怪人家族の総選挙(怪人総選挙) ファンタジー

特撮ヒーロー制作会社『宝映』屋上の神社で、新作の成功祈願が行われていたが、二日酔いで現れた監督は、神事を誤り祭壇を滅茶苦茶にしてしまう。すると怒った女神が現れ、今まで倒された怪人の怨念がもう抑えきれぬと言い、怪人達を現実の世界に放つ。人間への復讐をしようとする怪人に、女神は『人間との共存』を命じる。しかし怪人達の奮闘虚しく、排除運動が起こる。追い詰められた怪人達は、最後に『人権』を訴え選挙に出る。
鈴木公成 85 0 0 08/28
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第一稿

『怪人家族の総選挙』(テレビ朝日新人シナリオ大賞応募作品)

●あらすじ
特撮ヒーロー制作会社『宝映』屋上の神社で、新作の成功祈願が行われていたが、二日酔いで現れた監督は、神 ...続きを読む
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『怪人家族の総選挙』(テレビ朝日新人シナリオ大賞応募作品)

●あらすじ
特撮ヒーロー制作会社『宝映』屋上の神社で、新作の成功祈願が行われていたが、二日酔いで現れた監督は、神事を誤り祭壇をメチャクチャにしてしまう。すると怒った女神が現れ、今まで倒された怪人の怨念がもう抑えきれぬと言い、怪人達を現実の世界に放つ。人間への復讐をしようとする怪人に、女神は『人間との共存』を命じる。怪人の一人であるカエル人間は、妻のケロ子、息子のケロ太と暮らしている。ケロ太は人間と殆ど変わらぬ容姿で生まれた為、人間の子供と遊び、学校へ行きたいという。しかし、親子で入学のお願いに行った所、女の先生に驚かれ、帰ってくれと言われてしまう。怪人達が集まり近況報告するが、皆上手く行っていない。しかしカニ人間だけは放射性物質を無害化する能力を人間に見いだされ、原発事故研究所で上手く行っているという。仲間を連れて研究所へ行くと喜ばれたが、研究は秘密であり、人間との共存や、ケロ太の就学には協力できないと言われる。同時期、ケロ太が子供達にいじめられる事件が起きた。怒り、失望する怪人達。人間との共存を諦め、やはり世界征服するかという時、女神が現れ、選挙で人権を勝ち取るよう促される。かくして怪人達は選挙に出て人間達と戦う。ケロ太の入学を断った事に自責の念を持つ女の先生も選挙に協力。怪人の中で唯一人間の言葉を話せるケロ太は政見放送で父親の言葉を訳し、人々の共感を得る。しかし結果は惨敗。落胆し、人間との共存を諦め、山奥で暮らそうとする怪人達。しかし道中、車内のラジオから国会中継が流れ、怪人に人権が与えられ、ケロ太も学校に行ける事になった事を知る。これも全てケロ太の政見放送のおかげ、お前こそ怪人と人間の架け橋とケロ太をもてはやす怪人達。かくしてケロ太は就学を許可され、いじめっ子も謝罪。怪人達は人間と共存し、新番組も怪人を殺さない内容になり、満足した女神は消え、街には人間と怪人の笑い声がこだました。

●登場人物表
怪人カエル人間(ケロ吉)
ケロ子(カエル人間の妻)
ケロ太(カエル人間夫婦の子供)
カニ人間
怪人達

宝映の監督
宝映のプロデューサー
宝映神社の神主
宝映神社の女神
撃滅戦隊バクレンジャー(バクレッド、バクブルー、バクイエロー)
ナレーション(藤岡弘)

女の先生(石神井ゆみ子)
教頭
校長
教職員研修の講師
ガキ大将
子供達

ワイドショー司会
コメンテーター男
コメンテーター女

原子力災害研究所の所長
原子力災害研究所の研究員

選挙管理委員会の職員達

次期総理候補(大泉純三郎)
秘書

大臣達
野党国会議員(稲垣千尋)


●『怪人家族の総選挙』(或いは『カエル人間家族』)

●字幕
『この物語を、特撮を見て育った、全ての少年少女達に捧ぐ』

●テレビ画面
アイキャッチ『撃滅戦隊!バクレンジャー!』
特撮ヒーロー『撃滅戦隊バクレンジャー』最終回で、最後の戦いが繰り広げられている。
カエル人間「ケーロケロケロ!バクレンジャーよ!こうなったら俺様の最後の技を見せてやる!これで地球は俺様のものだ!見よ!究極!大ガマ変化~!」
怪人カエル人間がそう叫ぶと、煙がみるみる広がり、巨大な大ガマに乗ったカエル人間が現れた。
バクレッド「こいつは」
バクブルー「でけえ」
バクイエロー「いや~ん!何コレ!ますます気持ち悪~い!」
カエル人間「ゲーロゲロゲロ!どうだバクレンジャーよ!この大ガマには敵うまい!死ねー!究極!大ガマ乱舞~!」
カエル人間がそう叫ぶと、大ガマが乱舞しながらバクレンジャーに突進し始めた。
バクブルー「ヤバイぜ!レッド!この大きさじゃ歯が立たねえ!」
バクイエロー「ねえリ~ダ~!どうするの~!気持ち悪い~!」
バクレッド「こうなったら、あの技を使う!」
バクブルー「まさか!やるのかあれを!」
バクイエロー「ついにあの技を使うのね!」
バクレッド「ああ!みんなの力!俺に預けてくれ!行くぞ!アルティメット撃滅奥義!」
バクレンジャーがそう叫ぶと、まばゆい光と共に、巨大な大砲が現れた。
ナレーション(藤岡弘)「解説しよう!バクレンジャーの怒りが頂点に達した時、アルティメット撃滅奥義が発動可能になるのだ!」
バクレンジャー「バクレンジャー!大爆殺イリュージョン!」
バクレンジャーがそう叫ぶと、大砲からまばゆいビームが発射され、カエル人間に命中した。
カエル人間「ゲロゲロゲロギャー!」
次の瞬間、カエル人間と大ガマは大爆発し、跡形もなく消え去った。
バクブルー「やったぜレッド!大爆発!撃滅大勝利だ!」
バクレッド「ああ。ついに俺たちは地球を守ったんだ!」
バクイエロー「は~!スッキリした!ホント気持ち悪いの無理!ねえみんな!気分転換にスイーツ食べに行かない?」
バクブルー「はは!イエローらしいな!どうするレッド?」
バクレッド「ああ。口直しが必要だな。戦士の休息!パーッと行くか!」
バクイエロー「やった~!あのね、今度新しく出来たお店なんだけど」
楽しく語らいながら去っていく3人。
そして夕日に向かって3人が乗ったバイクが並んで走っていく。
ナレーション(藤岡弘)「こうして地球の平和は守られた。ありがとうバクレンジャー!さようなら撃滅戦隊バクレンジャー!」

●宝映・応接室
特撮ヒーロー制作会社『宝映』の応接室で、プロデューサーと監督がバクレンジャー最終回を見ている。

***テレビ画面
バクレッド「良い子のみんな!今まで応援ありがとう!バクレンジャーは今日でおしまいだよ!」
バクブルー「だが!心配は無用だぜ!何と俺たちパワーアップして、帰ってきちゃうかも?」
バクイエロー「あ~ん!ダメダメ!まだ内緒よ!でもテレビの前のみんな!私達!きっとまた会えると思うわ!」
バクレッド「うん!そうだな!みんな!期待して待っててくれよな!それじゃ!」
バクレンジャー「さようなら~!」
***

最終回を見終えたプロデューサーと監督が満足げに話す。
プロデューサー「いやー、監督!今作も大成功でしたね!怪人達が次々に爆発する姿に、子供たちも大喜びですよ!正義は勝つ!ヒーローグッズも爆売れです。監督の方にも少しですがボーナスが出る事になりましたので」
監督「ハッハッハ!そうかそうか!いつもすまないねえ。しかし、君。私は金が欲しくてやってる訳じゃないんだよ?子供達に正義の心を伝えたいんだ。悪い怪人達をなぎ倒し、大爆発させる!それによって、子供達に正義の心が刻まれるんだよ!勧善懲悪!正義は勝つ!これからも、この正義の心を伝えていきたいねえ」
プロデューサー「いやー!ごもっとも!お金じゃありません!正義の心です!我々は教育番組を作っているんです!次回作もがんばりましょう!監督!よろしくお願いします!」
監督「ハッハッハ!こちらこそよろしく頼むよ!次回作も新必殺技でバンバン怪人達をやっつけてやるからな。ハッハッハ!あ、ところで君、さっきちょっとボーナスが出るとか言っていたかな?いくらぐらいなのかな?」
プロデューサー「ああ!そちらの件ですが、大体このぐらいで」
ボーナスの額を耳打ちするプロデューサー。驚きと喜びを隠せない監督。2人共満面の笑みで雑談を続ける。

