寿司屋の撮り鉄 コメディ

回転寿司店のマグロ祭りにやってきたゆうすけ青年。 しかし鉄火巻きをいただこうとした瞬間、カメラを持った謎の男に阻止される。 "鉄火"を"撮"る「撮り鉄」を自称するその男によって、ゆうすけのマグロ祭りは台無しに……。
苺ペンデュラムの作品置き場 40 0 0 09/15
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

【登場人物】
西田ゆうすけ(20) 無職
撮り鉄(25) 本名佐々木。

智也(20) ゆうすけの友達
ゆうすけの母
撮り鉄の仲間

○ゆうすけの部屋
   脱い ...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

【登場人物】
西田ゆうすけ(20) 無職
撮り鉄(25) 本名佐々木。

智也(20) ゆうすけの友達
ゆうすけの母
撮り鉄の仲間

○ゆうすけの部屋
   脱いだ服等が散らかった部屋。
   ゆうすけ(20)、ゲーム中。
ゆうすけ「(ボタン押しながら)オラッ! 死ね!」
   ゆうすけの母が部屋の扉を開ける。
母「ハァー……ゆうちゃんさあ、そのゲームしながら暴言吐くのやめてもらえる?」
ゆうすけ「うっせ」
母「日に日に口が悪くなっていくようで心配だよ」
ゆうすけ「はいはいすいませんでした」
母「仕事も一向に決まらないんでしょう?」
ゆうすけ「どーせ俺にできる仕事なんかありませーんよ」
母「まあまあそういわずに。ね、明日時間ある? あたしの友達にお店やってる人がいるんだけど、ゆうちゃんが使えそうなら店員として迎え入れようかって」
ゆうすけ「バーカ。明日は寿司屋のマグロ祭り行くから予定カツカツだっつーの」
母「~! あっそ! もう知らない!」
   母、扉を閉める。
ゆうすけM「そう、楽しみにしていたマグロ祭り。家にいても寿司なんかでやしないから、明日は一人で外食しに行くのだ。これは一大イベントだ」

○道
   歩行中のゆうすけ。
智也(20)が向かいからくる。
   ゆうすけは気付かず歩くが、智也は立ち止まる。
智也「……ゆうすけ?」
ゆうすけ「(立ち止まり)? ……ぉぉお智也じゃん久しぶり!」
智也「久しぶりだな~! 卒業式以来?」
ゆうすけ「まあね」
智也「直樹から家事手伝いやってるって聞いたぞ」
ゆうすけ「(マジトーンで)は? カジテツじゃないですけど。公務員やらせてもらってます公務員!」
智也「え、そうだったんだ。すまん」
ゆうすけ「そういうお前は?」
智也「俺は靴屋さんだけど……。あ、これから何しに行くん?」
ゆうすけ「寿司屋。マグロ祭りやってるみたいだからさ」
智也「あー寿司屋! いいなー」
ゆうすけ「じゃ、マグロが待ってるんで」
智也「おう、元気でなー」
   再び歩き始めるゆうすけ。
ゆうすけM「あっぶね~、公務員ってワードが咄嗟に出てきてよかったわ。今度からこの設定で行こう」

