

茜「だいぶ」

護「よかった、よかった」

茜「佐伯さんみたいな人、現実に存在するん

ですね」

護「そりゃいるよ。

だってさ、俺三次元だもん」

茜「ハハハ、そうですね」

護「お、笑った。いいんじゃん、笑顔。

普段も、笑った方がいいと思うよ」

茜「そうですか?」

護「絶対」

茜「分かりました。検討します」

護「是非、採用お願いします」

茜「……なんだか、ちょっとだけですけど、

すっきりした気がします」

護「それは良かった。追いかけたかいがある

ってもんだな」

茜「周りに相談することがあまりないんで。

新鮮な感じもします」

護「家族とかにはしないの?」

茜「両親は出張で家を開けてますし、妹は

私と正反対の性格で意見があまり合わな

いし、それに迷惑をかけたくないんです。

あと、祖母は生きてきた時代が違うので、

相談しても、返ってくる答えに私が腹を

立ててしまって意味がなくて」

護「そうなんだ」

茜「周りの人ではないんですけど、相談はし

てます」

護「誰?」

茜、携帯を取り出す

茜「これです」

護「もしかして、シリ?」

茜「違いますよ」

茜、携帯を操作し、画面を護に見せる

護「悩み相談室?」

茜「はい。このサイトの管理者の解決さんに

相談をしているんです」

護「解決さんか……」

茜「とても、優しく答えてくれるんです」

護「そっか。それはいいね」

茜「はい」

護「その解決さんとは、

会いたいとは思わないの?」

茜「……え?」

護「だって、唯一相談できる人なんだろ」

茜「……そうですけど」

護「だったら、会ってお礼言わなきゃ」

茜「お礼ですか?」

護「そう」

茜「……でも」

護「大丈夫だよ。きっと」

茜「そうですかね」

護「そうだよ。人の相談を聞いてあげれる

人は優しい人だと思うよ。少なくても、

悪い人じゃない」

茜「……はい」

護「まぁ、会ってくれるかは別だけどな」

茜「なんですか、その言い方」

護「悪い悪い。でも、誘ってみる価値は

あると思うよ。

きっと、菊永さんにとって、とても

プラスなことだと思うし」

茜「……頑張ってみます」

護「おう。頑張れ」

茜「はい!」

護「その調子」

茜「あのー、本当に今日は、

ありがとうございました」

護「いいよ、別に」

茜「……本当に感謝してます」

護「おう。そう言ってもらって嬉しいよ」

茜「佐伯さん。一つ質問してもいいですか?」

護「いいけど」

茜「なんで、あの道を歩いてたんですか?」

護「それはあれだよ」

茜「あれって何ですか?」

護「……あ!」

茜「びっくりした。どうしたんですか?