●宝映屋上・宝映神社
宝映撮影所に設置された宝映神社において、新作戦隊ヒーロー成功祈願の神事が行われている。そこへ監督、プロデューサー、スタッフ達が参加している。
神主「かしこみ、かしこみ~。此度~、撮入を迎えまする~、新作戦隊ヒーロー番組の撮影が~、つつがなく~、執り行われますよう~、この地の大神様に~、頭を垂れ~、ご祈願致しまする~」(※文言は本物に要確認)
神妙な面持ちの一同。しかし、監督の様子が少しおかしい。二日酔いのようだ。
神主「それでは、監督様、貢物の奉納をお願いいたします。参列者の皆様は、監督様に合わせて、頭をお下げください」
前に出て、神主から貢物受け取る監督。
監督M(うう~。二日酔いだ。気持ち悪い。えーと。何だっけ?この貢物を、祭壇に供えて、パンパンとやればいいんだな。よし!)
祭壇に向かう監督。やや頭を下げながらも、監督の異変に気づき、上目遣いで心配気味な視線を向ける参列者達。
監督M(えーと、この祭壇に、この貢物をっと、う、うぇ!)
監督が貢物を祭壇に奉納しようとした瞬間、急に気分が悪くなり、手元が狂って貢物を祭壇に落としてしまい、メチャクチャにしてしまう。ギョッとする一同。
監督「あらららら!ちょっと!ちょっと!どうしよ!どうしよ!困ったな。あらららら。どうする?どうする?」
監督がどうしようかと神主の方を振り向いて訪ねようとした次の瞬間。神社から光の柱が立ち上り。世界は暗転。雷も鳴り響き。天変地異の兆候が現れた。
一同「な!なんだ一体!何が起きているんだ!」
驚く一同。監督は腰を抜かして尻もちをつき後ずさる。神社から立ち上った光の柱はますます眩さを増し、一同は目をつぶる。そして光がやや収まり、目を開けると、そこには背に後光を背負った女神が光臨していた。
一同「あ、ああ」
言葉を失う一同。流石の神主も言葉を失っている。そこへ女神が語り始める。
女神「人間達よ。私はこの宝映神社を司る女神です。お前達の作品が世に出るのも、全て八百万の神の加護があってこそなのです。それなのに、神聖なる神事をこのように汚すとは、一体何たる無礼か!」
目の前で起きている事に半信半疑の一同。しかし、女神の発する本物の神の威厳のせいか、自然と地に手を付き、頭を垂れてしまう。
監督「は、はい。この度は粗相を致しまして、大変申し訳なく」
頭下げる監督に対し、女神が語気を強める。
女神「人間よ!私が今回、姿を現したのは、そのような小さな粗相のせいではない。お前達は、この番組の為に、一体どれだけの怪人達を殺めたのか!?」
監督「は?いやそれは、創作物ですから。作品の中の話でございまして」
女神「この愚か者!この神が作りし世界。いかな創作物と言えど、魂が宿っているのです。そして、お前達が殺めた怪人達の怨念が、もはや私の力では抑えきれぬほど増大しているのです」
監督「は、はあ」
女神「人間達よ。お前達は考えを改めなければなりません。それをわからせる為に、私はこれから、殺された怪人達に命を与え、世に放ちます」
一同「は?」
女神「蘇るが良い!人間達に恨みを持つ!怪人達の魂よ!」
女神がそう叫ぶと、まばゆい光とともに、今まで戦隊ヒーローに倒された数多の怪人達が現実の世界に蘇った。
怪人達「うおー!人間達!俺たちを好き勝手に殺しやがって!もう許さん!」
あっけに取られる一同。しかし、怪人達の中にカエル人間を見つけた監督が一言。
監督「あれ!カエル人間ちゃんじゃない!え?何やってるの?着ぐるみだよね?」
その言葉を聞いた女神は監督に蔑むような視線を向ける。
女神「はあ。現実の世界に命を与えたと言ったでしょう?カエル人間よ、見せてやりなさい」
カエル人間「ケーロケロケロ!」
カエル人間はそう言うと、口から毒液を吐き出した。するとみるみるコンクリートの地面が溶け始めた。
一同「うわー!きゃー!ほ、本物!た、助けて!」
怯える一同に怪人達は歓喜する!
怪人達「ヒャッーッハッハッハ!ついに蘇ったぞ!人間達め!俺たち怪人を好き勝手に殺しやがって!この恨み、晴らさでおくべきか!皆殺しにして世界征服してやるー!キャーッハッハッハ!」
奇声を発して歓喜する怪人達。その魔の手が人間達に伸びる。もはや命はないと絶望する人間達一同。しかし、女神がピシャリという。
女神「この愚か者!」
怪人達「え?」
これから人間達への復讐をと思っていた怪人達は出鼻をくじかれ、キョトンとする。人間達も同様だ。
女神「怪人達よ。お前達もお前達だ。何回同じことをやっているのだ?人間に危害を加えて、世界征服しようとして。それでは争いが生まれるばかりではないか?」
怪人達「はあ。そう言われればそうですが。じゃあどうしたら?」
女神「怪人達よ。世界征服などやめ、人間達との共存を考えてみるのです。お前達が危害を加えないと分かれば、人間達も受け入れてくれるかもしれません」
怪人達「え?」
人間達「え?」
女神の急な提案に、怪人達も人間達もキョトンとし、互いに顔を見合わせる。その光景に女神が堪らず笑い出す。
女神「アハハハハ!まあとにかく、お互い頑張りなさい!平和な世界の実現。楽しみにしてるわよ!ウフフフ」
そう言うと、女神は光とともに姿を消した。残された怪人達と人間達の間に気まずい空気が流れる。
怪人1「殺すのもダメ?世界征服もダメ?じゃあ一体どうするよ?」
怪人2「女神様は人間と共存しろって言うけど、そんな事できるのか?」
カエル人間「まあとにかく、一回皆で集まって考えよう」
怪人3「そうだな、行こうぜ」
怪人達の話はまとまり、ゾロゾロと去っていった。残された人間達は、しばらく呆然としていた。

●タイトル『怪人家族の総選挙』

●カエル人間の自宅
カエル人間が自宅でお茶を飲みながらテレビを見てくつろいでいる。そして独白が始まる。
※以下「M」はモノローグ。
カエル人間M(吾輩は、怪人カエル人間である。カエルであり、人間である。と同時に。純粋なカエルではなく、純粋な人間でもないのである。非常に宙ぶらりんな存在なのである。こんな私が、女神様から『人間との共存』を仰せつかったのだが、これが非常に難しく、難儀しているのである)
カエル人間M(まず第一に、私には人間の言葉が発せられないのである。私が喋ろうとすると)
カエル人間「ケーロケロケロ」
カエル人間M(このように、カエルの鳴き声のようになってしまうのだ。特撮ヒーローの番組内では、アフレコなる技術で声優が声を当てていたらしいのだが、現実の世界に来てしまった私には、そういう技法が通用しないのである。よって、街に出て人間と仲良くなろうとしても)

***回想・街
街で人間に声を掛けるカエル人間。
カエル人間「ケーロケロケロ?ケロケロケ?」
人間「キャー!何ですかあなた?イヤー!」
逃げ出す人間。うなだれるカエル人間。
***回想終わり

カエル人間M(このように、全く人間と意思疎通できないのである。当然、この容姿のせいもあるが。うーむ、しかし、困ったものである)
ふと部屋の入り口を見るカエル人間。そこへもう一人のカエル人間がお茶を運んで入って来る。風貌から察するに、どうやら女性のようである。
カエル人間M(そうそう、紹介しよう。私の妻の女カエル人間である。『女カエル人間』という呼び方では気の毒なので、ケロ子と呼んでいる。彼女は私の事をケロ吉さんと呼ぶ。なぜそうなったのかはわからないが。そういう設定で女神様に命を与えられたらしい。ともかく、家族が居るという事は心強い。如何に怪人仲間が居るとは言え、皆が一緒に暮らしている訳ではない訳であるから、人間の世界にポツンと放り出されるよりは、遥かに心強いのである)
ケロ子に愛情の眼差しを向けるカエル人間。恥ずかしそうにするケロ子。
カエル人間M(そうそう、家族といえば、我が家にはもう一人家族が居るのだ。そろそろ帰ってくるのではないかな?)
ふと掛け時計を見るカエル人間。そして窓の外へ目をやると、声が聞こえた。
人間の子供「ただいま!お父さん!お母さん!今日も人間の子供と遊んできたよ!」
勢いよく飛び込んで来た人間の子供に対し、話しかけるカエル人間夫婦。
カエル人間「ケーロケロケロ?ケロ?」
人間の子供「うん!鬼ごっこして遊んだんだ!僕は捕まらないよ!」
ケロ子「ケーロケロケ?ケロケロケケ?」
人間の子供「大丈夫だよ!いじめられてなんかいないよ!楽しかったよ!」
カエル人間夫婦「ケーロケロケロ、ケケケケケケ」
楽しそうに会話するカエル人間夫婦と人間の子供。
カエル人間M(そう、もう一人の家族というのがこの子である。ケロ太と呼んでいる。人間と殆ど変わらぬ容姿をしているが、正真正銘の私達夫婦の子供なのである。カエル人間の人間の成分が上手く混じり合って出たのだろう。本当に殆ど人間と変わらぬ容姿である。一点、変わった点と言えば)
ケロ太のお尻に目を向けるカエル人間。そこには、オタマジャクシのような尻尾が生えていた。
カエル人間M(そう、この尻尾である。オータマジャクシはカエルの子♪という歌があるが、カエルの成分がここに出たのであろう。私達夫婦からすれば、まさしく家族の証なのであるが、人間の子供と遊ぶとなると、いじめの対象になるのではないかと、それだけが心配なのである)
ケロ太に目を向けるカエル人間。笑顔を返すケロ太。
カエル人間M(さて、お気づきかもしれないが、このケロ太、人間とほぼ同じ容姿をしているが、加えて、人間の言葉もしゃべるのだ。そして同時に、私達カエル人間夫婦の言葉も理解する。いわば、私達怪人と、人間達との間の、唯一の意思伝達手段となっているのだ。これは、『人間との共存』への大きなカギとなるので、大事にして行きたいのだが、やはり、人間界との壁は大きいのである)