○回転寿司店・外観
   マグロ祭り開催中!の看板

○回転寿司店・内
   店内の時計は三時ごろ、空いた店内のボックス席に座るゆうすけ。
ゆうすけM「さーてさてさてやってきましたマグロ祭り。マグロ関連が全品100円だもんね。今日はマグロだけを食べて帰るぞ」
   レーン上、赤身が流れてくる。
ゆうすけM「まずはマグロの赤身、定番。まあこれは元々安いんだけどね」
   ゆうすけ、赤身の皿を取る。
   小皿に醤油を垂らし、握りを箸で取って醤油をつけ、食べる。
ゆうすけM「うーんうまい。醤油の味がする。でも、俺はうまいうまいっていつもマグロを食べてるけど、言うほどマグロってうまいのかな? 高級さに惑わされてるだけなのかな? 醤油を味わうために寿司食ってるのかな? まあいいや、うまいし」
   握りを二つとも食べ終えたゆうすけ。
   次は中トロが流れてくる。
ゆうすけM「中トロ。いつもなら高いから俺は取らないんだが、今回は100円。躊躇わずにいただいちゃいます!」
   ゆうすけ、中トロの皿を取る。
   醤油をつけていただく。
ゆうすけM「あー、うまい。やっぱりなんか赤身とは違うね。やさしさを感じる味わいだ。口を労わる親切心みたいなものがネタに詰まっている、そんな気がするね」
   握りを二つとも食べ終えるゆうすけ。
ゆうすけM「さてお次はどうしようかな」
   鉄火巻きが流れてくる。
ゆうすけM「鉄火巻き、これにしよう!」
   鉄火巻きをテーブルに取るゆうすけ。
   そこに撮り鉄(25)が現れる。
撮り鉄「ちょっとちょっと! 貴方でしょう。さっきからマグロをせき止めてるの」
ゆうすけ「え、僕ですか?」
撮り鉄「他に誰がいるんですかこんな昼過ぎに! 貴方のせいで後ろのこっちに鉄火巻きちゃんが流れてこないでしょ」
ゆうすけ「すみません」
撮り鉄「ったくこれだから食べ鉄はよ」
ゆうすけ「なんですか食べ鉄って」
撮り鉄「鉄火を食うから食べ鉄に決まってるでしょ」
ゆうすけ「鉄火?」
撮り鉄「マグロのことです」
ゆうすけ「ああ。しかし決まってるっつったって、じゃあ貴方は食べないんですか」
撮り鉄「フフフ私はねぇ、撮り鉄」
ゆうすけ「は? 撮り鉄?」
撮り鉄「はい、鉄火巻きを、撮るから、撮り鉄」
ゆうすけ「電車じゃなくて?」
撮り鉄「はい、鉄火巻きを、撮るから、撮り鉄」
ゆうすけ「冗談みたいな奴がきたな……」
撮り鉄「というわけでね、その鉄火巻き撮らせてもらいたいんですよ」
ゆうすけ「まあ、撮るくらいならいいですけど」
撮り鉄「よっしゃありがとうございます!」
   カメラを構える撮り鉄。
撮り鉄「……この席じゃ駄目かなぁ」
ゆうすけ「なんか席とか関係あるんですか」
撮り鉄「うちら撮り鉄は光源、角度、お皿の柄などとにかく色々気にしなきゃいけないことがたくさんあるんですよ。この席じゃいい鉄火巻きは撮れない」
ゆうすけ「はぁ」
撮り鉄「ちょっと試してきます」
撮り鉄、鉄火巻きのお皿を持って何処かへ行く
ゆうすけ「え、ちょっと! ……しょうがないな」
   少しの間の後、撮り鉄が戻ってくる。
ゆうすけ「あ戻ってきた」
撮り鉄「すみません色々試したんですけどここの席が一番マシそうです、撮らせてもらいますね」
ゆうすけ「じゃあ、はい(不服)」
撮り鉄「ありがとうございます! はいそこどいて! 影が鉄火巻きにあたって暗くなる!」
   ゆうすけ、嫌々席を立つ。
撮り鉄「はいどうもー、3、2、1! ……ハイッ!」
   撮り鉄、パシャリ!
撮り鉄「はいあざしたー!」
   撮り鉄、鉄火巻きをレーンに戻す。
ゆうすけ「えちょっとおい! 俺が取った鉄火巻きなんで戻すん!」
撮り鉄「え、用は済んだし……」
ゆうすけ「いや! 食べるためにテーブルに取ったの! 戻しちゃダメでしょ!」
撮り鉄「ハハァ、食べ鉄の心は難しいですな」
ゆうすけ「なんで俺の方が難しい人みたいになってんだよ」
撮り鉄「わかりました、じゃあこれからは私が撮影し終わったら貴方が食べていい、そういうことにしましょう」
ゆうすけ「これからも何も初めからそうだったんですけどね。てか、まだ撮るんすか」
撮り鉄「当たり前でしょう何のために来たんですかここに」
ゆうすけ「寿司食うためでしょ」
   再び鉄火巻きが流れてくる。
撮り鉄「あ、鉄火巻き流れてきましたよまた! シャッターチャンスです!」
   撮り鉄、鉄火巻き以外のお皿を勝手にゆうすけのテーブルに取る。
ゆうすけ「ちょっとちょっとちょっと、何してるんですか」
撮り鉄「(無視して)ハイッ!(撮る)」
ゆうすけ「あの、無視しないで」
撮り鉄「……何って、鉄火巻きを美しく撮るためにどけただけですが」
ゆうすけ「ここ俺の席だよ!? 俺が食べなきゃいけなくなるじゃないですか!」
撮り鉄「じゃあすみません」