いきなり叫んで」

護「おつかい忘れてた」

茜「おつかい?」

護「彼女に頼まれてたんだよ。

限定フィギュア。あー、もう絶対売れ切

れてる。殺される」

茜「あのー、何のフィギュアですか?」

護「海賊探偵って言うアニメのヒロインの

フィギュア」

茜「これですか?」

茜、袋からフィギュアを取り出す

護「そう、それ」

茜「……よかったらあげます」

護「え、いいの?」

茜「はい。お話聞いてもらったので」

護「でも、それだったら菊永さんの分が」

茜「大丈夫です」

茜、袋からもう一つフィギュアを取り

出す

茜「オタク舐めないでください」

護「本当にくれるの?」

茜「はい」

護「やった、ありがとう」

茜、護にフィギュアを渡す

護「今度、俺の彼女に会ってあげてくれよ。

きっと、友達になると思うから」

茜「是非お願いします」

護「よかった。殴られないですむ」

暗転

○S-10

下手奥、上手前、それぞれに

ピンスポットがあたる

結斗、下手奥でパソコンを操作

している

茜、上手前で携帯を操作している

茜「お久しぶりです。解決さん」

結斗「お久しぶりです。みかんさん」

茜「今回は解決さんに報告とお願いがあるん

ですが聞いてもらえないでしょうか?」

結斗「……はい、どうぞ」

茜「まず、最初に報告をします。

この前初めて、自分のことをカミングア

ウトすることができました。

その相手はとても素敵な方で、解決さん

と同じ優しさを持ってられる人です。

今度、彼女さんを紹介してくれるらしく、

友人が増えそうで楽しみです」

結斗「……素敵な方」

結斗、パソコンを操作する

結斗「それは良かったですね」

茜「はい。その方のおかげで世界が広がった

気がします」

結斗「……世界が広がる。

……僕は、何をしてるんだろう」

結斗、パソコンを操作する

結斗「喜ばしい事です。それで、お願いって

なんですか?」

茜「……本当に誘っていいのかな」

茜、深呼吸をする

茜「よし、送っちゃえ」

茜、携帯を操作する

茜「今度の土曜日お会いできませんか?」

結斗「……え?」

茜「14時に東松山駅で待ってます。

一度でいいのでお会いしたいんです。

よろしくお願いします」

結斗「……嘘だろ」

暗転

○Sー11

明転

佐伯家宅

葉子、椅子に座っている

結斗、自分の部屋で

椅子の上で体育座りしている

護、結斗の部屋の前で立っている

護「おい、結斗。行かないのか」

結斗「行かない」

護「今日ぐらいは外に出ろよ。

父さんの命日なんだぞ」

結斗「行かないって行かないよ」

護「結斗!」

葉子「護」

葉子、護の肩を叩く

護「母さん」

葉子「もう少しだけ待ってあげましょう」

中村、現れてインターホンを鳴らす

護、ドアを開ける

護「はい、どちら様」

中村「小太郎っす」

護「小太郎か。どうした?」

中村「……結斗はどうすっか?」

護、首を横に振る

中村「そうすっか」

護「大丈夫。説得するから」

中村「……はい」

護「暗い顔すんな。小太郎らしくないぞ」

中村「……そうすっね。

俺、笑顔だけしか取り柄ないすっから」

護「その調子だ。……本当に大丈夫だから」

中村「分かりました。それじゃ、先に行って

来ますね」

護「おう。ありがとうな」

中村「親父さんには世話になりましたから。

じゃあ、行って来ます」

護「行ってらっしゃい」

中村、去って行く

護、ドアを閉める

葉子「小太郎君?」

護「そう。先に行ったよ」

葉子「……そう」

護「母さん、あのさ、もう少しだけ粘っても

いいかな。今日だけはなんだが上手く

いきそうな気がするんだ」

葉子「……いいわよ。気が済むまで」

護「ありがとう。母さん」

暗転

○Sー12

明転

修二の亡くなった道路

瓶に花が供えられている

降谷、花束を持って現れる

皐月、現れる

皐月「ここが来たかった場所」

降谷「そうだよ。僕はここで殺されそうに

なった。そんな僕を助けてくれた人が

死んだ場所なんだ」

皐月「……そうなんだ」

降谷、花束を瓶の近くに置く

降谷・皐月、目を瞑って合掌する

中村、花束を持って現れる

中村「珍しいな」

降谷・皐月、目を開ける

降谷「それじゃ、行こっか」

皐月「うん」

降谷・皐月、歩き出す

中村「あのー、すみません」

降谷「はい?」

中村「親父さん。いや、ここで亡くなった人

とはどういう関係ですか?」

降谷「……助けてもらったんです」

中村「助けてもらった?」

降谷「4年前に通り魔に殺されそうになった

のを助けてもらったんです」

中村「……本当ですか。その話」

降谷「はい。その人に渡されたものが

ありますから」

中村、ネックレスを見せる」

中村「……これって」

降谷「貴方、亡くなった人とお知り合い

なんですか?」

中村「もしかしたら」

降谷「あのー」

中村「結斗が変わるきっかけになるかも

しれない」

降谷「すみません」

中村「一緒に来てください」

中村、降谷の腕を掴む

降谷「え?」

中村「いいから」

降谷「ちょっと説明してください」

中村、降谷の腕を掴んで走る