***回想・自宅
笑顔でカエル人間夫婦に話しかけるケロ太。
ケロ太「お父さん!お母さん!僕も学校に行きたい!放課後は皆と遊んでるけど、僕もちゃんと学校に行って勉強したいんだ!いつになったら行けるの?」
純粋なケロ太の眼差しに、困った表情のカエル人間夫婦。
ケロ子M(あなた、どうしましょう。私もこの子を学校に行かせたいわ。でも、親が私達では)
カエル人間M(うーん。とにかく、一度、学校に行って、先生にお願いしてみるしかないな。これも共存への第一歩だ。やってみよう)
カエル人間の提案に頷くケロ子。笑顔のケロ太。
***

***回想・学校(雨?)
ケロ太を連れ、学校を訪れたカエル人間夫婦。インターホンを押すと、若い女の先生が現れた。しかし、カエル人間達の姿を見て絶句する。
先生「な、な、何ですか?あなた達は!あ、あ」
驚く先生を前にカエル人間が話し始める。それを通訳するケロ太。
カエル人間「ケーロケロケロ。ケロロケロ」
ケロ太「先生はじめまして!えーと、この子は、つまり僕は、私達の子供で、つまり、僕はこの人達の子供で」
身振り、手振りを交えて通訳するケロ太。
カエル人間「ケーロケロケロケロケケ?」
ケロ太「つまり、この子を学校に入れたい、という言は、つまり、僕はこの学校に入りたいって事なんですが!入れますか?」
困惑し、絶句していた先生だが、なんとか声を絞り出す。
先生「だ、だ、ダメですよ!そんな!怪人の子供とか、ぜ、ぜ、前例がありませんから!す、すみませんが、騒ぎになると困りますので!か、帰ってください!お願いします!」
先生は怯えきってしまい。地面に手をついて頭を下げる。
先生「お願いします!お願いします!うえーん!」
ついに泣き出した先生。そんな先生を見下ろし、悲しそうに顔を伏せる3人。
***回想終わり

カエル人間M(というような事があり、このケロ太が人間との共存のカギなのではあるが、一筋縄では行かない。そんな所なのである)

●街中
カエル人間が、容姿が目立たぬような衣服をまとい、どこかへ向かって街中を歩いている。とある店舗の前を通りかかると、テレビからワイドショー的な番組が流れており、カエル人間は足を止める。

***テレビ画面
司会「さて、次の話題ですが、こちら!『怪人の目撃情報、更に増加!日本全国に潜伏か!?』という事ですが。いやーこれホンマなんですかねえ?特撮の怪人でしょ?その目撃情報が、今、日本全国からSNSで報告されているんですが?どうなんでしょう?」
怪人の目撃写真のスナップ。
コメンテーター男「いや、私も最初は本当に半信半疑だったんですよ。何かの撮影でしょ?と。ドッキリでしょ?と。所が、目撃者に話を聞くとですね、どうも本物らしいんです。特に驚いたのがですね、怪人の特殊能力を目撃した、という人も居るんですよ。何でも、カエル人間が、口から毒液を吐いて、コンクリートを溶かしちゃったって言うんですよ!」
司会「えー!ホンマでっか?」
コメンテーター女「キャー!怖い!カエルなだけでも気持ち悪いのに!その上、毒を吐いてコンクリートを溶かすんですか?これもう警察に通報しないとマズいんじゃないかしら?」
カエル人間の毒液でコンクリートが溶けるイメージ映像。
司会「いやホンマ洒落にならんですね?どうなんですか?」
コメンテーター男「いやそれがですね、警察も国も、現在情報収集中という事でですね、態度を明らかにしてないんですね。まあ混乱を避けたいという思惑もあると思うんですが」
司会「なるほどねえ。いやしかし、これだけ目撃情報が増えますとですねえ、知らぬ存ぜぬでは済まなくなると思うんですが」
コメンテーター女「本当ですよ!さっきの毒の話といい、もし人間に、子供達に危害が加えられたらどうするんですか?何かあってからじゃ遅いですよ?本当に!何とかできないのかしら?」
司会「いやホンマ、おっしゃる通りなんですよ。ただ、今、現時点では、人間に対しての危害の報告は無い、という事でですね。国も存在を公には認めていないという事なんですが。まあいずれにしろですね、本当に何かあってからでは遅いですからね、もし目撃しても、ヘタに近づかない方が良い、という事ですね?」
コメンテーター男「おっしゃる通りです」
司会「ですね。いやホンマ、○○さん、怪人見つけても石なんか投げたらあきまへんで」
コメンテーター女「え?ちょっと何ですか!○○さん!私そんな事しませんよ!私こう見えてもか弱いんですから」
司会「いやあんた、さっき警察に付き出せ言うとったがな」
コメンテーター女「いやいや、それとこれとはまた別ですよ。私ホントにか弱いんですから。やめてくださいよ。おほほ」
苦笑いするコメンテーター男。
司会「ははは。まあとにかく!テレビをご覧の皆様も、もし怪人を見つけても、ヘタに近づかない!という事でお願いします!それでは一旦CMです!」
***テレビ画面終わり

番組を見ていたカエル人間の近くで女性2人が話している。
女性1「いやー!カエル人間だって!気持ち悪いわねー!」
女性2「ホントに!子供に何かされたら大変よ!気をつけましょう!ね!」
女性達「ホント!気をつけましょ!ね!」

2人を避け、無言で立ち去るカエル人間。

●ある集会場
カエル人間が、とある集会場に入ると、怪人達が集まり話をしていた。
怪人1「お、カエル人間が来たぞ。こっちこっち」
怪人2「これで最後だな。よし、怪人会議を始めんべ」
怪人達「ギャワワワワ、キシャー」

こうして怪人会議が始まった。怪人達はそれぞれ近況報告を始めた。
怪人1「いやー。女神様から、人間達との共存を仰せつかった訳だけど、一筋縄では行かないな?。まず、見た目で怖がられてしまうからな、どうにもならない。お前達はどうだ?」
怪人2「いやー、まったくその通り。まず見た目で逃げちまうだろ?運良く見た目を乗り越えて話を聞いてくれそうな人が居てもだな、今度は言葉が通じないんだよ」
怪人3「あー、全くだ。番組の中では、アフレコっていう技術で意思疎通してたみたいだけど、現実世界ではそういうのが無いからな、身振りとか手振りの他に、何か別の意思伝達方法を考えなきゃならねえな」
怪人達が口々に失敗談を話す中、カエル人間に話が回ってきた。
怪人1「いやー、みんな上手く行ってないな。カエル人間、お前はどうだ?」
カエル人間「うーん、私の所も似たようなものだが、ウチには子供が居てね、その子は人間に近い形をしていて、人間の言葉も喋るんだよ」
怪人2「おおー!そうなのか?それで?」
カエル人間「うん、それでだね、その子が人間の学校に行きたいというからね、妻と一緒に学校にお願いに行ってみたんだよ」
怪人3「おーおー!それが上手く行けば、共存への第一歩だな?それでどうなった?」
カエル人間「所が」

***回想・学校で入学を断られたシーン***

カエル人間「という訳で、断られるわ、目の前で先生に泣かれるわで、どうしようもなかったんだよ」
期待が一気に落胆に変わる怪人達。
怪人1「ああー。やっぱりそうなっちゃうか。一体どうしたらいいんだべ」
みな肩を落とし、沈黙が流れる。そこへ一人の怪人が喋り始めた。
カニ人間「あのよー。みんな上手く行ってないみたいで、言い出しづらかったんだけど、実はオレん所は結構上手く行ってるんだぜ?」
怪人達「ええ?」
驚く怪人達。
怪人1「どういう事だ?詳しく聞かせてれ」
カニ人間「うん、実はこういう事があってな」

***回想・福島県
カニ人間が福島県のある地域を歩いている。
カニ人間N「人間との衝突に嫌気がさした俺は、人の居ない方へ逃げて行ったんだ。やがて俺は、福島県という所にたどり着いた」
触覚をピクピクさせる怪人。やがて黄色いドカンを見つけ喜ぶ。
カニ人間N「そうしたら、俺の、いや俺達の大好きな、放射性物質が入った缶を見つけてさ。それで俺は缶を開けて夢中で食べてたんだ」
ドラム缶を開けて放射性物質を食べるカニ怪人。
怪人達N「おおー!それでそれで?」
カニ人間N「うん、そうしたら」
防護服に身を包んだ原発作業員らしき2人が怪人の姿を見て驚く。
作業員「な、何だお前は!」
驚く怪人だが、身振り手振りで敵意は無いこと、ただ放射性物質を食べていた事を説明する。
作業員は目を見開いて驚くが、次の瞬間、2人で目を見合わせる。
作業員「これは、もしかしたら」
怪人に優しくしだす作業員達。不思議がる怪人。
***