撮り鉄、お皿をレーン上に戻し始める。
ゆうすけ「いや戻しちゃダメだってばマナー違反だし!」
撮り鉄「しかし食べないのでは――」
ゆうすけ「じゃあわかりました! この皿は俺が食べます(不服)」
   ゆうすけ、テーブル上のいくら軍艦を食べ始める。
撮り鉄「おお、お寿司大好きなんですねぇ!」
ゆうすけ「こいつ本当腹立つな」
   撮り鉄、写真を確認する。
撮り鉄「うーん、今の写真なんか違うなぁ。次はあれしてみっか」
ゆうすけ「まだ撮る気なんだ……」
   再び鉄火巻きが流れてくる。
撮り鉄「はい来た鉄火巻き鉄火巻きシャッターチャンスシャッターチャンス!」
ゆうすけ「よく盛り上がれるな」
撮り鉄「あ、わかった!」
   撮り鉄、鉄火巻きの皿を一度取り、鉄火巻きをいくらの皿に移し替え――
ゆうすけ「ちょっとちょっとちょっと、何してるんですか」
   ――そのお皿をレーンに戻し、
撮り鉄「(ゆうすけを無視して)ハイッ!(撮る)」
ゆうすけ「あの、無視しないで」
撮り鉄「……何って、お皿が豪華な方がかっこいいでしょ」
ゆうすけ「いや、その皿もう流れてっちゃったじゃん! いくらの値段になっちゃうじゃん鉄火巻きがよ!」
撮り鉄「(かっこつけ)確かに……。でも、逆に貴方はいくらを鉄火巻きの値段で食べることができた。……私にできる貴方への恩返しなんて、これくらいしかないから」
ゆうすけ「綺麗は話みたいにしないでもらえます? ちょっとあの皿取り返してきます」
   ゆうすけ、席を立ちレーン後方へと走る。
   取り残された撮り鉄、写真を確認。
撮り鉄「うーん、綺麗だけどまだ物足りないなぁ」
ゆうすけ、鉄火巻きを持って戻ってくる。
ゆうすけ「取り返せました」
撮り鉄「おー、その柄のお皿に鉄火巻き、やっぱ映えるねー。静止した状態でも撮らせてくださいよ」
ゆうすけ「嫌ですー、もう言うこと聞きませんー」
撮り鉄「そう言わずに」
ゆうすけ「だいたいね、寿司なんて食べられてる状態が普通なんですよ。そういう、寿司を食べて幸せそうな人を撮るってのじゃダメなんですか?」
撮り鉄「……もしかして撮られ鉄の方?」
ゆうすけ「意味わかんないですよ撮られ鉄って。勝手に鉄にしないでください。そんじゃいただきます」
   ゆうすけ、鉄火巻きを箸で掴み醤油をつけ――
撮り鉄「あちょっと、何してるんですかまだ撮ってないって!」
   ゆうすけ、食べる。
撮り鉄「あーあ。食べちゃった」
   ゆうすけ、見せつけるように食べ続ける。
撮り鉄「あーあ。堂々とかじっちゃった。カジ鉄だ」
ゆうすけ「(豹変し)は? カジテツじゃないですけど。公務員ですけど公務員!」
撮り鉄「おお奇遇だ! 私も公務員させてもらってるんですよ区役所で!」
ゆうすけ「えお前が公務員?」
撮り鉄「はいそうですけど」
ゆうすけ「受かるん?」
撮り鉄「受かったから公務員ですけど」
ゆうすけ「この国はもうおしまいだ」
撮り鉄「たとえ国が終わっても鉄火巻きがあればみんな笑顔です」
ゆうすけ「鉄火巻き信頼しすぎだろ。なんでそんな好きなんだよ」
撮り鉄「うーんそうですね、やっぱ海苔があるからじゃないですか。巻き立てのパリっとした感じとか」
ゆうすけ「まあそれはわかるけど」
撮り鉄「あ、海苔鉄?」
ゆうすけ「なんすか海苔鉄って」
   そこにまた鉄火巻きが流れてくる。
撮り鉄「あ見て鉄火巻き鉄火巻きシャッターチャンスシャッターチャンス!」
ゆうすけ「だからなんでそんなはしゃげるの」
撮り鉄「(皿を取り)はいまず取る! (いくら皿に移し替え)移し替える! レーンに戻す!」
ゆうすけ「またやってる」
撮り鉄「そして仕上げはこれ~」
撮り鉄、桜の木の枝(花付き)をレーンのそばに立てて置く。
ゆうすけ「え桜!?」
撮り鉄「ハイッ!(撮る)」
   そのまま流れていく鉄火巻き。
ゆうすけ「……いや、だから! そのまま流すなって! てか何その木?」
撮り鉄「これね、綺麗だから取ってきたんです、ブチっと」
ゆうすけ「寿司屋でこういうの出すのよくなさそうですけど、花粉とかばい菌付きそうだし」
撮り鉄「確かにアメリカシロヒトリついてましたしね」
ゆうすけ「毛虫じゃないすか怖っ!」
撮り鉄「(照れ気味に)えへへぇ、ですのでちゃんと私が取りました」
ゆうすけ「あんた何も偉くないからね。もう頭来たね、店員さん呼びます」
撮り鉄「そ、それだけはご勘弁を!」
ゆうすけ「店員さーん!」
   店員、来る。
店員「どうされました?」
ゆうすけ「この人が僕の食事の邪魔してきてすごい迷惑なんです」
店員「うわまた貴方ですか。来てください」
   撮り鉄を引っ張っていく店員。
撮り鉄「いやこれはその! 私は鉄火巻きを撮りたい一心で!」
   取り残されたゆうすけ、ふと思いつく。
ゆうすけM「あんな奴で受かるなら、俺も公務員いけんじゃね?」