降谷。中村に連れて行かれる

皐月「……え、ちょっと待って」

皐月、二人の後を追う

暗転

○Sー13

明転

佐伯家宅

葉子、椅子に座っている

結斗、自分の部屋で

椅子の上に体育座りしている

護、ドアの前で立っている

中村・降谷・皐月、走って現れる

中村、インターホンを鳴らす

護「俺が出るよ」

護、ドアを開ける

護「はい」

中村「護さん、連れて来ました」

護「この子達は」

中村「この子は4年前に親父さんに助けて

もらった子なんです」

護「なんだって」

中村「本当だよね」

降谷「はい、本当です。すみません、

この人は誰ですか?」

中村「君を助けてくれた人のご遺族っす」

降谷「本当ですか?」

中村「本当だよ」

降谷「やっと会えた」

降谷、護にネックレスを渡す

護「……これは?」

降谷「子供達に渡してくれて、預かったもの

です。やっと渡せました」

護「……鍵?もしかして。すみません、

全員家に上がってください」

中村・降谷・皐月、家に上がる

護、古びた箱に鍵を指す

護「開いた」

護、古びた箱を開けて、中に入って

いるものを取り出す

護「写真、通帳、ボール、……なんだ、これ」

護、封筒を取り出す

護「母さん、開けていい?」

葉子「えぇ、お願い」

護、封筒を開ける

護「……手紙」

護、結斗の部屋の前に行く

護「拝啓、ご家族の皆様。佐伯修二です。

普段手紙を書かない、私にとってこの

手紙は苦行でした。けど、ちゃんと

伝えたいことは書いたつもりです。

なので、最後まで読んでください。

父からのお願いです。

まず、最初に言わなければならないこと

があります。すみませんでした。

きっと、みんながこの手紙を

読んでいる頃には、私はこの世にいませ

ん。なぜならば、重い病気にかかってお

り、医者からは余命半年と宣告されたか

らです。

だから、一人ずつに伝えたいことを書き

ます。

葉子、貴方と出会って私は幸せでした。

かけがえのない物を貴方からたくさん

もらいました。私にとって、最高の女性

です。だから、ずっと笑っていてくださ

い。それが私の貴方に対する唯一のお願

いです。

そして、私が死んだら誰かと一緒になっ

てください。君はまだ若いんだから、

大丈夫なはずです。なんなら、谷山は、

どうだろう。あいつはとてもいい奴です。

きっと、あいつなら君を幸せにできる」

葉子「……貴方」

護「次に護。お前は人に尽くすいい子だ。

けど、その優しさを利用されないように

しろ。それさえ、気をつければ心配はな

い。まあ、心の残りと言えば、お前と

夏恋ちゃんの結婚式に立ち会えなかった

ことだ。お前の晴れ姿を拝めなかったの

は辛いかな。

たぶん、結婚後は私と一緒で尻に敷かれ

るだろう。人生の先輩から助言してやる。

尻に敷かれとけ。それが夫婦生活の鉄則

だ。

最後に一言。生まれてきてくれて、

ありがとう。……父さん」

護、結斗の部屋のドアをノックする

護「そして、最後に結斗。

お前は護に比べると、ちょっとおとなし

いが相手の立場に立って、相手の心に

寄り添える子だ。それはお父さんの自慢

だ。お前には素敵な才能があると思う。

それは感受性だ。私や葉子や護にはない、

お前だけの才能だ。それを存分に発揮

してほしい。お前の才能は人を幸せに

できるんだ。

でも、一つ気をつけてほしいことがある。

それは、自分の殻に閉じこまらないこと。

変化を受け入れることだ。

人生は変化の連続だ、変化を受け入れな

いと、お前のよさがなくなるんだ。

だから、怖がらずに受け入れてほしい。

思い出とかを捨てろとは言わない。

けど、それだけにとらわれるな。

お願いだ。幸せであってくれ。

結斗、お前は私の宝物であり夢だ。

輝いてくれ」

護、手紙を封筒に戻す

護「結斗、お前はどうしたい?」

結斗「…………」

護「ずっと、このまま居たいか?」

結斗「……変わりたい」

護「何だって聞こえないな」

結斗「変わりたい」

護「口でだったら、何でも言えるんだ。

行動で示せよ」

結斗、部屋の鍵を開けて、出てくる

結斗「変わりたい!」

護「おう。その言葉を聞きたかったんだ」

中村「結斗!」

中村、結斗の抱きつく

結斗「今までごめんな」

中村「良かった、良かった」

結斗「ありがとうな」

中村「礼なんているかよ。俺とお前の仲じゃ

ねぇか」

結斗「……うん」

葉子、泣く

葉子「……ありがとう、貴方」

結斗「……母さん」

結斗、降谷の手を掴む

結斗「ありがとうございます。

全て、貴方のおかげです」

降谷「僕は鍵を預かっただけですし、

何より貴方のお父さんに命を救われた

んです。だから、言わせてください。

……ありがとうございます」

護、結斗の部屋に入り、パソコンの

画面を見る

護「……これって」

結斗「兄さん。僕、父さんが亡くなった場所

に行きたい」

護「駄目だ」

結斗「……なんで?」

中村「なんですっか?」

護「この悩み相談室ってサイト、お前が

作ったんだろ」

結斗「……そうだけど」

護「会いに行け」

結斗「え?」