カニ人間「俺は怒られるかと思ったんだが、2人とも急に優しくなったんだよ」
怪人達「うんうん、そしてどうなった」
カニ人間「うん、そしたら今度は、別な場所にもっと放射性物質があるから、好きなだけ食べていいっていうんだ」
怪人達「おおー!本当か?それでどうなった?」
カニ人間「うん、そしたらな、好きなだけ食べていいから、その代わり、体を調べさせてくれっていうんだよ」
怪人達「おーん?それで?」
カニ人間「それで調べさせたらこう言うんだ」

***回想・研究室
怪人の体を調べる防護服の男達。白衣に身を包んだ研究者がコンピューターの画面に表示された数値を見て確信する。
研究者「所長!思ったとおりです!この怪人には放射能を無害化する能力があります!」
ナレーション(藤岡弘)「解説しよう!怪人達には、放射能を無害化する力があったのだ!」
研究者「もしこの力を応用できれば」
所長「福島の原発事故問題は、一気に解決する!」
研究者「やった!やったぞ!」
喜び合う所長、研究者達。次の瞬間、所長が怪人の元へ駆け寄る。
所長「君!よかったらこれからもウチに来てくれないか?放射性物質は好きなだけ食べていい。それから、君達怪人のニュースは聞いているが、他の怪人達も放射性物質を食べるのかい?」
うなずく怪人。
所長「おー!そうか!それじゃあ君の友達も沢山連れてきてくれ!好きなだけ放射性物質を食べていい!ああ、それから、人間の世界で暮らすにはお金が居るだろう?お金もあげるから、ぜひ連れてきてくれ!頼んだよ!ははは!」
喜び合う所長、研究者、カニ人間。
***

カニ人間「という訳なんだよ」
怪人1「おおー!それはすごいな」
怪人2「好きなだけ放射性物質が食べられて」
カニ人間が札束を見せる。
怪人3「おほー!感謝されて、お金も貰える」
カエル人間「人間との共存の可能性が見えてきたな」
怪人1「そうだ!これを糸口に人間と仲良くなれば」
怪人2「カエル人間の子供だって学校に行けるかもしれないぞ」
カエル人間「うん。通訳にはウチの子供を連れて行こう」
怪人3「でかしたぞカニ人間!人間との共存の第一歩だ!」
カニ人間「えへへ」
怪人1「よーし!そうと決まれば!福島へ!」
怪人達「レッツゴー!」

●挿入歌シーン(爽やかな女性の歌)
ネコバス的な怪人の乗り物(未定)で福島へ移動。
風景を楽しみながら遠足気分。ケロ太も喜んでいる。
福島原発が近づいてくる。放射性廃棄物や処理水を入れたタンク等も見えてくる。
到着した怪人達を出迎える所長達。
放射性物質を美味しそうに食べる怪人達。
ケロ太には人間用のご馳走&お菓子が出され喜ぶ。
検査される怪人達。
検査結果に喜ぶ所長達。
札束が渡され、喜ぶ怪人達。
福島の海ではしゃぐ怪人達。
ケロ太も大喜び。

●研究所
研究所の一室で、所長、研究員らと、怪人達の話し合いが行われている。
所長「いやあ、君達の協力には本当に感謝している。研究の結果、君達、怪人の体には、放射能を無害化する能力が備わっている事が分かった。知っての通り、日本は原発事故に見舞われ、放射性廃棄物の問題に直面している。しかし、君達の能力を使えば、この問題が一気に解決するかもしれないんだ。どうか、日本、そして人類の為に、更なる研究に力を貸してくれないだろうか?この通りだ」
頭を下げる所長、研究員。怪人達は同意の素振りを見せ、カエル人間が代表のような形で、ケロ太と共に前にでる。
カエル人間「ケロ太、お前の晴れの舞台だ。しっかり訳せよ」
ケロ太「うん!」
そう言うと、カエル人間は怪人の言葉で話し始め、それをケロ太が人間語で訳し始めた。
カエル人間「ケーロケロケロケロ」
ケロ太「人間の皆さん、皆さん方が直面している問題、私達も理解致しました。私達も、この大地を綺麗にしたい、そして皆さん方と一緒に共存して行きたいのです。もしその為に、我々の能力が役に立つのなら、我々は協力を惜しみません。我々怪人は、この研究に全面協力致します!」
所長達「おおー!」
喜ぶ所長達、所長は怪人達に歩み寄り、カエル人間と握手、そしてケロ太とも握手する。
所長「ありがとう皆さん!そしてケロ太くん!これからもよろしく頼む!我々に出来ることがあれば何でも言ってくれ!」
喜ぶ怪人達。そしてカエル人間が切り出す。それを訳すケロ太。
カエル人間「ケーロケロケロ」
ケロ太「所長さん、協力はおまかせください、しかしその代わりと言ってはなんですが、実はお願いがあるのです。我々怪人は、人間達との共存を望んでいるのですが、見た目や、言葉の問題で、上手く溶け込めないのです。溶け込めない所か、最近は悪い噂もされはじめ、どんどん居場所が無くなってきているのです。我々はそういった誤解を解き、人間と共存したいのです。所長ほどのお方なら、この国の要人ともパイプがあると思います。どうか我々怪人が人間と共存できるよう、取り計らって頂けないでしょうか?」
真剣な表情でカエル人間言葉を訳すケロ太。しかし、その話を聞いた所長達は互いに顔を見合わせ、顔を曇らせる。
所長「君達の気持ちはよく分かった。しかし、現時点では、この研究は機密事項なんだ。だから当然、君達の放射能除去能力については秘密にしてもらいたいし、我々の研究に協力しているという事も秘密にしてもらいたいんだ。そして、非常に言い辛いのだが、君達の存在についてもだ。私も君達の存在がニュースになっている事は知っている。しかし、国は、現時点では、君達の存在を認めていない訳だ。そういう状況で、怪人達の力を借りて研究しているという事が世間に知れれば、この研究自体が潰されてしまう可能性だってあるんだ。今後、君達の扱いについて、事態が好転する可能性は無い訳では無いと思うんだ、ただ、現時点では秘密にしてほしい。今は何も出来ないが、どうか理解して欲しい」
予想外の返答に肩を落とす怪人達。そこへケロ太が堪らず抑えていた言葉を出す。
ケロ太「あの!話はわかりました!でも!僕!お願いがあるんです!僕!人間の子供と同じ学校に行きたいんです!それだけでも出来ないでしょうか?見た目だって殆ど変わらないし!それも無理ですか!」
驚く一同。しかし、所長が悲しそうな顔で答える。
所長「ケロ太くん、すまない。そういったお願いも、今は聞くことはできない。ただ、繰り返しになるが、今後、事態が好転しないとも限らない、そういう可能性はあると思っている。それまでは、どうか、黙って我々の研究に協力してもらえないだろうか?この通り、お願いする」
深々と頭を下げる所長達。期待が失望に変わり、涙をこぼすケロ太。カエル人間がケロ太の肩に手を乗せて話す。
カエル人間「ケーロケロケロ(ケロ太、訳せ)」
ケロ太が泣きながら訳す。
ケロ太「わかりました。その条件で大丈夫です。我々怪人は、人間達の研究に協力します!う、うぅ」
泣いているケロ太の肩に手を乗せ、頭を垂れる所長。うつむく一同。

●時間の経過を表す実景

●学校・放課後・職員室
放課後、帰る子供達。女の先生が机で何かの準備をしている。
男の先生「石神井先生!3時から大会議室で教職員研修!先に行ってるよ!」
女の先生(石神井ゆみ子)「あ!はい!私もすぐ行きます!」
先生が研修に行く準備をしていると、テレビのワイドショーから怪人の話題が流れる。

***テレビ画面・ワイドショー
司会「はい!次の話題はこちら!『怪人目撃情報の真相!市民反発の動き!』という事でございますが。えー、この番組でも何度か取り上げいるこちらの話題ですが、一時期に比べて、目撃情報が減ってきたように思うんですが、どうなんでしょう?」
コメンテーター男「はい、確かにですね、私も、目撃情報の報告は減っては来ているように感じます。しかし、それがですね、本当に数が減っているのか?それとも国民が慣れてきて報告が減ったのか?そこは定かではない所です。ただ確実なのは、怪人の目撃情報は確かに存在する。しかし、国は存在を認めていない。という事ですね」
司会「いやー、しかし不気味ですねえ、一部では戒厳令が出されているなんて話もありますけど。どうですか○○さん」
コメンテーター女「はい、私、前回、子供が心配って言ったでしょ?そうしたら賛同される方がいっぱい出てきちゃって。見てください、『怪人の魔の手から子供達を守ろう!』なんて市民運動が起き始めたんです!」
市民運動の映像が映し出される。
司会「えー!今こんなんなってんの?いやーまあ、子を思う親の気持ちって事なんでしょうけど。ただ、まだ被害の報告というのは無いんですよね?」
コメンテーター男「はい。まだそういった報告はありません。個人的な見解ですが、怪人達は争いを望んでいる訳ではないのではないか、と私は感じています。ただ、こういった運動でいたずらに刺激しますと、どうなるのか?その辺は心配をしております」
司会「ほら、○○さん。いたずらに刺激してはあきまへんねんて。ホンマ、石とか投げたらあきまへんで」
コメンテーター女「ちょっと!またその変なイメージ!やめてくださいよ!私はか弱いんですから。おほほ。ただ子供を守りましょう!って事ですよ!おほほ」
苦笑いするコメンテーター男。
司会「ははは。まあ冗談は置いときまして、こういった運動も起き始めておりますが、被害はまだないという事ですので、まあとにかく、いたずらに刺激はしないという事でお願いしたいと思います!石は投げたらあきまへん!」
コメンテーター女「ちょっとー!」
一同「あはは」
***