○ゆうすけの部屋
   机に向かって勉強するゆうすけ。
   ゆうすけの母が扉を開ける。
母「あれ、ゆうちゃん。珍しく勉強?」
ゆうすけ「おう」
母「就職の?」
ゆうすけ「おう」
母「本当に!? 何やんのかわかんないけど、お母さん応援してるからね」
ゆうすけ「おう」

○日は昇り、降りていく
   その繰り返し。
   勉強するゆうすけの様子と交互に。
   ゆうすけの部屋はだんだん綺麗に片付いていく。

○試験会場
   問題を解くゆうすけ。

○ゆうすけの部屋
   ゆうすけと母が二人で合否通知の封筒を見つめる。
   封筒を開け、紙を出す。
   ……笑顔になる二人。

○区役所
   皆の前で挨拶するゆうすけ。
   ゆうすけ「今日からお世話になります、西田ゆうすけと申します。よろしくお願いします」
   一同、拍手。
    × × ×
   同僚に段ボールを押し付けられるゆうすけ。
同僚「はい、これ」
ゆうすけ「へ、これは?」
同僚「二階の資料室にいる佐々木さんのところまで持っていって」
ゆうすけ「佐々木さんですか? わかりました」

○同・資料室
   やってくるゆうすけ。
ゆうすけ「すみません、これ持ってけって言われて……」
   そこにいた佐々木は撮り鉄だった。
ゆうすけ「あ、あんたあの時の……!」
撮り鉄「おやおや、貴方は寿司屋で出会った……」
   ゆうすけ、箱をその場に置き、
ゆうすけ「し、失礼します!」
   と去ろうとする。
   のを、止める撮り鉄。
撮り鉄「まあ待ちなよ」
   撮り鉄の仲間(これも公務員)が二名現れゆうすけを拘束する。
ゆうすけ「なんだお前たちは!?」
仲間A「君、名前は?」
ゆうすけ「に、西田ゆうすけ」
仲間B「西田ゆうすけ君、好きな寿司ネタは?」
ゆうすけ「ま、マグロ」
仲間A「奇遇だねぇ」
仲間B「僕たちこの所内で撮り鉄クラブやってるんだ」
仲間A「どうにか人数を増やしたくてね……」
撮り鉄「フッフッフ……」
ゆうすけ「は、離せ! やめろ、やめろー!」

○回転寿司屋・内
   鉄火巻きの撮影に勤しむゆうすけ、撮り鉄、仲間ABの姿。
ゆうすけN「以前と比べて、世界が輝いて見えます。家に籠っていたころは知りませんでした。空が、海が、鉄火巻きがこんなに美しいものだったなんて」
   鉄火巻きに執着する異様な目つきを放つゆうすけの顔で、終わり。

閉じる
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントをするには会員登録・ログインが必要です。