護「お前、解決さんなんだろ。だったら、

みかんさんに会いに行け」

結斗「でも」

護「いいから、行け。父さんはそう言うと

思うぞ」

結斗「……わかった」

結斗、靴を履いて去って行く

護「母さん、谷山さんを呼んでくれないか」

葉子「……いいの?」

護「あぁ。小太郎、夏恋を呼んで来てくれ

ないか」

中村「分かったっす」

護「名前聞いてなかったね」

降谷「降谷駿です」

護「駿君か。彼女さんは?」

皐月「まだ、彼女じゃありません。

菊永皐月です」

降谷「まだってなんだよ」

皐月「いいじゃん。別に」

護「もしかして、お姉ちゃんいるかい」

皐月「はい。いますけど」

護「ハハハ、世間は狭いな。

何かの縁だ、ご飯食べていかないか」

降谷「いいんですか?」

護「もちろん」

降谷「それじゃ、お願いします。いいよね」

皐月「うん、いいよ」

暗転

○Sー14

明転

東松山駅

茜、立っている

結斗、走って現れる

結斗「あの、すいません。貴方、もしかして

みかんさんですか?」

茜「……はい。もしかして、解決さん?」

結斗「はい」

茜「来てくれたんですね。返事がなかった

から来てくれないと思ってました」

結斗「……最初は行かないつもりでした。

でも、変わりたいと思って来ました」

茜「変わりたい?」

結斗「僕は貴方の思っているような人間では

ありません。

この4年間ずっと、家で引きこもり、

家族に迷惑をかけていたんです。

貴方にアドバイス出来るような、

人間ではないんです」

茜「…………」

結斗「すみませんでした」

結斗、頭を下げる

茜「……顔を上げてください」

結斗、顔を上げる

茜「解決さん。貴方は私の想像通りです」

結斗「え?」

茜「私の相談に乗ってくれていた解決さん

です」

結斗「でも、僕は」

茜、結斗の手を掴む

茜「相談に乗ってくれていた事は事実じゃ

ないですか。違いますか?」

結斗「…………」

茜「私をずっと支えてくれたじゃないですか」

結斗「…………」

茜「……好きです。次は私が貴方を支える番

です。……駄目ですか?」

結斗「でも、僕には何もありませんよ」

茜「じゃあ、何もないなら作って行きましょ

う」

結斗「……こんな僕でいいんですか?」

茜「はい。私は貴方のおかげで変わること

が出来たんです。

だから、こんな僕でなんて言わないでく

ださい」

結斗、茜の手を握り返す

結斗「……お願いします」

茜「……はい。こちらこそ」

茜、結斗に抱きつく

結斗「あのー、一ついいですか?」

茜「何でも言ってください」

結斗「本名教えてください」

茜「菊永茜です。解決さんは?」

結斗「佐伯結斗です」

暗転

○Sー15

明転

佐伯家宅

テーブルの上にはご馳走が並んでいる

護・葉子・中村・夏恋・降谷・皐月、

食事の用意をしている

護「小太郎、食器取ってくれ」

中村「了解っす」

夏恋「もう、買って来なくても大丈夫です

かね」

葉子「これだけあれば充分よ」

谷山、現れてインターホンを鳴らす

護「はい」

護、ドアを開ける

谷山「久しぶりだね」

護「お久しぶりです。あの時はすみません

でした」

谷山「いいんだ。呼んでくれてありがとう」

護「当たり前じゃないですか。

……母さんの彼氏なんですから」

谷山「なんだか、その言い方棘があるよ」

護「冗談ですよ。さぁ、入って」

谷山、家に上がる

葉子「友和さん」

護「谷山さんは座っててください。

もうすぐしたら、二人が来ますから」

中村「結斗と誰すっか」

護「来てからのお楽しみだ」

結斗・茜、手を繋ぎながら現れる

結斗、インターホンを鳴らす

護「来た」

護、ドアを開ける

結斗「ただいま」

護「おかえり」

茜「え、佐伯さん」

護「どうも」

結斗「兄さん、茜さんと知り合い?」

護「同僚」

茜「世間って狭いですね」

護「だな。早く上がりな」

結斗・茜、家に上がる

茜「お邪魔します」

皐月「お姉ちゃん!何で?」

茜「皐月ちゃんこそ」

護「説明すると長くなるから、まぁ、

みんな座って」

中村「おい、結斗その人誰だ。

それにその手は、その手は!」

夏恋「あとで話聞いてあげるから」

中村「なんで、俺には彼女が出来ないんだ」

結斗「兄さん、僕」

護「これ」

護、結斗に通帳を渡す

護「父さんが残した通帳だよ。

母さんと相談して、お前に渡すことに

決めたんだ」

結斗「……いいの」

護「何を始めるにも金はいるだろ」

結斗「……ありがとう」

護「でも、一つ条件がある」

結斗「なんでも聞くよ」

護「茜さんを泣かすなよ。以上」

結斗「……うん」

護「おう。それじゃ、飯食うか」

結斗「兄さん」

護「なんだよ」

結斗「僕、頑張るよ」

護「行動示さなきゃな」

結斗「分かってるよ」

護「それだったらいい」

全員・テーブルを囲むように

椅子に座る

護「それでは手を合わせて」

全員「いただきます」

全員、ご飯を食べ始める

暗転

(終)

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