番組から何かを感じつつも、研修室へ急ぐ先生。

●研修室
研修の講師が、教職員に対して講義を行っている。
講師「はい、それでは研修を始めさせて頂きます。今日のテーマは『外国籍、及び、無国籍の子供に対する就学機会の提供』でございます」
そのテーマにハッとし、資料を眺めたり、意欲を見せる先生。
講師「みなさん御存知の通り、日本国憲法には、『教育』というものが規定されております。日本国民は等しく、『教育を受ける権利』と『教育を受けさせる義務』を有している、と書かれております。大変素晴らしい、世界に誇れる条文であると思います。しかし、条文にもある通り、これは日本国民に保障された権利でありまして、では、外国籍の子供が居た場合どうなるのか?という問題がございますね」
熱心に聞く先生。
講師「こちらは、憲法では明記されておりませんが、人道上、外国籍の子供にも就学の機会を与えようという事で、受け入れを行っている。というのが現状でございます。ただ、受入状況には地域差がございまして、当たり前のように、多国籍の子供を受け入れている学校もあれば、こちらのように、一人も居ないという学校もあります。そうしますと、言葉の問題もありまして、周知が上手く行かない、制度を知らず、学校に行かずに大きくなってしまう子供も出てきてしまう、という問題がありますね。これは非常に不幸な事でありますので、教職員の皆様に置かれましては、つねにアンテナを張ってですね、地域にそういう子が居ないか、気にかけて頂きたいと思います」
うなずく先生。
講師「さて次に、こちらは非常に特殊なケースなんですが、無戸籍の子供に対する教育です」
先生の表情が真剣になる。
講師「先日あるドキュメンタリー番組を見ました。30歳になるのに学校に行った事がなく、字もひらがな、カタカナしか書けない、そういう子が居るという事でしたが、原因は、無戸籍にあったという事ですね。この世に生は受けたものの、父親からのDVなど、何らかの理由で、出生を隠さなければならなかったとか、出生届を出さなかった、という方がいらっしゃるんですね。そうしますと、国としても存在を把握しておりませんから、教育、福祉、そういった行政サービスが全く届かない、行政サービスを受けられずに大きくなってしまう。そういう問題がある訳ですね。」
思い当たるフシがあるという感じの先生。
講師「こちらは非常に稀なケースではありますが、こういう子達にも教育を受けさせようという機運が高まっておりまして、現在、対応が始まっている所であります。問題がなければ、戸籍を取得させてあげてから、正規のルートで就学してもらう、というケースもあれば、先程申しました通り、DV等の問題もありますので、周りに知られないように就学させる、そういうケースもあります。とにかく、ケーズバイケースではありますが、無戸籍の子供にも就学の門戸は開かれている、という事でありますので、こちらも、地域にそういう子が居ないか、アンテナを張って、気にかけて頂きたいと思います」

***研修終わり

資料をしまいながら、ケロ太の事を思い出す先生。

***ケロ太の事件のフラッシュバック
教頭室。教頭にケロ太の一件を報告する先生。
教頭「怪人の親子が来た?ニュースでやってるあれか?やめてくれよ、学校にそんなゴタゴタを持ち込むのは。怪人の子供なんて受け入れられる訳ないだろう」
先生「はい」
教頭「とにかく、その一件は見なかった事にしといてくれ。また現れたらすぐに警察に通報。学校は関係ない。そういう方向で行くから、わかったね?」
先生「はい」
うつむく先生。
***

罪悪感を感じつつ、資料をしまう先生。

●廊下
研修内容やケロ太の事を考え、ややうつむきながら廊下を歩く先生。窓からふと校庭を眺めると、子供達が遊んでいる。そこへ校門の外から、やや雰囲気の違う子が入ってきたのが見える。ケロ太だ。その姿に驚きつつも眺める先生。ケロ太は子供達の仲間に入ろうとする。しかし、何か雰囲気がおかしい。子供達はケロ太を取り囲み、何か言葉を浴びせている。次の瞬間、ガキ大将らしき少年が、ケロ太にボールをぶつけた。すると他の子達も次々にケロ太にボールをぶつけ始めた。困惑するケロ太。
先生「あっ!」
これはイジメだ。そう判断した先生は急いで現場へ向かった。

●校庭
イジメの現場に駆けつける先生。ケロ太はもういない。
先生「あなた達!いま何してたの!」
問い詰める先生。バツが悪そうな子供達。
ガキ大将「怪人の子供が入ってきてさ、俺達の遊びを邪魔しようとしたんだよ」
この子は嘘をついている。そう思った先生は他の子にも尋ねる。
先生「本当なの?あなたはどういう風に思ったの?」
バツが悪そうに真面目そうな子が答える。
子供「あの子は邪魔はしなかったと思います。ただ、みんなでボールをぶつける感じになっちゃって」
その言葉を聞いて先生が怒る。
先生「君達!そういう事をしちゃダメだっていつも教えてるでしょ!何で仲良く出来ないの!」
その言葉にガキ大将が本音を言う。
ガキ大将「だってあいつ怪人の子供だろ!いまニュースでやってるじゃん!人間を襲うかもしれないって!親からも近づくなって言われてるんだ!だから学校に入ってくるなって言ってやったんだ!何が悪いんですか!」
開き直るガキ大将。
先生「そ、それは」
言葉を失う先生。
***自分もケロ太を拒絶した事がフラッシュバック***
うつむく先生。
ガキ大将「ちぇ!もう行こうぜ!」
去っていく子供達。視線を上げる先生。少し歩いてからガキ大将が振り向き言う。
ガキ大将「俺達は悪くないもん!」
再びうつむく先生。そしてケロ太が去ったであろう校門の方を遠く眺める。

●街中
カエル人間がどこかへ向かい急ぎ足で歩いている。
途中、怪人に対する反対運動を目にする。
『怪人の魔の手、ついに学校へ?子供達、涙の証言!』と書かれた雑誌広告。
『怪人の魔の手から子供達を守ろう!』といった垂れ幕を持った人達。
『怪人問題の真相究明!早期解決!』をスローガンに街頭演説する政治家候補。
それらに視線を送りながら、隠れるように、急ぎ足で目的地へ向かうカエル人間。

●集会場
集会場の中で怪人達が会議をしている。
怪人1「さて、会議を始めよう。まず、人間達の原子力災害に対する研究協力の件だが、こちらは上手く行っている。我々はご馳走を頂く事ができて、さらに、人間界で使えるお金も手に入れる事ができている。貯金もかなり出来た。いざ、何か必要な時には、これが役立つだろう。しかしだ」
怪人2「うーむ。これがキッカケで人間界に溶け込めるかと思いきや、この実験は機密事項だと。せっかく人間界の役に立ってるのに、俺たちゃ相変わらず日陰の存在だ。これじゃあ全然おもしろくねえ」
怪人3「ああ、それだけならまだ良いが、今度は反対運動が起きちまった。『怪人の魔の手から子供達を守れ!』だと?俺たちゃ子供なんか襲っちゃいねえ。それなのに何でこんな事言われなきゃならねえんだ!俺はもう我慢の限界だぞ!」
怪人1「まあ待て。カエル人間、お前の所はどうだ」
カエル人間「ああ、実は」
カエル人間は、この話を出すべきか迷う素振りを見せながら、話し始めた。
カエル人間「ケロ太が学校で、人間の子供達にいじめられたようなんだ」
怪人達「なに!」

***回想・カエル人間の家
学校でいじめられたケロ太が泣きながら帰ってくる。心配して声をかけるカエル人間。
カエル人間「どうした?ケロ太?何があった?」
ケロ太は、父親には話したくないという素振りで、自分の部屋に閉じこもってしまう。
ケロ子が、ここはまかせて、という素振りで、ケロ太の部屋に行く。
ケロ太に優しく声をかけるケロ子。
ケロ子「どうしたの?ケロ太?何かあったの?」
ケロ太はうつむいて何も話さない。
ケロ子「お母さんはあなたの味方よ?何でも話してちょうだい?」
ケロ太の表情が少し柔らかくなる。
ケロ子「もしかして、人間の子供にいじめられたの?」
その言葉を聞くやいなや、ケロ太のこらえていた涙が溢れ出す。
ケロ太「うわーん!おかあさん!僕はどうして人間の子じゃないの!どうして怪人の子なの!こんな尻尾いらないよ!僕も普通の人間の子になって!普通に学校に行って!勉強して!遊びたいだけなのに!何で僕はできないの!何でみんなは僕をいじめるの!うわーん!」
泣きじゃくるケロ太。かける言葉が見つからず、ただケロ太を抱き寄せて頭を撫でるケロ子。
その様子を部屋の入り口の所で見て立ち尽くすカエル人間。
***回想終わり

カエル人間「という訳なんだ」
それを聞いた怪人達が憤る。
怪人3「俺はもう許せねえぞ!ケロ太にまで手を出しやがって!もう共存なんか無理だ!やっぱり人間達をぶっ殺して!世界征服するしかねえ!」
それを聞いたリーダー格の怪人がなだめる。
怪人1「まあまて、まて。まだ関係が壊れたわけじゃない。一方で上手く行っている関係もあるのだ。ここでぶち壊しにしてはならない。カエル人間だって抑えているのだ。ここは我慢しろ」
怪人3「う、うーん」
諭されておとなしくなる怪人。
怪人2「しかしよう、今のままじゃ、ただ利用されて、日陰のままで、ケロ太もいじめられて、ひどい扱いだぜ。俺達怪人には、人権ってものがねえのかよ?元は人間だぞ、俺達は?俺達にも、人権をよこせー!なんつってな。ははは」
その言葉に一同がハッとする。
怪人1「そうだ、俺達は元は人間だ。そこを分かってもらえれば、共存できるんじゃないだろうか?」
怪人2「うーん?でも、分かってもらうって、どうするんだ?」
カエル人間「権利は、勝ち取るんだよ」
怪人3「勝ち取る?じゃあやっぱり全面戦争だな?人間達をぶち殺して」
カエル人間「いやそうじゃない。人間には人間のやり方があるんだ。殺し合いじゃない、平和的な物事の決め方。それが選挙だ。俺達怪人の人権を認めてほしい。ケロ太も学校に行かせて欲しい。選挙でそう訴えるんだ」
怪人2「うーん、選挙か?しかしよう。俺達怪人が選挙に出れるのか?いくら元は人間だって主張したって、それは無理なんじゃねえか?なあ?無理だろ?」
怪人3「無理だな」
怪人1「残念だが、その可能性は」
カエル人間「う、うーん」
落胆する怪人達。そこへ突然、光の柱が立ち上り、女神が現れた。
女神「怪人達よ、久しぶりですね?頑張っていますか?」
怪人達「えー!め、女神様!あ、あの、今、がんばってやってるんですがね、あの、あの」
突然の出来事にシドロモドロになる怪人達。それを見て女神。
女神「大丈夫です。みなまで言わずともわかっています。お前達、選挙に出たいのでしょう?」
怪人達「え?そ、それは、そうなんですが、そんなの無理ですよねえ?やっぱり?ねえ?」
女神「大丈夫です。お前達をこの世界に現実化した時、このような展開になる事も予想して、選挙に出れるようにしておきました!」
怪人達「ええー!」
ナレーション(藤岡弘)「解説しよう!女神に抜かりはなかったのだ!」
女神「選挙出るのに必要なのは、1に立候補届出書類、これは各自作ってね。2に供託金、これは研究協力でもらったお金があるから大丈夫ね。最後に、日本国民である証明の戸籍なんだけど、これは、あなた達を現実化する時に作っておいたわ!」
怪人達「えええー!」
***戸籍の画像***
ナレーション(藤岡弘)「解説しよう!怪人達が現実化する際、改造される前の人間の時の戸籍も同時に現実化されたのだ!女神に抜かりはなかったのだ!」
女神「みんな、改造される前の人間の時の名前を覚えているでしょう?その事を伝えて、元は人間なので、立候補させてください!といえば、出来るはずだから」
怪人達「えええー!そ、そんなバカな!」
女神「バカとは何よ!私は女神ですよ?抜かりはありません!」
ナレーション(藤岡弘)「しつこいようだが解説しよう!女神に抜かりは無いのだー!」
怪人達「は、はあ」
急な展開に言葉を失う怪人達。
女神「とにかく!人間達との共存まであと一歩です!怪人達の人権をかけて戦うのです!平和的に!それではがんばりなさい!選挙へゴー!」
そういうと、女神は光の中に消え去った。残された怪人達は呆然としていた。

●テレビ画面・国会中継
国会が今まさに解散されようとしている。
議長「ただいま内閣総理大臣から、詔書が発せられた旨伝えられましたから、朗読いたします。日本国憲法第七条により、衆議院を解散する」
議員達「バンザーイ!バンザーイ!」
深々とお辞儀をする総理大臣。

●ワイドショー
ワイドショーが国会解散を伝えている。
司会「いやー、このタイミングでの衆議院解散の一報が飛び込んで来ましたが、どうですか?」
コメンテーター男「はい。やはりウィルス対策の遅れによる支持率の低下が一番の原因でしょう。そこで、野党の選挙準備が整う前に先手を打ったという事でしょう」
司会「なるほどねー。しかしそうなると、次も与党圧勝。となると、次の総理が気になる所ですが、どうですか?」
コメンテーター女「はい、私はね、やっぱりクリーンな候補が一番だと思うの。あと若くてね、カッコイイ人が良いわね。気持ち悪い人は嫌!」
司会「あんた!どの顔が言うとんねん!」
コメンテーター女「え!ちょっと何ですか!また私の事そうやって!」
一同爆笑。
司会「はい!とにかく衆議院が解散されました!これから総選挙に突入します!」
コメンテーター女「ちょっとー!」

●カエル人間の自宅
カエル人間宅で家族会議が開かれている。
カエル人間「ケロ子、ケロ太、色々あったが、この戦いで全てが決まる。我々怪人にも人権があるのだという事を人間に認めさせ、共存出来る社会を作るのだ」
うなずく家族。
カエル人間「ケロ太、学校では辛い思いもあったかもしれないが、この戦いに勝って、必ず、お前が楽しく学校に行けるような社会を作るからな」
喜ぶケロ太。
カエル人間「ケロ太、その為にはお前の力が必要だ。私の言葉を、しっかりと訳すんだぞ!」
喜ぶケロ太の表情に、勇ましさが加わる。
ケロ太「はい!お父さん!人間達に、僕達の気持ちが分かってもらえるよう、僕がしっかり訳します!」
勇ましく成長したケロ太の姿に、嬉しくも涙ぐむケロ子。
カエル人間「よし!いざ出陣だ!我々怪人の人権を勝ち取るぞ!」
一同「おー!」

●立候補届出会場
総選挙公示日。立候補届出書類を持参したカエル人間に、担当者が困惑しながら応対する。
職員「えーと、つまり、あなたは今、カエル人間だが、元は人間なので、立候補を認めて欲しい、という事ですね?」
うなずくカエル人間。ケロ太が元気に答える。
ケロ太「はい!その通りです!よろしくお願いします!」
職員「えー、今確認しますので、少々お待ちください」

***別室
別室で職員らが協議している。
職員1「いやあ、前代未聞だよこんなの。怪人が立候補だなんて。どうしたらいいんだ?」
職員2「ああ、しかし、書類は全部そろっちゃってるんだよなあ。立候補届出書、宣誓書、供託金納付書、そして、戸籍抄本」
職員1「そこだよ、戸籍抄本。見た目は怪人だけど、元は人間なんだって。そんな事、信じられるか?」
職員2「うーん、しかし、口頭試問していくと、バッチリ戸籍通り。本人しか知らないような事を答えてくるんだよなあ」
職員1「うーん、やっぱり本人なのかなあ。こりゃあ、俺達じゃ判断つかないぜ。困ったなあ、全く」
狼狽する職員達。そこへ別の職員が飛び込んでくる。
職員3「来ました!総務省からの通達が来ました!」
職員達「お!どうなった」
職員3「今、全国で同じような怪人達の立候補届出が出されていて、総務省も頭を悩ませていたようなのですが、結論としては、立候補を認めるように、との通達です!」
職員達「なにー!」
職員3「つまり、書類は整っている、供託金も支払った、後は本人確認という事ですが、総務省は怪我をした人の例を出されまして」
職員達「は?」
職員3「例えば、何らかの事故にあい、外見が全く変わってしまった人も居るかもしれません。しかし、それでもその人に変わりは無いわけです。同様に、悪の組織か何かに改造されて、外見が変わってしまっても、元の人である事に代わりはないだろうと」
職員達「はあ」
職員3「まあとにかく!今後法整備されるかもしれませんが、そこは政治家の仕事で、現時点では、行政側としては認めざるを得ないだろう、との通達でした!」
聞いていた職員たちがため息をつき顔を見合わせる。
職員達「はあ」
***

***会場・届出書類のアップ***
届出書に『立候補許可』の印が押される。目を丸くして喜ぶケロ太。
職員「それでは、届出書類を受理致します。ご検討をお祈り致します」
喜び、目を見合わせるカエル人間とケロ太。
ケロ太「ありがとうございます!あの!もうポスターとか貼っていいんですか!」
職員「ご自由に、選挙活動して頂いて結構です」
ケロ太「やったー!」
喜び、選挙活動に向かうカエル人間家族。疲れた様子で眺める職員達。

●街中
ニュースレポーターが選挙戦について報じている。
レポーター「さあ、公示日を迎えました総選挙。各陣営、第一声から熱い訴えを行っております!掲示板にはこのように、早くも全ての陣営のポスターが張り出され」
そこへケロ太がポスターを抱えて走ってくる!
ケロ太「あ!すみません!僕達も出てまーす!清き一票を、よろしくお願いしまーす!」
ケロ太はそう言いなが素早くポスターを貼り、次の掲示板へと掛けていった。
呆然とするレポーター。カメラが掲示板を映すと、人間の候補者の中に一人だけカエル人間という異様な光景。

●学校・職員室
昼休み。職員室でテレビを見ていた先生は、ケロ太が写り驚く。
先生「え?ケロ太くん?!選挙?え?ケロ太くんのお父さんが?立候補?えー!」
驚くとともに、居ても立っても居られないという素振りで外に駆け出す先生。

●街中
ポスター貼りをしているケロ太を見つけた先生が走り寄る。
先生「ケロ太くん!」
ケロ太「あ!先生!」
先生「ケロ太くん、この前はごめんね。先生、勉強不足だったわ。でもね、よく調べたら、ケロ太くんも学校に行けるかもしれないの。だから、もうちょっと時間がかかるかもしれないけど、待ってて?ね?」
ケロ太「本当ですか!ありがとうございます!あ!でも!僕のお父さんが当選しても、学校に行けるようになるかもしれないんです!だから、先生!協力してくれますか!」
先生「え?うん!先生何でもするわ!このポスターを貼れば良いのね?一緒にがんばりましょう!」
ケロ太「はい!よろしくお願いします!」
一緒にポスター貼りをする2人。

●街中
次期総理確実と言われる候補が街頭演説をしている。
総理候補(大泉純三郎)「有権者の皆さん!出しましょう!この街から!次の総理!長年、皆様のお力で支えて頂きましたが、今回、ようやく総理の座が見えてきました!この戦いに勝って!やりましょう!この街から!ネクスト総理!よろしくお願いします!」
熱狂する支持者達。そこへカエル人間の陣営が演説を始める。
カエル人間「ケーロケロケロケロ!ケロ!ケロロロロ!」
何事かとみなが一斉に目を向ける。
カエル人間「ケロ!ケロ!ケロケロケロケロ!」
ケロ太「有権者の皆さん!僕達は、怪人達の人権をかけて戦っています!怪人だって元は人間です!普通に暮らしたいし、僕だって学校に行きたいのです!皆さんの清き一票を、よろしくお願いします!」
異様な光景に絶句する聴衆。次の瞬間、総理候補陣営のスタッフが、俺達の場所だとケロ太達に因縁をつける。それに同調する総理候補の支持者達に押され、退散するカエル人間陣営。呆然とそれを見つめる総理候補。

●政見放送
テレビから次期総理候補の政見放送が流れている。
総理候補「という訳で、ウィルス対策を、まずは一丁目一番地と定め、解決に取り組みます!同時に、収入が減った方への手厚い保障!国民お一人あたり20万円の給付をお約束致します!国民の生命と財産を守る!がんばります!私、大泉純三郎への、清き一票をお願いいたします!」

***テレビを見る色々な家庭の映像。概ね好評***

次にカエル人間の政見放送が始まる。
カエル人間「ケーロ!ケロケロケロ!ケロ!ケーロー!」
***お茶を吹き出したり、唖然とするテレビの前の人々***
※以下、ケロ太の通訳。
ケロ太「国民の皆様。はじめまして、私は怪人カエル人間です。私はこの度、怪人達の人権を訴えるべく、立候補致しました。皆さんご存知の通り、怪人は、特撮ヒーローに出てくる空想の生物です。しかし、ある時、女神様の力により、現実世界に、本当に生を受けたのです」
***唖然とするテレビの前の人々***
ケロ太「女神様はこうおっしゃいました。特撮で怪人を殺め続ける人間に、考えを改めさせなければならないと。しかし一方で、我々怪人には、復讐や世界征服でなく、人間との共存を目指しなさいと。こうおっしゃいました」
***興味を持ち、話を聞こうとするテレビの前の人々***
ケロ太「しかし、そこからが、我々の苦難の道でした。見た目で怖がられ、言葉も通じず、コミュニケーションが取れない。するとやがて、怪人は子供を襲うのではないかという根も葉もない噂が流れ始め、我々は迫害されるようになったのです」
***話に引き込まれるテレビの前の人々***
ケロ太「みなさん、このケロ太を見てください。私の子です。怪人の子です。殆ど人間と変わらぬ容姿に生まれました。しかし、学校にも行けていないのです。ある時は、人間の子供にいじめられて帰ってきました。この子が一体何をしたというのでしょうか?」
泣き始めるケロ太。
***真剣に聞き入るテレビの前の人々***
言葉がケロ太のものになり始める。
ケロ太「みなさん、どうか信じてください。私達怪人は、人間に対して危害を加える事は致しません。ただ、皆と一緒に仲良く暮らしたいだけです。一緒に働いたり、学校に行ったりしたいんです!うわーん!」
ケロ太の感情が高ぶる。
ケロ太「何で僕だけ学校に行けないんですか!何にも悪い事してないのに!誰にお願いしたら僕は学校に行けるんですか!うわーん!」
***ケロ太の訴えに涙するテレビの前の人々。石神井先生も涙。ケロ太をいじめた子供達も反省の色。***
ケロ太を落ち着かせるカエル人間。何とか自分を取り戻すケロ太。
ケロ太「すみませんでした。私達怪人は、人間の為に協力を惜しみません。今は詳しく言えませんが、皆さんが直面している問題に対して、協力も行っています」
***テレビを見る原子力災害研究所の人々***
ケロ太「また、特撮の撮影現場で見た、パワハラやセクハラ、偽装請負など、労働問題にも取り組んで行きたいと思っています」
***テレビの向こうで宝映監督がコーヒーを吹き出し、プロデューサーと目を見合わせる***
ケロ太「みなさん!どうか信じてください!私達怪人は皆さんと共存したいのです!その為には、如何なる努力も惜しみません!どうか、私達に人権を与えてください!清き一票をよろしくお願いします!うわーん!」
政見放送終わり。様々な反応のテレビの前の人々。感動の涙を流す人も多数。

***総理候補陣営事務所
次期総理候補と秘書が政見放送を見ている。ケロ太の演説に危機感を覚えた秘書が選挙管理委員会に電話する。
秘書「今、怪人の政見放送たんだが!合法なのかあれは!子供が選挙活動してるのも違反じゃないのか!なに!選挙法には怪人の子供についての規定がない?そういう話じゃ、あーもう!話にならん!」
電話を切り、頭を抱える秘書。何かを思う総理候補。
***

泣いているケロ太を抱きしめるケロ子。ケロ太を褒めるカエル人間。

●選挙戦風景
各陣営の選挙戦風景。人々の声。怪人への支持の高まりも感じさせる中、選挙戦が終わった。

●投票場
投票日。投票をする人々の姿。

●集会場
投票が締め切られた。怪人達は開票速報をテレビで見ようと集まっている。
ケロ太「何票ぐらい入るかな?」
怪人達「うーん」
選挙戦を通じて、怪人達は手応えのなさを感じていた。しかし、ケロ太だけはまだ期待している。
ケロ太「あ!はじまったよ!」

***テレビ画面
アナウンサー「さあ、投票が締め切られました。事前の調査や出口調査から導き出した選挙結果はこちらです!与党圧勝です!」
***

ケロ太「あー。やっぱりダメかなあ。一人でも受かると良いんだけど」
怪人達「うーん」
肩を落とす怪人達。

***テレビ画面
アナウンサー「続いて、各選挙区の状況です」
その言葉に続いて、次々に各選挙区の状況が映し出される。
東京1区「○○ 15万票 当確」「△△ 10万票」「XX 5万票」「カニ人間 52票」
東京2区「○○ 13万票 当確」「△△ 8万票」「XX 3万票」「イカ人間 36票」
全く勝負にならない選挙結果。怪人達だけ2ケタが続く。
***

ケロ太「あー!全然ダメだー!」
現実を突きつけられ落ち込む怪人達。

***テレビ画面
アナウンサー「次に、東京9区です」
***

ケロ太「あ!お父さんの所だよ!どうかな!」

***テレビ画面
東京9区「大泉純三郎 20万票 当確」「△△ 5万票」「XX 2万票」「カエル人間 95票」
***

ケロ太「あー!お父さんもダメだー」

***テレビ画面・大泉が勝利の弁を述べている***

テレビ画面を見ながら涙をこぼすケロ太。
お通夜状態の中。残酷に怪人達の惨敗が告げられていく。

***時間経過
先生、原子力研究所の人達など、関係のあった人達もテレビを見ながら複雑な表情。
***

全ての開票結果の確定を待つまでもなく、怪人達は全員が落選した事を悟り、お通夜状態。
重い空気の中、一人の怪人が話し始める。
怪人1「完全に惨敗だな」
怪人2「ああ、惨敗だ。やっぱり選挙なんて無理だったんだ」
怪人3「これから俺達は、どうしたら良いんだべ」
長い沈黙。
カエル人間「こうなったらもう、人里を離れて、山奥で暮らすしかないんじゃないか。はは」
自嘲気味に言ったカエル人間だったが、涙が溢れ出す。
カエル人間「はは、は。う、うう、ううう」
カエル人間の涙を見て、他の怪人も、ケロ子も、ケロ太も、堪えていたものが切れたように泣き出してしまう。
怪人達「う、ううう、うわーん」

●首相官邸
大泉純三郎が首相就任し、大泉内閣が発足。大臣達の記念撮影が行われている。
マスコミ向けのお披露目が終わり、非公開の閣僚会議が開かれている。
大泉総理「それでは、大泉内閣の骨太の方針に従い、スピード感を持って、国政運営して参りたいと思います。国民の付託に答えるべく、頑張ってまいりましょう」
主要な議題は終わり、後はそれ以外に何かあればといった雰囲気。
大泉総理「それでは、他にみなさんから何かありますでしょうか?」
復興大臣「総理、復興庁からでございますが、こういった報告がございました」
大臣達に『怪人の持つ放射能無害化能力について』と題された資料が配られる。驚く大臣達。説明する復興大臣。
***研究所の所長達が何度も復興大臣に頭を下げ、研究の許可をお願いするような映像***
真剣に話を聞く総理。復興大臣の話が終わり、うなずきながら何かを考える総理。
次に何かないか尋ねると、文部科学大臣が手を挙げる。
大臣達に『無戸籍児童への教育機会提供の拡大について』と書かれた資料が配られる。資料にはケロ太の写真が載っており、みな、あーこの子かという表情。文部科学大臣が説明を始める。
***石神井先生が資料を手に、教頭、校長に頭を下げ、ケロ太が学校に来れるようにお願いしている映像。(※追加で挿入検討。石神井先生、教頭、校長が、ある若い議員らしき人物(顔は見せない)に説明しているような映像)***
うなずく大臣達。話し合いが続けられる。

●街を見下ろせる丘
怪人達が、山奥へ出発するネコバス的な乗り物に乗る前に、丘から街を眺めている。
怪人1「あーあ。俺達の戦いは、結局何だったんだろうな」
怪人2「女神様に言われて、人間達と共存しようと頑張ったんだけどなあ」
怪人3「でも、人間の方が嫌だって言うんじゃ、しょうがねえよ」
ある怪人が天に向かって叫ぶ。
怪人2「女神様ー!これもあなたの計算通りなんですかー!俺たちゃもう、諦めて行っちまいますよ!」
返事はない。
怪人達「はあ」
複雑な表情で街を見ているケロ太の肩に手を乗せ、カエル人間が話しかける。
カエル人間「ケロ太、今回の事はすまなかったな。せめてお前だけでも学校に行かせたかったんだが」
その言葉を聞き、堪えていたケロ太の涙が溢れ出す。
カエル人間「ケロ太、泣くな。お前の将来の事はちゃんと考える。今は我慢しろ。強くなるんだ」
ケロ太に寄り添うケロ子。ケロ太は歯を食いしばるように涙を堪え、強くなろうという表情を見せうなずく。
ケロ太「うん」
カエル人間「よし、じゃあそろそろ行こうか」
バスに乗り込む怪人達。ケロ太は最後まで街を見ていたが、踵を返しバスに乗り込んだ。

●バス車内
バスは街を離れ、海沿いを走り、やがて山の中へ。
怪人1「みんな、もう落ち込むのはやめにしようぜ、どうせなら楽しく行こう」
怪人2「そうだな、遠足みたいなもんだよ、楽しもうぜ」
怪人3「じゃあ、歌でも歌うか?サンハイ!」
怪人達「丘を超えゆこうよー♪口笛吹きつーつー♪」
一瞬盛り上がる車内。しかし歌が終わるとまた暗くなる。
怪人1「はあ。やっぱりダメだな。運転手、ラジオでもつけて陽気な歌でもかけてくれよ」
そう言うと、運転手の怪人がラジオのスイッチを入れ、ザッピングし始める。様々な番組の中、ある声が聞こえる。
人の声(ラジオ)「それでは、怪人達との共存、怪人の人権について、質問いたします」
ザワつく車内。
怪人達「ん?何だ今の番組?怪人て言ってたな?もう一回かけてくれ!」
慌ててチューニングを戻す運転手。やがてさっきの番組、国会中継が流れ始めた。

***国会・予算委員会
国会の予算委員会で、野党の新人議員、稲垣千尋が大泉総理に質問している。
稲垣千尋「それでは、怪人達との共存、怪人の人権について、質問いたします」
議員達がザワつく。ヤジも飛ぶが、稲垣は質問を続ける。
稲垣千尋「昨今、世間を賑わせております、怪人問題ですが、SNSでの報告例が相次ぎ、ワイドショーでも取り上げられ、その存在の真偽が、国民の注目の的となっておりました。しかし、政府は、怪人の存在を一切認めない。そういう姿勢を貫いて来た訳です。しかしながら、先の選挙戦におきまして、怪人達本人が立候補するという事態が起こったわけです。これはもう、存在を認めない訳には行かないのでは無いでしょうか?彼らの主張を聞くと、人間との共存を望んでいる訳です。容姿は変わってしまいましたが、彼らは元は人間だった訳です。彼らの人権を認めてあげるべきではないでしょうか?」
総理は目をつぶり話を聞いている。続ける稲垣千尋。
稲垣千尋「また、怪人の子供とされる子も、人間とほぼ同じ容姿を持ちながら、学校に行けていない訳です。私もこの子供が現れたという学校に行き、先生方に話を聞いてきましたが、学校としても、就学をさせてやりたい、そういう考えでございました。この子についても、就学を認めてあげる事はできないでしょうか?怪人達との共存、怪人の人権について、総理の見解をお尋ねします」
ザワつく議員達を委員長が制止する。そして総理が指名される。
***

怪人達「いったい何て答えるんだろうな?」
怪人達「シーッ!静かに」
ラジオに聞き耳を立てる怪人達。

***国会・予算委員会
ザワつきが収まるまで待った大泉総理。そして静寂の中、話し始める。
大泉総理「えー、お尋ねの、怪人達との共存、怪人の人権について、答弁いたします。議員のおっしゃる通り、これまで、政府は、国民の皆様から、怪人の目撃報告を受けながら、公にはその存在を認めておりませんでした。これは、その存在を隠す、無視する、そういった意図があった訳ではございません。政府として、混乱を抑え、きちんと情報集してから発表すべきだ、そう考えていたからです。そして、その調査結果や、先の選挙戦での訴え等踏まえて、政府としても方針を決定致しましたので、ここで発表させて頂きます。日本国政府は、怪人の存在を公に認めます。また、彼らが改造前は国民であった事を踏まえ、彼らに日本国民と変わらない人権が存在する事を認めます」
驚きの声が上がる国会。
***

怪人達「オオー!聞いたかオイ!」
怪人達「スゲーな!やったぞオイ!」
歓喜する怪人達。

***国会・予算委員会
総理が続ける。
大泉総理「当然、彼らが、我々人間と共存して行く中で、様々な障害が存在する事は承知しております。それに対し政府は、しっかりとサポートしていく事をお約束します」
驚きの声が上がる国会。
***

怪人達「ウオー!スゲーなオイ!」
怪人達「奇跡だぞコリャ!」
さらに歓喜する怪人達。

***国会・予算委員会
総理が続ける。
大泉総理「そして、彼らのお子さんの件ですが、私も彼の政見放送を見まして、心を打たれました。ケロ太くん、だったかな?彼が普通の子と同じように学校に行けるよう、政府としても、全面的にサポートしていきたいと考えております!」
驚きの声が上がる国会。笑顔の稲垣議員。
***

怪人達「ウオー!やったなケロ太!お前!学校に行けるぞ!」
ケロ太「うん!やった!みんなありがとう!」
怪人達「何言ってんだ!お前の政見放送があったからだろ!」
怪人達「俺達に人権がもらえたのも、お前のおかげだ!ありがとうケロ太!よくやった!」
泣き出すケロ太。
ケロ太「うわーん!ありがとうー!」
カエル人間「やったなケロ!学校に行ってしっかり勉強するんだぞ!」
ケロ太「うん!わかった!」
ケロ子「ケロ太、あなたこそ、私達と人間との平和の架け橋よ」
ケロ太「うわーん!おかあさーん!ありがとうー!」
喜び、涙する怪人達。その姿をバックミラーで見ながら、進路を街へ戻すドライバー。
街へ戻っていく怪人達を乗せたバス。

(ここから感動的なBGMに乗せたエンディングシーンの連続)
●学校
全校集会で校長先生からケロ太に入学許可が渡される。
いじめっ子も壇上に上げ、ケロ太に謝らせた上で仲直りさせる。

●テレビ画面
新番組『愛の戦隊ラブレンジャー』が始まる。
前回イエローだった子がリーダーになり、レッド、ブルーは男だがスカートっぽいヒラヒラが付いている。
ナレーション(藤岡弘)の口調も女の子っぽくなる。
カエル人間が敵として登場するが、ラブレンジャーのラブビームにより、良いカエル人間になり、友達になる。

●宝映
改心してラブレンジャーを作った宝映監督、プロデューサーが、番組を見てニコニコしている。

●学校
翌日、父親のカエル人間がラブレンジャーに出ていた事が話題になり、人気者になるケロ太。
それを嬉しそうに眺める先生達。

●車
福島原発に向かう大泉総理。

●原子力災害研究所
研究現場を視察し、怪人達、カエル人間と握手をする大泉総理。

●テレビ画面
ワイドショーで『怪人と人類の友好、ますます前進へ』の話題。

●宝映・屋上
宝映の屋上から街を見下ろす女神。
街では怪人達が人間と仲良くしている。
それを見て微笑む女神。そして姿がスーっと消えていく。
宝映屋上からの町並み。皆の笑い声が響く。

<終>

●エンドロール

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